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今回は表面処理、主にゲートやパーティングラインの処理を見ていきます。
プラモデル工作では基本中の基本とも言える工程ですが、ここでもやはりというか、このキットでは近年の親切設計ガンプラのように簡単にはいきません。
光武は曲面主体なデザインの上に小スケールキットということで、加工する個所に工具が当てづらいんですよね。
丁寧な工作を心がけるのはもちろん、作業の難度を下げるために手持ちの特殊な工具もどしどし投入していきましょう。
道具に投資できる余裕があれば、これを機会に細部加工用の工具を増やしてしまうのも良いかもしれません。
今回の記事では管理人の作業手順と共に、使った道具についても見ていきましょう。
1/35三式光武とパーティングライン
例として出したのは本体の前面、頭部がないデザインの光武にとっては顔になる部分のパーツです。
ピンクの成形色で状態が確認しづらいですが、パーツのど真ん中にパーティングラインが出ています。
このキットでは(太刀の鞘を除き)合わせ目消しが要らないパーツ構成となっている代わりに、パーティングラインはパーツ中央の目立つ部分に堂々と配置されている場合が多いです。
途中に段差やディテールがあってもお構いなし!
基本的な形状だけはカッコ良く造形しておくので、後はモデラー側で処理してください…という、初心者の方にとってはスパルタ的とも言えるキットとなっています。
しかし、一つ一つ丁寧に加工をしていけば大丈夫。
また、現代では細部まで攻め込める便利なお助け工具も各メーカーから数多く発売されています。
道具の力も上手く利用しながら効率的に処理を進めていきましょう。
パーティングラインの削り込み
先程のパーツを例に実際の削り込み作業を見ていきましょう。
最初はナイフやノミなどの刃先でカンナがけをして粗削りをするのが良いですね。
ここで使っているのはGSIクレオスの「Mr.バリ取り棒G」…変な名前の工具ですが、要はカンナがけ専用に作られた3mm幅の平ノミです。
本体と一体成型された肉厚の刃先は安定感が高く、切削力もかなり高いものとなっています。
アートナイフでも同じ作業はできると思うかもしれませんが、これがあるとないとでは作業効率がまるで違ってきますね。
パーティングラインや合わせ目消しの粗削り程度なら、驚くほど簡単に削り込んでいくことができますよ。
価格もそこまで高くないので、ぜひ試して欲しい工具です。
ナイフのように持ち手に対して刃先が斜めに付いている工具では細かな形状のパーツに攻め込めない場合がありますが、これは平ノミのように刃が正面方向に付いているので、このような小スケールモデルのパーツにもかなりの部分で対応することができます。
今回の制作では、刃が当てられる個所ではほとんどこの工具で粗削りをしました。
また、このパーツにはパーティングライン上にゲート痕もあるため、そちらはヤスリで削ります。
この金ヤスリはゴッドハンドの「かまぼこヤスリ 8mm(単目 細目)」。
金ヤスリとしては比較的マイルドな削り味で、重量のある本体を活かして力加減のコントロールもしやすいため、ゲートを慎重に削るような作業には向いています。
かまぼこ形状によって側面を傷つけにくいというキャッチコピーの工具ですが、管理人的にはそこはオマケ的な要素かと、、、
同サイズの普通の平ヤスリよりも倍以上はあるかと思われる、本体の重さによるコントロールのしやすさがこのヤスリ最大の売り。
単純な切削力という点での性能的には可もなく不可もなく、、、な割に価格が高めなので強くはおすすめしませんが、工具に投資できるなら常備する金ヤスリとしては扱いやすい部類でしょう。
パーティングラインの削りに戻りますが、逆エッジのキワは三角ヤスリで削ります。
力を入れすぎると簡単にえぐれてしまうので、ごくごく軽く…慎重に削りましょう。
このヤスリは上野文盛堂の三角ヤスリ・超精密です。
模型用の金ヤスリとしては古くから発売されている定番的なモノかと。
このヤスリ、目が細かいのは良いのですが、その分削りカスでの目詰まりもしやすいです。
そこは一長一短というところですね。
