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海洋堂 1/35 三式光武 工作編9.「工作編まとめ~ディテールアップと改造・改修箇所の振り返り」

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各部の改修を経て、工作の工程が終了した三式光武。
ここまで来ればあとは塗装を残すのみ…!

工作編のまとめとして、ここでは再度の仮組みを通して各部の振り返りをしていきたいと思います。

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素組みとの比較

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キットのまま(素組み)と、工作完了した状態の比較。
小スケールながらもディテールは良く入っているキットですが、リベットやスジ彫りといったモールドの甘い部分を修正したことで各部が引き締まり、メリハリがついた印象ですね。

また、足首に可動軸を追加したことで接地性が向上し、立ちポーズにも安心感が感じられるようになりました。

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右手首の指の角度を変更したことで、抜刀し太刀を構えるポーズもより自然に取れるように。
キービジュアルのような見得を切るポーズは取れませんが、これはこれで様になっているように思えます。

細かな部分

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細かな部分も簡単におさらいをしていきます。

まず、今回工作の初手として念入りに処理したのはパーティングライン。
特に胴体中央、光武の『顔』に相当するパーツには真正面に目立つパーティングラインが入っているので、優先的に処理をしておきたいところ。

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キットのスジ彫りは設定と比べるとかなり省略されているようですが、それでもスケール感を考えると不足を感じないレベルで良く入っています。
曲面主体のデザインである光武の辛いところで、部分的に彫りが浅くなっていたり、またモールド断面が斜めになっていたり…と、インジェクションキットの仕様と言える限界はどうしてもあるので、修正して彫り直しておくだけでも印象が良くなりますね。
また、塗り分けの境目になることが分かっている逆エッジは、あらかじめニードルなどで軽く彫りを入れておくと塗装の段階で少し楽ができますよ。

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凹ディテールはスジ彫りに比べるとピンポイントで配置されていますが、やはり浅く歪んでいるものが多いので、彫り直しておくと良いですね。
彫り直しに必要となる0.3mm等の極小ノミは、持っていなければこの機会に揃えてしまっても良いかと思います。
腰アーマーのダクトは管理人が新規導入したウワサの超性能工具、BMCタガネで彫り込んでみました。
こういう部分をシャープに加工しておくと全体もより引き締まる感じがしますね。



凸ディテールも歪んでいる部分が多いですが、特に目立つのはやはり顔パーツ。
前頭部の突起は作り直しておくと効果が高いと思います。



あとは、全身のリベットをどうするかですが…
今回はヒートペンを使って無限にリベットを作ることができたので(ほぼ)全身のリベット貼り替えが実現しましたが、市販パーツのR・リベット等を使うとなると…数が多すぎて現実的ではないですよね。
管理人としては、サクラ好きのモデラーには是非ともヒートペン(と、オプションビット)の入手を勧めておきます。
過去のサクラ大戦系の雑誌作例を見ていると、リベットの貼り替えはプロでも省略する場合があるようなので、ヒートペンが入手できない場合は無理に手を入れる箇所でもないのかもしれません。

胴体正面パーツの、キットのまま(ゲートカットのみ)とディティールアップ改修後の比較。
やはりキットそのままではパーツの正面中央で段差になっているパーティングラインが一番目立つポイントでしょうか。
その他のディテールアップも一つ一つは地味ですが、細かな作業の積み重ねが確実に完成度を高めてくれます。

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手首と持ち手。
指の角度を変更する改造はポーズ付けに有効ですが、どうしても強度が犠牲になるので良く考えてから行った方が良いかもしれません。
装備武器の太刀はパーツとしても軽いので、例えばガンプラにおける長物の銃火器のように、武器の重さで手首に負担をかけることはありませんが、万が一破損した場合はかなり細かな部分なので修正は面倒です。

そして、手首に付いているナックルガードのようなパーツ。
管理人としては、ここの改造はお勧めしません…!(汗)
細かすぎるのでパーツ自作の難度が高く、その上がんばって改造したとしてもそれほど目立つ部分でもないような気がしますね…
今回は安易に手を出して大変な目に合いました。(笑)
左右ナックルガードの作り直しと、それに付随する手首の修正だけで、実に10時間以上の時間を浪費しています。
(時間がかかるのは管理人の経験や技量の問題もありますが)
挑戦するには覚悟を持って臨む必要がありますね…!

