基本工作で作るHGUCサザビー 塗装編6.「ハイライト・シャドウの描き込みとドライブラシによる筆ムラの馴染ませ」

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工作編1.「パーツの切り出しとゲートの処理」
工作編2.「スナップフィットの処理」
工作編3.「表面処理で使う工具・一覧レビュー」
工作編4.「表面処理・その1(基本的なペーパーがけ)」
工作編5.「表面処理・その2(合わせ目消し)」
工作編6.「表面処理・その3(ABS製パーツの処理、その他)」
工作編7.「やさしめディテールアップ加工・その1(簡単な削り込み)」
工作編8.「やさしめディテールアップ加工・その2(ノミを使った彫り込み)」
工作編9.「やさしめディテールアップ加工・その3(プラ材を使った改修)」
塗装編1.「塗装の準備~塗装道具を一覧で紹介」
塗装編2.「水性ホビーカラー筆塗りの基本と下地塗装」
塗装編3.「アクリジョン ベースカラー筆塗りでABSパーツの下地塗装」
塗装編4.「再度の仮組みと塗り残しチェック」
塗装編5.「水性ホビーカラー筆塗りで黒立ち上げ・2色目以降の重ね塗り」
塗装編6.「ハイライト・シャドウの描き込みとドライブラシによる筆ムラの馴染ませ」
塗装編7.「メイン以外の色を塗っていく・その1(本体の黒いパーツ・関節・バーニアの塗装)」
塗装編8.「メイン以外の色を塗っていく・その2(動力パイプ等の黄色・ビームライフル等武器類の塗装)」
塗装編9.「細部の塗装・その1(はみ出しの修正、ファンネル・バーニアの塗り足し)」
塗装編10.「細部の塗装・その2(シールド・ビームライフルの塗り足し、塗装で表現するモノアイとセンサー)」
塗装編11.「シールの扱いと筆でのタッチアップ」
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前回に引き続き、赤色パーツの塗り足しをしていこうと思います。
ここまでで基本となる赤色は塗り終わっているので、今回は最終的な味付けとしてハイライトとシャドウを描き込んでみることにしました。
最終的にドライブラシで全体を馴染ませれば(ある程度は)どうとでもなるので、気楽にペタペタ塗っていきましょう。
とはいえ、ここでもやはりセオリーというものはあります。
まずはそのお話から…

シェパード・ペイン氏の「停止信号のルール」

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模型製作の古典的名書として知られる「シェパード・ペインのダイオラマの作り方」という本があります。
海外モデラーのシェパード・ペイン氏(なお、既に故人となってしまわれたようです…)の著書で、国内でも日本語に翻訳されたものを入手することができます。
この本はタイトルの通り、ダイオラマ(ジオラマ・情景模型)やミリタリー系を中心とした模型・フィギュアの製作方法が主な内容なのですが、多くの素晴らしい作例と共に模型作りの本質を捉えた考え方が数多く提示されており、他ジャンルのモデラーにとっても非常に得るものが多い内容となっている名書なのです。
もちろん、ガンプラに応用できる内容も多々あります。

そんな本書の中で解説されている方法論の一つが「停止信号のルール」。
まずは次の図を見て下さい。

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この図は、横向きに置いた八角柱に上から光を当てた状態をイメージしたものです。
このとき、八角柱のそれぞれの面に対する光の当たり方の差から、それを見た人間の目に見える明るさにも面ごとに差が生まれます。
そしてその明るさの順に番号を振って整理をすることで、立体に生まれる明暗の差を分かりやすく捉えることができ、模型の塗装においても自然なハイライトとシャドウを描き込むための根拠とすることができるのです。

この考え方を「停止信号のルール」と呼んでいて、本書の中では(スケールモデルの)フィギュアに明暗の差を付けながら塗装をする方法として紹介されているものなのですが、今回はこれをガンプラに当てはめて考えてみることにします。

ハイライト・シャドウを描き込み

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こちらは、前回までの工程で基本塗装が終わったサザビーのMS(モビルスーツ)本体を仮組みしたもの。
これに「停止信号のルール」を当てはめて光の当たり方を考えてみます。

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大雑把にですが、「停止信号のルール」を参考に面に番号を振ったところ。
実際の模型では真横や縦といったラインは意外と少なく、2番と4番が多くなっていますね。
今回は1番と2番にハイライト、4番と5番にシャドウという大まかな分け方にして、2色で描き込みを加えてみたいと思います。

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用意した2色は、基本塗装と同じ水性ホビーカラーから。
パープルがシャドウでセールカラーがハイライトになりますね。