(参考リンク)ゴッドハンド かまぼこヤスリ 8mm 単目 細目 中目 直販限定 平ヤスリ 金属ヤスリ 模型用
(参考リンク)ヨドバシ.com – 上野文盛堂Y205 精密ヤスリ 三角 [プラモデル用工具]
三角ヤスリである程度まで削ることができたら、再びバリ取り棒に戻って表面を軽く整えつつ形状を仕上げます。
バリ取り棒は刃先のエッジも鋭く仕上げられているので、逆エッジのキワにも切り込みやすいですね。
なお、この写真で刃先を当てている辺りにはリベットの凸モールドがありましたが、パーティングラインと一緒に削り落としてしまいました。
再生が簡単なモールドは後から作り直すことを前提で、一旦削ってしまった方が表面処理はスムーズに作業できる場合も多いです。
この後の、表面の最終仕上げはやはりペーパーがけで。
このような曲面のパーツには神ヤスのようなスポンジヤスリも使いやすいですね。
番手は400番だけでも十分でしょう。
このパーツでは中央にスリット(カメラアイの可動レール)がありますが、パーティングラインは容赦なく周辺ディテールを横断する形で出ています。
サイズが小さいこともあって、ここの削り込みは少し大変ですね。
まずは作業中に形状が見やすくなるように、水性の筆ペンでパーティングラインの周囲に色を付けました。
極小サイズのヤスリがあれば、このような個所の粗削りも捗ります。
ここで使っているのは「シャインブレードUNO」、1mm幅の金ヤスリですね。
1mmという幅は小スケールモデルのパーツにとっては意外と大きく、これでヤスリを当てられる形状は割と限られていたりもするのですが、使える個所はこのヤスリで削り込んでしまいます。
「シャインブレードUNO」。
幅1mmで狭い箇所の削りにも対応できるのかと思いきや、厚さも1mmあるために小回りが効かず、細かな部分には差し込めないことも多いです。
それでも使える形状の削りには便利で、他では代替が利かない便利工具ですね。
ヤスリ面は表と裏で粗さが違うのですが、表面処理では主に細かい方の目を使うことになると思います。
切削力自体はかなり高く、またシャインブレードシリーズ共通の特徴として、削りカスの除去が圧倒的に楽で目詰まりとはまるで無縁なのもヨシ。
使用頻度は高くはないですが、持っていればピンポイントで活躍する逸品です。
スリットの中を跨ぐパーティングラインもしっかり削りましょう。
狭く、奥まった形状なので工具が届きにくいですが、ここはパーティングラインの出ている部分が小さな段差になってしまっているので、しっかりと処理をしておかないと見栄えが悪いです。
また、このスリット部分は光武の「目」にあたるカメラアイの近辺なので、人が完成品を見た時にまず目線を送る場所で、ここがきちんと処理できているかどうかは作品全体の印象にも大きく影響します。
(人間の本能として、人が人型の物体を見た時には、まず無意識的に「顔」に当たる部分を探すため)
このような狭い隙間を削るにはプラバンの細切りや調色スティックのヘラ部分に耐水ペーパーを貼り付けた簡易ヤスリが定番ですが、今回はここでもお助け工具を使っています。
これはスジボリ堂のテーパーダイヤモンドヤスリ、2.5mm幅の400番。
サイズやヤスリ目の粗さによって数種類が発売されていますが、とりあえず買うなら一番小さい2.5mm幅が使いやすいと思います。
番手は、通常のスチロール樹脂を削るなら400番が良いですね。
このヤスリは先端に向かって板厚が薄くなるようなテーパー形状となっていて、狭い隙間にも差し込みやすくなっています。
今回のような形状のパーツには正にうってつけ。
地金の側面や先端にも砥粒が接着されているので、それらを活かすことで様々な形状の削り込みにも対応します。
これも工具箱に加えておくと、細部加工の際には大活躍してくれると思いますよ。
という訳で、パーティングライン加工前後の比較です。
成形色がピンクなので状態が見にくいかもしれませんが、パーツの中央部分を横断するように縦に入っていたパーティングラインを削っているのが分かるでしょうか。
加工前は小さな段差になっていたカメラアイ用スリット部の変化が分かりやすいかもしれませんね。
一つ一つの変化は地味ですが、このような基礎工作をしっかりとこなすことで完成品の見栄えは断然変わってきますよ。
頑張って加工しましょう…!
