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海洋堂 1/35 三式光武 工作編9.「工作編まとめ~ディテールアップと改造・改修箇所の振り返り」

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各部の改修を経て、工作の工程が終了した三式光武。
ここまで来ればあとは塗装を残すのみ…!

工作編のまとめとして、ここでは再度の仮組みを通して各部の振り返りをしていきたいと思います。

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素組みとの比較

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キットのまま(素組み)と、工作完了した状態の比較。
小スケールながらもディテールは良く入っているキットですが、リベットやスジ彫りといったモールドの甘い部分を修正したことで各部が引き締まり、メリハリがついた印象ですね。

また、足首に可動軸を追加したことで接地性が向上し、立ちポーズにも安心感が感じられるようになりました。

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右手首の指の角度を変更したことで、抜刀し太刀を構えるポーズもより自然に取れるように。
キービジュアルのような見得を切るポーズは取れませんが、これはこれで様になっているように思えます。

細かな部分

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細かな部分も簡単におさらいをしていきます。

まず、今回工作の初手として念入りに処理したのはパーティングライン。
特に胴体中央、光武の『顔』に相当するパーツには真正面に目立つパーティングラインが入っているので、優先的に処理をしておきたいところ。

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キットのスジ彫りは設定と比べるとかなり省略されているようですが、それでもスケール感を考えると不足を感じないレベルで良く入っています。
曲面主体のデザインである光武の辛いところで、部分的に彫りが浅くなっていたり、またモールド断面が斜めになっていたり…と、インジェクションキットの仕様と言える限界はどうしてもあるので、修正して彫り直しておくだけでも印象が良くなりますね。
また、塗り分けの境目になることが分かっている逆エッジは、あらかじめニードルなどで軽く彫りを入れておくと塗装の段階で少し楽ができますよ。

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凹ディテールはスジ彫りに比べるとピンポイントで配置されていますが、やはり浅く歪んでいるものが多いので、彫り直しておくと良いですね。
彫り直しに必要となる0.3mm等の極小ノミは、持っていなければこの機会に揃えてしまっても良いかと思います。
腰アーマーのダクトは管理人が新規導入したウワサの超性能工具、BMCタガネで彫り込んでみました。
こういう部分をシャープに加工しておくと全体もより引き締まる感じがしますね。



凸ディテールも歪んでいる部分が多いですが、特に目立つのはやはり顔パーツ。
前頭部の突起は作り直しておくと効果が高いと思います。



あとは、全身のリベットをどうするかですが…
今回はヒートペンを使って無限にリベットを作ることができたので(ほぼ)全身のリベット貼り替えが実現しましたが、市販パーツのR・リベット等を使うとなると…数が多すぎて現実的ではないですよね。
管理人としては、サクラ好きのモデラーには是非ともヒートペン(と、オプションビット)の入手を勧めておきます。
過去のサクラ大戦系の雑誌作例を見ていると、リベットの貼り替えはプロでも省略する場合があるようなので、ヒートペンが入手できない場合は無理に手を入れる箇所でもないのかもしれません。

胴体正面パーツの、キットのまま(ゲートカットのみ)とディティールアップ改修後の比較。
やはりキットそのままではパーツの正面中央で段差になっているパーティングラインが一番目立つポイントでしょうか。
その他のディテールアップも一つ一つは地味ですが、細かな作業の積み重ねが確実に完成度を高めてくれます。

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手首と持ち手。
指の角度を変更する改造はポーズ付けに有効ですが、どうしても強度が犠牲になるので良く考えてから行った方が良いかもしれません。
装備武器の太刀はパーツとしても軽いので、例えばガンプラにおける長物の銃火器のように、武器の重さで手首に負担をかけることはありませんが、万が一破損した場合はかなり細かな部分なので修正は面倒です。

そして、手首に付いているナックルガードのようなパーツ。
管理人としては、ここの改造はお勧めしません…!(汗)
細かすぎるのでパーツ自作の難度が高く、その上がんばって改造したとしてもそれほど目立つ部分でもないような気がしますね…
今回は安易に手を出して大変な目に合いました。(笑)
左右ナックルガードの作り直しと、それに付随する手首の修正だけで、実に10時間以上の時間を浪費しています。
(時間がかかるのは管理人の経験や技量の問題もありますが)
挑戦するには覚悟を持って臨む必要がありますね…!

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このキットでは関節部の修正や改修はもはや必然との覚悟をしておいた方が良いかもしれません。
よほど気を付けていない限り(気を付けていたとしても)、制作の中でどこかしらの関節は破損することになるでしょう。

管理人は肩アーマーと膝関節だけの被害で済みましたが、肩関節も膝と同様の構造のため危険です。
また肘関節のボールジョイントも受け側に微細なクラックが入っていたので、実は内心ヒヤヒヤしていました。
アルミ線接続による補修は比較的簡単にできるものですが、できることなら破損は避けたいものですよね。

足首にはアルミ線による横ロール可動を仕込みましたが、パーツが無垢だったので切断や加工は少し大変でしたね。
(このキット、腕や足などもプラの無垢で成型されている部分が多いようです。)
また、破損の補修による副次的な効果ですが、肩アーマーもアルミ線接続に改造した影響で、腕を可動させると『下がり肩』になる欠点が解消されてています。

おしまい

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工作が終わり、『やっとここまで来た』という感じです。(笑)
このキットを作るにあたって、改造や改修は最低限にするつもりだったのですが、気が付けば全身に渡ってかなり手を入れてしまいましたね。
基本的なディテールアップばかりではあるのですが…それでも作業量としてはかなりのものになっています。

改めて水性ホビーカラーのビンと比較してみると、この小ささですから。
小スケールキット故の難しさというものも実感しましたね。
管理人の技量的に、現状これが精一杯という感じです。

キットとしては素組みレビューなどでも触れた通り、体型やディテール等を含め、素性の良いモノであることは確か。
大きな形状変更は一切せず、ディテールアップと一部関節の改修だけでここまでカッコ良い光武の立体物が手に入るのは、これはキットそのものの造形の良さがあってのものですからね。

あとは、塗装で色が入ればまた良い雰囲気になりそうです。
エアブラシ環境のない管理人は常に筆塗りですが、この小ささでは例え基本色を吹き付けで済ませたとしても、かなりの部分を筆で塗り分けていかなければならないでしょう。
筆塗りモデラーは細部まで丁寧に塗り分けて仕上げていきたいところですね…!

と、言うことで…次回からは塗装編です。

(引き続き、塗装編は作業が完了し次第の更新となります)m(__)m

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編8.「可動改造工作~関節軸をアルミ線接続に変更する」

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前回までの内容で各部のディテールアップも進んできた1/35三式光武…
一方、ディテール以外に見ておきたいのは全身の各関節部です。
関節はこのキット最大の弱点とも言える部分で、もはや可動範囲がどうこうというレベルではなく…差し込みのクリアランス調整がアバウトなため無加工では普通に組み立てることすら不可能。笑

よしんばピンバイスで軸穴の径を調整して組み上げたとしても、関節可動の際にかかる負荷にパーツが耐え切れず、軸がねじ切れてしまう…という事故が多発します。
管理人も仮組みの段階で肩アーマーの接続軸がねじ切れたのを皮切りに、後の工作を進める中では膝関節も破損してしまうなど、想定外の事故が連発する事態となりました。

となれば改造するしかないのですが、小スケールキットでポリキャップを仕込むスペースもないので、改造はアルミ線による接続を考えるのがお手軽かつ現実的。
当然、キットの関節よりも可動範囲は制限されることになりますが…元々グリグリと動くようなキットではないので、改造によってパーツの固定に安心感が出る事の方が大きいです。

工作の難度もそれほど高くないので、このキットに挑戦する場合は優先度の高い工作と言ってしまっても良いのではないでしょうか…!

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肩アーマーの接続をアルミ線接続に改造する

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画像はカカシ…ではありません。笑
制作中の三式光武を仮組みしたもの。

肩アーマーはボールジョイントによる接続なのですが、左肩は関節の軸がねじ切れてしまったためにそのままでは接続ができなくなっています。
今回まずはここを何とかしましょう。

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同じパーツを別角度から。
キットでは肩パーツから生えていたボールジョイントの軸を肩アーマー裏側にあるボール受けにはめ込む方式。
ガンプラ等ではボール受けにポリパーツが使われていたりと関節強度や可動に配慮がなされていることが多いですが、このキットでは全てプラパーツによるはめ込み方式…しかもはめ込みのクリアランスがキツ目と来ています。
当然、軸側には大きな負荷がかかり、仮組みを繰り返しているだけでもポキリと行ってしまう危険性が大…!という訳なのです。

ボールジョイントを仕込み直すのはサイズ的にかなり難しいのでアルミ線による接続を考えていく訳なのですが、接続先は元々のキット構造のように肩ではなく、胴体側にする方が良さそうです。
キットでは肩の基部自体にも可動が仕込まれているため、肩の内部にアルミ線を通すと、この部分の可動を殺してしまうことにもなってしまいます。

さらに、キットの構造では腕の可動につられて肩アーマーが下がり肩方向に傾いてしまうという欠点もあり…可動の制約が大きく見た目もよくありません。
胴体側は中空でスペースも広く取れるので、ここではこちらを裏打ちしてアルミ線を仕込みましょう…!

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胴体側の穴開けです。
肩関節の接続軸が入る穴の少し上にアルミ線の受け穴を開けていきます。
ニードルで位置決めのキズを付けてから、細径のドリルで切り込み、徐々に目的のサイズまで穴を拡張していくようにするとブレが少ないですね。
実際のアルミ線と合わせながら具合を見てみたところ、1.0mm径のアルミ線を通すには1.1mmの穴を開ける必要があるようです。
このような改造工作をするなら、ドリル刃は是非とも0.1mm刻みで各サイズを用意しておきたいところ…!
管理人はピンバイスのコレットを交換しなくてもよい(根元のサイズが同じ)ゴッドハンドのドリル刃を使っています。

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肩アーマー側は、ボールジョイントの受け穴部分に真横から穴を開けます。
こちらもドリル刃は1.1mmまでを使用。
受け穴の中には折れたボールジョイント(のボール部分)が埋まっていますが、特に完成後に見える部分でもないのでそのままでも問題なしです。

もし気になる場合にはパテなどで埋めておいても良いかもしれないですね。
ヒートペンがあるなら『ウェルダー』のビットで廃ランナーを溶接して埋めるのがベストでしょう。
やはり裏打ちも同素材で行った方が仕上げは格段にスムーズです。

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新しく開けた軸穴の様子を見るために、取り敢えず1.0mm径の真鍮線を通してみます。
穴への差し込み自体は問題なしですが、肩アーマーの固定位置はもう少し上にずらす必要があるようですね。
真鍮線では曲げ加工が大変なので、今回のように取付位置を現物合わせで微調整したい場合の軸打ちには適しませんが、アルミ線なら差し込んでから手の力でグイッと曲げる加工ができるので位置の微調整も楽々です。

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今回、1.0mm径のアルミ線にはWAVEの『AL-LINE』を使いました。
もしかしたらこの手の工作材料はホームセンター等でも入手ができるのかもしれませんが…

WAVEのものは模型趣味関連の流通で手に入るので、モデラーにも馴染みが深いものですね。
長さも150mm(15cm)に切り揃えられていて扱いやすいものです。

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ということで、1.0mm径のアルミ線を軸穴に通して肩アーマーを接続し、アルミの弾力に任せて固定位置を上側にずらしたものがこちら。
キットのまま(右肩・画像では向かって左)と比べても違和感のない位置に固定ができていますね。

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中のアルミ線はこのような感じ。
微妙なクランク程度の曲がり方ですが、これでも十分、位置調整の役に立っています。

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そして念のために…という感じですが、本体側には裏打ちをして固定の強度を稼いでおきます。
画像は胴体側のパーツを裏から見たところ。
三つの穴が開いているのが分かると思いますが、一番右側のものが今回アルミ線を通すために開けた1.1mm径の穴ですね。
このままではパーツの肉厚分でしかアルミ線を固定することができないので、組み立てに支障がない程度までの裏打ちをしておこうと思います。

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裏打ちはヒートペンによる溶接で。
今回は白い廃ランナー(別のキットのもの)を『ウェルダー1.5』のビットで少しずつ溶かしながら肉盛りを繰り返し、裏打ちとしていきます。
(※温度設定は210℃で行いました。もっと高めでも良いかも。)

キットとは色が異なるので、画像でも盛った箇所が分かりやすいですね。
ヒートペンによる加工ではキットパーツと同じスチロール樹脂による充填となるので、パテを使った場合に比べて加工や仕上げは格段に楽です。
コテ先のビットが余計な箇所に触れるとパーツが熱で溶けて変形してしまうので、そこは注意…!

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上手く馴染ませながら溶接していけば盛った部分の接着強度もそれだけで十分なものにはなるのですが、念のため流し込み接着剤による補強も行いました。
クレオスの速乾・色付きタイプ(Mr.セメントSPB)なので塗った部分が黒くなっています。

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先に開けておいた穴をガイドにして裏打ち部分にもドリルで穴を通したら完了です。
裏打ちをしたことで、胴体側の接着シロを稼ぐことができ、十分な強度を持ってアルミ線を保持できるようになりました。
破損した肩アーマー接続軸の修正としては、ここまでしておけば十分でしょう。

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今度は右側の肩と肩アーマーの接続部。
幸いなことに、こちらは軸がまだ破損していないのでキットの構造をそのまま活かすこともできます…

…なのですが、構造上やはり破損が不安なので…今回は予防的な工作として、こちらもアルミ線接続に改造してしまうことにします。
作業手順としては先ほどと全く同じです。

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肝心の破損しやすいボールジョイントはわざと破壊(!)します。
とはいえ、ねじ切るのは乱暴なので軸をニッパーで切断しました。
裏打ち代わりに、切り取ったボールの先端は受けの穴に差し込んでしまいましょう。
肩側の切り口はヤスリとペーパーで整形しておけば良いですね。

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1.1mm径のドリルで穴を開け、穴の周りは面取りしてそれらしく見えるように加工しています。
(画像がありませんでしたが、先に加工した左側も同様に穴に面取り加工をしています。)

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胴体側も肩軸の上にあるスペースを狙って1.1mmの穴開け。
こちらも穴の周りは少し面取りをしています。

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ヒートペンの溶接による裏打ちも同様に。
この画像では裏打ちが終わった後に表側からドリルでの穴開けまでが終わった状態ですね。
(ここでも黒く見えるのは色付きの流し込み接着剤です。
ヒートペンの温度ではプラ材は軟化するだけなので、決して焦げている訳ではありません。
念のため…)

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アルミ線を通し、現物合わせの手曲げで肩アーマーの位置を調節できたら完了です。
このような加工では最初から両側を加工するつもりでも、まず片方を完全に仕上げてしまい、その後で先に仕上がった部分を位置やサイズの目安にしながらもう片方の加工を進めていくようにすると良いかもしれません。
左右とも、違和感のないようによく微調整しておきましょう。

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膝関節もアルミ線接続に改造

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今度は膝の関節。
可動する関節パーツの軸を大腿・下腿それぞれの受け穴に差し込む方式ですが、案の定ここも差し込みがキツく、また関節の可動部も強度が足りていないため、非常に破損しやすい箇所です。

管理人も工作の途中で仮組みを繰り返すうちに、画像のように軸がねじ切れてしまいました。
このままでは組み立てもできないので、ここも何とか加工してあげる必要がありますね。

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実際の作業としては、先ずはねじ切れた破損部位の整形から。
加工の邪魔になる余計な部分は取り除いてしまいます。
こちらは関節側のパーツですが、球体関節状のデザインなので表面はヤスリとペーパーでなめらかに処理しました。

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下腿(膝から下の部分)側パーツの受け穴には折れた軸が埋まってしまって取り出せません。
こちらはまず、関節の球体部分が収まる程度まで折れた軸を削っていきます。
こんな作業には刃先の丈夫なノミが使いやすいですね。
今回はハセガワトライツールのモデリングチゼルより3mm幅の平ノミを使用。

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それぞれのパーツの整形ができたら、関節の球体部分を上に乗せて様子を見てみました。
これだけ見ると、関節の軸が折れているようには見えないですね。
可動や塗装の便を無視するなら、いっそこのまま接着してしまっても外見上の問題はなさそうです。

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また、関節部の球体をノギスで測定したところ、直径は5.5mmといったところでした。
近いサイズの市販パーツがあれば関節ごと交換してしまうのも一つの選択肢になりそうです。

少し調べてみたところ、イエローサブマリンの関節技シリーズから出ている球体ジョイントの5mmか6mm径あたりのものが使えそうな雰囲気ですね。

(参考リンク)
イエローサブマリンONLINEFLAGSHOP / PPC-Tn34 関節技 球体ジョイントリンク ダークグレイ〔ホビーベース〕

この手の改造パーツを仕込めば修正加工の問題は簡単に解決するのかもしれませんが、2,000円程度のキットのために770円(定価)の改造パーツを用意するのも…
ということで、何かと改造パーツの起用には腰が重い管理人。

この膝関節だけ可動を改善したとしても、全体で取れるポージングはこのキットではたかが知れていますしね。

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ということで、ここもキットパーツを極力活かしつつアルミ線による接続に改造します。
穴を開けて線で繋ぎ、あとは現物合わせで角度の微調整をすれば良いだけなので加工の難度としても簡単なものですね。

上の画像は下腿側の元・軸受け部分に1.1mm径の穴を開けた状態。
軸受け穴に埋まった折れたピンの中心を狙ってピンバイスを当てます。
もちろん、ここでもドリルで彫る前にはニードルでアタリを付けていますよ。

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更に、ピンバイスで彫った穴を中心に4.0mm径の球形ビットで彫り込みを入れました。
アルミ線の角度を微調整する際に『逃げ』となる空間を作っておいた方が、それぞれのパーツをスムーズに動かせると思います。

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彫り込みを大きくし過ぎると不自然な隙間が空いてしまうので、そこは微妙な塩梅が必要ですね。
試しに関節の球体側と合わせてみると少し隙間が空いているようにも見えますが…この程度なら許容範囲内でしょう。

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球体関節側も少し加工します。
もうキットの可動機構は使わないので、強度を確保するために球体部分の分割面はプラセメントで接着。
合わせ目も消しておきます。
今回は黒い流し込み接着剤を使ったので、処理後も分割面が見えていますね。

さらに、底面は完成後に見えなくなる部分で平面に削り、アルミ線で角度調整をするための『逃げ』の空間を(少しでも)作っておきましょう。
上の画像で四角く印を付けた部分を目安に金ヤスリで削り込んでいきます。

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ちょっと写真が分かりにくいですが、球体の底面を平らに面取りしたも。
コンマ数mm単位の空間ですが、少しでもアルミ線の曲げ部分が収まるためのクリアランスが確保できれば…というつもりで加工しています。
場合によっては必要ないかもしれませんが、あっても害になるものではないので…今回はアルミ線を差し込む前の段階で加工をしてしまいました。

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そしてこちらもアルミ線の受け穴を彫り込み。
1.1mmのドリルで穴を開けた後、2.0mmの球形ビットで面取りをしています。
完成後には見えなくなる部分なので、ここでの面取りもアルミ線のためのクリアランス確保の一環といったところですね。

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1.0mm径のアルミ線を通して関節を接続。
下腿の下側は穴を貫通させてしまいましたが、アルミ線の長さは丁度良い長さに切り揃えてはみ出ないようにしておきましょう。
貫通させた穴は足首に繋がるボールジョイントの受けの中央から出ているので、アルミ線のはみ出しがあると足首パーツの差し込みと干渉してしまいます!

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アルミ線の長さを切り揃えたら、パーツを取り付けた状態でアルミの弾力を活かして角度を微調整すれば完了です。
可動は無くなりましたが、外見的にはキットの関節と見た目に変化はないですね。

もう片側の膝関節はまだ破損していなかったのですが、こちらも肩アーマーと同様、予防的にアルミ線接続への改造を行いました。
パーツをわざと破壊して改造するのは少し気持ちが躊躇しますが(笑)、後々のことを考えると強度的な不安がない改造後の方が断然良いです…!

