海洋堂 1/35 三式光武 工作編1.「仮組みまでに気を付けたいポイント」

海洋堂 1/35 三式光武 制作記

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海洋堂の1/35 三式光武、制作過程を見ていきます。
まずはパパッと仮組み…と行きたいところなのですが、近年のガンプラなどの親切設計なキットを基準に考えていると一筋縄ではいかない部分もままあるのが困ったところ。
工作編の第一回として、まずは気を付けたいポイントを確認しながら仮組み完了を目指しましょう。

パーツの切り出し

まずはゲートカットですが、小スケールなキットでパーツも小さいので、ランナーからの切り出しもいつも以上に慎重に。
管理人はこのキットに限らずなのですが、ゲートは3度切りで処理しています。

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ゲートカット一度目の切り込みはパーツからかなり離れた位置で、ランナーごと切り取ります。
ランナーの太い部分を切断するので、ニッパーは耐久力の高いタイプが適していますね。
この段階ではハセガワトライツールのエッチングニッパーを使用。

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2度目の切り込み、これもトライツールのエッチングニッパーです。
ゲート部分で余計なランナーを切り落とします。
この段階ではゲートはかなり多めに(2~3mm程度)残しておくようにすると、パーツ側にかかる負担を減らすことができます。
なお、管理人はここから先のパーツ際でのカットにはアルティメットニッパーを使用しますが、もちろん無理に高いニッパーを使わなくても大丈夫です。

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そしてゲートカット3度目の切り込み。
パーツの表面ぎりぎりで余計なゲート部分を切り取ります。
仕上がりを考えると、この段階ではアートナイフでゲートをそぎ落とすのが良いですね。
管理人は奮発してアルティメットニッパーを買ってしまったので、ここではそちらを使用します。

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こちらがアルティメットニッパーで切断したゲート。
新品のアートナイフの刃で削ぎ切りをしたように抵抗なくゲートをスライスすることができるため、ニッパーでありながらパーツ側にかかる負荷を最小限に抑えることができます。

アートナイフを使って一つ一つ加工をしていけば結果としては同じことなので、高いニッパーを使うかどうかは個人の価値観によりますが…
時間をお金で買うという意味では、思い切って買っても損はしない工具だとは思いますよ。
(だけどやっぱり高いです。笑)

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細かなパーツやランナーが入り組んだパーツは一度に切り取ろうとせず、まずはランナーを大まかに切り出しましょう。
これも基本事項ですね…

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段階を踏んでパーツを切り出すようにすれば、ゲート部分で無理な力をかけてパーツを破損してしまうような事故も防ぐことができます。

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やはりゲートを残してランナーをカット。
このパーツはもう一回のカットでゲートを切り落とします。

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4回に分けた切り取りでゲートカットしたパーツ。
入り組んだゲートはパーツを破損しやすいだけでなくニッパーにも無理な力が加わりやすいため、アルティメットニッパーのような刃先が繊細な高価格帯のニッパーには破損の危険があって危険です。
このように少しずつ切り取るようにすればゲートもきれいに切り取れて、道具も労わることができますね。
ここでも最終段階のパーツ際でのカット以外は耐久力の高いエッチングニッパーを使っています。
段階ごとに、道具も使い分けていきましょう。

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また、場合によっては塗装後まで切り取らないようにしておいた方が作業がスムーズに進むパーツもあります。
上の写真は頭頂部に取り付けるごく小さなパーツですが、このようなパーツは最後の組み立て時まで一部ゲートは残しておくのも良いかもしれません。

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例によって段階的に切り取り。
この写真で上側になっているゲートは最後まで残します。

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このパーツの切り取りはここまで。
ゲートとパーティングラインを処理して、塗装後に残しておいた方のゲートを切り取ってから本体に取り付けます。
細かすぎるパーツは無暗にバラしてしまうと管理や扱いがしにくくなってしまいますから、このパーツはこのような加工方法の方が楽ができると思います。
パーツの形状や大きさによってはこのような判断も必要になってきますね、、、

パーツの差し込みクリアランスの調整

このキットは接着剤不要で組み立てができるように設計されています。
しかし、パーツを差し込む部分の調整がやや甘く、組み立て時にモデラー側での微調整を要求されるのが厄介なところ。

差し込みがきついパーツもあれば緩いパーツもあり…
きついパーツは削り込み、緩いパーツは接着を前提に考えて仮組み時はマスキングテープで固定をするなどの対応を考える必要があります。
ここではそれらのパーツの対応を見ていくことにしましょう。