(参考リンク)スジボリ堂 テーパーダイヤモンドヤスリ 幅2.5mm 400番 [TEPA020]
各部の注意したいパーツ形状
太もも
違うパーツも見ていきましょう。
こちらは太モモにあたるパーツ。
縦に走るパーティングラインが見えていますね。
このように、このキットではほとんどのパーツに堂々と目立つパーティングラインが出ています。
ここもかなり細かく、逆エッジもあるため加工には注意が必要そう、、、
曲面を削るお助け工具といえば、シモムラアレックの「Rボコ2」もありますが、ここでは意外と使いにくいです。
パーツが小さすぎて工具の刃も当てづらいですし、力加減のコントロールも難しく、効率的に削ることができません、、、
これくらいの小さなパーツには曲面であっても「バリ取り棒」の方が使いやすいかと。
「バリ取り棒」は表面処理においては割と万能工具で使用頻度もかなり高いです。
「テーパーダイヤモンドヤスリ」の2.5mm幅も良いですね。
使っているのは400番です。
ヤスリの側面でも削ることができ、逆エッジもある程度はこれで大丈夫です。
処理しやすい場所にあるゲートは「かまぼこヤスリ」で削ります。
「かまぼこヤスリ」が当てられない場所にあるゲートは「三角ヤスリ」で削ります。
同じ作業でもパーツ形状によって工具を使い分ける必要がありますね。
仕上げのペーパーがけ。
ここでは「神ヤス!」の400番を使っています。
水砥ぎの方がペーパー面は長持ちするのですが、今回はパーツ表面の状態を把握しやすくする目的で空研ぎをしています。
下腿
下腿の下側など、入り組んだ個所にあるパーティングラインは「テーパーダイヤモンドヤスリ」の先端部分で慎重に削ります。
「テーパーダイヤモンドヤスリ」なら他の工具ではなかなか攻め込めない狭所にも対応できることが多々ありますよ。
こちらは400番のペーパーを「折らないで」隙間に差し込んで削り作業をしているところ。
本当に狭い隙間にはペーパーを1枚単独で差し込まないといけない場合もあります。
とはいえ、そこまで狭い箇所はこのキットでも珍しいパターンだと思います。
サイド・スカートアーマー
サイド・スカートアーマーのパーツではゲートがこんなところに付いています。
周辺のディテールに邪魔をされて削りにくい形状ですね、、、
こんな場合は、まずアートナイフでゲートをギリギリまでそぎ落とします。
パーツをえぐらないよう慎重に、、、
また、刃の先端方向に押さえる側の指を置かざるを得ないので、オーバーランしてザックリといかないようにも気を付けて、、、
対策としては、新品の切れ味の良い刃に交換しておき、極力、力をかけないで作業をするようにした方が良いですね。
ナイフの作業ではゲートを少し残す程度までに留めておき、次はテーパーダイヤモンドヤスリの先端部分を使っていきます。
なるべく余計な部分にヤスリを当てないように、また小さな円運動を意識してヤスリを動かし、細かなストロークで削りましょう。
幅が合えば三角ヤスリも使っていけますが、こちらは力加減をミスすると容易にパーツがえぐれるので慎重に。
ゲート処理前後のパーツを比較。
周囲の余計な場所を傷つけないように、慎重に作業をして仕上げましょう。
フロント・スカートアーマー
フロント・スカートアーマー、股関節の前に付く装甲ですね。
パーティングラインが中央に入っているのは他のパーツと同様ですが、曲面で構成された逆エッジがあったりして難しい形状です。
先程までの例と重複する作業内容もありますが、こちらも順を追って見てみましょう。
まずは処理をしやすい部分から攻めていくことにします。
ゲートがあるのはパーツのフチにあたる装甲断面なので、ここは大型の工具でも対応できます。
お馴染みのかまぼこヤスリでゲートを粗削り。
テーパーダイヤモンドヤスリの先端で仕上げます。
パーティングラインの粗削りはバリ取り棒で。
バリ取り棒は小回りも効いて切削力もあるので使いやすいですね。
逆エッジのキワぎりぎりのパーティングラインはノミで軽く彫り込むように削ります。
使っているのはハセガワトライツールの1mm幅の平ノミ。
こちらも上野文盛堂のヤスリと並んで、昔からの定番中の定番といった感じの工具ですね。
テーパーダイヤモンドヤスリで仕上げ。
細かな部分は小さく折りたたんだペーパー片をピンセットでつまんで削ったりしても良いのですが、ダイヤモンドヤスリを使ってしまうのも手軽です。
リベットモールドの一部はパーティングラインと干渉しているので、一旦削り落としてから後で再生することにします。
ここは幅1mmの金ヤスリ、シャインブレードUNOでリベットごとパーティングラインを削ります。
シャインブレードは切削力が高いので少ない回数の削り込みで整形をすることができ、細かな部分のコントロールもしやすいです。
とはいえ、不要部分にヤスリ面を当てるとパーツ表面が容易にえぐれるのは他の金ヤスリと同じですね。
…それにしても本当に細かい!