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足首にアルミ線を使った可動軸を追加する

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続いては足首も見ていきます。
ここは肩アーマーや膝関節と違って破損しやすい箇所ではないのですが、アルミ線で可動軸を追加して接地性の向上を図りたいと思います。

画像のように、キットでは1パーツで構成された足首をボールジョイントではめ込む方式。
このボールジョイントの可動範囲はほとんどゼロ(!)なので、足首に角度が付けられず、キットのままでは自然な立ちポーズが取りづらいのです。

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こちらは以前の『素組みレビュー』で掲載した画像。
何となく身体が斜めになっていますが、これは撮影時のポーズ付けを適当にやっているのではなく…実はこれがこのキットの限界なのです。

一般的に、キャラクター系ロボットのプラモデルで自然な『立ち』を表現するには、両足はやや開き気味にした上で足首の可動によってしっかりと大地を踏みしめることが必要。
…なのですが、このキットでは可動範囲が明らかに足りておらず、ポーズを調整してみても足底が浮いてしまったり、全体が斜めになってしまったりと、どうしても不自然な立ち姿になってしまいます。

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どうにかこれを改善できないか…と考えてみたところ、足首パーツをつま先とカカトに分割し、それぞれに横ロール可動を仕込むのが良さそうです。

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幸い足首パーツの形状自体は比較的単純なため、切断から再接続にかけての工作もそれほど難しくはなさそうですね。
アルミ線工作の一環として、肩アーマーや膝関節と同様に加工をしていきましょう。

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ここでの工作は元々一体だったパーツに関節を追加するため、まずはパーツの切断からです。
なるべく切りシロが少なくなるようにエッチングノコで切り込みを入れていきますが、どうしてもそれなりに欠損は出てしまいます。

ここで使っているエッチングノコはハセガワトライツールのものですね。

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そして切断面を見てみると、何とこのパーツはほぼムク(中身が詰まっている)となっていました。
このキットでは足首パーツの他にも、腕や足などもムクになっているようで…ガンプラのように中空のパーツを組み合わせていくプラモデルとはかなり勝手が異なるようですね。

アルミ線を仕込む場合は裏打ちの手間が少なく済むので都合が良いとも言えますが、今回のような切断には当然手間がかかり、また切断面もブレやすいです。
管理人が切り離したこのパーツも切断面は少し斜めになってしまっているため、ここは修正が必要になってきます。

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カカト側の切断面は更に悲惨。笑
管理人の技量の問題もありますが、ムクのパーツをキレイに切り離すのは中々難しいものです。
ある程度の欠損は覚悟のうえで作業を進め、後から修正をしていく方が現実的だと思います。

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ガタガタの切断面は金ヤスリで整形していくことになりますが、欠損した分は何らかの形で補填をしないと全体の形が変わってしまいます。
とりあえずボールジョイントが付いている中央部側の切断面にはプラ板を貼って整形することにしました。
外形は現物合わせで削り込むので、この時点では適当に切り出したプラ板を貼っています。
貼り合わせタイプの溶剤系プラセメントでガッチリと接着し、丸3日以上の乾燥時間を置いた後に削り出しです。
このあたりは通常の合わせ目消しと同じ感覚ですね。

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つま先とカカトの切断面は、ヒートペンでプラ材を溶接・充填して整形します。
充填に使うプラ材は廃ランナーでも良いのですが、今回は作業効率の面から0.5mm厚のプラ板(の切れ端)を使いました。

0.5mm厚プラ板を使った溶接は、素材に熱が伝わりやすく、またコテ先のビットで溶けたプラを掬いやすいので、ランナーよりも格段に作業がしやすいですね。
無料に拘るなら廃ランナーですが、使う量としても微々たるものなので、プラ板を使って行ってもそれほどコストはかからないかと。

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ヒートペンによる溶接ではプラモデルのパーツと同じスチロール樹脂同士による加工となるので、その後の削りや仕上げが(パテや瞬間接着剤などと比べて)格段に楽に行えるのがメリットです。
溶剤を使っている訳ではないので、待ち時間ゼロで削り作業に進めるのも良い点ですね。

今回は切断時に欠損した部位を埋めたのと、ついでに切断面の中央に開いていた小穴を埋めて面を面一にしたら完了です。

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整形作業が済んだ各パーツ。
削り加工は粗めの金ヤスリから始めて、最終的には400番のペーパーで表面処理をして仕上げています。
ここまでで下準備は完了。
あとは必要な場所に穴を開けてアルミ線を通せば良いですね。

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ちなみに、ここでは主力の金ヤスリとしてシモムラアレックのシャインブレードを使っています。
削り味の良さはもちろんなのですが、ヤスリ目に削りカスが詰まることが全くない(!)というのは想像以上に快適なものですね。
通常タイプでもゴリゴリと削っていくことができますが、今回のようにパーツの形を大きく変えるほど削り込むには、より粗目の面が付いた『ウルトマ』があると使いやすいです。
『ウルトマ』の複目(超粗目#240相当)の面は、体感的には(粗削り用ヤスリとして使いやすい)タミヤの『ハードコートヤスリPRO』以上の強力な切削力。
今回のように盛り付けた部位を大きく削り出すような場合には特に大活躍できます…!

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切り離したパーツそれぞれの整形作業が出来たら、穴を開けてアルミ線で繋いでいきます。
穴の位置がずれないよう、パーツ同士をすり合わせた状態で印を付けて目安にすると良いですね。
今回はこの画像のようにシャープペンシルで十字に印を書き込んでおきました。
ガレージキットの軸打ちのような要領、という感じでしょうか?
(管理人はレジンキットなどのガレキを組んだことはありませんが…)

またここでも膝関節の例の時と同様、穴の入り口は球形ビットでさらって面取りをしています。
この少しの空間がアルミ線を曲げる際の『逃げの隙間』となって、パーツ同士の接続がスムーズにいくように…というイメージです。

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パーツはムクなので、ピンバイスのドリルが途中で斜めに進まないよう慎重に作業をする必要があります。
穴を貫通させて前後にパーツを繋ぐ必要がある中央部分は特に注意したいところです。

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1.0mm径のアルミ線を20mmの長さに切り出し、穴を貫通させた中央部に通します。
この前後に飛び出したアルミ線につま先とカカトをそれぞれ差し込んで固定する訳ですね。

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各パーツを差し込んで連結したものがこちら。
直線的に繋いでいるだけなのでまだ違和感がありますが、とりあえず接続に使う穴の位置やアルミ線の長さに問題はなさそうです。
あとはアルミの弾力を活かしてグイッと手曲げで形を整えます。

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つま先とカカトに角度が付き、やっと元の足首パーツの形に戻りましたね。
厳密には切断・整形した断面の平面出しが(管理人の技量の問題で)完璧ではなく、微妙に隙間があったりもするのですが…
パーツの大きさや、完成後にはほぼ見えない個所ということを考えればこの程度でもそこまで違和感はないでしょう。

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上側から見たところです。
取付位置のずれも問題ない範囲ですし、今回はこれで完成とします。

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つま先とカカトと外してみると、中のアルミ線はこんな感じ。
指の力だけで簡単に曲げ加工をしていけるのがアルミ線工作の良いところですね。

なお、ここでのアルミ線の穴への差し込みはかなり緩いので、最終的には適当な角度で接着してしまうか、または『ピットマルチ』などのゴム質の糊で皮膜を作って差し込みをキツくするなどの工夫が必要かもしれません。
そのあたりは塗装までが終わった最終組み立ての段階で…(必要があれば)おいおい対応しましょう。

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ともあれパーツの加工としてはこれで完了なので、あとは下腿側と接続して出来上がりの様子を確認しておこうかと思います。

…なのですが、今回の加工で足首側を細かく分割したことにより、ボールジョイントの付け外しがかなりやりにくくなっている点には注意が必要ですね…
元々この部分のボールジョイントはキツ目での成型となっているので、スムーズに脱着ができるよう、下腿側のボールの受けは少し削ってハメ込みを緩めに調節しておいた方が良いでしょうね。

加工としては、5mmと4mmの球形ビットで軽く穴の中をさらうだけという簡単なものです。
もし緩くなってしまったらまた後で調節すれば良いことなので、あまり神経質にならなくても良い部分ではありますが、なるべく不要な作業が増えないように様子を見ながら慎重に削りましょう。

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そして改めて下腿と足首を合体させてみたものがこちら。
足首中央のボールジョイントに繋がる部分は、この状態では全く見えなくなっていますね。
全体の形状に違和感はなく、上手くそれぞれのパーツを繋げることができたと思います。

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正面から見たところ。
下腿のパーツがかなり斜めでも、足首側のつま先とカカトは仕込んだアルミ線を軸に回転できる(横ロール可動)ため、接地面と平行になり、しっかりと足を踏ん張れるようになります。
これは改造の効果あり!でしたね。

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ここまでの可動ができれば、キットそのままのように足を開くと足底が地面から浮いてしまう…というよう事態はまず起こらないでしょう。
地味な部分ですが、こんな細かな部分が後々、完成時に効いて来るのですよね。
サイズが細かなせいで加工には少々苦労しましたが、ここも余裕があればぜひやっておきたい工作というところでしょうか。

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おしまい

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破損した関節の補修にも色々方法はあるかと思いますが、パーツをアルミ線で繋ぐ方法は改造の難易度的にも挑戦がしやすいものではないでしょうか。
可動を諦めるという意味では、破損部位をそのまま接着するだけなのと同じではありますが、アルミ線なら後から分解もできるので、後々の塗装工程でも少し楽ができるかもしれませんね。

足首の横ロール可動については、ムクのパーツを切断して整形するのが大変なので気軽に挑戦してくださいとは中々言えないのですが、立ちポーズがしっかりと決まるようになるので地味に効果は大きい…といったところです。

さて…次はいよいよ工作編のまとめです…!
塗装前に改めて各パーツを仮組みし直し、素組みとの比較をしておこうかと思います。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編7.「ディテールアップ工作~ヒートペンを活用したリベット再生法」

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光武をはじめとした多くのサクラ大戦系メカで取り入れられているリベットモールド。
プラモデルでは射出形成の抜きの都合上、曲面上に成形された凸モールドは歪んでしまうことが多く、光武ではその数も多いため目立つポイントでもあります。
手間はかかりますが、ここを修正してあげることで見栄えはグッと良くなりますね…!

リベットの修正方法としてはいくつか方法があるかと思いますが、今回は最近使い始めた新工具・ヒートペンを使ってみました。
扱いに多少の慣れは必要ですが…サイズ選択の自由度も高く、材料費も安価(ランナーを再利用すればタダ!)とメリットも多いものです。
ユーザーの数が少なくマイナー工具という印象もあるヒートペンですが(笑)ぜひもっと普及してもらいものです…!
(※ただし、今回使用した十和田技研HP-1000は当記事作成時点で生産休止中…流通在庫のみとなっています。)

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十和田技研 ヒートペン HP-1000

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前回の記事でも少し使用していましたが、こちらが今回の主役工具・十和田技研のヒートペンHP-1000。
温度調節ができる半田ごてのようなもので、プラスチックが燃えずに軟化する温度(HP-1000では160℃~270℃の範囲で調節可能)に熱したコテ先でプラ材をパテのように扱ったり、専用のビットを用いて彫刻やモールドのスタンプ付けを行うなど、他の工具では代用できない特殊な加工を可能とするものです。
今回はリベットモールドを造形するための専用ビットを入手したので、そちらを使ってスタンプ付けをしていきます。

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こちらが交換用オプションの『丸頭リベットビット』(の先端)。
円柱の先端に半球状の窪みが彫ってあるような形状となっています。
この窪みに熱で柔らかくなったプラ材を充填し、対象に転写することでリベットモールドを造形することができる…という訳です。

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この丸頭リベットビットをはじめとしたオプションビット各種は先端径も細かなサイズ違いで充実しています。
(丸頭~は最小0.3mmから最大サイズでは3.6mmまで!)
今回管理人は0.6mmから1.2mmまでを入手しました。
実際のキットパーツと見比べてみたところ、1/35三式光武には0.7mmと0.85mmが丁度良い感じですね。
胴体正面(顔)と肩アーマー、それに下腿に0.85mm、その他のパーツは少し小さめの0.7mmでリベットを造形していきます。

オプションビットの入手は『ブレインファクトリー』の通信販売が利用できます。
注文方法はホームページに記載されているメールアドレスに直接メールで連絡(!)というものですが、管理人の注文時には中の人が迅速丁寧に対応して下さり、とてもスムーズに商品を手に入れることができました。(ありがとうございます。)
興味のある方は躊躇せず(笑)ぜひ下記リンク先のホームページから連絡を取ってみてください。
(前述のように、現在は肝心のヒートペン本体が生産休止中という問題はありますが…)

(参考リンク)
ブレイン・ファクトリー ヒートペン関連限定品商品情報

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そしてこちらはキットの肩アーマー。
パーツ表面にリベットが造形されていますが、曲面上にある凸モールドなのでどうしても形が歪んでしまいます。
(この写真では見やすいようにリベット部分に水性ペンで色を付けています)

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以前の素組みレビューで掲載した画像より。
リベットの一部は縦長の、イチゴの種のような形になってしまっています。
今回はこれを修正する訳です。

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まずは下準備として、キットのリベットモールドは全て削り落としてしまいます。
平ノミで大まかに削った後に金ヤスリで成形、さらにペーパーがけをしておけば良いですね。
表面処理の工程と同様ですが、管理人は400番までしかペーパーはかけません。

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0.85mmのリベットを打つ予定のパーツはこれだけ。
左右対称のパーツは念のため片側ずつ作業を行い、キット既存のリベット位置を参考にして修正を行います。

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リベットを打つ位置の目安として、鉛筆で線を書き込みました。

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そしていざヒートペンでリベットを造形したものがこちら…!
事前に廃ランナーで十分に練習をしてから臨んだのですが…慣れないとけっこう難しいですね。
温度が高めだとビットを離すときに糸を引いてしまう失敗が起こりやすいです。
設定は最低の160℃か、場合によってはそれでも高めなくらいかもしれません。
(作業時の温度を160℃から更に下げるにはコテ先に息を吹きかけて冷ますという方法があるようです。)

コテ先をパーツから離すタイミングも慣れでコツを掴むしかなく、離すのが遅いと造形したリベットの周りに円周状の窪みができてしまいます。
パーツにコテ先を押し付けていると充填したプラ材がパーツ側に移行するにつれてコテ先の周りにジワッと染み出してくるのが目視できるのですが、その一歩手前でコテを離すくらいが丁度良いかな…という感じです。
時間にすると一秒未満なので、上手くできるようになるには感覚に慣れていくしかないですね…

また、高温に熱されたコテ先を目的の場所に一発で当てなければいけない…というのも作業を難しくしている原因の一つ。
更にこの肩アーマーのように単純な形状のパーツならまだ良いのですが、入り組んだ箇所での作業となる場合、高温のコテ先が余計な箇所に触れるとその場所を溶かしてしまう…という危険もあります。

実際、上の画像の肩アーマーでも位置決めが上手くいかず、一度成型したリベットをつぶして作り直している箇所があります。
リベットをつぶす作業自体は、溶接用のビット『ウェルダー』でなすってからペーパーがけをするくらいで完了するので非常に簡単なのですが…結局時間はかかってしまうため中々スッキリとはしません。

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そこで、別のパーツでは『プラ板上に造形したリベットを削いで使う』という方法を試してみました。
これならいくら失敗しても数多く作ったリベットの中から上手くいったものを選んで使えば良いですし、後からの接着となるので位置決めも楽にできそうです。
上の画像は0.5mmプラ板の上に0.85mm径のリベットを50個ほど作ってみたもの。
これを一つ一つ削いでキットパーツに移植する訳です。

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平ノミは、ここではゴッドハンドの『ビットブレード 1.5mm』を使いました。
管理人は同サイズのスピンブレードも持っているのですが、ノミとしての使用ならビットブレードの方が刃先の剛性が高くて格段に扱いやすいです。

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削いだリベットは細か過ぎてピンセットでは掴むことができないので、アートナイフの刃先で刺して保持します。

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接着は溶剤系の流し込みプラセメントで。
リベット側もプラモデルのパーツと同素材なので接着でも楽ができます。
先に位置決めをしてからハケを軽く当てて接着剤を流し込んみ、リベットを固定するイメージですね。
今回使っているクレオスのMr.セメントSPBは接着剤が流れた場所が黒くなるのでパーツの状態が把握しやすく扱いやすい一品です。

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そしてリベットの接着ができた胴体正面(顔)パーツ。
カメラアイのレール周囲などは奥まった形状となっている上に接着シロが少ないので、ヒートペンのコテ先を直接当てる方法では作業の難易度が非常に高くなってしまいます。
あらかじめ造形しておいたリベットを移植する方法では、熱したコテ先でパーツを破損する心配もなく位置決めも楽に行うことができますね。

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足(下腿)パーツに新規のスジ彫りを追加

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あとは同様に既存のリベットモールドを置き換えていけば良いのですが…
どうやら足(下腿)のパーツだけは追加でもう一加工をする必要がありそうです。

上の画像はキットのリベットモールドにペンで印をつけたものですが、何だかリベットの間隔が変ですね…!?

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困った時の設定画…ということでキットのインストに載っている塗装参考図を見てみましょう。
これは前面からの図ですが、リベットは等間隔で配置されています。
ここはとりあえず問題なし。

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そして後ろ側。
キットでは省略されているスジ彫りによって装甲の分割ラインが表現されており、その分割された装甲の縁を止めるようなイメージでリベットが配置されているようですね。
キットパーツにはこのスジ彫りがないために近い間隔で打ってあるリベットの機能が想像しづらく、違和感があったという訳です。

今回の制作では基本的にキットで省略されているスジ彫りは追加しない方針でしたが、例外的にここだけは彫り直しておく必要がありそうですね。

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ということで、新規スジ彫りの追加手順について見ていきます。
と言っても、ごく短い直線を彫るだけなので実に簡単なものですけどね。

まずは鉛筆でパーツに下書き。
この画像では同時にリベットを打つ位置の目安も書き込んでしまっているので、ぱっと見、状態が分かりにくいかもしれないですが…
画像正面にある一本の線がスジ彫り位置のガイドとなるものです。

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新規のスジ彫りを入れる方法にも色々あると思いますが、今回はフリーハンドのアートナイフでケガキを入れたものをアタリにし、スジを整えていきます。

先に書き込んだ鉛筆の下書きを目安にナイフの刃先を押し当て、パーツに目印のキズを付けていきますよ。
この時に付けたキズの位置が最後まで影響するので慎重に…!
刃先で『切る』のではなく、刃を『押し付けて』キズを付けるイメージですね。

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別角度から。
刃を寝かせて押し付けるように作業します。
刃先を立てて『切る』ようにすると線が安定しませんよ…!
ここでのキズはあくまでもアタリなので、ごく浅いもので十分です。
しっかりと切り込むことよりも線がぶれないことを重視しましょう。

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ナイフでキズを付けることができたら、ニードルに持ち替えてアタリのキズを更にはっきりとさせていきます。
ここから先の作業はキット既存のスジ彫りを彫り直す作業と殆ど同じですね。
極力、力を入れず…『彫る』のではなく『撫でる』ような力加減で何十回もキズをなぞります。
全く力を入れなくても、大体30回目くらいからアタリもかなりハッキリとしてくる感覚を感じられるかと…

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次はエッチングノコ。
今回は直線のスジ彫りなので、きれいな直線を出しやすいエッチングノコで更にアタリをなぞります。

ここで使っているのは雲母堂本舗のライナーソー0.08mm B型。
デザインナイフ規格のホルダーに取り付けて使う極薄・小型のスジ彫り向けエッチングノコです。
扱いやすい工具なのですが、如何せんマイナー過ぎるのと(笑)、現在は既に販売終了しているのか、手に入りづらい一品になってしまったようですね。
管理人も今使っているものがヘタったら代わりの工具や工作方法を考えていかないと…と思います。

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そしてシモムラアレックのホーリー 0.1mmです。
ここでの彫り込みができれば作業完了となりますが、最後まで気を抜かずに『撫でる』力加減でアタリをなぞっていきます。
数十回撫でてスジが深くなり刃先がブレない確信を持てたなら、ここで初めて少しだけ力を入れ、カリカリと彫り込んで仕上げましょう。

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ここまでの作業で彫り込んだ新規スジ彫り。
手順を踏んで作業を進めたことでスジのブレを抑えることができたと思います。

ガンプラ系ではハイディテールの仕上げが流行ということもあり、スジ彫りは専用の工具も一昔前に比べると随分と充実しましたが、とりあえずシモムラアレックのホーリーは文句なしに扱いやすくオススメです。

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最後にはペーパーがけで面を整えて終了です。
ここでは手元にあった神ヤスの400番を使っていますが、もちろん普通のペーパーでも良いですよ。

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ペーパーがけまでが終わり、これが仕上がりの状態になります。
管理人としては結構キレイに彫れたかな…という感じなのですが、皆さんの目にはどう映るでしょうか…?
とりあえず現在の技量ではこれが限界…というレベルで気を遣って彫ったので(笑)、もう先の作業に進もうと思います。
スジ彫りはセンスも問われますし、いつまでも要修行…!というところですね。

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足(下腿)のリベットは…ヒートペンでパーツに直打ち

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スジ彫りの追加ができたら、改めてリベットの打ち直し…なのですが、ここではまたヒートペンでパーツに直打ちをしてみました。
ヒートペンを最近使い始めたばかりの管理人にとって実際の作業はまだまだ試行錯誤の連続なので、道具の扱いに慣れる意味でももう一度挑戦…といったところです。

そして上の画像は案の定失敗している場面です。(笑)
コテ先の温度が高いと充填したプラ材がコテ側から上手く離れてくれず、引っ張られて糸を引いてしまうのです。
こうなってしまったら当然やり直し。

取説によると、本体が設定温度まで加熱され安定するまでには電源ONから20分が必要ということです。
なのですが、高温設定で電源を入れて加熱してから設定温度を下げる…といったような横着をすると温度が必要以上に高くなり過ぎ、このような糸引き状態になりやすいようです。(そりゃそうか)
モールドのスタンプ作業は低温の方が扱い易いですから、横着せずに最低設定の160℃で20分待つのもコツの一つかもしれません。
溶接や肉盛りなら200℃以上の高温で使用することになるので、一気に温度を上げてしまっても良いのですけどね。

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数度のやり直しを経て(笑)リベットの修正が完了したパーツ(左)。
中央に一本スジ彫りを追加したことで、リベットが打たれた間隔もより自然に見えるようになりました。
キットのまま(右)のパーツと比べると、立体感も増し、メリハリもついたような印象がありますね。