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上の写真のパーツは膝関節の可動部ですが、ここは中央の凹凸を組み合わせてはめ込むことで可動する関節を作るようになっています。
管理人が組んだキットでは受け側の穴が小さく、差し込む側のピンを入れることができなかったので、穴を削って拡張することで調整をしました。

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受け側の穴の入り口を軽く斜めに削った状態。
球形ビットをピンバイスに装着して、様子を見ながら慎重に削ります。
削りすぎるとはめ合わせが緩くなるので気を付けて…

ここでは2mm径のビットを使用。
受け側の穴を削る場合、穴の径よりもほんの少しだけ大きいサイズのビットを使うと良いですね。
球形ビットがなければ普通のドリルでも可能ですが、受け穴の底まで穴を拡張してしまうと確実にはめ合わせが緩くなるので、少しずつ様子を見ながら入口を少しだけ削るようにしましょう。

これで問題なくピンを差し込むことができるようになりました。
もし削りすぎて関節がユルユルになってしまったら、潔く接着してしまうか、ピットマルチなどのゴム質の糊をはめ合わせ部分に少し塗ることで関節の保持力を上げて対処しましょう。

※球形ビットについて
管理人はスジボリ堂の通信販売で手に入るブッシュ社製スチールバーを使っています。
各サイズのものをある程度まとめ買いしておくと様々な工作に余裕を持って対応することができるのでおすすめです。

(参考リンク)
スジボリ堂「ブッシュのスチールバー カーモデル、ガンプラ、フィギュアに使用できます。

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膝関節にも同様の問題があります。
こちらは下腿(膝と足首の間)パーツの関節の軸を差し込む受けの穴なのですが、ここの穴がきつ過ぎて関節軸が差し込めません。
ここも少し削って対応をしましょう。

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受けの穴を削った状態です。
ここは穴の入口を3mmの球形ビットで軽く拡張した後、穴の底までを2mmのビットで軽くさらうようにして径を微調整しました。
これで関節軸の差し込みがスムーズに行えるようになりました。
今回の加工では保持力も充分なものでした。
差し込み部分を緩くし過ぎず丁度よい保持力に加工にするには、少しずつ削っては合わせ…というように慎重に少しずつ削っていくようにするのが良いですね。

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ちなみに下腿パーツの反対側、足首と接続するボールジョイントはキットのままでも問題なく取り付けが可能でした。
ただし、左右のパーツでボールジョイントの硬さに差があるのですが…
と言っても、緩い方のパーツも保持力には問題ありません。
素組みレビューでも触れましたが、この部分の可動範囲はほぼゼロ(汗)なので、取り付けたパーツが外れない保持力さえあればここは特に問題とはならないでしょう。

後で分解できるように加工しながら組み立てる

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こちらは肩の関節。
キットのままでもはめ込みは可能でしたが、組み立て後に分解できるようにスナップフィットを緩くする要領で削り込み加工を行いました。
ここでは3mmの球形ビットをを使っています。
受け側の穴を割と大きく削りましたが、ここはこれくらい削っても十分な保持力があります。

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足裏には蓋をするようにパーツをはめ込む構成です。
ここは構造上、足裏のパーツを付けてしまうと取り外せなくなると思われます。
仮組みでは足裏を足首本体には取り付けないようにしておき、塗装後の最終組み立てではめ込むようにした方が良いでしょう。

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膝アーマーの取り付け部も加工します。
ここは膝アーマー側の四角い出っ張りを削ることではめ合わせを緩くしましょう。

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右が加工後。
完成後に見えなくなる部分なのでニッパーなどで割とラフに削っています。
凸側を少しずつ削っては受け穴の側と合わせ…というように少しずつ加工して丁度良いはめ込み具合に調整しましょう。

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ただし、管理人が組んだキットではこの加工が必要なのは右膝だけで、左膝は無加工でも付け外しがスムーズに行えるきつさになっていました。
この差が金型の設計によるものなのか、また製品のロットなどにもよるものなのかは分かりませんが、実際にこのキットを組む時には人の情報を鵜呑みにはせず、自分ではめ込み部分のテンションを一つ一つ慎重に判断する必要があるかもしれませんね。

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胴体のパーツも後でばらせる様に加工。
ここはガンプラ等でお馴染み、スナップフィットの非スナップ化といったところですね。
差し込み側のピンを竹やり状に削る方法が最も簡単ですが、管理人は受け側の穴を球形ビットで拡張する方法がお気に入りです。

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こちらが受け穴を削った状態。
穴の入り口をすり鉢状に加工するこの方法は、保持力と外しやすさの両立が簡単なのでスナップフィットのガンプラ等でも有効な方法です。