実際の描き込みを見ていきましょう。

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光の当たる面、当たらない面を考えながら2色で描き込みを加えた状態。
本来、ハイライトとシャドウに使う色は基本色をベースに明度を調節した色を用いる方が自然な仕上がりになるのですが、管理人はこの後に基本色でドライブラシをかけて描き込んだ色も含めて全体を馴染ませる塗り方をするので、この段階では基本色から大きく離れた色を塗っています。
こうして見ると、この段階ではけっこう違和感がありますね。

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背面を別角度から。
本来のシャドウを入れる部分とは別になってしまうのですが、肩アーマー等にある凸ディテールの周囲にもパープルで縁取りをするように描き込みを入れています。
こうした部分は単色ベタ塗りでは輪郭が分かりづらくなり、ボンヤリとした印象になってしまうので、この時点で形を強調するような描き込みをしておくと効果的です。
多少不自然に見えてもドライブラシ前提ならば最終的にはかなり馴染んでくれるので、気ままにペタペタ塗っていくのが良いと思いますよ。

面全体へのドライブラシ

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ハイライト・シャドウの描き込みでは色の調和を無視して不自然な状態で塗装を終わっているので、ここからはドライブラシを全体にかけて違和感を和らげようと思います。
使うのは豚毛の平筆。
通常の塗装に使う筆よりも毛先が固いので、ドライブラシの手法を用いたぼかし塗装に向いています。
このような用途の場合、写真のように毛先を2/3から1/2程度に短く切っておくと使いやすくなりますね。

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新品の1/2程度を目安に毛先を切りそろえた筆。
もう少し長めのほうが使いやすかったかもしれませんが、今回はこの筆を使ってドライブラシをかけていこうと思います。

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筆の穂先に塗料を含ませたら、塗料皿のフチでよくしごいて毛先の塗料を減らしておくのは通常の塗装と同じです。
写真では塗料皿の中に他の色が残っていますが、筆に付けた塗料はレッド(赤)にフラットベースを混ぜたもので、基本塗装の最終段階で塗った赤と同じものです。
なお、ここではフラットベースは水性ホビーカラー用のものを使って、つや消し具合はしっとりめで調節しています。

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そして拭き取り。
キムワイプで筆先の塗料を拭き取り、筆の穂先をカサカサにしてから実際の塗装を行います。
この拭き取り具合がドライブラシの一番の肝ですね。
エッジやディテールを強調する場合などで、基本色と明度差の大きいドライブラシをかける場合(黒の基本塗装にシルバーやグレー、ホワイトでドライブラシなど)、やり過ぎたドライブラシはあからさまな不自然を感じさせてしまうので、「少なすぎると思う状態から更に穂先の塗料を減らすくらい」の拭き取り具合が丁度良い塩梅だったりするのですが、今回のような基本塗装と同じ色を全体に擦り付けて色を馴染ませるのが目的の場合、ドライブラシとしては少し残しめくらいの拭き取り加減でも大丈夫です。
とはいえ、穂先がカサカサなのには変わりなく、色は少しずつ少しずつ載せていくことにはなりますね。

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こちらは前腕のパーツ。
「停止信号のルール」に沿ってハイライトとシャドウを描き込んだので縞々模様になっています。
ここにドライブラシをかける様子を見てみましょう。

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パーツ全体を一巡するような感じでつや消し赤のドライブラシをかけた状態。
ハイライトとシャドウの二色が少し赤く染まってきましたね。
とはいえ、まだまだハッキリと縞模様が見えているのでもう少し塗り足していきます。

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もう一回、全体を一巡するようにドライブラシ。
更に全体が赤く染まりましたが、もう少しという感じですね。
この調子で色やムラの違和感がなくなるまで塗り足しをしていきましょう。

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更に全体が赤くなり、ハイライトとシャドウで塗り足した二色は、よく見るとうっすらと透けて見えるくらいになりました。
このくらいになれば、色の違和感としてはかなり和らいだ感じになっているのではないでしょうか。
このパーツは一先ずここで終了としましょう。

ちなみにですが、ドライブラシの塗装工程では手袋をするようにした方が良いと思います。
特に今回のような面全体にドライブラシをかけるような塗り方では、通常の塗装とは違ってパーツ表面を叩くように塗っていくため、棒状の持ち手では塗装時にパーツを支えきれません。
必然的に利き手でない方の手でパーツを直接持って塗装をすることになるのですが、ドライブラシのラフな塗り方と相まってどうしても指先に塗料が付いてしまうのです。