ヒートペン直打ちではやはりコテ先を当てる位置の微調整が難しく、よく見るとそれぞれのリベットの位置が微妙にブレているような気もしますが…
パッと見、言われなければ分からない範囲でしょうか?(汗)
大まかにはヨシ!ということで今回はこれ以上の深追いはしませんが、先ほどの胴体パーツの例のように、別に造形したリベットを削いで使う方法の方がより完成度を高められるのかもしれませんね。

その他、注意するパーツ

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残りのパーツも同様にキットのリベットを削り落とし、ヒートペンで造形したリベットを貼り付けていけば良いのですが、一部注意しなければならないパーツがあります。
上の画像は足首パーツなのですが、キットではリベットの位置が変なのです…

あるはずのリベットがなかったり、逆に設定にはないリベットが造形されていたりと…各部の省略されたスジ彫りモールドといい、このキットのディテール再現は割とアバウトな部分があるのかもしれません。
より正確に作るなら、キットのリベットモールドの配置を信じてそのまま作り直すのではなく、インストに掲載されている設定画と見比べながら作業を進めていく必要がありますね。

今回は設定画のデザインを尊重…ということで、この足首のように明らかに設定と異なっている部分は修正してのリベット配置を行いました。
とは言え、ここも『言われなければ分からない』部分ではあると思うので、どこまで拘るかは制作者の考え方次第と言ったところでしょうか。

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なお、これ以降のリベット修正は全てプラ板上に造形したリベットを削いで移植する方法で行っています。
このキットで必要なリベットの総数は地味に多く…仕上がりの精度だけでなく作業効率の面からしてもこちらの方法を採用した方が良かったですね。
この画像は余り物の0.5mmプラ板の切れ端に0.7mmリベットを120個ほど打ったもの。
これを一つ一つパーツに直打ちして、失敗したらその都度修正して…なんて作業を想像すると、何時までたっても終わる気がしません。笑

また、ヒートペンでリベットを造形することのメリットとして、圧倒的なランニングコストの安さがありますね。
これだけの数のリベットを、例えばWAVEの『R・リベット』に代表されるような市販の改造パーツで賄っていたら…と考えると、お金もかなりかかってしまいます。
ヒートペンで造形すれば材料費はごく安く、それこそ廃ランナーを利用すれば廃品利用で実質タダ!といったところです。
充填用のプラ材として廃ランナーを利用するには『ウェルダー』のビットでランナーを薄く延ばして板状に加工する必要があるため、今回管理人は作業効率を考えて0.5mm厚のプラ板を使いましたが、それでも改造パーツの購入代に比べればプラ板の値段などは微々たるものですね。
何よりも『市販パーツをそのまま貼った』のではなく、『自分で作ったパーツを使った』という方が、モデラーとしての満足感も高いかと。笑

リベットではないが…頭頂部サブカメラ(?)も改修

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最後に、リベットではないのですが同様に加工できる部分として頭頂部のサブカメラ(?)にも手を入れておこうかと思います。
設定画を見ると、小さなレンズ状パーツが埋め込まれている頭頂部。
キットのパーツではごく浅い丸モールドが彫り込まれているのみなので、リベットをレンズとして埋め込んでみましょう。

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同じパーツの後ろ側にもサブカメラらしき装備があるようです。
こちらは凸モールドがありますが大味な造形なので、一旦削り落としてからリベットを埋め込みます。

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前側の加工から。
リベットをそのまま埋め込んだだけでは違和感があるので、周りをそれらしく加工します。
1.2mmのドリルで穴を開け、穴の入り口は2.0mmの球形ビットで面取りをしました。
設定画とは少し異なる形状ですが、ここは雰囲気重視で。

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1.0mmのリベットをプラ板上に成形し、ノミで剥がして移植します。
ピンセットで位置決めをしてから、流し込み接着剤でサッと固定しました。
中々立体感のある仕上がりになったのではないでしょうか…!

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後ろ側も下処理からしていきます。
キットのモールドは削り落とし、平ノミで削り込み。
さらにそのままリベットを貼ると出目金になってしまうので、やはりこちらも穴を彫りこんでおきます。
こちらの穴は1.0mmのドリルで彫りました。

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こちらは前側よりも少し小さめ、0.85mmのリベットを埋め込んで完成です。
ここも厳密には設定画の通りではないのですが…それらしくはなったでしょうか。

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本体まわりのパーツと合わせてみました。
塗装でレンズ部分を塗り分けてやれば、効果的なワンポイントになってくれそう。

リベット状のモールドは切り取ってレンズとして使えることも考えると、ヒートペンのリベットビットも色々と使い道がありそうな工具です。
改造パーツに頼らなくても小サイズのレンズを自分で作り出せるのは融通が利いて良いですね…!

おしまい

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画像はリベットを打ち直したパーツの一覧です。
厳密にはこれ以外にもリベットが造形されたパーツはあるのですが、明らかに形が歪んでいない部分に関してはキットのものを活かすことにしました。

しかしそれでもこのパーツ数。
曲面主体デザインの光武にとっては、全身のかなりの部分で凸モールドであるリベットは歪んで成型されてしまいます。
かかる手間の分だけ、その効果も大きいといったところでしょうか。

今回はヒートペンを使ったことで任意のサイズのリベットを無限に作り出すことができるようになったので、作業としてはかなり楽ができたと思います。
これでヒートペンを使わないとなると、市販パーツを貼りまくるか、リベットの部位にピンバイスで窪みを彫った上でDIY店などで入手できる1mm径の鉄球を埋め込むか…などといった方法が考えられます。
(更に言えば、古には伸ばしランナーの先端を線香であぶって丸めるというものもありましたね。)
しかし…市販パーツはお金が掛かりすぎ、また鉄球はオーバーサイズな上に余った鉄球の使い道がない(笑)という問題もあるため、ヒートペンを使ったリベット再生はこの種の工作方法としては現状ベストなのではないでしょうか。

作業に多少の慣れが必要なのと、オプションビットも含めた初期投資はそれなりに必要なこと、更に肝心のヒートペン・HP-1000が販売休止中なこと(!)は考慮する必要がありますが、管理人としてもこのヒートペンはもっと普及してもらいたいツールですね。
リベットの造形に限らずとも、例えば今回の内容では扱いませんでしたが、廃ランナーを利用したスチロール樹脂の同素材による肉盛り・充填・裏打ちなど、他の工具では代替できない加工が可能となり、一度使用するともうパテには戻れない魅力があります。
何より、今まで引火の危険を考慮しなければならなかったプラ材の熱加工を比較的安全に行うことができるようになったのは画期的なことですね。
他メーカーの競合製品も幾つか存在しますが、充実したオプションビットや温度を細かく設定可能な点など、この製品でしか実現できない工作内容は多いです。
生産休止のタイミングで使い始めた管理人は完全に乗り遅れ気味なのですが(笑)、これからの工作で多用して少しずつ慣れていこうと思います。

そして、光武の工作はもう少し続きます。
次はある意味このキット最大の鬼門である関節の修正について見ていきます。

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トップ>模型製作記・完成品展示>このページ

海洋堂 1/35 三式光武 工作編6.「ディテールアップ工作~太刀と持ち手の修正」

トップ>模型製作記・完成品展示>このページ

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細かなディテールアップとして、太刀とその持ち手を見ていこうと思います。
各部関節は(一応)可動するこのキットですが、流石に手の指は無可動の固定ポーズ…!
(上の画像は改造後のものです。)
太刀を持たせても安定しないので、少し手を入れてあげると良さそうですね。

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三式光武 太刀と持ち手

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画像は以前掲載した『素組みレビュー』から。
このキット、装備武器として太刀とその鞘が付属しています。
鞘は左腰のアーマーに装着、太刀は鞘から抜刀して手に持たせることが可能…!
…可能なのですが、指は無可動かつ持ち手となる右も左手と同じく中途半端に開いた状態で造形されているため、『持たせる』というよりは『引っ掛けている』状態になってしまいます。

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可動範囲の狭さは致し方なしとしても、太刀の握りくらいはもう少ししっかりとしたいところですよね。
持ち手をゼロから作り直すことは大変ですが、幸いにも光武の手は三本の独立した指によって構成されているシンプルなデザイン。
五本指のメカに比べると改造も(多少は)簡単に行えそうな気がします。

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一方、太刀の方に目を向けてみると、刀身・鍔・柄がそれぞれ別パーツとなっていて非常に細かな造形です。
気になる部分としては、やはり刀身の分厚さでしょうか…?

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画像は刀身の切っ先に向かってのもの。
やはり本来は刃になっている部分が分厚く造形されており、刃物というよりは鈍器のようなイメージです。
ここはプラモデルである以上は造形の限界とも言える部分なので、シャープに削り込んであげると良さそうですね。

持ち手の形状変更と刀身の削り込み。
今回はこの部分を重点的に見ていこうと思います。

太刀の刀身を削り込む

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形状も単純だし、削り込むだけなら簡単…!と思って油断していると、思わぬ削り過ぎでパーツ形状を大きく崩してしまうことがあります。
やはりどんな時でも基本を大切に、定石重視でいきましょう…!

画像は刀身の刃にあたる面に水性ペンで印を付けた状態。
このように削る面に色を付けておくようにすると、削っている量やパーツの状態が把握しやすくなりますね。
好みによっては所謂『捨てサフ』的に、軽くサーフェイサーを吹いてから削り作業を行う場合もあるかもしれません。
(筆塗りモデラーの管理人は極力スプレーを使いたくないのでサフは吹きません…!)

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実際の削り作業は刃物系工具によるカンナがけで行います。
アートナイフでも良いのですが、管理人のオススメはGSIクレオスの『Mr.バリ取り棒G』。
ナイフ系の工具に比べると刃先の安定感が段違いに高く、削れ具合のコントロールもしやすいものです。
先にペンで付けておいた印を目安に、左右両側から削れ具合が均等になるように加工していきます。

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太刀の切っ先、先端に向かう部分はヤスリを使って削り込みます。
ここで使っているのはシモムラアレックの『シャインブレード6』。
ヤスリ目の細かい方(#1000相当)で削っています。
『#1000相当』という表記ですが、ペーパーの1000番よりは断然良く削れていますね。
ヤスリ目は単目なので削り痕も比較的キレイですが、あくまでも金ヤスリなので…もちろん仕上げのペーパーがけが必要な程度のヤスリ目は残ります。

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削り込みが終了。
刀身の側面には細かなディテールが入っているので、削り込みで必要な部分を潰してしまわないようにも注意が必要ですね。
とりあえず、太刀の方はこんなところで良いでしょう…!

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太刀持ち手、指の形状変更…ヒートペンを導入してみる

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そして、改めて右手と太刀の組み合わせを。
キットのままでは指が開いてしまっているので、とても『持っている』ようには見えないですよね。
ここを何とか修正していきましょう…!

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手首は画像のように2パーツでの構成。
それぞれが緩く内側に曲がった形状ですが、この曲がりを深くしてしっかりと太刀を握れるような角度にしてやれば良さそうです。

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指の曲げ加工には管理人が最近使い始めた『ヒートペン』を使った熱加工をしてみることにしました。
管理人が入手したのは十和田技研の『HP-1000』。
プラスチックを熱で柔らかくして自由な形状変更を行うという、大変ユニークな工具です。

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最近では数社から発売されるようになったヒートペンですが、この『HP-1000』の良いところは設定温度を細かく調節できることです。
コントローラーに付いているツマミ(カチカチと数字の部分で止まります)を調節することで、160℃から240℃までは10℃刻みで、それに最高出力の270℃へと温度を変えることができます。
これにより、低い温度を用いた各種の細かな加工から、温度を上げての溶接・溶断や肉盛りまでと、様々な用途に使い分けることができるのです。
これは他社のライバル機にはない大きなメリットかと…!

今回は指パーツの関節部分を軟化させて角度を変更するという細かな加工を行うので、設定温度は低めの180℃で作業を進めてみました。

電源を入れて待つこと20分。
温度が安定したところで、まずは試しにビットの先端を適当なランナーに押し当てて使い勝手を確認してみます。
なお、ビットは『ウェルダー1.5』を使いました。

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熱されたビットをランナーに当てると、明らかに通常の工具とは違う感触…!
グニュリとプラが柔らかく沈み込み、熱で軟化していることが工具を持つ指先から伝わってきます。
感覚的には冷蔵庫から出したばかりの堅めのバターをスプーンで押しつぶしているような感じでしょうか…
もちろん、このあたりの使用感は設定温度や使用するビットによっても変わって来るところです。

コテ先のビットを対象のプラから離せば、瞬時にその形状で固定される(柔らかくなっているのは熱されたビットが触れている瞬間だけ)というのも、何かと硬化・乾燥に時間を取られがちな模型工作の中においては画期的と言えるでしょうね。

軟化したランナーをこねくり回してある程度感覚を掴んだら、いよいよ本命であるパーツの加工をしてみましょう。

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パーツの加工では、指関節の内側部分にヒートペンのビット先端を押し付けながら、少しずつ指を曲げていきました。
細かな部分は後で修正するとして、まずは大まかに目的の角度まで指を曲げてしまいます。

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パーツをバラして別角度から。
ビットが当たった指関節は少し抉れたようにもなっていますね。
通常の切り貼り加工ならこんな状態からの整形は少し手間ですが、ヒートペンならある程度までは比較的簡単に修正が可能です。

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ビットの先端で抉れた部分を埋めるように撫で付けて形状を修正します。
加工した部分は熱でただれてしまいますが、それは最後にペーパーがけをしておけば良いでしょう。
切削も接着もせずに、この画像の状態にまで修正ができるのは画期的と言えますね。
また、曲げ加工の際にもパーツの切断をした訳ではないので、加工部分の強度も高いままで保たれています。

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太刀を持たせて形状を確認しておきます。
それなりに『握っている』ように見えるでしょうか…?
大まかな指の角度としてはこれで完成形としておきましょう。

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指の角度が決まったので、あとはペーパーがけ等で表面を整えてやれば作業完了です。
大まかな修正はヒートペンの段階でできてしまうので、通常の切り貼り加工に比べると仕上げも楽にできますね。
それに何より、待ち時間がゼロ(!)というのは熱加工の大きなメリットです。

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未加工(左)と曲げ加工済(右)を比較。
キットのままではどうしても『物を持つ』という感じではないですが(笑)、指を曲げてやることでそれらしく太刀を握れるようになりました。

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手首の形状修正…ナックルガード(?)を別パーツ化する

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指の角度変更が終わった手首ですが、実はもう一つ気になる部分があります。
画像の矢印あたり、キットでは何だか板のように造形されている部分がありますが、ここは設定と形状が異なります。

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画像はインストに掲載されている設定画(塗装参考図)より。
手首の付け根には小型のナックルガードのようなパーツが付いているのが分かります。
指関節の根本を保護する目的の、補助装甲的なものでしょうか?
詳細な設定は不明ですが、ともかくここはキットのように板が埋め込まれている形状ではありません。

細かな部分なので修正が難しいものでもありますが…こだわる場合はここも加工する箇所の候補となります。
管理人としては、加工するとしても極力キットを活かす方向性で工作を行いたいので、余計な部分の削り込みだけで対応できればそれがベストなのですが…

キットの形状を検討すると、ここを加工する場合、下手に削り込むよりは潔く全て作り直した方が簡単でかつ立体的な仕上がりにできそうな感じです。
作業の手順としては、板状に成形されている余計な部分を一旦全て削り落とし、プラ材で新造したナックルガードを取り付けることになりますね。

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今回はガード部分を削り落としてしまうので、その前に大きさをノギスで測っておきます。
ここでメモしておいた大きさを目安にプラ材で作り直しをしていくことになりますが、実際は現物合わせでけっこうアバウトだったりもします。

ちなみにここ(ガードの横幅)の長さは11.35mm。
ノギスは0.05mm単位で大きさを測ることができるので、ディバイダーと定規の組み合わせよりも正確な測定をしていくことができますね。

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計測が済んだら不要部分を削り落としていきます。
まずはニッパーで大まかにバキバキと切り込み。
ここではもちろん刃先がヤワな片刃ニッパーではなく、耐久力のある両刃を使っていますよ。

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アートナイフと金属ヤスリで削り込んでいきます。
パーツの必要な部分を傷つけないよう慎重に…!

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そして今回はここでもヒートペンを活用してみました。
ウェルダー1.5のビットを使い、不要部分を撫でつけるようにして少しずつ取り除きます。

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もろくなった不要部分をアートナイフで切除、またヒートペンで撫で付け…を繰り返して整形していきます。

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最後はペーパーがけで仕上げます。
ラフな工作なので320番から始めて400番で仕上げ。
320などの低番手のペーパーはゴリゴリ削れて気持ちが良い!ですね。笑

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左がナックルガードを切除したパーツ。
右のキットのままのもの(指は曲げ加工しています)に比べると随分とスッキリしましたね。
ここまでできたら、あとはプラ材で切除したガード部分を自作していきます。

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こちらは1.0mm厚のプラ板を2.0mm幅で切り出したもの。
今回はこれを加工してガード部分を作ります。

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適当な長さに切断しクランク状に接着。
貼り合わせタイプの溶剤系プラセメントでガッチリと接着します。

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クランクの内径だけはパーツに合わせておきます。
外側はこの時点ではかなり適当なので、後から削って仕上げていきます。

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各面をヤスリで削り出して整形したものがこちら。
基本形はこれで完成として、後は細かなディテールを追加してパーツとして仕上げていきます。
この形状のものが左右分、二つ必要になる訳ですね…

ということで同じ形状のパーツもう一つ作ろうとしていたのですが、二つ目ではヤスリがけの段階で事故発生…
破損に次ぐ破損…!ということで上手く作ることができません。
管理人の技量不足で接着した角の部分がヤスリがけのテンションに負け、折れて破損するという失敗を繰り返してしまいます。
一つ目のパーツが上手く仕上がったのは奇跡でしたね。

このままでは何時になっても完成しない…ということで、ここでは作り方を変えてみることにしました。

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まず、左右の先細テーパー形状になっている部分はプラ板を細長く切り出した段階である程度まで整形してしまいます。

0.5mm厚のプラ板を2.0mm幅で切り出し、目的の形状に合わせて先端部分をナイフで押し切り。
さらに金ヤスリで微調整します。
後からのヤスリがけで整形する方法だと接着部分にテンションがかかって破損しやすいため、ここでほぼ完成形を作ってしまうイメージで。
接着後は、合わせ目消しを兼ねた軽めのペーパーがけ程度で仕上げられるようにしておきます。

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テーパー形状に削り出した先端を切り離したものを二つ作りました。
これを2.0mm幅に切り出した帯状の0.5mm厚プラ板に接着し、目的の形を作ります。

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接着する際には簡単な治具を用意すると破損のリスクも減らせ、また精度を上げることができます。
ここではタミヤの5.0mm角棒を短く切り出したものを使いました。

治具のプラ棒自体は接着されてしまわないよう、表面にマスキングテープを貼っています。
また接着の基部となる帯状プラ板は、弱粘着性の両面テープで治具のプラ棒と固定しておくと作業が行いやすいです。
粘着力が強いと治具を外す際に力がかかって破損の危険があるため、両面テープは必ず弱粘着性のもので。

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貼ってはがせるタイプの両面テープ。
(画像のものは購入時期が古いため、現在店頭にあるものとはパッケージが異なるかもしれません。)
このタイプのテープは耐水ペーパーを当て木に貼る際などでも扱いやすいため、モデラーなら持っていて損はないかと思います…

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そして先程のパーツですが、接着剤が乾燥したら不要部分を切り取り、合わせ目を処理したら基本形は完成。
左右のテーパー形状は先に作っておいたので、ここでのペーパーがけは最小限で済ませ、パーツに負担をかけないように気を付けて作業します。

これで何とか作り直しパーツが二つ揃いました…!