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このキットでは関節部の修正や改修はもはや必然との覚悟をしておいた方が良いかもしれません。
よほど気を付けていない限り(気を付けていたとしても)、制作の中でどこかしらの関節は破損することになるでしょう。

管理人は肩アーマーと膝関節だけの被害で済みましたが、肩関節も膝と同様の構造のため危険です。
また肘関節のボールジョイントも受け側に微細なクラックが入っていたので、実は内心ヒヤヒヤしていました。
アルミ線接続による補修は比較的簡単にできるものですが、できることなら破損は避けたいものですよね。

足首にはアルミ線による横ロール可動を仕込みましたが、パーツが無垢だったので切断や加工は少し大変でしたね。
(このキット、腕や足などもプラの無垢で成型されている部分が多いようです。)
また、破損の補修による副次的な効果ですが、肩アーマーもアルミ線接続に改造した影響で、腕を可動させると『下がり肩』になる欠点が解消されてています。

おしまい

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工作が終わり、『やっとここまで来た』という感じです。(笑)
このキットを作るにあたって、改造や改修は最低限にするつもりだったのですが、気が付けば全身に渡ってかなり手を入れてしまいましたね。
基本的なディテールアップばかりではあるのですが…それでも作業量としてはかなりのものになっています。

改めて水性ホビーカラーのビンと比較してみると、この小ささですから。
小スケールキット故の難しさというものも実感しましたね。
管理人の技量的に、現状これが精一杯という感じです。

キットとしては素組みレビューなどでも触れた通り、体型やディテール等を含め、素性の良いモノであることは確か。
大きな形状変更は一切せず、ディテールアップと一部関節の改修だけでここまでカッコ良い光武の立体物が手に入るのは、これはキットそのものの造形の良さがあってのものですからね。

あとは、塗装で色が入ればまた良い雰囲気になりそうです。
エアブラシ環境のない管理人は常に筆塗りですが、この小ささでは例え基本色を吹き付けで済ませたとしても、かなりの部分を筆で塗り分けていかなければならないでしょう。
筆塗りモデラーは細部まで丁寧に塗り分けて仕上げていきたいところですね…!

と、言うことで…次回からは塗装編です。

(引き続き、塗装編は作業が完了し次第の更新となります)m(__)m

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編7.「ディテールアップ工作~ヒートペンを活用したリベット再生法」

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光武をはじめとした多くのサクラ大戦系メカで取り入れられているリベットモールド。
プラモデルでは射出形成の抜きの都合上、曲面上に成形された凸モールドは歪んでしまうことが多く、光武ではその数も多いため目立つポイントでもあります。
手間はかかりますが、ここを修正してあげることで見栄えはグッと良くなりますね…!

リベットの修正方法としてはいくつか方法があるかと思いますが、今回は最近使い始めた新工具・ヒートペンを使ってみました。
扱いに多少の慣れは必要ですが…サイズ選択の自由度も高く、材料費も安価(ランナーを再利用すればタダ!)とメリットも多いものです。
ユーザーの数が少なくマイナー工具という印象もあるヒートペンですが(笑)ぜひもっと普及してもらいものです…!
(※ただし、今回使用した十和田技研HP-1000は当記事作成時点で生産休止中…流通在庫のみとなっています。)

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十和田技研 ヒートペン HP-1000

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前回の記事でも少し使用していましたが、こちらが今回の主役工具・十和田技研のヒートペンHP-1000。
温度調節ができる半田ごてのようなもので、プラスチックが燃えずに軟化する温度(HP-1000では160℃~270℃の範囲で調節可能)に熱したコテ先でプラ材をパテのように扱ったり、専用のビットを用いて彫刻やモールドのスタンプ付けを行うなど、他の工具では代用できない特殊な加工を可能とするものです。
今回はリベットモールドを造形するための専用ビットを入手したので、そちらを使ってスタンプ付けをしていきます。

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こちらが交換用オプションの『丸頭リベットビット』(の先端)。
円柱の先端に半球状の窪みが彫ってあるような形状となっています。
この窪みに熱で柔らかくなったプラ材を充填し、対象に転写することでリベットモールドを造形することができる…という訳です。

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この丸頭リベットビットをはじめとしたオプションビット各種は先端径も細かなサイズ違いで充実しています。
(丸頭~は最小0.3mmから最大サイズでは3.6mmまで!)
今回管理人は0.6mmから1.2mmまでを入手しました。
実際のキットパーツと見比べてみたところ、1/35三式光武には0.7mmと0.85mmが丁度良い感じですね。
胴体正面(顔)と肩アーマー、それに下腿に0.85mm、その他のパーツは少し小さめの0.7mmでリベットを造形していきます。

