基本工作で作るHGUCサザビー 工作編4.「表面処理・その1(基本的なペーパーがけ)」

基本工作で作るHGUCサザビー
ランナー紹介
素組みレビュー
工作編1.「パーツの切り出しとゲートの処理」
工作編2.「スナップフィットの処理」
工作編3.「表面処理で使う工具・一覧レビュー」
工作編4.「表面処理・その1(基本的なペーパーがけ)」
工作編5.「表面処理・その2(合わせ目消し)」
工作編6.「表面処理・その3(ABS製パーツの処理、その他)」
工作編7.「やさしめディテールアップ加工・その1(簡単な削り込み)」
工作編8.「やさしめディテールアップ加工・その2(ノミを使った彫り込み)」
工作編9.「やさしめディテールアップ加工・その3(プラ材を使った改修)」
塗装編1.「塗装の準備~塗装道具を一覧で紹介」
塗装編2.「水性ホビーカラー筆塗りの基本と下地塗装」
塗装編3.「アクリジョン ベースカラー筆塗りでABSパーツの下地塗装」
塗装編4.「再度の仮組みと塗り残しチェック」
塗装編5.「水性ホビーカラー筆塗りで黒立ち上げ・2色目以降の重ね塗り」
塗装編6.「ハイライト・シャドウの描き込みとドライブラシによる筆ムラの馴染ませ」
塗装編7.「メイン以外の色を塗っていく・その1(本体の黒いパーツ・関節・バーニアの塗装)」
塗装編8.「メイン以外の色を塗っていく・その2(動力パイプ等の黄色・ビームライフル等武器類の塗装)」
塗装編9.「細部の塗装・その1(はみ出しの修正、ファンネル・バーニアの塗り足し)」
塗装編10.「細部の塗装・その2(シールド・ビームライフルの塗り足し、塗装で表現するモノアイとセンサー)」
塗装編11.「シールの扱いと筆でのタッチアップ」
完成品ギャラリー

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前回は工具紹介でしたが、製作過程の続きとして表面処理を見ていきます。
今回制作するHGUCサザビーは「本体部分に合わせ目がない」というモデラーに配慮された構成となっているので、表面処理としては「ゲート跡」「ヒケ」「パーティングライン」「突き出しピン」といった部分の処理が主な工作内容となります。
なお、手持ち武器の「ビーム・ショット・ライフル」はモナカ構造の貼り合わせなので合わせ目消しの必要がありますよ。
そちらについては次回の記事で見ていくことにします。

作業を始める前に

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作業の前に、まずは計画を立てましょう。
パーツ数の抑えられたHGUCシリーズとはいえ、一度に全てのパーツをバラバラにすると収拾がつかなくなります。
そこで今回は本体をユニット毎に分けてから、各ユニットを1つずつ処理していくことにしました。
これなら、分解・再組立ての際にも一度に扱うパーツ数が多くなり過ぎないので作業がしやすいですよ。

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上の写真は片足分のパーツを分解した状態。
これくらいのパーツ数なら、作業中にも扱いやすいですね。
一つのユニットが処理し終わったらその都度組み立て直しておき、分解するのは処理中のユニットだけにしておくと管理がしやすいと思います。

ゲート跡の処理

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ここからは実際の作業を紹介、まずはパーツを切り出した時にできるゲート跡です。
写真は仮組み状態のものですが、管理人は切り出し時に軽くヤスリがけまでしてしまうので、この時点でまあまあキレイになっていますね。
作業手順としては、まず最初はパーツから離れた位置にニッパーを入れてゲートをランナーの一部ごと大まかに切り出し、次にパーツの表面スレスレでもう一度ニッパーの刃を入れてゲートを切り取り。(二度切り)
今回は一度目に切り出しに耐久力の高いエッチングニッパー、二度目の切り取りには切り口がキレイなアルティメットニッパーを使いました。
まぁ…工具に投資できるのは大人の特権(フル・フロンタル)ということで。
もちろん普通のニッパーで二度切りしても大丈夫ですよ。
※ただし、一度目の切り取りからいきなりパーツのキワで切り込むのはパーツを破損する危険があるため厳禁です。