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基本形が出来たら、細かな部分を追加してパーツとして仕上げていきます。

まず、設定画では角の部分にC面の面取りがあるため、削り込みで再現します。
削っている部分が分かりやすいようにマジックで色を付けてから、当て木をした320番のペーパーで削っていけば良いですね。
ここでもパーツは5mm角棒の治具に固定しておくと安全です。
パーツを持つ手とペーパーを持つ手の角度がそれぞれ一定になるように意識し、一動作毎の削れ具合を確認しながら慎重に削ります。

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続いてリベット状の凸ディテールを追加。
設定画で見る限り、丸頭のリベットというよりは表面は平面であるような感じです。

ヒートペンで0.8mm径のリベットをプラ板上に成形してから、表面を当て木ペーパーで軽く慣らして平面形状を再現。
出来上がったリベットを平ノミで剥がしてパーツに移植します。

ヒートペンを使ったリベットモールドの造形については、次回『工作編7.「ディテールアップ工作~ヒートペンを活用したリベット再生法」』で詳しく取り上げます。

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なお、パーツが細かいので固定にはバイス(万力)があると良いですね。
模型用に発売されているバイスは幾つか種類がありますが、こちらの製品はクレオスからの発売。
かなりしっかりとした作りで精度も良く使いやすいです。
他メーカーの製品に比べて公式ホームページが地味なせいか、ネット上ではあまり目立っていませんが(笑)、管理人としてはおススメの一品です。

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そして、追加するディテールはまだあるのですが、ここで手首本体との接続部を作ってしまいます。

色々と考えた結果、今回はプラ棒を使った極小のヒンジを作っていくことにします。
1.0mm以下のプラ棒を使いたいのですが、このサイズはタミヤからのラインナップには存在しないため、ここではエバーグリーン製のものを用意しました。

画像は数種類のプラ棒・プラパイプがセットになったもの。
エバーグリーンのプラ材は輸入物のため高価ですが、少量使うだけならこのようなセット販売のものが手を出しやすいかと思います。
今回のものは『70EG217』という型番で販売されているもので、セットに含まれている0.64mm径のプラ棒を使います。
(ちなみにサイズ表記が半端な数字なのは、インチ表記をメートル法に直しているため)

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適当なプラ板に穴を開けてプラ棒が差し込めるサイズを確認したところ、0.7mm径の穴にピッタリ差し込めるサイズのようですね。
0.6mm径の穴ではキツくて入りません。
プラ棒のサイズが公証0.64mm径なので、表記通りと言ったところでしょうか。

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キットの手首は2パーツに分割されています。
今回はこの分割構造を活かし、挟み込みでナックルガードのヒンジを後から取り付けられるようにしよう…という訳です。

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パーツの中央部分、分割の境目を狙って穴を開けました。
ニードルでのアタリ付けからはじめて0.5mm、0.6mm、0.7mmと段階的に拡張して行き、穴がズレないように気を付けて作業します。

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うまく分割パーツの両側に溝が彫られるような形で穴あけができました。

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念のため0.64mm径のプラ棒が穴に挿せることを確認しておきます。
問題なし!ですね。

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同様に反対側からも穴を開けたら手首側の加工は完了です。
中央には接続用のピンがあるため、ドリルを貫通させないようには気を付けましょう。

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自作したナックルガードの内側に0.64mm径プラ棒を短く切り出して接着します。
プラ棒は少し長めに切り出して後から微調整するイメージで。

細かな部分なので心情的には流し込みタイプの接着剤を使いたくなりますが、多少とはいえ後々力がかかる部分なので、ここは貼り合わせタイプの接着剤でガッチリ接着しておきます。

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少し長めですが、パーツの内側にヒンジの軸となるプラ棒が接着できました。
あとは手首と合わせながら微調整していきます。

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手首に彫った溝に合わせて確認してみたところ、プラ棒が少しだけ長いようですね。
0.3から0.5mm程度、目検討で切り詰めます。

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パーツに負担をかけたくないので、プラ棒の切り詰めには切れ味の良いアルティメットニッパーを使いました。
0.64mm径のプラ棒程度なら、全く手応えなくストンと切り落とすことができます。
今回は接着剤が完全に乾燥する前に作業を進めているので、ナイフでの押し切りなどでパーツに負担をかけるのはなるべく避けたいところです。

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プラ棒を切り詰めたことで、中央の接続軸との干渉も問題なくなったようです。

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手首パーツを合わせて確認。
問題なし。

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できました!
一体成型されていたキットパーツに比べると立体感も増した感じがありますね。

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プラ棒でヒンジを仕込んだことにより、ナックルガード部分は前後へのスイング可動が可能です。
設定画では、この画像のように斜め前方に向けて固定されているようですね。
キットのままでは再現できない部分なので、改造の効果は大きいかと思います。

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ナックルガードはこれで完成…と言いたいところなのですが、あと一つ、後回しにしていたディテールがあるので追加で工作します。

パーツ表面にある帯状の凸ディテールなのですが、これをプラ材で再現するのは難しいため、ここではセロテープを使ってみました。
一般工作用のセロテープを3枚重ねて厚みを調節し、適当な大きさに切り出します。
(切り出す大きさは事前にマスキングテープ等を使って検討をつけています。)

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透明なので画像では状態が非常に分かりづらいですが、帯状の凸ディテールとしてセロテープを貼り込んだもの。
はじめはプラペーパーを使って再現をしようと試みていたのですが、角の部分に追従させることが難しく、パーツが小さすぎるためにペーパーがけ等で後から整形をして形状を整えることも難しい…ということで断念しました。

セロテープなんか使って塗装は大丈夫なのか…?という疑問は残りますが、以前制作したHGUCサザビーの時もテトロンシールの上に水性ホビーカラーの塗装は可能でしたので、多分大丈夫ではないかと…
もし問題があったなら、プライマーやサフの併用など、その時に対応を考えることにします。

ということで、やっとナックルガードが完成です。

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あとは、もう片方の手首も加工しなくてはいけません(汗)。
こちらのパーツは太刀を持つために指を曲げ加工していますね。
先に加工した方と同様に、一体成型のナックルガードを削り落とすところから進めていきます。

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不要部分をニッパーで切除し、ヒートペンで撫で付けながら形状を整えていきます。

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ヤスリを使わずにここまで加工できます。
ヒートペンのビットはウェルダー1.5、温度は最高設定の270℃で行いました。

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手首の根本と合わせて様子を見てみると…少し削り過ぎているようです。
様子を見ながら少しずつ削らなければいけなかったのですが、指先側のパーツ単独で加工を進めてしまったことによる失敗ですね。

ここまで形状差があると根本側のパーツを削り込んでの修正では全体の形状が崩れてしまうため、削りすぎた部分に盛り足しをすることにしました。

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ここでの修正もヒートペンで。
パーツへの肉盛りはヒートペンの得意分野です。
足りない部分に廃ランナーを溶接して盛り上げていきます。

盛り上げたら、不要部分をニッパーやヤスリで削り取り、また具合を確認しては盛り足しを追加し…と繰り返して目的の形にしていきます。
パーツが細かく、また指の部分が作業の邪魔になるため加工が難しいですが、ヒートペンならパテと違って待ち時間ゼロで作業ができるのでまだ効率的な方かとは思います…

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何とか修正完了。

途中で指の曲げた部分が折れてかけてしまったので、黒い流し込み接着剤で修正しています。
パーツが細かすぎて作業の際に持ち手になる部分がなく、ヤスリがけをしようにも力がかけづらいので、ここまで仕上げるのは中々大変でしたね…

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手首の根本と合わせて。
欠損した部分が埋められ、違和感なく仕上がったでしょうか。
ヒートペンでの肉盛りは、しっかりと熱が伝わっていれば接着剤を使わなくても滑らかに溶接されますし、同じプラ素材同士なので仕上げや塗装が楽なのもメリットですね。

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先に作ったパーツと同様、ヒンジの軸が通る0.7mm穴を開けてナックルガードを取り付け。
こちらも何とか完成しました。
この部分の改造も、今度こそこれで終了です…!

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おしまい

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手首の改修は、最初は太刀を持つ右手の指の角度を変更するくらいのつもりだったのですが…ナックルガードの作り直しにも手を出したら、これがまた大変(笑)。
サイズが小さすぎるため強度が確保できず、プラ板工作としても難度が高くなってしまいますし、またパーツ側に一体成型された部分を削り取る作業もパーツが小さく一筋縄ではいきません。

振り返ってみて、管理人もヒートペンがなければ作業を完了できなかったのではないかと思いましたね。
このサイズの切削を通常の刃物系工具だけで行うのはかなりの高難度かと思います。

上手く作業完了できれば立体感が増すので効果は高いですが、見る人にとってはキットのままでも言われなければ分からない部分とも言えますし、正直おすすめはしません…!(笑)
今回は何とか形になって良かった、というところでしょうか。

次回の記事では、今回も活用したヒートペンを使ったリベットの再生を行っていきます。
作業量に対する見た目の変化としては、こちらの方が余程効果が高いかと思います…!

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編5.「ディテールアップ工作~歪んだ凸ディテールの作り直し」

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ディテールアップの一環で凸ディテールの修正もしておきます。
インジェクションキットの限界として、特に光武のような曲面主体のメカは表面ディテールに歪みが出やすいので、特に気になるところを中心に手を加えていこうと思います。

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成型の都合で歪んだディテール

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画像は光武の胴体を組み合わせたところ。
頭の上にあるディテールが歪んでいるのが分かりますね。

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更に別角度から。
射出形成の都合上、型の抜き方向に追従させるため、左右に引っ張られたような形状にされてしまったようですね。

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インストに記載されたイラストでも、この部分はもちろん歪んでいません。
ここは円柱を半分に切ったような形状が貼りついているのが正解のようです。

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このパーツではさらにもう一つ、下部分の装甲の隙間に見えているディテールにも歪みが出ています。
(画像では水性ペンで印を付けています。)
抜きの関係で左右に引っ張られた形状になっているのと同時に、それぞれ凸部分の幅も違ってしまっているため、ここも修正してあげると良さそうです。

まずは既存の凸ディテールを削って整形

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歪んだ凸ディテールを修正するには、キットのモールドを削り落としてから新たに作り直したものを貼り付けることになります。
先程のパーツ、まずは簡単にできそうな装甲下部の隙間から。
既存のモールドは高さの低い凹凸なので、まずはノミで大まかにそぎ落としてしまいます。
画像で使っているのはハセガワトライツールの『モデリングチゼル4 模型用ノミ幅3mm平(TT9)』。

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ノミでの粗削りができたら、ヤスリで更に削り込み。
ここではシャインブレードfinaを使いました。
幅3mmのヤスリですね。

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続いてGSIクレオスのMr.バリ取り棒G。
カンナがけの要領で削り込み、形状を整えます。
バリ取り棒は本当に使いやすいですよ…!

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バリ取り棒なら、逆エッジのキワにもかなり攻め込むことができます。
狭所のカンナがけはタガネでも良いのですが、あちらは刃先の破損が心配なので…
使える部分には極力このバリ取り棒を使用するようにしていきます。

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細かく削りたいときはスジボリ堂のテーパーダイヤモンドやすり(2.5mm幅)の240番も。

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仕上げはペーパーがけ(400番)で。
狭い部分にはピンセットでつまんで使うと良いですね。
ここで使っているのはゴッドハンドのパワーピンセット先広…管理人が一軍で使っているピンセットは殆どがこれです。
力をかけてしっかりと掴めるので扱いやすい一品。

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ペーパーがけの処理後。
既存の凸ディテールが削り落とされてキレイになりました。
後は新たに凸部分を貼り足してやれば良いでしょう。

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頭の上側も同様に作業を進めますが、こちらはもう少し慎重に。
削り作業に入る前に、まずは鉛筆でディテール位置の目安をパーツに書き込んでおきます。

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ノギスを使ってディテール部分の大きさも正確に測っておくと良いですね。
今回ここは長さ4.20mmでした。

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準備ができたらここも同様に既存のディテールを削り落とし。
金ヤスリで粗削りし、ペーパーがけで仕上げます。
金ヤスリはシャインブレード6の目が細かい方(単目の#1000相当)で、ペーパーは400番です。
シャインブレードは割と最近使い始めたのですが、切削力が高くて目詰まりもしにくいので使いやすいヤスリですね。
メインの金ヤスリとして起用しても良い性能かもしれません…!
なお、ヤスリがけで消えてしまった目安のガイド線は、その都度書き足しておきます。

(参考リンク)
隙間をヤスリがけできるテーパーダイヤモンドヤスリ。合わせ目消しなど面仕上げ、狭い場所の加工に利用できます。 ガンプラ、フィギュア、プラモデルにおすすめです。

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凸ディテールの再生

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既存ディテールの削りと整形が完了したら、プラ材でディテールの再生をしていきます。
まずは装甲下部の隙間部分から…
ここは手元にあった0.14mm厚の極薄プラ板(プラシート、またはプラペーパーとも)を使います。
写真のものは、記憶によればイエローサブマリン某店で20年くらい前に購入したもの…(笑)
現在はタミヤからも0.1mm厚のプラ板が販売されているので、これに限らず好きなものを使えば良いかと思います。

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短冊状に切り出したプラ板を流し込み接着剤で貼り付け。
割と現物合わせの作業ですが、貼り付け位置の目安は事前にシャープペンシルで書き込んであります。

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粗方プラ板を貼り終わった状態。
貼り付けた部分がまだ少し浮いているように見えるので、もう少し調節します。

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見やすいように下側から。
接着部の周囲をアートナイフと平ノミで削り込み、また細かくペーパーがけをして新造ディテール部分を馴染ませた状態。
作り直した割にはやや立体感に乏しい感じもしますが、とりあえず新造部分が浮いているように見えないレベルにまでは馴染んでくれたと思います。
この部分はこれで完了…!としましょう。

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今度は頭の上側にあったディテールも作り直していきます。
こちらは少しばかり手間ですね…
用意したのはWAVEから発売されている3mm径の半丸棒。
カマボコのような、断面が半円形をしたプラ棒です。

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プラ棒の端を丸く加工して貼り付け用のディテール形状を作ります。
まずはナイフで粗削り…
この後ヤスリやペーパーで仕上げです。

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出来上がったらパーツに貼り付け。
…なのですが、これはちょっと大きすぎた(太すぎた)ようです。
元の形状と比べると違和感がありすぎますね…
と、いうことで…サイズを小さくしてもう一度作り直しです。

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2mm径のプラ棒(半丸棒)で作り直した同部位の凸ディテール。
パーツとのバランスを考えると、このサイズの方が明らかに違和感がない(笑)。
今回は2mm径を採用しましょう。

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順番が前後しますが、こちらは加工途中の2mm径、半丸棒。
切り離す前に、一端のペーパーがけとスジ彫りの追加までを済ませています。
長いプラ棒の状態で加工を進めていく方が作業性は格段に良いのです。
ちなみに、スジ彫りはフリーハンドのアートナイフでアタリをつけてからコトブキヤのエッチングノコで彫り込みました。
この凸ディテール部分は塗装時に塗り分けが必要になるため、予めスジ彫りを入れておく方が後々で楽ができると思います。

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最後に予め測っておいた長さ(4.20mm)でプラ棒を切り出し、もう一端も丸く加工してあげれば良いですね。
最初にパーツに書き込んでおいた位置決め用のガイドを目安にして、これを貼り付けてやれば完成です…!

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膝アーマーの丸い凸ディテール

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もう一か所、気になる凸ディテールとしては膝アーマーがあります。
画像のパーツ、下側に丸いディテールがありますが、ここも微妙に歪んでいるのです。

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水性ペンで印を付けた上で別角度から。
丸い凸部分が射出形成の都合上、抜きの方向に歪んだ凸ディテールです。

ディテールアップの定石としては、ここも修正するのが正解なのでしょうが…
ここは歪みの程度もかなり微妙な上、パーツのサイズが小さいために工作の難度が高いので、正直無理に作り直さなくても良い気がします。
(事実、管理人は加工に失敗している部分があります。後述。)
丸ディテールの天面が斜めになってしまっているのがここの違和感の原因なので、大掛かりな加工をしない場合でも、金ヤスリで軽く形状を整えてやるだけでも大分雰囲気は良くなるでしょうね。

凸ディテール丸ごと作り直しに挑戦

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今回、管理人は凸ディテールの丸ごと作り直しを選択しました。
上手く加工できれば立体感は段違いになりますけれど、失敗のリスクが伴う諸刃の剣ですね…
とりあえず、2.0mm径のドリルでディテール部分を貫通…!
もう後戻りできません(笑)。

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パーツに2mm径の穴を開けた状態。
ここに新造したディテールを差し込みます。

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パーツに開けた穴に2mm径のプラ丸棒を差し込んでイメージを確認。
差し込むプラ棒の先端にディテールを入れても良さそうですね。

と、いうことで…今回ここにはマイナスモールドを入れることにしました。
ヤスリで平らに成形したプラ棒の先端にスジ彫りを入れるだけのお手軽加工です。
スジ彫りはアートナイフでアタリを付けた後にエッチングノコで彫り込んでいけば良いですね。

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まずはアートナイフでアタリ付け。
このアタリが最後まで影響するので慎重に…!

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ナイフのアタリをエッチングノコでなぞってハッキリとさせます。
これはデザインナイフのホルダーに取り付けるタイプのノコですね。
雲母堂本舗のライナーソー タイプB 0.08mmです。

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仕上げに、ホーリー0.1mmでスジ彫りを深くして完成。
こんな細かな部分でも定石通りに手順を踏んでいくことが大切です…!

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ホーリーでの彫り込みまでができた状態。
このままでも充分そうですが…

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今回は更に面取りビットで周囲のフチを削り込み。
ここまで加工すると、また一段とそれらしくなってきますね。

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更に、受け穴側となるパーツに開けた2mm穴もスチールバー(球形ビット)で軽く面取りをしておきます。

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パーツとプラ棒を合わせてみます。
これは中々良い感じ…!
流し込み接着剤で固定し、強度を稼ぐため裏側はヒートペンで溶接もしておきました。
(※ヒートペンについては後の記事で詳しく扱います。)

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完成…!(画像左側のパーツ)
良く見ると右側の丸ディテールは最初の2mm穴を開ける時点で角度が若干ずれていたのか、作り直したディテールも若干ずれた角度になっているような気がしますが…
ここはこれで終了とします。(深追いするとキリがないので…汗)

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同じようにもう片方のパーツも加工…といきたいところなのですが、ここでトラブル発生です…!
最初の2mm穴を開ける段階でパーツが破損してしまいました。(汗)
パーツのキワ、ギリギリを攻め過ぎたかもしれませんね。

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トラブル対応も経験のうち…ということで、何とか修正を試みます。
画像はヒートペンでプラ材を溶接して破損した部位を補填したところ。
ここからナイフとヤスリで削り込んで元のパーツ形状に近づけます。

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何とか加工が終わった状態。
実は元のパーツよりも輪郭が一回り小さくなっていたりもするのですが…それらしく見えるようになった段階でここは一先ず終了としておきます。
パーツの大きさ的に要求される加工精度が繊細過ぎて、(管理人の技量では)これ以上の修正はかなり難しいです。

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裏側。
形状修正の過程で下腿への接続用のピンを削り取ってしまったので、ここは後で接着必須ですね…

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何とか形状が修正できたので、同じようにマイナスモールドを差し込んで接着します。
それ程、違和感はないでしょうか…?
これならこのまま裏側を切り離せばここも完成として良さそうです。

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加工が終了した膝アーマーを下腿のパーツと合わせてみたところ。
破損からの修正や削り込みでパーツが一回り小さくなっているため、パーツ同士の隙間が若干空いているようにも見えてしまいます。
ここは今回の制作での明らかな失敗ポイントです…!
とはいえ、言わなければ分からない範囲でしょうか…?
塗装をすれば、また違って見えてくるかもしれませんね。

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そしてこちらは膝アーマーと組み合わされる下腿のパーツ。
破損からの修正をした方の膝は接続ピンを切除しているので、受け側の穴も不要です。
完成後は殆ど見えない部分かもしれませんが、一応ここは埋めておくことにしました。
画像で右側に見えている四角い穴がそうですね。

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パーツへの充填は最近使い始めた新工具・ヒートペンで。
不要ランナーを軟化させて盛り付けることができるので簡単です。
パテ類とは異なり、硬化時間ゼロ、有機溶剤の揮発なし、プラモデルとは同素材同士なので加工時に硬さの違いによる切削感や仕上がりの差が出ることもないなど、メリットは多いです。(おまけにランナーを使えば材料費もタダ…笑)
ただし、多少の慣れは必要ですね…!
ヒートペンについては、後のリベット打ち直しで多用しているので、詳しくはその回の記事にて。

ちなみに、ヒートペンは十和田技研のHP-1000です。
他社製のヒートペンは設定の温度が高すぎて、恐らく細かな溶接には向かないのではないでしょうか…?