オプションビットの入手は『ブレインファクトリー』の通信販売が利用できます。
注文方法はホームページに記載されているメールアドレスに直接メールで連絡(!)というものですが、管理人の注文時には中の人が迅速丁寧に対応して下さり、とてもスムーズに商品を手に入れることができました。(ありがとうございます。)
興味のある方は躊躇せず(笑)ぜひ下記リンク先のホームページから連絡を取ってみてください。
(前述のように、現在は肝心のヒートペン本体が生産休止中という問題はありますが…)

(参考リンク)
ブレイン・ファクトリー ヒートペン関連限定品商品情報

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そしてこちらはキットの肩アーマー。
パーツ表面にリベットが造形されていますが、曲面上にある凸モールドなのでどうしても形が歪んでしまいます。
(この写真では見やすいようにリベット部分に水性ペンで色を付けています)

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以前の素組みレビューで掲載した画像より。
リベットの一部は縦長の、イチゴの種のような形になってしまっています。
今回はこれを修正する訳です。

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まずは下準備として、キットのリベットモールドは全て削り落としてしまいます。
平ノミで大まかに削った後に金ヤスリで成形、さらにペーパーがけをしておけば良いですね。
表面処理の工程と同様ですが、管理人は400番までしかペーパーはかけません。

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0.85mmのリベットを打つ予定のパーツはこれだけ。
左右対称のパーツは念のため片側ずつ作業を行い、キット既存のリベット位置を参考にして修正を行います。

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リベットを打つ位置の目安として、鉛筆で線を書き込みました。

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そしていざヒートペンでリベットを造形したものがこちら…!
事前に廃ランナーで十分に練習をしてから臨んだのですが…慣れないとけっこう難しいですね。
温度が高めだとビットを離すときに糸を引いてしまう失敗が起こりやすいです。
設定は最低の160℃か、場合によってはそれでも高めなくらいかもしれません。
(作業時の温度を160℃から更に下げるにはコテ先に息を吹きかけて冷ますという方法があるようです。)

コテ先をパーツから離すタイミングも慣れでコツを掴むしかなく、離すのが遅いと造形したリベットの周りに円周状の窪みができてしまいます。
パーツにコテ先を押し付けていると充填したプラ材がパーツ側に移行するにつれてコテ先の周りにジワッと染み出してくるのが目視できるのですが、その一歩手前でコテを離すくらいが丁度良いかな…という感じです。
時間にすると一秒未満なので、上手くできるようになるには感覚に慣れていくしかないですね…

また、高温に熱されたコテ先を目的の場所に一発で当てなければいけない…というのも作業を難しくしている原因の一つ。
更にこの肩アーマーのように単純な形状のパーツならまだ良いのですが、入り組んだ箇所での作業となる場合、高温のコテ先が余計な箇所に触れるとその場所を溶かしてしまう…という危険もあります。

実際、上の画像の肩アーマーでも位置決めが上手くいかず、一度成型したリベットをつぶして作り直している箇所があります。
リベットをつぶす作業自体は、溶接用のビット『ウェルダー』でなすってからペーパーがけをするくらいで完了するので非常に簡単なのですが…結局時間はかかってしまうため中々スッキリとはしません。

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そこで、別のパーツでは『プラ板上に造形したリベットを削いで使う』という方法を試してみました。
これならいくら失敗しても数多く作ったリベットの中から上手くいったものを選んで使えば良いですし、後からの接着となるので位置決めも楽にできそうです。
上の画像は0.5mmプラ板の上に0.85mm径のリベットを50個ほど作ってみたもの。
これを一つ一つ削いでキットパーツに移植する訳です。

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平ノミは、ここではゴッドハンドの『ビットブレード 1.5mm』を使いました。
管理人は同サイズのスピンブレードも持っているのですが、ノミとしての使用ならビットブレードの方が刃先の剛性が高くて格段に扱いやすいです。

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削いだリベットは細か過ぎてピンセットでは掴むことができないので、アートナイフの刃先で刺して保持します。

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接着は溶剤系の流し込みプラセメントで。
リベット側もプラモデルのパーツと同素材なので接着でも楽ができます。
先に位置決めをしてからハケを軽く当てて接着剤を流し込んみ、リベットを固定するイメージですね。
今回使っているクレオスのMr.セメントSPBは接着剤が流れた場所が黒くなるのでパーツの状態が把握しやすく扱いやすい一品です。

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そしてリベットの接着ができた胴体正面(顔)パーツ。
カメラアイのレール周囲などは奥まった形状となっている上に接着シロが少ないので、ヒートペンのコテ先を直接当てる方法では作業の難易度が非常に高くなってしまいます。
あらかじめ造形しておいたリベットを移植する方法では、熱したコテ先でパーツを破損する心配もなく位置決めも楽に行うことができますね。

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足(下腿)パーツに新規のスジ彫りを追加

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あとは同様に既存のリベットモールドを置き換えていけば良いのですが…
どうやら足(下腿)のパーツだけは追加でもう一加工をする必要がありそうです。

上の画像はキットのリベットモールドにペンで印をつけたものですが、何だかリベットの間隔が変ですね…!?