ゲートからパーツを切り出せたら、少し残ったゲート跡は単目の鉄ヤスリで「軽く(重要!)」削っておきます。
それが上の写真の状態です。
段差や欠けもなく平滑な表面になっているので、鉄ヤスリのヤスリ目をペーパーがけで磨けば終了です。
このパーツは曲面なので、3つ折りにした耐水ペーパーか神ヤス!(スポンジヤスリ)で水研ぎします。

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同様に別のパーツの例。
今度はパーツの平面部分にゲート跡があるので、ペーパーがけの際にはエッジをなめないように細心の注意が必要です。
三つ折りにした耐水ペーパーでも慎重に作業すればできなくはないですが、素直に当て木を使った方が良いでしょう。
管理人は「タイラー」に貼り付けたペーパーで水研ぎをしました。

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中央の平面部分にペーパーがけをした状態。
当て木を使うことで、フリーハンドよりも確実な平面を出すことができます。
このパーツは、この後は「ヒケの処理」で他の面にもペーパーがけをすることになりますが、同様に元からある面を崩さないよう慎重に作業をしていきます。

ヒケの処理

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続いて「ヒケ」の処理です。
プラスチック成形品の宿命として各パーツの表面には微妙な「うねり」があり、それが本来はないはずの部分的な凹みになっている場合があります。
パーツの表面に軽くペーパーがけをすると、部分的にペーパーが当たらない部分があることが確認できますね。
基本的に、外装の見える部分は全て400番のペーパーをかけ、「ヒケ」を消しておきます。
上記「ゲート跡の処理」に続けて、パーツ全体にペーパーをかけていきますよ。
エッジ(角の部分)を舐めないように(丸めてしまわないように)注意して作業するようにするのはゲート処理と同様です。

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こちらはビーム・サーベルのグリップになるパーツに軽くペーパーをかけたところ。
写真の右側の部分が見事にヒケていますね。
この凹みが平らになるまで削っていきます。
あまりにも大きな凹みの場合はパテも併用した方が良いこともありますが、最近のキットならほとんどの場合そのまま削っていっても大丈夫でしょう。

実際のペーパーがけ作業

ゲートとヒケを処理するため、表面処理の工程ではパーツの表面を「一皮むく」ようなイメージでペーパーをかけます。
実際の作業手順を改めて見ていきましょう。

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平面部分には当て木を使います。
写真の上にある黄色いものは「タイラー」という市販の当て木。
最初から付いているペーパーはすぐに使い終わるので剥がしてしまい、自分で新しいペーパーを貼り替えながら使います。
ペーパーには両面テープの「貼ってはがせるタイプ」が適度な粘着力で便利ですね。
初心者の方は「耐水ペーパーは何番まで使う?」と番手の選択に迷うかもしれませんが、ガンプラのつや消し筆塗り塗装ならとりあえずは400番だけあれば充分です。

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「タイラー」には15mm幅のテープが丁度いいサイズです。

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両面テープで耐水ペーパーを貼り付け、ペーパー面に水を付けたところ。
「水研ぎ」では洗面器などに水を用意しておき、指先でペーパー面に水を塗るようにして付けながら使います。
一度に付ける水の量はこれくらいで大丈夫。
作業中も適宜、指先でペーパーに水を付けながら作業しましょう。

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ペーパーをかける前のパーツ。
ゲート痕を単目の鉄ヤスリで軽くヤスっただけの状態です。

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ペーパーがけ中。
作業中はエッジをなめないよう(ヤスる面が必要以上にエッジに触れないよう)注意して作業します。
また、ペーパーは円を描くように動かしながらかけるようにするとキレイに削りやすいです。
パーツの形状的な制約で円運動のペーパーがけができない場合を除いて、原則、ペーパーは円を描くようにかけるようにすると良いでしょう。