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ヒートペンによるプラ材の溶接・充填では切削加工も非常にスムーズです。
上手く溶接ができていれば合わせ目も気になりません。
この部分もこれで加工終了…!です。

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おしまい

元からある形状に向かって彫り込むだけの凹ディテールと違って、凸ディテールの修正はプラ材を使ったパーツの再生が必要になってくるので、また更に一手間…といったところですね。
今回は管理人が特に気になった個所を中心に比較的大きな凸ディテールの加工を行いましたが、このキットの凸ディテールで一番問題となるのは、全身に配置されたリベットモールドです。
リベットの数は非常に多く、また歪みも目立ちます。
成型の都合で歪んだ多数のリベットをどうするか…それはこのキットに限らず、サクラ大戦系のプラモデルと向き合う上では非常に重要な問題なのです…

考えた末、今回の制作ではリベットの修正を敢行…!
ただ内容が多くなりすぎてしまうため、そちらはこことは独立した一つの記事としました。
今回の内容でも少し扱った新工具・ヒートペンの扱いと合わせて、改めて別記事で見ていきたいと思います。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編4.「ディテールアップ工作~凹モールドの彫り込み」

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前回のスジ彫りに引き続き、今回も引き算の工作…凹モールドの彫り込みです。
成型の都合で歪んだ部分を中心に、形状を修正しながら深く彫り込んでいきます。

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幅0.5mm以下の極小ノミが必要

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まずは彫り込みの対象となる凹モールドを確認しておきましょう。
写真は胴体正面、光武の顔になる部分のパーツですが、こめかみのあたりに小さなスリットが入っています。
この他、腰回りや脚部の装甲などにも同様のスリットがありますが、溝の幅はどれも同じくらい。
大体0.3mmか、それより少し太いくらいでしょうか。

彫り込み加工をしていくためには、当然この幅に対応したノミ等の工具が必要。
極小サイズのノミとしてはスジ彫り用工具の流用なども考えられますが、意外と使えるものは限られていたりもしますね。
今回使うのは雲母堂本舗の『カッターノミ』です。

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雲母堂本舗『カッターノミ』。
アートナイフ替え刃の後端を研いだような形状の極細ノミです。
刃幅は0.3mm・0.4mm・0.5mm・0.6mmの4種類をラインナップ。
多くのスジ彫り用の工具とは違い、刃先を押す方向にも切り込むことが可能で文字通りノミとしての使用ができること、流行りのタガネ等に代表される超硬合金系の工具よりも破損のリスクが少ないこと、また安価なのもメリットですね。
知名度が今一つで入手経路が限られるのはご愛敬。

販売は替え刃のみの単品で、刃をデザインナイフ規格のホルダーにセットすることで使用します。
(※アートナイフとは替え刃の規格が違うので注意…)

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(参考リンク)
ヨドバシ.com – 雲母堂本舗 プレシジョン・ツール カッターノミ 0.3-0.4セット [カッターナイフ] 通販【全品無料配達】
ヨドバシ.com – 雲母堂本舗 プレシジョン・ツール カッターノミ 0.5-0.6セット [カッターナイフ] 通販【全品無料配達】
【公式通販】雲母堂本舗 極細彫刻刀 カッターノミ 0.3mm~0.4mm セット きらら堂本舗 平ノミ 平刀 彫刻刀 刃 | メーカーで探す,雲母堂本舗(きらら堂),カッターノミ | ゴッドハンド直販サイト本店
【公式通販】雲母堂本舗 極細彫刻刀 カッターノミ0.5mm~0.6mmセット きらら堂本舗 刃 ノミ デザインナイフ | 工具の種類で探す,彫刻刀,平刀 | ゴッドハンド直販サイト本店

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スリット状 凹モールドの彫り込み

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実際の彫り込み作業ははスジ彫りの彫り直しとも似ている部分が多いです。
管理人の場合、まず後から彫り込む工具の刃先がブレないように、先にニードルでアタリを付けておきます。

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アタリのニードル傷でモールドをハッキリさせてから、工具を変えて彫り込み。
使っているのはカッターノミの0.3mm幅。
少し細めの幅である程度まで彫り込んでから0.4mm幅に刃先を交換し、彫り幅を元のスリットの幅まで拡張します。

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彫り上がり。
色の付いた部分は、黒い流し込み接着剤を流したものです。
色が入ることで形状が見やすくもなり、また流し込み接着剤の効果で彫り込み時の傷が多少滑らかにもなりますね。

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今度は別のパーツ。
まずニードルでアタリを付けるのは先程と同じですが…

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より慎重に彫りを進めていくなら、本彫り込み用の工具に持ち変える前にもう1ステップ。
ここでは三角刀の刃先でニードルの傷をなぞることでよりアタリをハッキリさせています。
使用しているのはハセガワトライツールの『モデリングチゼル3 三角 細(TT6)』。

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ここでようやくカッターノミに交換して本彫り込み。
この3ステップで彫り進める方法はアタリがしっかりとついている分、刃先もブレにくいので安心感が高いです。

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彫り終わり。
スリット部分に着色をしていないのでこの写真では形状がやや分かりにくいですね…

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ここでは簡単に、水性ペンで簡易的に仮のスミ入れをしてみました。
ラインのブレもごく僅かで、深さもこれなら充分でしょう。
この調子で他のパーツも彫り進めていきます。

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今度は腰の後ろにつくパーツ。
ガンプラで言うところのリア・スカートアーマーですね。
画像はパーツ上に元からあったスリットを彫り終えた状態ですが、よく見るとこのパーツ…左下のスリットが不自然に一つ足りていません。

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キットのインストに背面の設定画がありました。
ここで確認すると、やはりこの部分のスリットも2つ組になっているのが正解のようですね。
このキットでは何故ここだけ省略されているのか…謎です。

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設定の裏付けが取れたので、足りないスリットは彫り足しておくことにしました。
まずは既にモールド付けされている他のスリットの大きさを測りましょう。
ノギスで計測すると、ここは長さ1.5mmです。
…ええと、念のために書いておくとスリットの『幅』ではなく『長辺』が長さ1.5mmです。
これはかなりの細かさですね。

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彫り込みのガイドにするため、マスキングテープを1.5×0.5[mm]の大きさにカットします。
とはいえ、細か過ぎるので大きさは割とアバウトだったりもします…

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マスキングテープの小片を彫り込みのガイドとして狙う位置に貼り付けます。
完成形をイメージして位置を調節しておきましょう。

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位置調整ができたら、やはりここでもアタリ付けから始めます。
まずはテープの両端を狙ってニードルで印を付けます。

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次はアートナイフ。
ニードルで付けた2つの印を目安にナイフの刃先を押し付けて直線のアタリを付けます。
2つの印(傷)を繋ぐようなイメージでナイフの刃先を置くと良いでしょう。

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今度は三角刀。
先程の例と同じ要領ですね。
ナイフ傷のアタリを刃先でなぞる様にしてハッキリとさせていきます。
力加減は、もちろん『撫でる』ような感触で行っていますよ。

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ある程度アタリがハッキリとしてきたら、工具をホーリー0.1mmに変えてラインをスジ彫りにしていきます。
今回はこのスジ彫りもアタリの一種なので、ここではそれ程深く彫らなくても大丈夫です。

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彫り始めた部分が0.1mmのスジ彫りになった状態。
(形状を見やすいように水性ペンでスジをなぞっています。)
ここから更に幅を広げて彫り込み、目的の形にしていきましょう。

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工具を変えながらスジに沿って幅を広げつつ彫り進めます。
ここで使っているのは雲母堂本舗のライナーチズル0.2mm。
今回メインで起用しているカッターノミの姉妹品…のようなもの。
こちらはノミというよりもスジ彫り用の工具というカテゴライズです。
刃幅が0.1から0.2mm程度の工具は大体そんな感じのものが多いですよね。

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更にカッターノミの0.3mmで彫り込んでスリットの幅を広げます。
次も同様に、工具の刃幅を少しずつ広げながら目的の形状まで彫り進めていけば良いですね。
今回はこの後、同じくカッターノミを使用して0.4mm、0.5mmと進めていきました。

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0.5mm幅まで彫り進めた段階では、同じくスピンブレードの0.5mmを使用してスリット内のカンナがけも行いました。
スピンブレードは刃幅が0.4mm以下のものも存在しますが、それらはメーカー試作品扱いの商品で、管理人は未所持なのです。
0.5mmまでスリットの幅が広がってくれば、工具も色々と融通が利くようになりますね。

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仕上げに三角刀の刃先を使って溝のエッジを整え、スリットの形状を微修正。
スリットの幅が0.5mm程度あれば、このような加工も行いやすくなってきます。

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最後に、彫り込んだスリット周りの余計な傷を瓶サフ(Mr.サーフェイサー1000)の爪楊枝チョン付けで修正。
乾燥後に軽くペーパーがけしてやれば完成です。

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ペーパーがけ後。
元からあったスリットと比べても違和感なく仕上がったでしょうか?

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彫り足した部分が見えやすい角度でもう一枚。

…この写真、見れば分かりますが後の工程でリベットの打ち直しまでが終わった後のものです。
この角度の写真を撮り忘れてしまったので…ここはこの画像で代用させて下さい。

こうしてアップで見ると少し線がブレている気もしますが…サイズが小さいので、肉眼でこれ以上の精度を出すのは少々キツイです。
このサイズで更なる精密さを求めるなら、手元をルーペで拡大しながらの作業をする必要があるでしょうね。
今回はこれで完成…!とします。

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丸形状 凹モールドの彫り込み

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他の部分も見ていきます。
こちらは腰の正面装甲(所謂フロント・スカートアーマー)です。
画像中の赤い四角で示した部分に丸い凹モールドがあります…が、写真では殆ど形状が読み取れないかもしれないですね。
(右側のものには水性ペンで目印を付けていますが)
この部分、キットのモールドはそれほど浅いものとなっています。
こういう部分は『如何にもプラモデル』という空気、俗に言う『オモチャっぽさ』を感じさせる原因の一つなので、ここもディテールアップ工作の一環として彫り込みを行うことにしましょう。

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こちらの画像は彫り終わり。
ニードルでアタリを付けてから0.5mm径のドリルで浅く彫り込み、仕上げとして穴の底を同径のスピンブレードで均してあげれば良いですね。
最初のアタリさえズレずに付けることができれば、作業としてはとても簡単です。

ドリルを使う場合の定石として、穴のズレを防ぐために最初は小径のものから彫り始め、少しずつ段階を踏んで目的の径にまで穴を拡張しましょう。
今回は穴の径が小さいですが、0.3mm・0.5mm径の二段階で彫り進めていきました。

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ここで使用したドリルはゴッドハンドのドリルブレード。
画像は0.5mm径のものです。

これは通常の刃が螺旋状となったドリル刃とは異なり、文字通り剣先のような形状の刃を回転させて穴を開ける工具。
使い方は普通のドリル刃と全く同じく、ピンバイスに取り付けて使用します。

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メーカーの謳い文句としては、刃を当てる先が曲面であっても対象を捉えやすく、刃先が滑りにくいことを売りとしていますが、管理人としては極細サイズのドリルの折れにくさが気に入って使っている一品です。
0.5mm径くらいなら割と大丈夫なのですが、それ以下の極細径ドリル刃は、油断すると簡単に折れる…!
作業中に工具が折れると、気持ちも折れてしまい作業もしばらく中断してしまいます…笑

その点、このドリルブレードは使用時にも刃先に過度な負担がかかりにくいのか、いつ折れるのか…と言ったヒヤヒヤとは縁遠い…ような気がします。(管理人の主観ですが)
もちろん刃先に気を遣い、工具を労わって使っていくことは必要ですが、極細ドリルの使い勝手としては通常の螺旋状ドリル刃よりも上だと思います。

一応マイナス点も挙げておくと、深い穴を開けるような用途にはあまり向いていないこと、そしてやはりというか、単品のドリル刃としてはかなり価格が高いこと。
また需要のニッチさを考えれば致し方なしですが、0.3mm・0.5mm径といった細サイズはメーカー直販限定で少々購入の敷居が高い…といったところでしょうか。

管理人はその0.3mm・0.5mm径の二種類だけを所持。
キャラクター系ロボがメインのアニメモデラーが補助的に持つ細径ドリル刃としては中々良いものではないかと思います。

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少しドリルの話で脱線しましたが、続きの作業です。
今度は同じパーツにあった大きい方の凹モールド。

ここは元々のキットのモールドがかなり浅かったので、ペーパーがけで一旦平らに均してしまってからの彫り込みです。
作業手順は先程と同じ、ニードル・ドリル・スピンブレードの順で整形します。
ここでは最終的に0.9mm径のドリルとスピンブレードを使用しました。

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実はこの部分の凹モールド、今回は設定画にあるものよりも小さめのサイズで彫り直しています。
キットに元々入っていたモールドは設定画準拠の大きさだったのですが、パーツ形状の中でディテールのバランスを考えた時に、ここは少し不自然に思えてしまったんですよね。
設定とは少しずれてしまうのですが、ここは好みによるアレンジということで…
設定画のようなサイズで彫り込みたい場合は、ドリルの径を少しずつ大きくしながら目的の大きさに近づけていけば良いですね。
ぜひともドリル刃は0.5mmから3.0mm程度まで、0.1mm刻みで揃えておきましょう…!

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そして丸底凹モールドの彫り込みとしては、あと一か所。
画像は前腕のパーツですが、赤い四角で示した部分(分かりにくいので水性ペンで色を付けています)は、キットでは凸モールドになっていますが、設定画ではここも凹モールドになっているようです。

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ということで、ここも凹モールドとして彫り込み。
ここはスピンブレードの0.5mmで仕上げです。
例によって設定画から読み取れる大きさよりも小サイズで彫っています。
(ここも作業完了時の写真を撮っていなかったため、画像はリベットの打ち直しまでが終わった後のものです)
キットのモールドを完全に削り落としてから新規にモールドを追加する場合、元々のモールドが消えてしまう前に何らかの目印を付けておいた方が良いですね。
今回はキットの凸モールドの中心を狙って、ニードルで目印の穴を開けておき、後の彫り込み加工の目印になるようにしています。

丸底凹モールドの彫り直しとしては、こんなものでしょう…!

(参考リンク)
【公式通販】ドリルブレード 単品 各種 (0.3mm / 0.5mm / 1.0mm / 1.5mm / 2.0mm / 2.5mm) 直販限定 | 工具の種類で探す,ピンバイス,ビット(ドリル・刃) | ゴッドハンド直販サイト本店

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腰ダクトの彫り込み

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他に彫り込んでおきたい箇所としては、腰のダクト状モールドがあります。
このような形状のディテールアップとしては、既存のモールドを全て削り落としてからプラ板で作り直す方がシャープになる場合もありますが、今回はキットの構造を活かして削り込みで加工してみようと思います。

ついにタガネを買ってしまう管理人

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そして今回、ここでまた新しい工具の導入です。
スジボリ堂のBMCタガネ…!

各地の口コミでは絶賛を通り越し、もはや定番工具という立ち位置を獲得しているこのタガネ。
ただSNSなどでは刃先の破損報告もチラホラと聞かれるため、心配性の管理人はこれまでずっと買わずにいたのですが…
たまたま覗いた公式通販で在庫があったタイミングということもあり、好奇心にかられてついに買ってしまいました…

と、いうことで…ここでは使用感の確認も含めてタガネを使って彫っていこうと思います。

タガネはお値段1本2,000円から4,000円程度(刃幅のサイズによる)と、なかなかに高価。
少なくとも、スジ彫り用としては最初に手を出す工具ではないと思います。

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なお、今回『量産型』がラインナップされているサイズはそちらを選びました。
こちらは価格も2,000円から3,000円程度と多少お安くなっています。
まあ、その価格で安いという感覚もどうかと思いますが…

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通常タイプ(BMCタガネ)と量産型タガネの主な違いは、持ち手部分の材質・形状と重さ。
少し使ってみた感覚としては、刃先は形状・切れ味ともにどちらも同等のようです。

通常タイプは持ち手がステンレスなのに比べ、量産型はABS樹脂。
量産型の樹脂グリップは持った時に圧倒的に軽く、通常タイプのズッシリとした重量感とは一線を画しています。


どちらが使いやすいかは好みの問題ですかね…

クレオスの『Mr.バリ取り棒G』やゴッドハンドの『かまぼこヤスリ』などの、敢えて本体を重くすることでコントロール性を高めたような工具が好みの管理人としては、どちらかと言えば通常タイプのタガネの方が使いやすいかもしれません。
ただ、入手性の悪さや価格の高さを考えると、量産型でも充分…というか敢えて通常タイプを選ぶメリットはそこまでないようにも感じます。

他にも、通常タイプ用に用意されている後付けのグリップは量産型には取り付け不可、通常タイプの刃先キャップはただのビニールチューブの切れ端なのに比べ、量産型にはピッタリフィットする専用のキャップが付属するなどの違いもあります。
このあたりも含め、それぞれは一長一短というところでしょうか。

(参考リンク)
BMCタガネ – スジボリ堂
量産型BMCタガネ、スクレーパー。スジボリ(スジ彫り)工具です。ガンプラ、フィギュア、プラモデルにおすすめです。

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ダクトの彫り込みに使う工具

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実際の彫り込み作業にはタガネの他にも工具を使い分けます。
タガネはその刃先の繊細さや、材質である超硬合金が持つ破損のしやすさという弱点から考えても、工作の初手で使用するのではなく、他の工具のサポートが必須と考た方が良さそうです。
今回は広い面の彫り込みを行うノミや彫刻刀的な運用なのでスジ彫り時ほど刃にストレスはかからないと思いますが、刃先は労わるに越したことはありません。

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管理人の実際の作業手順としては、まずニードルでスリットの谷間にアタリを付けてから、1mm幅の平ノミ(ここで使ったのはゴッドハンドのビットブレード)でその谷間に向かって削り込み。

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ここで、いよいよタガネを投入です。
今回使用するのは0.075mm、0.50mm、1.20mmの3サイズ。
0.075mmでスリットの谷間をスジ彫り的に彫り込んで更に深くしてから、あとの2サイズを使って刃先のカンナがけでフィンの形を整えたり、エッジをシャープに削り込んだりして仕上げていきます。

破損が怖いので極力、力はかけずに削っていきますが…刃先形状の繊細さ、そしてその切れ味とも確かにこの性能は模型用ノミとしては極上と言えます。
軽い力でサクサクと加工を進めていくことができますね。
なるほど皆さん夢中になる訳だ…(笑)

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そして仕上げはやっぱりペーパーがけ。
細かな部分なので、細切りペーパーの3つ折りをピンセットで挟んで使用します。
番手は400番で充分でしょう。

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と、いうことで一連の加工が終わったダクトのパーツ。
右が加工後のものですね。
彫り込みによってフィンの形状もシャープになり、またフィンの間にも奥行きが感じられるようになっています。
細かな部分ですが、ここまでやっておくと最終的な見栄えは地味に変わってきますよ…!

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おしまい

前回行ったスジ彫りの彫り直しに続き、今回は凹モールドの彫り込みまでができたので、所謂『引き算』の工作…キットを削り込む加工はこれで終了です。
今回のような加工では極小サイズのノミをどう調達するか、何を選ぶかという問題がありますが、スジ彫り用の工具が充実した現在では、ここで使用したもの以外にも色々と選択肢はありそうですね。

ウワサのBMCタガネは、確かにその高価格や人気に見合うだけの超性能…!
…なのですが、その繊細過ぎる刃先を温存するためにもサポート用の工具はぜひ別に用意しておきたいところです。
超硬合金系ではない極小ノミとして、今回使用したカッターノミやライナーチズルは価格も安く、入手がしやすいのではないでしょうか。

そして破損のリスクに怯えながら使うことを考えると、総合的なタガネの使い勝手は正直『微妙』。
心配性の管理人としては、ある程度ラフに扱える工具の方が安心して一軍投入することができますね。
スジ彫り用として考えても、曲線彫りに弱いという弱点があり、汎用性には欠けます。
タガネを積極的に使っていくとしたら、ノミとしても、スジ彫り用としても、他の工具である程度までの下彫りをしておいてからが安心というところでしょう。
仕上げの段、ここぞという場面で投入し、ピンポイントでその脆さを伴った超性能を活かすというイメージでしょうか。
破損のリスクが少なく安心して扱えるスジ彫り工具としては、シモムラアレックの『ホーリー』をおすすめしておきます。

さて、次回は凸ディテールの作り直し…
ディテールアップ工作はまだまだ続きます。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編3.「ディテールアップ工作~スジ彫りの彫り直し」

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前回までに『ゲート』『パーティングライン』『合わせ目』という表面処理の各要素を処理していった三式光武。
このまま塗装に進んでももちろん良いのですが、今回は目立つ部分を中心に簡単なディテールアップ工作も行って仕上げます。

このキットは小スケールの割には良くモールドが入っていますが、プラモデル(インジェクションキット)としての限界から、どうしても形状が甘い部分はあります。
そういった部分に手を入れてあげると、細部が締まってシャッキリクッキリ…キットの良さがより引き立ちますね。
小スケールモデルでは相対的に小さなミスが目立つ粗ともなりやすいので、いつもより慎重に、気を引き締めて作業していきましょう…!

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スジ彫りの彫り直し

手を入れやすい引き算の工作として、削り込み・彫り込みから見て行きます。

彫り直したい箇所はスジ彫りと凹モールド。
プラモデルの常として、キットのままでは彫りが浅く印象も怠くなりがちなもの。
スジ彫りは細く・深く、また凹モールドは歪みを修正しつつクッキリと彫り直してあげましょう。

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今回の記事では、まずスジ彫りを見ていきます。
キットの中でスジ彫りを修正したいパーツは大体こんなところ。
数としてはそれほど多くありませんが、顔に当たる胴体正面や腰・肩アーマーなどは完成形を正面から見た時にも目立つ部分なので、ここを修正する工作の効果は大きいでしょう。

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こちらが光武の顔にあたる胴体正面のパーツ。
この写真は、基本工作としてゲートとパーティングラインの処理をしただけの状態です。
成形段階でのスジ彫りモールドが入っているのが分かりますが、深さも浅く、また曲面構成のパーツなのでラインに歪みも出ています。
まずはここを例に加工の手順を見ていくことにしましょう。

既存のスジ彫りモールドを彫り直す基本的手順

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スジ彫りを彫る(彫り直す)場合、いきなり仕上げ用の工具で彫ってはいけません。
初手としては『アタリ付け』が何よりも重要…!