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困った時の設定画…ということでキットのインストに載っている塗装参考図を見てみましょう。
これは前面からの図ですが、リベットは等間隔で配置されています。
ここはとりあえず問題なし。

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そして後ろ側。
キットでは省略されているスジ彫りによって装甲の分割ラインが表現されており、その分割された装甲の縁を止めるようなイメージでリベットが配置されているようですね。
キットパーツにはこのスジ彫りがないために近い間隔で打ってあるリベットの機能が想像しづらく、違和感があったという訳です。

今回の制作では基本的にキットで省略されているスジ彫りは追加しない方針でしたが、例外的にここだけは彫り直しておく必要がありそうですね。

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ということで、新規スジ彫りの追加手順について見ていきます。
と言っても、ごく短い直線を彫るだけなので実に簡単なものですけどね。

まずは鉛筆でパーツに下書き。
この画像では同時にリベットを打つ位置の目安も書き込んでしまっているので、ぱっと見、状態が分かりにくいかもしれないですが…
画像正面にある一本の線がスジ彫り位置のガイドとなるものです。

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新規のスジ彫りを入れる方法にも色々あると思いますが、今回はフリーハンドのアートナイフでケガキを入れたものをアタリにし、スジを整えていきます。

先に書き込んだ鉛筆の下書きを目安にナイフの刃先を押し当て、パーツに目印のキズを付けていきますよ。
この時に付けたキズの位置が最後まで影響するので慎重に…!
刃先で『切る』のではなく、刃を『押し付けて』キズを付けるイメージですね。

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別角度から。
刃を寝かせて押し付けるように作業します。
刃先を立てて『切る』ようにすると線が安定しませんよ…!
ここでのキズはあくまでもアタリなので、ごく浅いもので十分です。
しっかりと切り込むことよりも線がぶれないことを重視しましょう。

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ナイフでキズを付けることができたら、ニードルに持ち替えてアタリのキズを更にはっきりとさせていきます。
ここから先の作業はキット既存のスジ彫りを彫り直す作業と殆ど同じですね。
極力、力を入れず…『彫る』のではなく『撫でる』ような力加減で何十回もキズをなぞります。
全く力を入れなくても、大体30回目くらいからアタリもかなりハッキリとしてくる感覚を感じられるかと…

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次はエッチングノコ。
今回は直線のスジ彫りなので、きれいな直線を出しやすいエッチングノコで更にアタリをなぞります。

ここで使っているのは雲母堂本舗のライナーソー0.08mm B型。
デザインナイフ規格のホルダーに取り付けて使う極薄・小型のスジ彫り向けエッチングノコです。
扱いやすい工具なのですが、如何せんマイナー過ぎるのと(笑)、現在は既に販売終了しているのか、手に入りづらい一品になってしまったようですね。
管理人も今使っているものがヘタったら代わりの工具や工作方法を考えていかないと…と思います。

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そしてシモムラアレックのホーリー 0.1mmです。
ここでの彫り込みができれば作業完了となりますが、最後まで気を抜かずに『撫でる』力加減でアタリをなぞっていきます。
数十回撫でてスジが深くなり刃先がブレない確信を持てたなら、ここで初めて少しだけ力を入れ、カリカリと彫り込んで仕上げましょう。

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ここまでの作業で彫り込んだ新規スジ彫り。
手順を踏んで作業を進めたことでスジのブレを抑えることができたと思います。

ガンプラ系ではハイディテールの仕上げが流行ということもあり、スジ彫りは専用の工具も一昔前に比べると随分と充実しましたが、とりあえずシモムラアレックのホーリーは文句なしに扱いやすくオススメです。

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最後にはペーパーがけで面を整えて終了です。
ここでは手元にあった神ヤスの400番を使っていますが、もちろん普通のペーパーでも良いですよ。

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ペーパーがけまでが終わり、これが仕上がりの状態になります。
管理人としては結構キレイに彫れたかな…という感じなのですが、皆さんの目にはどう映るでしょうか…?
とりあえず現在の技量ではこれが限界…というレベルで気を遣って彫ったので(笑)、もう先の作業に進もうと思います。
スジ彫りはセンスも問われますし、いつまでも要修行…!というところですね。