また写真だと状態が分かりにくいのですが、加工前後の比較。
逆エッジの処理は制作者の技量の差が出やすいポイントなので気を遣いたいところです。
前腕
前腕はここまで1パーツによる成形。
ここにも容赦のないパーティングラインがあり、またサイズ自体もかなり小さいです。
画像では水性筆ペンで薄く線を引いていますが、逆エッジ・曲面・凸ディテールを跨ぐのは当然のこと、更にここでは幅の狭い凹ディテールの中にもパーティングラインが出ています。
これはなかなか難しそうですね、、、
取っ掛かりの粗削りはやっぱりバリ取り棒で。
削れるところはこれで削ってしまいましょう。
ヤスリも併用すると効率よく削っていくことができますね。
こちらは「シャインブレードfina」、幅3mmのヤスリです。
先に紹介した幅1mmの「シャインブレードUNO」とはパーツ形状によって使い分けましょう。
その「シャインブレードUNO」も、もちろん使っていきます。
これは逆エッジのキワを横から削っているところ。
幅が狭すぎると流石のバリ取り棒も使いづらいので、ヤスリも併用した方が良いですね。
このような特殊な金ヤスリがない場合は、『プラバンの細切りにペーパーを貼り付ける』『細かく折りたたんだペーパー片をピンセットで掴んで当てる』などで対応できるかと思います。
ちなみに、シャインブレードは金ヤスリとしては切削後がかなりきれいに仕上がるようです。
上の画像はこのパーツのゲートをシャインブレードで削った状態ですが、これだけでかなり滑らかな表面になっていますね。
これなら仕上げのペーパーがけも楽になりそう。
シャインブレードは表と裏で粗さの違うヤスリ目が入っていますが、ここはシャインブレードfinaの細かい方(#1000相当)で削っています。
感覚的にペーパーの1000番よりは粗い気がしますが、滑らかな削り痕なのは確かですね、、、
目が細かくても切削力もきちんとあり、削っている際の手応えもしっかりと手に伝わってきます。
プラを削る程度なら目詰まりもまずしないですし、総じて扱いやすいヤスリかと思います。
(ただし、この手の高性能工具の例に漏れず高価格で、普通のヤスリの3倍くらいの値段がしますが、、、)
パーティングラインの処理に戻ります。
こちらはこのパーツ最大の難所、凹モールドの中に走るパーティングラインです。
ここを直接ヤスリで削るのは不可能なので、極細のノミやスジ彫り用の工具も利用して整形するのが良いですね。
上の画像ではスピンブレードの0.5mmをノミとして使用し、パーティングラインを削り取っているところ。
最初は刃先を押す方向に動かしてパーティングラインの余計な出っ張りを削り、あとは軽く引く方向に動かして刃先のカンナがけで表面を整えましょう。
カンナがけの段階では0.5mm幅のラインチゼルも使っていくことができますが、こちらは力加減によっては切削面が荒れやすいので注意が必要ですね。
タガネやカーバイトなどの超硬合金系のスジ彫り工具なら、もっとシャッキリクッキリ削れるのでしょうか?