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ペーパーがけの途中の様子。
水研ぎのメリットは、摩擦熱が抑えられてパーツ表面に余計なキズが付きづらいことと、削りカスの粉が飛び散りづらいこと。
また、ペーパー自体も空研ぎよりも長持ちします。
削りカスのプラスチック紛がペースト状になっているのが分かりますね。
カスの取り除きを兼ねて、適宜ペーパー面に新しい水分を補給しながら作業をしましょう。

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一つの面にペーパーをかけ終わった状態。
面の全体にペーパーが当たり、ゲート跡やヒケも見えなくなっているので、この面はこれで大丈夫です。
ここまでできたら次の面のペーパーがけに移ります。

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曲面にはペーパーの当て方を変えます。
写真は三つ折りにした耐水ペーパーを使って、指の弾力を活かして曲面にペーパーを当てているところ。
スポンジヤスリがあればそちらを使ってもいいですね。
模型用に発売されているスポンジヤスリ「神ヤス!」は使いやすいですが(耐水ペーパーと比べて)ランニングコストの高さが気になるところ…

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400番でペーパーをかけ終わったパーツ。
ここまでできればこのパーツは終了です。
基本的にはこれを繰り返し、「完成時に外から見える部分」には全てペーパーをかけます。
場合によってはこの後にペーパーの番手を上げて(より細かいペーパーを使って)さらに磨き込みをし、「ペーパーがけで付いたキズを消す」作業をするというのも一つの考え方ですが、管理人は基本的に400番のペーパーがけだけで表面処理を終了としています。
ガンプラのつや消し筆塗り塗装なら、この程度のペーパーキズが埋まるくらいの塗膜は載せることになるからです。
筆塗りの場合、これ以上の番手でのペーパーがけは、労力に見合った成果が得づらいと思います。

「エッジを出す」ではなく「エッジをなめない」加工を

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近年のガンプラ制作のトレンドとして、「スジ彫り(の追加)」と並ぶものに「エッジ出し」があるようですね。
この「エッジ出し」はプラモデルの縮小模型としてのリアルさを追求するための工作方法の一つで、「実際には小さなアールが付いた角でも離れて見ると角が立って見える」ことを表現するために「プラモデルのパーツの角(エッジ)は極力シャープに尖らせた方が良い」…とする考え方によるものです。
最近では猫も杓子もエッジバキバキ、用品メーカーも「エッジ出しがしやすい」ことを売りにした工具を出す始末。
だけどちょっと待ってください…その「エッジ出し」、本当に必要ですか?
管理人としては、「エッジ出し」は基本レベルではなく改造工作の範疇だと考えています。
他のディテールアップと組み合わせて考えた時に、表現方法の一つとして選択するかどうかを決めることであって、ただ闇雲にやれば良いというものではありません。

今回の制作記では管理人の考える「基本工作」に則り、特別なエッジ出しは行っていません。
それよりも、基本レベルでは「エッジをなめない」ことを意識してペーパーがけをした方が良いです。
実際、パーツの面部分にペーパーが当たってヒケが消えていれば、パーツ形状としてはそれなりに見えるものです。
それどころか下手にエッジ付近に手を出し、形状を崩してしまった場合…結果は悲惨なことになります…
上の写真では、パーツのエッジ付近にはペーパーを当てず、わざと削り残すようにしました。
写真のパーツのような鈍角のエッジは、漫然とペーパーがけをしているとエッジをなめやすい形状なので、自分の技量や表現したいものと相談して、このような選択をするのも一つの方法かと思います。

パーティングラインの処理

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さて、続いては「パーティングライン」の処理。
パーツによっては、表面にスジ状の余計な出っ張りがあるのでこれを削ります。
プラスチックが成型される時に出来る、金型の合わせ目の跡ですね。
最近のキットでは、設計の工夫により見えづらい位置に設定されていることもありますが、パーツ数の抑えられたHGUCなどではどうしても限界があります。
上の写真では横一直線にスジ状となって見えていますね。