特に今回のような曲面構成のパーツに曲がりやクランクを含んだスジ彫りを彫っていく場合、アタリがしっかりと付いていないと刃先がオーバーランして余計な傷を付ける可能性が非常に高いです。
はやる気持ちを抑えて、まずはじっくりとアタリを取りましょう。

ここで使っているのは模型用のニードル。
管理人はハセガワトライツールのモデリングスクライバーを使っていますが、模型用として売られている物なら何でも良いかと。

キットに元から入っているスジをなぞるようにして、後から切り込む仕上げ用のスジ彫り工具の通り道を作っていきます。

よく言われるスジ彫りのコツとしては『脱力すること』がありますが、これは本当にその通りで、力を入れずに工具を扱うことがキレイなスジ彫りの加工の第一歩。
実際に加工をしていくイメージとしては『脱力』という言葉からから更に一歩進めて『撫でる』と言ってしまっても良いくらい。
針先で既存スジ彫りの溝の中を撫でるようにけがいていきます。

指先には全く力を入れずに針で『撫でる』動作を30~50回程度、溝からはみ出さないようにゆっくりと繰り返してアタリをつけましょう。
力を入れていなければミスも少なくなりますし、もし針先のオーバーランで余計な傷が付いたとしても、その傷は非常に浅いものになるので、仕上げのペーパーがけ(最悪でも瓶サフ1000のチョン付けで充分)で消えてしまう程度のものになりますからね。

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ニードルの『撫で』で充分にアタリが付いたら工具を変えて彫り込んでいきます。
ここではシモムラアレックのホーリー 0.1mmを使いました。
ニードルの痕がガイドになるのでキットのモールドにそのまま切り込む場合よりも格段に刃先は外れにくいですが、それでも最初は慎重に…このホーリーでも力を入れずに撫でるような力加減から始めた方が安全です。

殆ど力を入れなくても10から20回ほど撫でる動作を繰り返す頃には、スジ彫りもかなりハッキリとしてきているはず。
ここまでくれば、もう少しだけ刃先に力を加えても大丈夫。
刃先でカリカリと引っ搔くようにしてスジを深くしていきましょう。
また、クランクになっている形状では曲がり角の頂点部分が浅くなってしまわないよう、曲がり角を始点にして彫り進めたりもしながらスジ彫りの形を整えていきます。

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彫り終えたパーツ。
加工前と比べてスジ彫りが深く細くなってシャープな印象になっている一方、スジのクランク部分の周囲には若干の余計な傷もついてしまいました。
気を付けて作業をしていても、ミスはつきもの…多少の傷は致し方なしといったところ。

このような傷は彫り作業の比較的初期、まだスジが浅い段階で付いたものです。
彫りを『撫でる』力加減から始めていれば、こんな時の傷もごくごく浅くて済みます。
このパーツの場合でも瓶サフ1000とペーパーがけで処理できる範囲のものでしょう。

もしこれを最初から力をかけてゴリゴリと彫り進めてしまっていたら…ミスした時の傷もより深く・大きくなっていたはず。
場合によってはスジ彫りそのものが曲がってしまうこともありますね。
そのような事態を防ぐためにも、やはりスジ彫りには『脱力』が必須なのです…!

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色々なスジ彫り形状への対応

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直線のスジ彫りにはエッチングノコも使いやすいです。
上の画像で使っているのはデザインナイフのホルダーに取り付けて使うタイプ。
(雲母堂本舗のライナーソー タイプB 0.08mm)
本彫り込みの前にニードルでアタリを付けておくのは先ほどの例と同じですね。

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彫り上がり。
エッチングノコを使うと直線をしっかりと出しやすいので、スジ彫りの形状によって道具も使い分けましょう。
もちろん、ホーリー等他の工具で彫っていっても大丈夫です。
そこはお好みで…

そしてここでもやはりと言うか、このパーツでもアタリ付けの段階でニードルの針先がブレたため、本来のスジ彫りから大きく逸れた傷が付いてしまいました。
(写真では分かりやすいように、黒い流し込み接着剤でキズ部分に色を付けています)

それでも作業時には脱力していたおかげで、傷はごく浅いもので済みました。
この程度なら先程と同様、後で瓶サフとペーパーがけで修正すれば良いですね。
繰り返しですが、やはり『脱力』が大事…!なのです。

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今度は曲線のスジ彫り。
ラインが滑らかに繋がるように気を付けたいところ…
とはいえ、工作の手順自体は同じです。
まずはニードルの針先で既存のスジ彫りモールドを『撫でる』ようにしてアタリを付けましょう。
『脱力』が大事…!

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曲線のスジ彫りにはホーリーが追従しやすく、使いやすいと思います。
最初は撫でるような力加減から始めて徐々に深く彫り込んでいきましょう。

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ホーリーで10から20回程度を目安に何度も軽く溝をなぞって彫り込んだ状態。
最終的にはある程度カリカリと引っ搔くように彫り込んでいますが、力を入れ過ぎるとラインがぶれやすいので最後まで注意が必要です。

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今度は肩アーマー。
これは少し難しいパターンです。

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同じパーツを別角度から。
スジ彫りのラインとしては直線の組み合わせなのですが、途中にクランクもあり、また幅広の凹モールドと交差している部分があるために工具の刃先が逃げやすい形状です。
射出形成の抜きの関係で、そのスジ彫り自体も斜めに歪んだ形状になっていますね。
ラインのブレを防ぐためには、最初のアタリ付けを今まで以上にしっかりと行う必要があるでしょう。

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とはいえ、基本的にやることは同じです。
まずは形状の簡単な部分から、モールドに沿ってニードルの針先でアタリ付け。
撫でるような力加減で30から50回程度繰り返します。

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幅広の凹モールドと交差する部分は、ニードルでは針先が逃げてしまいます。
ここはアートナイフの刃先を押し付けるようにしてアタリを付けましょう。

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今回は更に念を入れて、目立てヤスリを使ってアタリをさらにハッキリさせます。
アートナイフの刃先を押し付けてできた直線の傷(アタリ)に沿って、ごくごく軽く行っています。
このような場面で使える工具としては、目立てヤスリの他にエッチングノコ等も直線のケガキを行いやすくて良いかもしれませんね。

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アタリを付け終えたパーツ。
アートナイフや目立てヤスリを使った部分は本来のスジ彫り部分よりも外に傷がはみ出していますが、ここではしっかりとアタリが付くことの方が大切です。
傷は後で埋めれば良いのですから…!

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ここまでできたら工具を変えて本彫り込みです。
ここでもホーリー0.1mmを使っています。
アタリがしっかりと付いていればこの段階での彫り込み自体は非常に楽。
クランクの頂点が変に浅くなったりしないよう、向きを変えながら彫っていけば良いでしょう。
もちろん、これまで同様に脱力は大切ですよ…!

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ホーリーでの彫り終わり。
先にアタリを付けていたお陰で刃先が逃げることもなく、スジ彫りのモールドに沿って十分な深さの彫りを入れることができました。

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またこれは好みの問題ですが、スジ彫りがパーツ上面だけで途切れているのは変に感じたので、今回は側面もスジ彫りが繋がるように彫り込んでおきました。
ここではハセガワトライツールのエッチングノコを使用。
ナイフの刃先を押し付けてアタリを付けた上から彫りを入れます。

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彫り終わり。
パーツ側面にもスジ彫りディテールが繋がりました。
彫り直しに使ったのは、トライツールのけがき用ではない方のエッチングノコ(モデリングソーセット TP3)なので、比較的太めに彫りが入っています。
(※公式サイトにサイズ表記がなく正確な刃厚は不明…ですが、感覚的には0.2mm前後でしょうか?)

パーツの正面に元々入っていた既存のスジ彫りモールドは、射出形成の抜きの関係で歪んでいるために実際よりも太めに見えます。
ここではそちらと違和感なく繋がるように、敢えて幅広のスジ彫りとしてみました。

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黒い流し込み接着剤をスジ彫りに流して形状を見やすく確認してみます。
やはりアートナイフの刃先でアタリを付けた部分、ラインの曲がり角付近に余計なはみ出し傷がありますね。
とはいえ、あくまでもアタリなので傷としてはごく浅いものです。
この程度なら修正も容易でしょう。

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浅い傷とは言ってもペーパーがけだけでは消えないので、ここは瓶サフを使います。
クレオスのMr.サーフェイサー1000を爪楊枝の先でチョン付けして傷を埋めましょう。
なるべく余計な場所、特にスジ彫りの中に流れ込まないように注意してサフを盛っていますが、もしスジの中に入ってしまったとしても、あくまでもサフなので…彫り直し自体は簡単です。

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瓶サフの乾燥後にペーパーがけをして仕上げます。
本彫り込みでミスしてしまうと傷も深くなるので修正が大変ですが、アタリ付け程度の浅い傷なら修正も楽ですね。

(参考リンク)
【公式通販】雲母堂本舗 エッチングスジ彫り工具ライナーソー008B型 (0.08mmライナーソーB型) | 工具の種類で探す | ゴッドハンド直販サイト本店

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キットのモールドについて

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こちらはキットのスジ彫りを彫り直した胴体・腰部分正面のパーツ。
下のカッターマットのマス目が1cm四方なので、このサイズ感を考えればよくモールドが入っていると言えるのですが、実はこのキット…設定にあるスジ彫りは一部省略がされているようです。

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画像はキット付属のインストより。
パッと見でも、矢印で示した部分のスジ彫りがキットには無いことが分かります。
脚部の装甲などでも同様に省略されているスジ彫りモールドがあるようです。

完全に設定通りにするならスジ彫りの新規追加・彫り込みが必要ですが…
今回の制作ではキットのまま、基本的に既存のモールドを修正するのみに留めています。

深追いすると完成しなくなる恐れがあるというのが一番の理由ですが、旧(サクラ大戦)シリーズに馴染んできた管理人の感覚としては、この設定通りのスジ彫りはディテール過剰という印象も受けてしまいます。
先代の光武二式の時はハードがドリームキャストだったので、グラフィック描画能力との兼ね合いで敢えてデザイン段階からディテールが減らされていた可能性もありますが…霊子甲冑は光武から光武二式くらいのディテール密度がイメージに合うような気がしますね。

ま、ここは好みの問題ということで。
もし設定通りにスジ彫りを追加したい場合は、鉛筆で下書きをした上でアートナイフの刃先でアタリを付けてから彫り込んでいけば良いでしょう。
新規のスジ彫り追加工作の詳細については、またの機会にでも。

おしまい

ガンプラ等のキャラクター系ロボットでもディテールアップとしては定番的なスジ彫りの修正・彫り直し。
慣れないと失敗も多かったりしますが、しっかり彫り直しておけばその分効果も大きいです。
それぞれの工具は好みで好きなものを使えば良いと思いますが、実際の作業ではとにかく『脱力』と充分な『アタリ付け』が大切ですね…
たとえガイドテープを併用したとしても、焦って最初からガリガリと彫ってしまうとラインはブレブレです…!
とはいえ、ここは管理人もまだまだ修行中。
記事を通して自分の作業を振り返りながらステップアップしていきたいと思います…

次回もディテールアップ工作の続きです。
彫り込み加工の第2回として、今度は凹形状のモールドに手を入れていきます。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編2.「押さえておきたい基礎工作~極小パーティングラインの削り込みと便利なお助け工具たち」

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今回は表面処理、主にゲートやパーティングラインの処理を見ていきます。
プラモデル工作では基本中の基本とも言える工程ですが、ここでもやはりというか、このキットでは近年の親切設計ガンプラのように簡単にはいきません。

光武は曲面主体なデザインの上に小スケールキットということで、加工する個所に工具が当てづらいんですよね。
丁寧な工作を心がけるのはもちろん、作業の難度を下げるために手持ちの特殊な工具もどしどし投入していきましょう。
道具に投資できる余裕があれば、これを機会に細部加工用の工具を増やしてしまうのも良いかもしれません。
今回の記事では管理人の作業手順と共に、使った道具についても見ていきましょう。

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1/35三式光武とパーティングライン

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例として出したのは本体の前面、頭部がないデザインの光武にとっては顔になる部分のパーツです。
ピンクの成形色で状態が確認しづらいですが、パーツのど真ん中にパーティングラインが出ています。

このキットでは(太刀の鞘を除き)合わせ目消しが要らないパーツ構成となっている代わりに、パーティングラインはパーツ中央の目立つ部分に堂々と配置されている場合が多いです。
途中に段差やディテールがあってもお構いなし!
基本的な形状だけはカッコ良く造形しておくので、後はモデラー側で処理してください…という、初心者の方にとってはスパルタ的とも言えるキットとなっています。

しかし、一つ一つ丁寧に加工をしていけば大丈夫。
また、現代では細部まで攻め込める便利なお助け工具も各メーカーから数多く発売されています。
道具の力も上手く利用しながら効率的に処理を進めていきましょう。

パーティングラインの削り込み

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先程のパーツを例に実際の削り込み作業を見ていきましょう。
最初はナイフやノミなどの刃先でカンナがけをして粗削りをするのが良いですね。

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ここで使っているのはGSIクレオスの「Mr.バリ取り棒G」…変な名前の工具ですが、要はカンナがけ専用に作られた3mm幅の平ノミです。
本体と一体成型された肉厚の刃先は安定感が高く、切削力もかなり高いものとなっています。
アートナイフでも同じ作業はできると思うかもしれませんが、これがあるとないとでは作業効率がまるで違ってきますね。
パーティングラインや合わせ目消しの粗削り程度なら、驚くほど簡単に削り込んでいくことができますよ。
価格もそこまで高くないので、ぜひ試して欲しい工具です。

ナイフのように持ち手に対して刃先が斜めに付いている工具では細かな形状のパーツに攻め込めない場合がありますが、これは平ノミのように刃が正面方向に付いているので、このような小スケールモデルのパーツにもかなりの部分で対応することができます。
今回の制作では、刃が当てられる個所ではほとんどこの工具で粗削りをしました。

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また、このパーツにはパーティングライン上にゲート痕もあるため、そちらはヤスリで削ります。
この金ヤスリはゴッドハンドの「かまぼこヤスリ 8mm(単目 細目)」。

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金ヤスリとしては比較的マイルドな削り味で、重量のある本体を活かして力加減のコントロールもしやすいため、ゲートを慎重に削るような作業には向いています。
かまぼこ形状によって側面を傷つけにくいというキャッチコピーの工具ですが、管理人的にはそこはオマケ的な要素かと、、、

同サイズの普通の平ヤスリよりも倍以上はあるかと思われる、本体の重さによるコントロールのしやすさがこのヤスリ最大の売り。
単純な切削力という点での性能的には可もなく不可もなく、、、な割に価格が高めなので強くはおすすめしませんが、工具に投資できるなら常備する金ヤスリとしては扱いやすい部類でしょう。

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パーティングラインの削りに戻りますが、逆エッジのキワは三角ヤスリで削ります。
力を入れすぎると簡単にえぐれてしまうので、ごくごく軽く…慎重に削りましょう。

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このヤスリは上野文盛堂の三角ヤスリ・超精密です。
模型用の金ヤスリとしては古くから発売されている定番的なモノかと。
このヤスリ、目が細かいのは良いのですが、その分削りカスでの目詰まりもしやすいです。
そこは一長一短というところですね。

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(参考リンク)ゴッドハンド かまぼこヤスリ 8mm 単目 細目 中目 直販限定 平ヤスリ 金属ヤスリ 模型用

(参考リンク)ヨドバシ.com – 上野文盛堂Y205 精密ヤスリ 三角 [プラモデル用工具]

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三角ヤスリである程度まで削ることができたら、再びバリ取り棒に戻って表面を軽く整えつつ形状を仕上げます。
バリ取り棒は刃先のエッジも鋭く仕上げられているので、逆エッジのキワにも切り込みやすいですね。

なお、この写真で刃先を当てている辺りにはリベットの凸モールドがありましたが、パーティングラインと一緒に削り落としてしまいました。
再生が簡単なモールドは後から作り直すことを前提で、一旦削ってしまった方が表面処理はスムーズに作業できる場合も多いです。

この後の、表面の最終仕上げはやはりペーパーがけで。
このような曲面のパーツには神ヤスのようなスポンジヤスリも使いやすいですね。
番手は400番だけでも十分でしょう。

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このパーツでは中央にスリット(カメラアイの可動レール)がありますが、パーティングラインは容赦なく周辺ディテールを横断する形で出ています。
サイズが小さいこともあって、ここの削り込みは少し大変ですね。
まずは作業中に形状が見やすくなるように、水性の筆ペンでパーティングラインの周囲に色を付けました。

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極小サイズのヤスリがあれば、このような個所の粗削りも捗ります。
ここで使っているのは「シャインブレードUNO」、1mm幅の金ヤスリですね。

1mmという幅は小スケールモデルのパーツにとっては意外と大きく、これでヤスリを当てられる形状は割と限られていたりもするのですが、使える個所はこのヤスリで削り込んでしまいます。

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「シャインブレードUNO」。
幅1mmで狭い箇所の削りにも対応できるのかと思いきや、厚さも1mmあるために小回りが効かず、細かな部分には差し込めないことも多いです。
それでも使える形状の削りには便利で、他では代替が利かない便利工具ですね。
ヤスリ面は表と裏で粗さが違うのですが、表面処理では主に細かい方の目を使うことになると思います。
切削力自体はかなり高く、またシャインブレードシリーズ共通の特徴として、削りカスの除去が圧倒的に楽で目詰まりとはまるで無縁なのもヨシ。

使用頻度は高くはないですが、持っていればピンポイントで活躍する逸品です。

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スリットの中を跨ぐパーティングラインもしっかり削りましょう。
狭く、奥まった形状なので工具が届きにくいですが、ここはパーティングラインの出ている部分が小さな段差になってしまっているので、しっかりと処理をしておかないと見栄えが悪いです。

また、このスリット部分は光武の「目」にあたるカメラアイの近辺なので、人が完成品を見た時にまず目線を送る場所で、ここがきちんと処理できているかどうかは作品全体の印象にも大きく影響します。
(人間の本能として、人が人型の物体を見た時には、まず無意識的に「顔」に当たる部分を探すため)

このような狭い隙間を削るにはプラバンの細切りや調色スティックのヘラ部分に耐水ペーパーを貼り付けた簡易ヤスリが定番ですが、今回はここでもお助け工具を使っています。

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これはスジボリ堂のテーパーダイヤモンドヤスリ、2.5mm幅の400番。
サイズやヤスリ目の粗さによって数種類が発売されていますが、とりあえず買うなら一番小さい2.5mm幅が使いやすいと思います。
番手は、通常のスチロール樹脂を削るなら400番が良いですね。

このヤスリは先端に向かって板厚が薄くなるようなテーパー形状となっていて、狭い隙間にも差し込みやすくなっています。
今回のような形状のパーツには正にうってつけ。
地金の側面や先端にも砥粒が接着されているので、それらを活かすことで様々な形状の削り込みにも対応します。
これも工具箱に加えておくと、細部加工の際には大活躍してくれると思いますよ。

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という訳で、パーティングライン加工前後の比較です。
成形色がピンクなので状態が見にくいかもしれませんが、パーツの中央部分を横断するように縦に入っていたパーティングラインを削っているのが分かるでしょうか。
加工前は小さな段差になっていたカメラアイ用スリット部の変化が分かりやすいかもしれませんね。

一つ一つの変化は地味ですが、このような基礎工作をしっかりとこなすことで完成品の見栄えは断然変わってきますよ。
頑張って加工しましょう…!

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(参考リンク)スジボリ堂 テーパーダイヤモンドヤスリ 幅2.5mm 400番 [TEPA020]

各部の注意したいパーツ形状

太もも

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違うパーツも見ていきましょう。
こちらは太モモにあたるパーツ。
縦に走るパーティングラインが見えていますね。
このように、このキットではほとんどのパーツに堂々と目立つパーティングラインが出ています。
ここもかなり細かく、逆エッジもあるため加工には注意が必要そう、、、

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曲面を削るお助け工具といえば、シモムラアレックの「Rボコ2」もありますが、ここでは意外と使いにくいです。

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パーツが小さすぎて工具の刃も当てづらいですし、力加減のコントロールも難しく、効率的に削ることができません、、、

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これくらいの小さなパーツには曲面であっても「バリ取り棒」の方が使いやすいかと。
「バリ取り棒」は表面処理においては割と万能工具で使用頻度もかなり高いです。

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「テーパーダイヤモンドヤスリ」の2.5mm幅も良いですね。
使っているのは400番です。
ヤスリの側面でも削ることができ、逆エッジもある程度はこれで大丈夫です。

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処理しやすい場所にあるゲートは「かまぼこヤスリ」で削ります。

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「かまぼこヤスリ」が当てられない場所にあるゲートは「三角ヤスリ」で削ります。
同じ作業でもパーツ形状によって工具を使い分ける必要がありますね。

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仕上げのペーパーがけ。
ここでは「神ヤス!」の400番を使っています。
水砥ぎの方がペーパー面は長持ちするのですが、今回はパーツ表面の状態を把握しやすくする目的で空研ぎをしています。

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下腿

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下腿の下側など、入り組んだ個所にあるパーティングラインは「テーパーダイヤモンドヤスリ」の先端部分で慎重に削ります。
「テーパーダイヤモンドヤスリ」なら他の工具ではなかなか攻め込めない狭所にも対応できることが多々ありますよ。

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こちらは400番のペーパーを「折らないで」隙間に差し込んで削り作業をしているところ。
本当に狭い隙間にはペーパーを1枚単独で差し込まないといけない場合もあります。
とはいえ、そこまで狭い箇所はこのキットでも珍しいパターンだと思います。

サイド・スカートアーマー

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サイド・スカートアーマーのパーツではゲートがこんなところに付いています。
周辺のディテールに邪魔をされて削りにくい形状ですね、、、

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こんな場合は、まずアートナイフでゲートをギリギリまでそぎ落とします。
パーツをえぐらないよう慎重に、、、

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また、刃の先端方向に押さえる側の指を置かざるを得ないので、オーバーランしてザックリといかないようにも気を付けて、、、
対策としては、新品の切れ味の良い刃に交換しておき、極力、力をかけないで作業をするようにした方が良いですね。

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ナイフの作業ではゲートを少し残す程度までに留めておき、次はテーパーダイヤモンドヤスリの先端部分を使っていきます。
なるべく余計な部分にヤスリを当てないように、また小さな円運動を意識してヤスリを動かし、細かなストロークで削りましょう。

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幅が合えば三角ヤスリも使っていけますが、こちらは力加減をミスすると容易にパーツがえぐれるので慎重に。

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ゲート処理前後のパーツを比較。
周囲の余計な場所を傷つけないように、慎重に作業をして仕上げましょう。

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フロント・スカートアーマー

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フロント・スカートアーマー、股関節の前に付く装甲ですね。
パーティングラインが中央に入っているのは他のパーツと同様ですが、曲面で構成された逆エッジがあったりして難しい形状です。
先程までの例と重複する作業内容もありますが、こちらも順を追って見てみましょう。

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まずは処理をしやすい部分から攻めていくことにします。
ゲートがあるのはパーツのフチにあたる装甲断面なので、ここは大型の工具でも対応できます。
お馴染みのかまぼこヤスリでゲートを粗削り。

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テーパーダイヤモンドヤスリの先端で仕上げます。

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パーティングラインの粗削りはバリ取り棒で。
バリ取り棒は小回りも効いて切削力もあるので使いやすいですね。

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逆エッジのキワぎりぎりのパーティングラインはノミで軽く彫り込むように削ります。

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使っているのはハセガワトライツールの1mm幅の平ノミ。
こちらも上野文盛堂のヤスリと並んで、昔からの定番中の定番といった感じの工具ですね。

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テーパーダイヤモンドヤスリで仕上げ。
細かな部分は小さく折りたたんだペーパー片をピンセットでつまんで削ったりしても良いのですが、ダイヤモンドヤスリを使ってしまうのも手軽です。

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リベットモールドの一部はパーティングラインと干渉しているので、一旦削り落としてから後で再生することにします。
ここは幅1mmの金ヤスリ、シャインブレードUNOでリベットごとパーティングラインを削ります。
シャインブレードは切削力が高いので少ない回数の削り込みで整形をすることができ、細かな部分のコントロールもしやすいです。
とはいえ、不要部分にヤスリ面を当てるとパーツ表面が容易にえぐれるのは他の金ヤスリと同じですね。
…それにしても本当に細かい!