管理人はそれらを未所持のため、今回はスピンブレードとチゼルのみ使用です、、、
最後はペーパーがけで仕上げます。
こちらは「つまようじヤスリ」の先端に付けたペーパーを縦に当てているところ。
凹ディテールの幅が0.5mmなので、ペーパー1枚なら溝の中に差し込んで側面を削ることができますね。
処理が終わったパーツ。
凹モールドの中にあったパーティングラインもきれいに消すことができました。
削り取った凸モールドは後で再生することにしましょう。
ある程度は工具が充実していないと処理が大変な形状ですが、ない場合はペーパーの細切りなどで何とか対応したいですね。
その場合は作業性を重視して、表面処理では標準的な400番よりも、もう少し粗目の番手のペーパーを使用しても良いかもしれません。
手首
手首は指の側面にパーティングライン。
指にパーティングラインが出ているのはガンプラ等でもお馴染みなので、ある程度慣れているモデラーさんならルーチンで処理していける部分なのかもしれません。
関節部分の凹みが少し厄介なだけで、基本は他のパーツの処理と変わりませんね。
ということで、ここでは要点として便利工具の紹介だけ。
指関節の凹み部分を削るのには極細のダイヤモンドヤスリがあると作業が捗ります。
スジボリ堂の極細ダイヤモンドヤスリ四角。
0.6mm×0.5mmという極細の四角柱形状をしたダイヤモンドヤスリです。
同社のテーパーダイヤモンドヤスリよりも更に細かな個所に攻め込むことができる逸品です。
これなら指関節のような細かな凹ディテールも楽に削ることができますよ。
この工具で対応できないこれ以上の狭所には、目立てヤスリなどスジ彫り用の工具を使っていくことになると思います、、、
400番相当と600番相当の2種類が発売されていますが、今回は切削性の良い400番相当を使用しました。
関節だけでなく、指の股などもこれなら削りやすいですね。
仕上げはやっぱりペーパーがけ。
曲面なので神ヤスで、、、といきたいところですが、指の間などは狭くて神ヤスが入らないため折りたたんだペーパーで削っています。
ここでは400番のペーパーを2つ折り、空研ぎで使用。
(参考リンク)スジボリ堂 極細ダイヤモンドヤスリ 四角 0.6×0.5 400番相当 [GOKU020]
マフラー
霊子甲冑・光武の特徴であるマフラーです。
霊子甲冑は『蒸気併用霊子機関』という謎動力(笑)で動いているため、排気のためのマフラーが機体の特徴ともなっています。
そのマフラーですが、このキットでは片側2本分が1パーツでの成形。
当然のようにここにもパーティングラインが出ているのですが、ここではそれ以外にも、もう一つ注意したい点が。
最近のキットでは珍しくなったバリが出ていますね。
昔はガンプラ等でもバリは良く見かけたものですが、最近は各メーカーの金型技術が上がったせいなのか、管理人はバリ自体を久しぶりに見たような気がします。
形状自体は薄皮の成形不良部分なので、ナイフで削ぐようにすれば良いだけですね。
このバリはキットの個体差かとも思ったのですが、ホビージャパンwebに掲載されている作例でもこれと同じ場所にバリが出ているのが確認できますので、これはキットの仕様なのかもしれません。
そして、そのバリとパーティングラインを整形したパーツがこちら。
マフラーの先端方向から見ると、微妙につぶれた円形になっているのが分かります。
これは管理人がヤスリがけをミスして一部を平らにしてしまったのではなく、このパーツは最初からこのような形状になっています。
恐らくインジェクションキットの限界かと、、、
一応、表面処理の過程で膨らみが足りない部分にはパテ盛りをして出来る限りの修正を試みましたが、完全な真円を出すにはパーツ自体の作り直しが必要だと思います。
ただ、このマフラーパーツは、テーパー・逆テーパーが組み合わされた形状で、自作は非常に困難です。
管理人の経験・技量では形状修正のための工作の選択肢が出てきませんでした、、、
と言うことで、今回はここまでの加工に留め、深追いはしません。
上の画像は本体のパーツにマフラーを組み合わせてみたところ。
意外と違和感はない、と思います、、、
言われなければ分からない程度の歪みでしょうか、、、?
