最小限の道具でHGUC量産型ザク製作 工作編.3 「後ハメ加工」

後ハメ加工

1.はじめに

最小限の道具だけを使ってガンプラを筆塗り全塗装で仕上げていく当企画…!

お題はHGUCの量産型ザクです。


使用している工具などは以前の記事を参照してください。

前回の記事ではスナップフィットを処理して仮組みが完成しました。

今回は全塗装を前提とした加工として「後ハメ加工」を行います。
パーツ形状によっては立体パズルのように複雑な場合もありますが、今回の例では比較的単純な加工で済ませることができます。
今回は工具を制限しているのが辛いところですが…丁寧に作業すれば最低限の道具でも十分作業可能です。
それでは順をを追って見ていきましょう。

2.「後ハメ加工」とは?

パーツの分割方法がキットそのままの場合、パーツ同士を接着すると後から分解ができなくなる箇所が出てきます。
そこでパーツ分割方法を変更する「後ハメ加工」をすることで、工作や塗装を終えた後に組み立てができるようにし、作業を行いやすくすることができます。
後から分解できなくなるパーツの組み合わせの中から、ヤスリがけや塗装の際に問題になりそうな箇所をピックアップしましょう。
と言っても「HGUC量産型ザク」の場合、ほとんどありませんでした。
頭部と大腿+膝関節、それに前腕くらいでしょうか?

後ハメ加工
頭部。口(?)のダクトはそのままでも「それっぽく」見えますが、ヘルメット部分は上下に分割されるため合わせ目が目立ちます。
後ハメ加工
大腿+膝関節。膝関節を挟み込む形式のため後から分解できない構造です。

このうち、今回は頭部については「後ハメ化」しません。
パーツの構造上、後ハメ化には大掛かりな加工が必要になるため、またモールド化して処理しても違和感が少なそうなため無理をしない方が良いと判断しました。

大腿+膝関節ですが、ここは少しの加工で対応できそうなので後ハメ化しています。
ただ、ここも無理に後ハメ化しなくても良いかもしれません。
そのままでも合わせ目消しはできそうですし、塗装も丁寧に塗り分ければ大丈夫そうです。
何より、後ハメ化加工には接続部の強度が低下するリスクが付きまといます。
無茶な加工を行うと、例えば完成後に関節がユルユルになって姿勢の保持が困難になる場合があったりします。
今回はパーツ構造から強度にも問題なしと判断して加工を行いましたが、「すべての個所を無理に後ハメ化しない」という考え方も大事だと思います。

3.後ハメ加工の方法

3-1.大腿+膝関節の後ハメ加工

パーツの組み合わせ方法によって加工方法も様々ですが、それでもパターンのようなものはあります。
まず、膝関節を例に見ていきます。

後ハメ加工
大腿+膝関節を分解したところ。膝関節上部に切り欠きを作れば後ハメができそうです。

上と同じ写真ですが…膝関節の固定方法を考えます。
ここは膝関節のグレーのパーツを大腿で挟み込む構造になっています。
膝関節上部にストッパーのような板があり、ここを削れば良さそうです。

後ハメ加工
最初の大まかな切り込みはニッパーで入れています。ニッパーではパーツ破損のリスクもあるため慎重に。最終的に削り取りたいラインからは少し離れた箇所に刃を入れましょう。
後ハメ加工
切り込み部分をアートナイフで削って広げます。パーツを合わせて確認しながら干渉する箇所を削り込みましょう。
後ハメ加工
#400の耐水紙ヤスリでヨレたラインを微調整。水は付けずに「空研ぎ」で、三つ折りにして折り目の角を使っています。

ニッパーで切り込みを入れた後、アートナイフと#400の耐水紙ヤスリで目的のラインまで削り込みをしました。
ニッパーで切り込んだ箇所は力がかかって歪んでしまうので、切り込みの周囲は「使わない」または「見えない」ことが前提です。
余計な箇所を削らないよう、ハメ合わせ先のパーツと組み合わせて様子を見ながら慎重に削りましょう。

後ハメ加工
完成です。これで大腿を接着後に膝関節のパーツを組み合わせることができるようになりました。

3-2.前腕の後ハメ加工

もう一か所の例として前腕のパーツを加工します。
ここは2つのユニットによる挟み込み構造です。

後ハメ加工
前腕のパーツ構成。そのまま組んでも大きな問題はなさそうな形状ですが、後ハメ化して後の工作がより行いやすいようにしてみます。

このパターンは挟み込み式の組み立てとしては典型的なものなので、後学の為にもここを後ハメ化してみます。
接続用ピンの受けとして設置されている穴の一部を切り欠き、スライドしてはめ込めるように加工します。

後ハメ加工
ピン受けの穴に切り欠きを入れた状態。これで切り欠き部分からピンがスライドしてハマるようになりました。実際にはピン側にも干渉する箇所があったので、ピンの一部も削っています。
後ハメ加工
それぞれのパーツを別々に接着しても、後からはめ込めるようになりました。

この部分もまずニッパーで切り込みを入れ、アートナイフで少しずつ削って仕上げています。
うまく切り欠きの大きさを調節できれば「パチン」とハメることができるのですが、削りすぎて緩くなってしまった場合は最終的にピンと穴の部分で接着したほうが良いかもしれません。
この方法で後ハメできる構成のパーツは他のキットでも目にする機会が多いと思います。

4.後ハメ加工「しない」という選択肢

頭部にも目立つ合わせ目がありますが、後ハメ加工はしていません。
改めてパーツ構成を見てみます。

後ハメ加工
頭部の構成パーツ。ヘルメット部分は上下分割で、中に黒いパーツを挟み込む形式です。後ハメ化するには下側からヘルメットをくり抜いて黒いパーツをはめ込めるようにするなど、大掛かりな加工が必要と思われます。

後ハメ化のためには、ヘルメットの上下を合わせた状態で中の黒いパーツを内部に入れられるようにする必要があり、加工の難易度はかなり上がってしまいます。
今回ここは「合わせ目のモールド化」で処理することにしました。
ある意味「逃げ」の選択でもありますが、どこまでやるかは自分次第…極論、自分が納得できればそれが正解です。
上述の関節強度と後ハメ加工の兼ね合いなども含め、「やる」「やらない」を選択していけば良いと思います。

加工はとても簡単…パーツの合わせ目をアートナイフで斜めに削るだけです。
パーツ同士を合わせた時に均一なスジボリ状になるよう、意識して加工しましょう。

後ハメ加工
「合わせ目のモールド化」で処理した頭部パーツ。元々「そういうデザイン」だと思えば気にならない?

まとめ…どこまでやるかは自分次第…

HGUC量産型ザクの場合、ユニット毎に組み立てられるような構成がほとんどで、後ハメ化が必要なのは数える程のパーツだけでした。
近年のキットは構成がよく考えられており、このような傾向は更に強くなっているようです。
後ハメ加工を「する」「しない」、また「しない場合」でも、先に塗装をしてから組み込む、パーツの隙間からやすりがけをする、今回のようにモールドに加工する、また完成後に見えない場所はそもそも加工しないなど…考えられる方法はいろいろあります。
趣味でやっている以上「自分が選択したことが正解」なのですから、どこまでやるか、どのようにやるのかは好きなように選べば良いでしょう。
今回は比較的簡単な加工でクリアすることができましたが、複雑な構成のキットに当たった時は、また対処法を考えていきたいと思います…

それでは、次回以降は接着、合わせ目消しと進んでいきます。