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一体成型のバーニアなどもパーティングラインが出ていることが多いパーツ。
写真は「Mr.バリ取り棒G」で粗削りしているところ。
このような作業では非常に扱いやすい工具です。

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狭い隙間にはペーパーを差し込んで削ります。
削りにくい形状ですが丁寧に…

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円柱状のパーツはパーティングラインに沿って一部分だけを削ると、そこだけが平らになってしまって不格好です。
パーツを回転させながら円断面を意識して削れば良いのですが、お助け工具も出ています。
写真で使っているのはシモムラアレックの「Rボコ2」というもの。
表面のアールを維持したままの削りが楽にできるので便利ですね。

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パーティングラインの粗削りをしたパーツ。
この後はヒケの処理と同様、全体にペーパーをかけて表面を整えれば作業完了です。

突き出しピン跡の処理

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上の写真の矢印の部分、丸いくぼみが付いています。
これが「突き出しピン」の跡と言われるもので、プラスチックが成型され型から外される時に付くものです。
パーツの裏など、完成後には目立たない部分に配置されていることが多いですが、設計の限界で表に出てしまうこともあります。
写真のパーツは肩装甲の裏側ですが、ここは完成後に見える部分なので処理が必要です。

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同様に、シールドの裏。
いくつものピン跡が確認できますが、完成後に見えるのは写真の中央、矢印の部分にあるものだけです。
この部分を例にピン跡処理の作業を見ていくことにします。

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まずは「Mr.バリ取り棒G」で粗削り。
このような奥まった場所での作業には、ナイフ系の工具よりも持ち手に対して先端方向に刃が付いているノミ系の工具の方が向いています。
バリ取り棒は肉厚の刃先で安定感のある加工ができるのでおすすめです。

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「バリ取り棒」だけでここまで削りました。

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スジボリ堂の「テーパーダイヤモンドヤスリ」幅2.5mm、400番で更に削ります。
このヤスリは側面や先端方向にも研磨粒子が付いているので、細かな部分の削りにもかなり対応することができます。

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「テーパーダイヤモンドヤスリ」で凸ディテールで囲われた小さな面全体が均一になるように削りました。

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最後は「つまようじヤスリ」で水研ぎ。
これは、つまようじの先端にペーパー片を接着した自作工具です。
一部のネット上で人気…のようですね。
実際使ってみると確かに便利ではあります。
使用しているペーパーの番手は400番。

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作業終了。
ピン跡は完全に分からなくなりました。
ペーパー跡は残っていますが、この程度なら塗装すればほぼ分からなくなるでしょう。

おしまい

今回は基本レベルの表面処理について、順を追って見ていきました。
やはり難しいのは細かく入り組んだ面や奥まった個所で、そのような部分を削る時には道具の工夫や慎重な作業が必要になってきます。
くれぐれも、功を焦って雑な作業をしてしまうことだけはないように…
「面倒だからちょっと適当にやってみよう」と魔が差したなら、もうその日の作業は終了した方が良いことのサインです。
そんな時は日を改めて、別の日に気持ちを落ち着けてから作業を再開すると、良い結果が得られることも多いですね。
精神論的ですが、ある意味究極的な「レベルアップのコツ」ではないかと思います。

さて、表面処理はまだ終わりません。
次回の記事では「ビームライフルの合わせ目消し」を行っていきます。

基本工作で作るHGUCサザビー
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素組みレビュー
工作編1.「パーツの切り出しとゲートの処理」
工作編2.「スナップフィットの処理」
工作編3.「表面処理で使う工具・一覧レビュー」
工作編4.「表面処理・その1(基本的なペーパーがけ)」
工作編5.「表面処理・その2(合わせ目消し)」
工作編6.「表面処理・その3(ABS製パーツの処理、その他)」
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工作編8.「やさしめディテールアップ加工・その2(ノミを使った彫り込み)」
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