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また写真だと状態が分かりにくいのですが、加工前後の比較。
逆エッジの処理は制作者の技量の差が出やすいポイントなので気を遣いたいところです。

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前腕

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前腕はここまで1パーツによる成形。
ここにも容赦のないパーティングラインがあり、またサイズ自体もかなり小さいです。
画像では水性筆ペンで薄く線を引いていますが、逆エッジ・曲面・凸ディテールを跨ぐのは当然のこと、更にここでは幅の狭い凹ディテールの中にもパーティングラインが出ています。
これはなかなか難しそうですね、、、

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取っ掛かりの粗削りはやっぱりバリ取り棒で。
削れるところはこれで削ってしまいましょう。

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ヤスリも併用すると効率よく削っていくことができますね。

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こちらは「シャインブレードfina」、幅3mmのヤスリです。
先に紹介した幅1mmの「シャインブレードUNO」とはパーツ形状によって使い分けましょう。

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その「シャインブレードUNO」も、もちろん使っていきます。
これは逆エッジのキワを横から削っているところ。
幅が狭すぎると流石のバリ取り棒も使いづらいので、ヤスリも併用した方が良いですね。
このような特殊な金ヤスリがない場合は、『プラバンの細切りにペーパーを貼り付ける』『細かく折りたたんだペーパー片をピンセットで掴んで当てる』などで対応できるかと思います。

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ちなみに、シャインブレードは金ヤスリとしては切削後がかなりきれいに仕上がるようです。
上の画像はこのパーツのゲートをシャインブレードで削った状態ですが、これだけでかなり滑らかな表面になっていますね。
これなら仕上げのペーパーがけも楽になりそう。

シャインブレードは表と裏で粗さの違うヤスリ目が入っていますが、ここはシャインブレードfinaの細かい方(#1000相当)で削っています。
感覚的にペーパーの1000番よりは粗い気がしますが、滑らかな削り痕なのは確かですね、、、
目が細かくても切削力もきちんとあり、削っている際の手応えもしっかりと手に伝わってきます。
プラを削る程度なら目詰まりもまずしないですし、総じて扱いやすいヤスリかと思います。
(ただし、この手の高性能工具の例に漏れず高価格で、普通のヤスリの3倍くらいの値段がしますが、、、)

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パーティングラインの処理に戻ります。
こちらはこのパーツ最大の難所、凹モールドの中に走るパーティングラインです。
ここを直接ヤスリで削るのは不可能なので、極細のノミやスジ彫り用の工具も利用して整形するのが良いですね。
上の画像ではスピンブレードの0.5mmをノミとして使用し、パーティングラインを削り取っているところ。

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最初は刃先を押す方向に動かしてパーティングラインの余計な出っ張りを削り、あとは軽く引く方向に動かして刃先のカンナがけで表面を整えましょう。

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カンナがけの段階では0.5mm幅のラインチゼルも使っていくことができますが、こちらは力加減によっては切削面が荒れやすいので注意が必要ですね。

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タガネやカーバイトなどの超硬合金系のスジ彫り工具なら、もっとシャッキリクッキリ削れるのでしょうか?
管理人はそれらを未所持のため、今回はスピンブレードとチゼルのみ使用です、、、

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最後はペーパーがけで仕上げます。
こちらは「つまようじヤスリ」の先端に付けたペーパーを縦に当てているところ。
凹ディテールの幅が0.5mmなので、ペーパー1枚なら溝の中に差し込んで側面を削ることができますね。

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処理が終わったパーツ。
凹モールドの中にあったパーティングラインもきれいに消すことができました。
削り取った凸モールドは後で再生することにしましょう。

ある程度は工具が充実していないと処理が大変な形状ですが、ない場合はペーパーの細切りなどで何とか対応したいですね。
その場合は作業性を重視して、表面処理では標準的な400番よりも、もう少し粗目の番手のペーパーを使用しても良いかもしれません。

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手首

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手首は指の側面にパーティングライン。
指にパーティングラインが出ているのはガンプラ等でもお馴染みなので、ある程度慣れているモデラーさんならルーチンで処理していける部分なのかもしれません。
関節部分の凹みが少し厄介なだけで、基本は他のパーツの処理と変わりませんね。

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ということで、ここでは要点として便利工具の紹介だけ。
指関節の凹み部分を削るのには極細のダイヤモンドヤスリがあると作業が捗ります。

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スジボリ堂の極細ダイヤモンドヤスリ四角。
0.6mm×0.5mmという極細の四角柱形状をしたダイヤモンドヤスリです。

同社のテーパーダイヤモンドヤスリよりも更に細かな個所に攻め込むことができる逸品です。
これなら指関節のような細かな凹ディテールも楽に削ることができますよ。
この工具で対応できないこれ以上の狭所には、目立てヤスリなどスジ彫り用の工具を使っていくことになると思います、、、
400番相当と600番相当の2種類が発売されていますが、今回は切削性の良い400番相当を使用しました。

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関節だけでなく、指の股などもこれなら削りやすいですね。

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仕上げはやっぱりペーパーがけ。
曲面なので神ヤスで、、、といきたいところですが、指の間などは狭くて神ヤスが入らないため折りたたんだペーパーで削っています。
ここでは400番のペーパーを2つ折り、空研ぎで使用。

(参考リンク)スジボリ堂 極細ダイヤモンドヤスリ 四角 0.6×0.5 400番相当 [GOKU020]

マフラー

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霊子甲冑・光武の特徴であるマフラーです。
霊子甲冑は『蒸気併用霊子機関』という謎動力(笑)で動いているため、排気のためのマフラーが機体の特徴ともなっています。

そのマフラーですが、このキットでは片側2本分が1パーツでの成形。
当然のようにここにもパーティングラインが出ているのですが、ここではそれ以外にも、もう一つ注意したい点が。

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最近のキットでは珍しくなったバリが出ていますね。
昔はガンプラ等でもバリは良く見かけたものですが、最近は各メーカーの金型技術が上がったせいなのか、管理人はバリ自体を久しぶりに見たような気がします。

形状自体は薄皮の成形不良部分なので、ナイフで削ぐようにすれば良いだけですね。
このバリはキットの個体差かとも思ったのですが、ホビージャパンwebに掲載されている作例でもこれと同じ場所にバリが出ているのが確認できますので、これはキットの仕様なのかもしれません。

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そして、そのバリとパーティングラインを整形したパーツがこちら。
マフラーの先端方向から見ると、微妙につぶれた円形になっているのが分かります。
これは管理人がヤスリがけをミスして一部を平らにしてしまったのではなく、このパーツは最初からこのような形状になっています。
恐らくインジェクションキットの限界かと、、、

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一応、表面処理の過程で膨らみが足りない部分にはパテ盛りをして出来る限りの修正を試みましたが、完全な真円を出すにはパーツ自体の作り直しが必要だと思います。

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ただ、このマフラーパーツは、テーパー・逆テーパーが組み合わされた形状で、自作は非常に困難です。
管理人の経験・技量では形状修正のための工作の選択肢が出てきませんでした、、、
と言うことで、今回はここまでの加工に留め、深追いはしません。

上の画像は本体のパーツにマフラーを組み合わせてみたところ。
意外と違和感はない、と思います、、、
言われなければ分からない程度の歪みでしょうか、、、?

太刀

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装備武器の太刀です。
柄、鍔、刀身の3パーツによる構成ですが、それぞれにパーティングラインがあります。
上の画像は刀身のパーティングライン処理後。
刀の刃や峰にあたる部分をぐるりと回り込むようにパーティングラインが出ていました。
削り込み自体は簡単な形状ですが、インジェクションキットの限界なのか刀身の刃にあたる面が分厚く、刃物というよりは鈍器のような造形なので、後でディテールアップの一環としてシャープに削り込んでも良いかもしれません。

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そして、これまた処理が難しいと思われるのが刀の柄にあたるパーツ。
細かな凹凸が繰り返されたディテールの真ん中を跨ぐようにパーティングラインが走っていて、これまた処理が大変そうです。
この写真はややアップで載せていますが、下に置いているカッティングマットの1マスが1cmですから、その細かさが分かるでしょうか。
幅1mm以下の凹モールドの中を削らなくてはならないので、ここでもまたスジ彫り用の工具を使うなど、道具を工夫する必要がありそうです。

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ここは順を追って見ていきましょう。
ゲートは削りやすい形状なので、かまぼこヤスリで普通に処理します。
ここは特に問題ないですね。

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パーティングラインの処理では、まずは削りやすい凸部から攻めていきましょう。
三つ折りにした400番のペーパーを空研ぎで使っています。

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凹ディテールの中を除いて削り込みが済んだ状態。
ここまでは簡単なのですが、問題は凹部をどうやって削っていくかですね、、、

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パーツ自体がかなり小さいので、ノミでの掘り込みはパーツをバイス等でしっかり固定するなどしないと難しいと思います。
ここはヤスリ系の工具で削り込むのが良さそうですね。
幅1mm以下の狭所に対応できるヤスリは、管理人の手持ちの中ではこの3種類あたり。

この中では、ゴッドハンドのスジ彫りヤスリが最も細い隙間の削りに対応できます。

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それぞれの切っ先の比較。
左から『極細ダイヤモンドヤスリ 四角』『匠之鑢・極 玄人 刀刃』『スジ彫りヤスリ 極小』です。
左の二つはアップで見ると少し太めにも見えますが、HGのガンプラ等ではあると使いやすいサイズ。

『刀刃』のヤスリも持っていると、ジオン系MSの動力パイプの溝にあるパーティングラインを削る際などに、サイズが丁度良いかと思います。

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今回は最も細く削れるゴッドハンドのスジ彫りヤスリ(極小)を使いました。
流石スジ彫り用の工具だけあって、かなりの細い線が引けます。
こんな極細凹モールドの中を削るのにも丁度良いですね。

他では代替できない性能なのでこちらも是非入手を、、、と言いたいところなのですが、こちらは如何せん価格が高すぎて気軽には勧められません、、、
使いやすいことは確かなので、工具に投資ができるなら。

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最後に全体を軽くペーパーがけして金ヤスリの毛羽立ちを取り除いておきましょう。
ここでは神ヤスの400番を使用。

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かなり細かなパーツでしたが、何とか削り込みが完了。
ここは工具の力に助けられたという感じですね。

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(参考リンク)スジボリ堂 極細ダイヤモンドヤスリ 四角 0.6×0.5 400番相当 [GOKU020]

(参考リンク)ゴッドハンド スジ彫りヤスリ 各種 日本製 目立てヤスリ ディテール スジボリ モールド彫り スジボリヤスリ

鞘の合わせ目消し

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太刀の表面処理に続いて、鞘の方も見ていきましょう。
この鞘は、このキットで唯一合わせ目消しが必要な部分です。
(上の画像は貼り合わせるパーツの内側面を見ています。)

パーツ分割は潔い中央でのモナカ割り。
表面にはディテールが多いですが、ここでもパーティングラインと同様に細かく削り込んで処理していきましょう。

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接着の前に、まずはゲートをきちんと削っておきます。
後で整形するのが前提とは言え、余計な削り作業は少なくしておきたいところです。
ディテールの間でかなり狭いので、ここでは幅1mmのシャインブレードUNOを使用。
ヤスリの幅が1mmだと、ゲート痕からもずれてしまいやすいので慎重に少しずつ削ります。

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テーパーダイヤモンドヤスリの先端で削って仕上げます。

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ゲートが処理できたら、接着の前には「パーツの合い」を確認しましょう。
最近のキットではほとんどありませんが、金型の精度が低かったり、設計の古いキットなどでは、パーツ同士の合い悪くて隙間があったり、接合面がずれてしまったりすることもあります。

その場合は、接着前に接合面をペーパーがけするなどの処理が必要なこともありますね。
幸いこのキットではパーツの合いは良好で、隙間なくぴったりと合っているので、このまま接着してしまっても問題はなさそうです。

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管理人は貼り合わせ系の溶剤系接着剤(普通のプラセメント)でガッチリと接着するのが好みなのですが、今回は新しいマテリアルを試してみよう、、、ということでクレオスの速乾タイプ流し込みを使ってみました。
接着剤自体に黒く色が付いていて、接着した場所が分かりやすいというのも、この接着剤の触れ込みのようです。

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早速、接着してみたのがこちら。
流し込みタイプなので、パーツを組み合わせてから接合面に接着剤を点付けすると、毛細管現象でツーっと流れていきます。
これは黒く色が付いているので、接着剤がどこまで流れたかは確かに分かりやすく、その点は良いですね。

しかし、流し込み系接着剤の常で、接合面を埋めるための所謂『ムニュ』は少なめ。
きちんと合わせ目が埋まっているか不安になりますね。
管理人は必要な時以外はサーフェイサーを使わない制作スタイルなので余計に心配です。

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ということで、合わせ目の処理には瓶サフとラッカーパテも使用。
上の画像はヤスリがけまで終了した状態です。

どんな接着剤を使うかは制作者の好みといったところですが、このように大面積の合わせ目を消す必要があるパーツの場合は、初めから多めの『ムニュ』で隙間をしっかり埋めることができる貼り合わせ系接着剤の方が良いかもしれません。
もちろん、ヤスリがけ自体の量が少なくて済む、乾燥が早いなど、流し込み系接着剤ならではの利点もあります。
この接着剤の場合は、接合面が黒く着色されているのも分かりやすくて良いですね。

ヤスリがけ自体は、凹凸の多いディテール部分(上の画像で右側の部分)の整形がやや大変といったところですが、これまで見てきた狭所のパーティングライン処理に比べれば、難度は並程度。
凹ディテールの幅も約1mmといったところなので、合わせ目の『ムニュ』もシャインブレードUNOで無理なく削っていくことができました。
仕上げは400番のペーパーがけで。
入り組んだディテール部分は「つまようじヤスリ」や、折りたたんだペーパーの角などを使って整形しましょう。

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頭頂部のハッチ

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頭頂部のハッチのようなパーツです。
ここには一目で分かる大きなヒケが出ているので表面処理の段階で埋めておきます。
ヒケも小さなものならペーパーがけだけで消えてしまう場合もありますが、これくらいの大きな凹みにはパテ埋めも併用した方が良いでしょう。

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盛り付けたのはフィニッシャーズのラッカーパテ。
つまようじの先端で刷り込んでいます。

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幅の合う平ノミでパテ部分のみを狙って軽くカンナがけするように粗削りします。

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これはハセガワトライツールの3mm幅の平ノミ。
模型用ノミとしては定番的な工具です。

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更に瓶サフで細かなキズを埋めます。
ここでは、つまようじの先端で刷り込みました。
使用したサフはGSIクレオス『Mr.サーフェイサー1000』の瓶入りタイプ。

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つまようじヤスリ(つまようじの先端にペーパー片を接着したもの)で磨き込んで仕上げ。
ペーパーは400番です。

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ヒケを処理した状態。
このキットでパテ埋めまで必要な大きなヒケはこの部分だけでしたが、ヒケの見落としは塗装後に目立つので、しっかりと処理しておきたいところですね。

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ラッカーパテと瓶サフ。
フィニッシャーズのラッカーパテ(左)は肉ヤセも少なくてきめも細かく、扱いやすいパテですね。
盛り付ける際には少しボソボソするので、好みで溶剤を足しても良いかもしれません。
瓶入りというのも使用する分だけをつまようじ等で掬って盛り付けることができ、手軽で良いと思います。

サーフェイサーについては、管理人もかつて模型用語を覚えたばかりのまるで初心者の頃には、盲目的に缶スプレーのサフを吹き付けて表面処理をしていた時期もありましたが、、、
現在では、サフは必要がある時に最小限に留めて使い、基本的には必要がないという考え方に落ち着いています。
筆塗りモデラーにとっては、サフだけだとしてもスプレーを使うのは大変だったりしますしね。

今回のように表面処理の段階で瓶入りタイプを補助的に使うことはあっても、基本的にはサフレスで塗装に入ります。
見落としたキズが塗装工程で見つかることもありますが、、、それはそれで、その段階で処理していけば良いという考えです。

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その他

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こちらは頭頂部に付く小パーツ。
仮組みの段階ではゲートごとランナーに付けておき、整形・塗装後に切り離す予定でしたが、、、
パーティングライン処理の過程でゲートが千切れてしまったので、止む無く切り離して整形しました。

塗装の際のパーツ保持などが大変になってしまう予感がありますが、それは後で考えることにしましょう。
また、切り離した後のパーツは非常に細かいので、紛失にも注意したいところです。

おしまい

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表面処理が一通り終わったパーツ全景。
こうして見ると、パーツ数としてはそれほど量は多くもないような気がしますが、とにかく細かなパーツが多く、作業中は終始パーティングラインとの格闘、、、といった感じでした。

ディテールを跨ぐパーティングラインの処理は大変ですが、小スケールだけに表面処理の粗は相対的に目立ってしまうので、ここはしっかりとこなしておきたいところです。

この後は、表面処理のために削り落としてしまったモールドの再生と、気になる部分のディテールアップをしてから塗装に入ろうと思います。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編1.「仮組みまでに気を付けたいポイント」

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海洋堂の1/35 三式光武、制作過程を見ていきます。
まずはパパッと仮組み…と行きたいところなのですが、近年のガンプラなどの親切設計なキットを基準に考えていると一筋縄ではいかない部分もままあるのが困ったところ。
工作編の第一回として、まずは気を付けたいポイントを確認しながら仮組み完了を目指しましょう。

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パーツの切り出し

まずはゲートカットですが、小スケールなキットでパーツも小さいので、ランナーからの切り出しもいつも以上に慎重に。
管理人はこのキットに限らずなのですが、ゲートは3度切りで処理しています。

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ゲートカット一度目の切り込みはパーツからかなり離れた位置で、ランナーごと切り取ります。
ランナーの太い部分を切断するので、ニッパーは耐久力の高いタイプが適していますね。
この段階ではハセガワトライツールのエッチングニッパーを使用。

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2度目の切り込み、これもトライツールのエッチングニッパーです。
ゲート部分で余計なランナーを切り落とします。
この段階ではゲートはかなり多めに(2~3mm程度)残しておくようにすると、パーツ側にかかる負担を減らすことができます。
なお、管理人はここから先のパーツ際でのカットにはアルティメットニッパーを使用しますが、もちろん無理に高いニッパーを使わなくても大丈夫です。

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そしてゲートカット3度目の切り込み。
パーツの表面ぎりぎりで余計なゲート部分を切り取ります。
仕上がりを考えると、この段階ではアートナイフでゲートをそぎ落とすのが良いですね。
管理人は奮発してアルティメットニッパーを買ってしまったので、ここではそちらを使用します。

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こちらがアルティメットニッパーで切断したゲート。
新品のアートナイフの刃で削ぎ切りをしたように抵抗なくゲートをスライスすることができるため、ニッパーでありながらパーツ側にかかる負荷を最小限に抑えることができます。

アートナイフを使って一つ一つ加工をしていけば結果としては同じことなので、高いニッパーを使うかどうかは個人の価値観によりますが…
時間をお金で買うという意味では、思い切って買っても損はしない工具だとは思いますよ。
(だけどやっぱり高いです。笑)

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細かなパーツやランナーが入り組んだパーツは一度に切り取ろうとせず、まずはランナーを大まかに切り出しましょう。
これも基本事項ですね…

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段階を踏んでパーツを切り出すようにすれば、ゲート部分で無理な力をかけてパーツを破損してしまうような事故も防ぐことができます。

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やはりゲートを残してランナーをカット。
このパーツはもう一回のカットでゲートを切り落とします。