太刀
装備武器の太刀です。
柄、鍔、刀身の3パーツによる構成ですが、それぞれにパーティングラインがあります。
上の画像は刀身のパーティングライン処理後。
刀の刃や峰にあたる部分をぐるりと回り込むようにパーティングラインが出ていました。
削り込み自体は簡単な形状ですが、インジェクションキットの限界なのか刀身の刃にあたる面が分厚く、刃物というよりは鈍器のような造形なので、後でディテールアップの一環としてシャープに削り込んでも良いかもしれません。
そして、これまた処理が難しいと思われるのが刀の柄にあたるパーツ。
細かな凹凸が繰り返されたディテールの真ん中を跨ぐようにパーティングラインが走っていて、これまた処理が大変そうです。
この写真はややアップで載せていますが、下に置いているカッティングマットの1マスが1cmですから、その細かさが分かるでしょうか。
幅1mm以下の凹モールドの中を削らなくてはならないので、ここでもまたスジ彫り用の工具を使うなど、道具を工夫する必要がありそうです。
ここは順を追って見ていきましょう。
ゲートは削りやすい形状なので、かまぼこヤスリで普通に処理します。
ここは特に問題ないですね。
パーティングラインの処理では、まずは削りやすい凸部から攻めていきましょう。
三つ折りにした400番のペーパーを空研ぎで使っています。
凹ディテールの中を除いて削り込みが済んだ状態。
ここまでは簡単なのですが、問題は凹部をどうやって削っていくかですね、、、
パーツ自体がかなり小さいので、ノミでの掘り込みはパーツをバイス等でしっかり固定するなどしないと難しいと思います。
ここはヤスリ系の工具で削り込むのが良さそうですね。
幅1mm以下の狭所に対応できるヤスリは、管理人の手持ちの中ではこの3種類あたり。
この中では、ゴッドハンドのスジ彫りヤスリが最も細い隙間の削りに対応できます。
それぞれの切っ先の比較。
左から『極細ダイヤモンドヤスリ 四角』『匠之鑢・極 玄人 刀刃』『スジ彫りヤスリ 極小』です。
左の二つはアップで見ると少し太めにも見えますが、HGのガンプラ等ではあると使いやすいサイズ。
『刀刃』のヤスリも持っていると、ジオン系MSの動力パイプの溝にあるパーティングラインを削る際などに、サイズが丁度良いかと思います。
今回は最も細く削れるゴッドハンドのスジ彫りヤスリ(極小)を使いました。
流石スジ彫り用の工具だけあって、かなりの細い線が引けます。
こんな極細凹モールドの中を削るのにも丁度良いですね。
他では代替できない性能なのでこちらも是非入手を、、、と言いたいところなのですが、こちらは如何せん価格が高すぎて気軽には勧められません、、、
使いやすいことは確かなので、工具に投資ができるなら。
最後に全体を軽くペーパーがけして金ヤスリの毛羽立ちを取り除いておきましょう。
ここでは神ヤスの400番を使用。
かなり細かなパーツでしたが、何とか削り込みが完了。
ここは工具の力に助けられたという感じですね。
(参考リンク)スジボリ堂 極細ダイヤモンドヤスリ 四角 0.6×0.5 400番相当 [GOKU020]
(参考リンク)ゴッドハンド スジ彫りヤスリ 各種 日本製 目立てヤスリ ディテール スジボリ モールド彫り スジボリヤスリ
鞘の合わせ目消し
太刀の表面処理に続いて、鞘の方も見ていきましょう。
この鞘は、このキットで唯一合わせ目消しが必要な部分です。
(上の画像は貼り合わせるパーツの内側面を見ています。)
パーツ分割は潔い中央でのモナカ割り。
表面にはディテールが多いですが、ここでもパーティングラインと同様に細かく削り込んで処理していきましょう。
接着の前に、まずはゲートをきちんと削っておきます。
後で整形するのが前提とは言え、余計な削り作業は少なくしておきたいところです。
ディテールの間でかなり狭いので、ここでは幅1mmのシャインブレードUNOを使用。
ヤスリの幅が1mmだと、ゲート痕からもずれてしまいやすいので慎重に少しずつ削ります。
テーパーダイヤモンドヤスリの先端で削って仕上げます。
ゲートが処理できたら、接着の前には「パーツの合い」を確認しましょう。
最近のキットではほとんどありませんが、金型の精度が低かったり、設計の古いキットなどでは、パーツ同士の合い悪くて隙間があったり、接合面がずれてしまったりすることもあります。
その場合は、接着前に接合面をペーパーがけするなどの処理が必要なこともありますね。
幸いこのキットではパーツの合いは良好で、隙間なくぴったりと合っているので、このまま接着してしまっても問題はなさそうです。
管理人は貼り合わせ系の溶剤系接着剤(普通のプラセメント)でガッチリと接着するのが好みなのですが、今回は新しいマテリアルを試してみよう、、、ということでクレオスの速乾タイプ流し込みを使ってみました。
接着剤自体に黒く色が付いていて、接着した場所が分かりやすいというのも、この接着剤の触れ込みのようです。
早速、接着してみたのがこちら。