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上の写真はいくつかのパーツの塗装が終わった状態の左手。
パーツを持っていた指先にも塗料が付いてしまっていますね。
素手だった場合は作業終了後に石鹸などで手をよく洗って塗料を落とす必要がありますが、これがけっこう大変なんです。

手袋をしていれば、汚れと一緒にサッと脱ぎ捨てればそれでおしまいですからね。
最低限パーツを持つ方の手(管理人の場合は右利きなので左手)だけでも手袋をしておくと、塗装の後片づけがかなり楽になりますよ。
指先にピッタリとフィットする薄手のゴム手袋を選ぶようにすれば、指先の細かな感覚も邪魔をされることがなく、かなり素手に近い感覚で作業をしていくことができます。
逆に、台所用品としてよくあるラフに被せるタイプのビニール製手袋だとゴワゴワしてしまって細かな作業はやりづらくなるので注意ですね。

管理人が使っているのは医療用のゴム手袋で、100枚の箱入りタイプ。
台所や水回りの用品としてスーパーでも同等品を売っていることが多いようです。
各種サイズがありますが、管理人はSサイズを使用。
男性としては手が小さめなのでこれが丁度良いのですが、一般的には男性ならMサイズ以上のほうが無難だと思います。(こればかりは人によるので何とも言えませんが…)

購入時は値段が少し高いと思うかもしれませんが、一度にそう何枚も使うものではないので100枚あればかなり長く使っていくことができますし、模型用途に限定しなくても、もちろん日常生活の中で台所や水回りの掃除をするときにも使うことができるので無駄にはならないと思いますよ…!
(ただし、医療用を個人で購入するのは自己責任ですが…Amazonでは医療従事者かどうかの確認を求められます。)

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さて、そしてこちらは別パーツの例。
リアのスカートアーマーです。
この段階では筆ムラも多いですが、ドライブラシによって色とともにムラも馴染んでくれるので気にする必要はありません。

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右半分だけドライブラシをかけた状態。
もちろん、このパーツも色の違和感がなくなるまで何回かに分けてドライブラシしています。
下の色がかなり大胆に塗ってあったとしても、基本色でのドライブラシをかけるとかなりのところまで色が馴染んでいってくれます。
むしろ、これくらいだと塗り足しの効果がやや分かり辛いので、ハイライトとシャドウはもっと大胆に塗ってあっても良いくらいだったかもしれませんね。

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左半分にもドライブラシをかけて、パーツとして塗り終わった状態。
色の差と、筆ムラも全体的に馴染んでくれた感じがします。
塗膜の表面がやや荒れてきてはいますが、これはこの塗り方をする以上、ある程度は仕方のないところ。
あからさまに不自然な程の荒れでなければ、ここでは塗装の色の馴染みを優先させましょう。
どの程度まで馴染ませるか…というのは製作者の感性による部分も大きいのですが、筆ムラについては完全に消してしまうよりも、うっすらと見えるくらいは残しておいた方が模型の”味”になってくれると思います。

ドライブラシ完了!

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ドライブラシまで完了したMS本体。
基本塗装だけの時にはまだ残っていた筆ムラが馴染んだのと同時に、塗装色の中にハイライト・シャドウの二色が混ざったことで若干ながら色に深みが出た、と思います…こうして見ると本当に若干ですが。

後からの振り返りなのですが、ハイライトとシャドウは一色ずつではなく、停止信号のルールに沿ってそれぞれ二色を使って細かく塗り込むようにしていれば、尚良い結果が得られたのかもしれませんね。
それと色の選択としても、ハイライトにはもう少し違う色を使った方が効果的だったかもしれないという反省点もあります。
最終的に基本色で馴染ませるとは言っても、その基本色との調和を考えて今回のハイライトはオレンジやピンク等、赤と調和が取れる色を選んだ方が無難だったかもしれません。
このあたりは次回以降の課題といったところですね…

おしまい

今回のドライブラシで筆ムラもうまく馴染んでくれたので、これで赤色部分の塗装は終了です。
メインの塗装色が塗り終わると、全体の終わりも見えて来た感じがしますね。
ドライブラシでムラを誤魔化すのが前提というのは筆塗りとしてはある意味逃げの方法ではありますが、ドライブラシのぼかしで馴染んだ下塗りの微妙な明暗の具合がけっこう好きな表現だったりするので、管理人としては多用している塗り方です。
黒立ち上げの塗装では、明度を上げる重ね塗りの各段階ごとを全てドライブラシで塗っていくやり方もありますが、最終段階のみのドライブラシならば塗膜もそこまで荒れずに仕上げていくことができるのもメリットですね。

さて、次回は赤以外のパーツ…本体の黒色部分や関節などの塗装を行っていきます。

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