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4回に分けた切り取りでゲートカットしたパーツ。
入り組んだゲートはパーツを破損しやすいだけでなくニッパーにも無理な力が加わりやすいため、アルティメットニッパーのような刃先が繊細な高価格帯のニッパーには破損の危険があって危険です。
このように少しずつ切り取るようにすればゲートもきれいに切り取れて、道具も労わることができますね。
ここでも最終段階のパーツ際でのカット以外は耐久力の高いエッチングニッパーを使っています。
段階ごとに、道具も使い分けていきましょう。

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また、場合によっては塗装後まで切り取らないようにしておいた方が作業がスムーズに進むパーツもあります。
上の写真は頭頂部に取り付けるごく小さなパーツですが、このようなパーツは最後の組み立て時まで一部ゲートは残しておくのも良いかもしれません。

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例によって段階的に切り取り。
この写真で上側になっているゲートは最後まで残します。

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このパーツの切り取りはここまで。
ゲートとパーティングラインを処理して、塗装後に残しておいた方のゲートを切り取ってから本体に取り付けます。
細かすぎるパーツは無暗にバラしてしまうと管理や扱いがしにくくなってしまいますから、このパーツはこのような加工方法の方が楽ができると思います。
パーツの形状や大きさによってはこのような判断も必要になってきますね、、、

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パーツの差し込みクリアランスの調整

このキットは接着剤不要で組み立てができるように設計されています。
しかし、パーツを差し込む部分の調整がやや甘く、組み立て時にモデラー側での微調整を要求されるのが厄介なところ。

差し込みがきついパーツもあれば緩いパーツもあり…
きついパーツは削り込み、緩いパーツは接着を前提に考えて仮組み時はマスキングテープで固定をするなどの対応を考える必要があります。
ここではそれらのパーツの対応を見ていくことにしましょう。

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上の写真のパーツは膝関節の可動部ですが、ここは中央の凹凸を組み合わせてはめ込むことで可動する関節を作るようになっています。
管理人が組んだキットでは受け側の穴が小さく、差し込む側のピンを入れることができなかったので、穴を削って拡張することで調整をしました。

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受け側の穴の入り口を軽く斜めに削った状態。
球形ビットをピンバイスに装着して、様子を見ながら慎重に削ります。
削りすぎるとはめ合わせが緩くなるので気を付けて…

ここでは2mm径のビットを使用。
受け側の穴を削る場合、穴の径よりもほんの少しだけ大きいサイズのビットを使うと良いですね。
球形ビットがなければ普通のドリルでも可能ですが、受け穴の底まで穴を拡張してしまうと確実にはめ合わせが緩くなるので、少しずつ様子を見ながら入口を少しだけ削るようにしましょう。

これで問題なくピンを差し込むことができるようになりました。
もし削りすぎて関節がユルユルになってしまったら、潔く接着してしまうか、ピットマルチなどのゴム質の糊をはめ合わせ部分に少し塗ることで関節の保持力を上げて対処しましょう。

※球形ビットについて
管理人はスジボリ堂の通信販売で手に入るブッシュ社製スチールバーを使っています。
各サイズのものをある程度まとめ買いしておくと様々な工作に余裕を持って対応することができるのでおすすめです。

(参考リンク)
スジボリ堂「ブッシュのスチールバー カーモデル、ガンプラ、フィギュアに使用できます。

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膝関節にも同様の問題があります。
こちらは下腿(膝と足首の間)パーツの関節の軸を差し込む受けの穴なのですが、ここの穴がきつ過ぎて関節軸が差し込めません。
ここも少し削って対応をしましょう。

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受けの穴を削った状態です。
ここは穴の入口を3mmの球形ビットで軽く拡張した後、穴の底までを2mmのビットで軽くさらうようにして径を微調整しました。
これで関節軸の差し込みがスムーズに行えるようになりました。
今回の加工では保持力も充分なものでした。
差し込み部分を緩くし過ぎず丁度よい保持力に加工にするには、少しずつ削っては合わせ…というように慎重に少しずつ削っていくようにするのが良いですね。

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ちなみに下腿パーツの反対側、足首と接続するボールジョイントはキットのままでも問題なく取り付けが可能でした。
ただし、左右のパーツでボールジョイントの硬さに差があるのですが…
と言っても、緩い方のパーツも保持力には問題ありません。
素組みレビューでも触れましたが、この部分の可動範囲はほぼゼロ(汗)なので、取り付けたパーツが外れない保持力さえあればここは特に問題とはならないでしょう。

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後で分解できるように加工しながら組み立てる

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こちらは肩の関節。
キットのままでもはめ込みは可能でしたが、組み立て後に分解できるようにスナップフィットを緩くする要領で削り込み加工を行いました。
ここでは3mmの球形ビットをを使っています。
受け側の穴を割と大きく削りましたが、ここはこれくらい削っても十分な保持力があります。

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足裏には蓋をするようにパーツをはめ込む構成です。
ここは構造上、足裏のパーツを付けてしまうと取り外せなくなると思われます。
仮組みでは足裏を足首本体には取り付けないようにしておき、塗装後の最終組み立てではめ込むようにした方が良いでしょう。

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膝アーマーの取り付け部も加工します。
ここは膝アーマー側の四角い出っ張りを削ることではめ合わせを緩くしましょう。

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右が加工後。
完成後に見えなくなる部分なのでニッパーなどで割とラフに削っています。
凸側を少しずつ削っては受け穴の側と合わせ…というように少しずつ加工して丁度良いはめ込み具合に調整しましょう。

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ただし、管理人が組んだキットではこの加工が必要なのは右膝だけで、左膝は無加工でも付け外しがスムーズに行えるきつさになっていました。
この差が金型の設計によるものなのか、また製品のロットなどにもよるものなのかは分かりませんが、実際にこのキットを組む時には人の情報を鵜呑みにはせず、自分ではめ込み部分のテンションを一つ一つ慎重に判断する必要があるかもしれませんね。

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胴体のパーツも後でばらせる様に加工。
ここはガンプラ等でお馴染み、スナップフィットの非スナップ化といったところですね。
差し込み側のピンを竹やり状に削る方法が最も簡単ですが、管理人は受け側の穴を球形ビットで拡張する方法がお気に入りです。

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こちらが受け穴を削った状態。
穴の入り口をすり鉢状に加工するこの方法は、保持力と外しやすさの両立が簡単なのでスナップフィットのガンプラ等でも有効な方法です。

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続けて見ていきましょう。
胴体パーツの別部分、こちらは右側が差し込む側のパーツですが、ここは差し込み側を削っています。
見えない部分なのでニッパーでバキバキです。

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胴体の股関節取り付け部分。
本体は四角い穴の取り付け部が多いですね。
ここも右の差し込み側パーツをニッパーでバキバキ切り取ってきつさを調節しています。

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胴体の上側には、取っ手付きの蓋パーツが付きますが、ここは取っ手部分がかなり細かいので破損の危険があります。
パーツのつけ外しで無理な力を加えなくても良いように、取り付け部分はかなり緩めに調整した方が良いでしょう。
写真は加工後の状態ですが、胴体側、蓋側の双方をニッパーでバキバキと切り込んでいます。
取り付け部は完成後には見えなくなる部分なので、ここもこんな加工で大丈夫です。

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今度は腰回りの装甲…ガンプラで言うところのサイド・スカートアーマーです。
ここもキットのままでは凸側が受けの穴に入らないので接続部の削りが必要なパターンなのですが…

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接続部の凸側をアートナイフで削ってみます。
ここの凸側のピンは奥行きが短くて調節の加減が難しいですね、、、

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ということで、案の定削り過ぎてしまったようです。(汗
接続部を削り過ぎたパーツはユルユルですぐに外れてしまうので、ここはマスキングテープの細切りで仮固定しています。
幸い可動はしないパーツなので、塗装後に接着してしまえば問題はないでしょう。

また、この写真では肩関節の上下に付く動力パイプも取り付けていますが、このパーツはキットのままでも外れやすくてすぐにポロリします。
今回のサイド・スカートアーマーのように削りすぎて固定が緩くなったパーツはもちろん、このキットでは可動に関係しない箇所は基本的に全て接着して組み立てるつもりでいた方が良いようです。

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あとは武器ですね。
太刀の鞘は唐竹割りのモナカ分割なので、あとで接着して合わせ目消しができるようにスナップフィットのピンを緩くしておきましょう。
やはり受け側の穴をサイズの合う球形ビットで軽く削って加工します。

太刀の本体はこのサイズながら驚異の3パーツによる構成。
刀身に柄を差し込む構造ですが、これはキットのままで問題なく抜き差し可能です。
ここも最終的には接着した方が良いですが、加工は特に必要ないでしょう。

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仮組み完成~再度ばらして表面処理へ

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一部そのままでははめ込めないパーツもありましたが、必要な工作も基本的には簡単な削り加工で対応可能な範囲でしょう。
ここまで見てきた通り、ニッパーとアートナイフに加えて最低限ピンバイスがあれば基本的な組み立て自体は可能だと思います。
できればピンバイスにはドリルではなく球形ビット(スチールバー)を装着して使いたいところですが、そこは手持ち工具や予算、好みと相談といったところです。
緩くしすぎたパーツや可動に関係のないパーツは塗装後に接着することになるので、そこも全体の計画の中でよく考えておく必要がありますね。

そうしてとりあえず一通り仮組みができたら、またパーツをばらして次は表面処理等の基礎工作に移ります。

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仮組み後のバラシでは、できれば100円ショップのプラケース等を用意しておき、その中にパーツをまとめておいた方が良いでしょう。
管理人も昔は作りかけのプラモはキットの元箱に入れておくだけだったりしたのですが、特に今回のように小スケールで細かい部品が多いキットの場合は、管理をしっかり行わないとパーツの紛失につながるため危険です。
バンダイのガンプラなどはパーツ単位で部品請求ができる場合もありますが、今回の海洋堂ではパーツが請求できるかどうかは不明…
(少なくともインストにはパーツ請求に関する記載はありません)

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写真のものは100円ショップで見つけた透明なプラケース。
管理人の地元ではダイソー、セリアの両方で同じものが売っていたので色々なところで手に入るのかもしれません。

このケースは蓋にはロック機構がないのですが、それが逆に作業中の開け閉めには便利だったりしてパーツ管理用のプラケースとして使いやすいものです。
不意に落としてしまった場合のことなどを考えると蓋がロックできる方が安心かもしれませんが、そこは好みといったところですね…

おしまい

というわけでの海洋堂1/35三式光武、仮組みするだけでも一手間というところですが、本来プラモデルってそういうものですよね。
(最近のガンプラは親切設計過ぎるので感覚が麻痺してしまいますが…)
造形的には決して素性の悪いキットではないので、最終的に塗装をして細かい色が入ればかなり印象が良くなる予感はしています。

次は基礎工作、表面処理を見ていきます。

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海洋堂 1/35 三式光武「ランナー紹介・素組みレビュー」

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PlayStation4用ゲームソフト「新サクラ大戦」より、海洋堂の1/35 三式光武です。
サクラ大戦の関連プラモデルは過去にはWAVEから、また新サクラ大戦のマルチメディア展開の一環としてバンダイからもHGレーベルで発売されたものがあります。
そして海洋堂からは1/35と小スケールながらも三式光武と無限がラインナップ。
特に三式光武は現状唯一のプラキット化となっており、貴重な貴重な立体化です。

光武といえば、管理人は過去にWAVEの1/24キットをきちんと完成させられなかった経験があるので、今回はリベンジの意味も込めて海洋堂のキットに挑戦してみることにしました。
ちなみに、管理人は「新」のゲームは未プレイです。

(旧サクラ大戦シリーズはセガサターンの初代からPS2のVまでプレイ済み…というか、特にドリームキャスト時代にはドハマりしてました笑)

今回はランナー等のキット構成と、素組みした状態を見ていこうと思います。

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こちらは外箱の側面。
見本として掲載されているのは塗装済完成品ではなく、未塗装の素組み!
このキットは単色成型、可動部はポリキャップ未使用のプラの弾力に頼った関節という、ガンプラで言えば旧キット相当の構成なので、購入前に内容を確認するのにはこの方が良いのかもしれませんね。

ランナー紹介

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キットの内容物一覧です。
ランナーが4枚と水転写式のデカール、それにインストが一冊ですね。
1/35というスケールは想像以上に小スケールで、パーツの一つ一つも細かい印象です。

各ランナーにはA・B…などという区分けは無く、1番から順番に振られたパーツ番号が全てのランナーに跨って存在しています。
またパーツ番号の順にランナーが構成されている訳ではなく、一つのランナーにバラバラの番号のパーツが存在しているので、組み立て時にパーツを探すのが少しスムーズではないかもしれませんね。
とはいえ、パーツ点数もそれ程多くなく手足や胴体は比較的大きなパーツ割りで構成されているため、制作に困るほどではありません。

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ランナーその1。(ランナー番号は便宜上のものです)
動力パイプやマフラーなど、本体に後から取り付ける細かなパーツが多いです。
装備武器の太刀は3パーツ構成となっていてディテールも細かいですね。
鞘はさすがにモナカ分割ですが、このキットで合わせ目消しが必要なのはここだけとなっています。

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ランナーその2。
手足の装甲や手首、足首などが中心です。

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ランナーその3。
ランナー全体は比較的大きめですが、パーツ自体は小さいです。
手足のパーツが中心ですが、上腕・前腕・大腿といった部分がそれぞれ1パーツで構成されているため、合わせ目が出ない設計となっています。

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ランナーその4。
こちらも比較的大きなランナー。
胴体のパーツと下腿ですが、やはり下腿は1パーツ構成で合わせ目なし。
胴体も比較的大きなパーツ割で組み立てはスムーズに進められそうです。

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水転写式のデカール。
左肩の桜マークと、胴体の白ラインを補うものですね。
キットのユーザー層を考えれば、シールではなく水転写式デカールなのは妥当だと思います。

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インストは三つ折りで2ページのみカラー印刷。
塗装参考図やデカールの貼り付け指示もありますね。

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裏面は組み立て図のみ。
胴体や手足は大まかなパーツ割が多いので、組み立て工程もそれ程長くはありません。

素組みレビュー

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パーツを一通り組み立ててみました。
基本的には接着剤不使用のキットなのですが、一部パーツの差し込み精度がやや甘く、受け側の穴を削らないと部品が入らないことがあったり、また逆に緩い部分は接着を前提で考える必要があったりと、作り手側にも現物合わせで多少の加工を求める内容となっています。

最低限、ピンバイスくらいは持っていないと仮組みすら困難と思われるため、近年のガンプラ等に代表される親切設計のキットしか組んだことのないライトなモデラーさんは、それなりの覚悟をして取り組む必要があるかもしれません。

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今回は頭頂部の小パーツ(写真右)はランナーから切り取らず、塗装後に取り付けることによって作業を行いやすくしています。
また、足裏にフタをするパーツも一度取り付けると外せなくなるため仮組み状態では付けていません。
それ以外のパーツは全て組み立てた状態ですが、一部固定が甘い箇所があるため、この写真でもマスキングテープの細切りで仮止めしているパーツがあります。

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と、先にマイナス面から入ってしまいましたが、パーツの合い自体に大きな問題はなく、造形そのものはなかなか良いと思います。
複雑な曲面で構成された光武のシルエットを良く再現できていますね。
素直にカッコ良いと思える造形です。

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太刀を抜刀!
武装の太刀は一応、手に持たせることはできますが、指は非可動なので実際には引っかけているだけです。
しっかりと持たせたい場合は接着してしまうか手首周りの改造が必要になりますね。
今回のように、一時的にそれっぽい写真を撮りたいだけならそのままでも良いかと(笑)。

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全高は7cm弱、メーカー公式では約68mmということです。
水性ホビーカラーのビンと比べると、その小ささがイメージできるでしょうか?

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小さいながらも各部のモールドは良く入っています。
凹モールドやスジ彫りがやや甘かったり、リベットの凸モールドに一部歪みがありますが、これはサイズ的に、またインジェクションキットの宿命としてある程度は仕方がない部分でしょう。
こだわり派のモデラーさんはこの辺りに少し手を入れてあげると、より良いものになりそうですね。
また合わせ目がないことと引き換えに胴体や手足のパーツ中央には目立つパーティングラインが出ているので、これは基本工作としてしっかり処理をしておきたいところ。

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こちらは肩アーマーのアップ。
本来丸形であるリベットがイチゴの種のような形状になっているのが分かるでしょうか。
金型の都合上、プラモデルでは凸モールドを再現するのにはどうしても限界があります。
光武は全身に渡ってかなりの数のリベットが打たれているので、このような歪んだモールドをどうするかは考えどころ。
リベットの修正を行うとすると制作にかかる手間と難度が跳ね上がってしまうので、完成することを優先させるなら、無理にこういう部分をいじらないのも一つの考え方だとは思います。

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足の裏はモールドの入ったパーツでフタをするようになっています。
基本的に、外から見える部分に肉抜きはありません。
基本的な表面処理をしっかりとこなしてやれば、とりあえず過不足のない仕上がりにはなりそうです。

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小スケールながら太刀は3パーツで構成。
鍔にも穴が開いていて非常に細かな造形です。
モナカ割りの鞘はこのキットで唯一の合わせ目消しが必要な部分。

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可動部の構造も見ていきましょう。
こちらは胴体前面の、光武の顔にあたる部分。
二個装備のカメラアイが左右に可動します。
パーツの表側から胴体のスリットにカメラアイを差し込んで、裏からストッパーのパーツを取り付けることで抜けないように固定します。

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カメラアイを取り付けた状態。
胴体側のスリットは向こう側が見えてしまいますが、実際にはパーツの裏側に暗色を塗っておけば違和感はないと思います。

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手足の関節の構造。
ポリキャップを使用しない、プラの弾力のみでパーツを保持する差し込み式の関節です。
ガンプラ旧キットのような挟み込み式の箇所はなく後ハメ加工の必要がないパーツ構成となっています。

とはいえこのようなプラパーツのみの関節、特にボールジョイントはパーツにかかる負荷が大きいため、破損に気を付ける必要があります。
可動は基本的に、姿勢の微調整が可能な程度と割り切り、あまり大きく動かすような動作を繰り返さない方が良いでしょう。
頻繁なパーツの付け外しも危険です。
(実際、管理人はこの写真を撮影後に左肩のアーマーを接続するボールジョイントを破損してしまいました。)

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胴体側の関節を受ける部分。
肩関節は腕側の軸を差し込んで回転方向の可動が可能な穴型の受けで、股関節はプラパーツによるボールジョイントです。
股関節のはめ込みはかなりきつめなので破損が心配ですが、逆に言えば保持力は充分過ぎるほどあります。

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腕の可動範囲。
肩と肘が軸により可動しますが、範囲はあまり大きくありません。
腕単体でも写真の角度が限界ですし、実際には胴体側のパーツと干渉するので可動は更に制限されます。
手首部分は差し込みの軸によって手首自体の回転ができるだけで指は固定となっています。
肩アーマーの接続も一応ボールジョイントですが、角度が若干微調整できるだけなので、腕を可動させるとつられて下がり肩になってしまいます。

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なお、肘関節には可動のための切り欠きがありますが、それ程違和感はありません。

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同様に、脚の可動範囲を。
脚パーツ単体では写真の状態くらいまで膝を曲げることができますが、ここもやはりというか実際は他パーツとの干渉によって可動範囲は大きく制限されます。
足首はボールジョイントですが、可動範囲はほぼゼロだと思った方が良いでしょう。

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膝関節は球体状のデザイン。
見た目は悪くありません。

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可動範囲についてはかなり厳しいものがあるため、パッケージにも採用されているキービジュアルのような、太刀を抜刀して見栄を切るポーズを再現するのは不可能なのですが、何とか近いポーズを取ってみました。
ただし、この写真では肩と腰周りの装甲を取り外し、更に肩アーマーの接続軸が胴体と干渉するために肩関節を上下反転させています。
それで何とかこれくらいのポーズ付けが可能といったところですね。

本格的に抜刀ポーズを再現するなら、肩と腰の装甲の接続方法を変更し、また下半身はアルミ線接続などで固定として関節部分は新造、さらに角度を付けて太刀を持てるように手首の指部分も改造する…といったような割と全身に渡る改造が必要になると思います。
光武はデザイン的にも可動の制約が大きいメカで、またこのキットはかなりの小スケールということもあって無理はさせられず。
ポージングは素立ちを基本として、光武の造形そのものを楽しむということを主にする方が、このキットとの付き合い方としては良いのかもしれません。

おしまい

単色成型でプラパーツによる関節と、今のガンプラの基準で考えると躊躇してしまう内容のキットかもしれませんが、基本的な造形は良いために塗装前提の素材として考えると決して出来の悪いキットという訳ではありません。
本体は合わせ目消しが要らないパーツ構成、関節も可動範囲は狭いながらも「挟み込み」式ではなく「差し込み」式のために後ハメ加工も不要と、見るべき点はあります。

最低限ゲートと、できればパーティングラインの処理くらいまでができれば、あとは部分塗装で足りない色を入れてあげるだけでもかなり雰囲気は良くなりそうですね。
今回管理人は「完成させる」ことを第一目標としながらも、基礎工作と全塗装でキットの素性の良さを引き出す作例を目指してみました。

まずは工作編から。
順番が前後しますが、最初は仮組みが完了するまでに注意したいポイントから解説していきます。

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