流し込みタイプなので、パーツを組み合わせてから接合面に接着剤を点付けすると、毛細管現象でツーっと流れていきます。
これは黒く色が付いているので、接着剤がどこまで流れたかは確かに分かりやすく、その点は良いですね。
しかし、流し込み系接着剤の常で、接合面を埋めるための所謂『ムニュ』は少なめ。
きちんと合わせ目が埋まっているか不安になりますね。
管理人は必要な時以外はサーフェイサーを使わない制作スタイルなので余計に心配です。
ということで、合わせ目の処理には瓶サフとラッカーパテも使用。
上の画像はヤスリがけまで終了した状態です。
どんな接着剤を使うかは制作者の好みといったところですが、このように大面積の合わせ目を消す必要があるパーツの場合は、初めから多めの『ムニュ』で隙間をしっかり埋めることができる貼り合わせ系接着剤の方が良いかもしれません。
もちろん、ヤスリがけ自体の量が少なくて済む、乾燥が早いなど、流し込み系接着剤ならではの利点もあります。
この接着剤の場合は、接合面が黒く着色されているのも分かりやすくて良いですね。
ヤスリがけ自体は、凹凸の多いディテール部分(上の画像で右側の部分)の整形がやや大変といったところですが、これまで見てきた狭所のパーティングライン処理に比べれば、難度は並程度。
凹ディテールの幅も約1mmといったところなので、合わせ目の『ムニュ』もシャインブレードUNOで無理なく削っていくことができました。
仕上げは400番のペーパーがけで。
入り組んだディテール部分は「つまようじヤスリ」や、折りたたんだペーパーの角などを使って整形しましょう。
頭頂部のハッチ
頭頂部のハッチのようなパーツです。
ここには一目で分かる大きなヒケが出ているので表面処理の段階で埋めておきます。
ヒケも小さなものならペーパーがけだけで消えてしまう場合もありますが、これくらいの大きな凹みにはパテ埋めも併用した方が良いでしょう。
盛り付けたのはフィニッシャーズのラッカーパテ。
つまようじの先端で刷り込んでいます。
幅の合う平ノミでパテ部分のみを狙って軽くカンナがけするように粗削りします。
これはハセガワトライツールの3mm幅の平ノミ。
模型用ノミとしては定番的な工具です。
更に瓶サフで細かなキズを埋めます。
ここでは、つまようじの先端で刷り込みました。
使用したサフはGSIクレオス『Mr.サーフェイサー1000』の瓶入りタイプ。
つまようじヤスリ(つまようじの先端にペーパー片を接着したもの)で磨き込んで仕上げ。
ペーパーは400番です。
ヒケを処理した状態。
このキットでパテ埋めまで必要な大きなヒケはこの部分だけでしたが、ヒケの見落としは塗装後に目立つので、しっかりと処理しておきたいところですね。
ラッカーパテと瓶サフ。
フィニッシャーズのラッカーパテ(左)は肉ヤセも少なくてきめも細かく、扱いやすいパテですね。
盛り付ける際には少しボソボソするので、好みで溶剤を足しても良いかもしれません。
瓶入りというのも使用する分だけをつまようじ等で掬って盛り付けることができ、手軽で良いと思います。
サーフェイサーについては、管理人もかつて模型用語を覚えたばかりのまるで初心者の頃には、盲目的に缶スプレーのサフを吹き付けて表面処理をしていた時期もありましたが、、、
現在では、サフは必要がある時に最小限に留めて使い、基本的には必要がないという考え方に落ち着いています。
筆塗りモデラーにとっては、サフだけだとしてもスプレーを使うのは大変だったりしますしね。
今回のように表面処理の段階で瓶入りタイプを補助的に使うことはあっても、基本的にはサフレスで塗装に入ります。
見落としたキズが塗装工程で見つかることもありますが、、、それはそれで、その段階で処理していけば良いという考えです。
その他
こちらは頭頂部に付く小パーツ。
仮組みの段階ではゲートごとランナーに付けておき、整形・塗装後に切り離す予定でしたが、、、
パーティングライン処理の過程でゲートが千切れてしまったので、止む無く切り離して整形しました。
塗装の際のパーツ保持などが大変になってしまう予感がありますが、それは後で考えることにしましょう。
また、切り離した後のパーツは非常に細かいので、紛失にも注意したいところです。
おしまい
表面処理が一通り終わったパーツ全景。
こうして見ると、パーツ数としてはそれほど量は多くもないような気がしますが、とにかく細かなパーツが多く、作業中は終始パーティングラインとの格闘、、、といった感じでした。
ディテールを跨ぐパーティングラインの処理は大変ですが、小スケールだけに表面処理の粗は相対的に目立ってしまうので、ここはしっかりとこなしておきたいところです。
この後は、表面処理のために削り落としてしまったモールドの再生と、気になる部分のディテールアップをしてから塗装に入ろうと思います。
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