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続けて見ていきましょう。
胴体パーツの別部分、こちらは右側が差し込む側のパーツですが、ここは差し込み側を削っています。
見えない部分なのでニッパーでバキバキです。

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胴体の股関節取り付け部分。
本体は四角い穴の取り付け部が多いですね。
ここも右の差し込み側パーツをニッパーでバキバキ切り取ってきつさを調節しています。

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胴体の上側には、取っ手付きの蓋パーツが付きますが、ここは取っ手部分がかなり細かいので破損の危険があります。
パーツのつけ外しで無理な力を加えなくても良いように、取り付け部分はかなり緩めに調整した方が良いでしょう。
写真は加工後の状態ですが、胴体側、蓋側の双方をニッパーでバキバキと切り込んでいます。
取り付け部は完成後には見えなくなる部分なので、ここもこんな加工で大丈夫です。

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今度は腰回りの装甲…ガンプラで言うところのサイド・スカートアーマーです。
ここもキットのままでは凸側が受けの穴に入らないので接続部の削りが必要なパターンなのですが…

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接続部の凸側をアートナイフで削ってみます。
ここの凸側のピンは奥行きが短くて調節の加減が難しいですね、、、

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ということで、案の定削り過ぎてしまったようです。(汗
接続部を削り過ぎたパーツはユルユルですぐに外れてしまうので、ここはマスキングテープの細切りで仮固定しています。
幸い可動はしないパーツなので、塗装後に接着してしまえば問題はないでしょう。

また、この写真では肩関節の上下に付く動力パイプも取り付けていますが、このパーツはキットのままでも外れやすくてすぐにポロリします。
今回のサイド・スカートアーマーのように削りすぎて固定が緩くなったパーツはもちろん、このキットでは可動に関係しない箇所は基本的に全て接着して組み立てるつもりでいた方が良いようです。

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あとは武器ですね。
太刀の鞘は唐竹割りのモナカ分割なので、あとで接着して合わせ目消しができるようにスナップフィットのピンを緩くしておきましょう。
やはり受け側の穴をサイズの合う球形ビットで軽く削って加工します。

太刀の本体はこのサイズながら驚異の3パーツによる構成。
刀身に柄を差し込む構造ですが、これはキットのままで問題なく抜き差し可能です。
ここも最終的には接着した方が良いですが、加工は特に必要ないでしょう。

仮組み完成~再度ばらして表面処理へ

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一部そのままでははめ込めないパーツもありましたが、必要な工作も基本的には簡単な削り加工で対応可能な範囲でしょう。
ここまで見てきた通り、ニッパーとアートナイフに加えて最低限ピンバイスがあれば基本的な組み立て自体は可能だと思います。
できればピンバイスにはドリルではなく球形ビット(スチールバー)を装着して使いたいところですが、そこは手持ち工具や予算、好みと相談といったところです。
緩くしすぎたパーツや可動に関係のないパーツは塗装後に接着することになるので、そこも全体の計画の中でよく考えておく必要がありますね。

そうしてとりあえず一通り仮組みができたら、またパーツをばらして次は表面処理等の基礎工作に移ります。

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仮組み後のバラシでは、できれば100円ショップのプラケース等を用意しておき、その中にパーツをまとめておいた方が良いでしょう。
管理人も昔は作りかけのプラモはキットの元箱に入れておくだけだったりしたのですが、特に今回のように小スケールで細かい部品が多いキットの場合は、管理をしっかり行わないとパーツの紛失につながるため危険です。
バンダイのガンプラなどはパーツ単位で部品請求ができる場合もありますが、今回の海洋堂ではパーツが請求できるかどうかは不明…
(少なくともインストにはパーツ請求に関する記載はありません)

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写真のものは100円ショップで見つけた透明なプラケース。
管理人の地元ではダイソー、セリアの両方で同じものが売っていたので色々なところで手に入るのかもしれません。

このケースは蓋にはロック機構がないのですが、それが逆に作業中の開け閉めには便利だったりしてパーツ管理用のプラケースとして使いやすいものです。
不意に落としてしまった場合のことなどを考えると蓋がロックできる方が安心かもしれませんが、そこは好みといったところですね…

おしまい

というわけでの海洋堂1/35三式光武、仮組みするだけでも一手間というところですが、本来プラモデルってそういうものですよね。
(最近のガンプラは親切設計過ぎるので感覚が麻痺してしまいますが…)
造形的には決して素性の悪いキットではないので、最終的に塗装をして細かい色が入ればかなり印象が良くなる予感はしています。

次は基礎工作、表面処理を見ていきます。

海洋堂 1/35 三式光武 制作記