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足(下腿)のリベットは…ヒートペンでパーツに直打ち

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スジ彫りの追加ができたら、改めてリベットの打ち直し…なのですが、ここではまたヒートペンでパーツに直打ちをしてみました。
ヒートペンを最近使い始めたばかりの管理人にとって実際の作業はまだまだ試行錯誤の連続なので、道具の扱いに慣れる意味でももう一度挑戦…といったところです。

そして上の画像は案の定失敗している場面です。(笑)
コテ先の温度が高いと充填したプラ材がコテ側から上手く離れてくれず、引っ張られて糸を引いてしまうのです。
こうなってしまったら当然やり直し。

取説によると、本体が設定温度まで加熱され安定するまでには電源ONから20分が必要ということです。
なのですが、高温設定で電源を入れて加熱してから設定温度を下げる…といったような横着をすると温度が必要以上に高くなり過ぎ、このような糸引き状態になりやすいようです。(そりゃそうか)
モールドのスタンプ作業は低温の方が扱い易いですから、横着せずに最低設定の160℃で20分待つのもコツの一つかもしれません。
溶接や肉盛りなら200℃以上の高温で使用することになるので、一気に温度を上げてしまっても良いのですけどね。

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数度のやり直しを経て(笑)リベットの修正が完了したパーツ(左)。
中央に一本スジ彫りを追加したことで、リベットが打たれた間隔もより自然に見えるようになりました。
キットのまま(右)のパーツと比べると、立体感も増し、メリハリもついたような印象がありますね。

ヒートペン直打ちではやはりコテ先を当てる位置の微調整が難しく、よく見るとそれぞれのリベットの位置が微妙にブレているような気もしますが…
パッと見、言われなければ分からない範囲でしょうか?(汗)
大まかにはヨシ!ということで今回はこれ以上の深追いはしませんが、先ほどの胴体パーツの例のように、別に造形したリベットを削いで使う方法の方がより完成度を高められるのかもしれませんね。

その他、注意するパーツ

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残りのパーツも同様にキットのリベットを削り落とし、ヒートペンで造形したリベットを貼り付けていけば良いのですが、一部注意しなければならないパーツがあります。
上の画像は足首パーツなのですが、キットではリベットの位置が変なのです…

あるはずのリベットがなかったり、逆に設定にはないリベットが造形されていたりと…各部の省略されたスジ彫りモールドといい、このキットのディテール再現は割とアバウトな部分があるのかもしれません。
より正確に作るなら、キットのリベットモールドの配置を信じてそのまま作り直すのではなく、インストに掲載されている設定画と見比べながら作業を進めていく必要がありますね。

今回は設定画のデザインを尊重…ということで、この足首のように明らかに設定と異なっている部分は修正してのリベット配置を行いました。
とは言え、ここも『言われなければ分からない』部分ではあると思うので、どこまで拘るかは制作者の考え方次第と言ったところでしょうか。

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なお、これ以降のリベット修正は全てプラ板上に造形したリベットを削いで移植する方法で行っています。
このキットで必要なリベットの総数は地味に多く…仕上がりの精度だけでなく作業効率の面からしてもこちらの方法を採用した方が良かったですね。
この画像は余り物の0.5mmプラ板の切れ端に0.7mmリベットを120個ほど打ったもの。
これを一つ一つパーツに直打ちして、失敗したらその都度修正して…なんて作業を想像すると、何時までたっても終わる気がしません。笑

また、ヒートペンでリベットを造形することのメリットとして、圧倒的なランニングコストの安さがありますね。
これだけの数のリベットを、例えばWAVEの『R・リベット』に代表されるような市販の改造パーツで賄っていたら…と考えると、お金もかなりかかってしまいます。
ヒートペンで造形すれば材料費はごく安く、それこそ廃ランナーを利用すれば廃品利用で実質タダ!といったところです。
充填用のプラ材として廃ランナーを利用するには『ウェルダー』のビットでランナーを薄く延ばして板状に加工する必要があるため、今回管理人は作業効率を考えて0.5mm厚のプラ板を使いましたが、それでも改造パーツの購入代に比べればプラ板の値段などは微々たるものですね。
何よりも『市販パーツをそのまま貼った』のではなく、『自分で作ったパーツを使った』という方が、モデラーとしての満足感も高いかと。笑

リベットではないが…頭頂部サブカメラ(?)も改修

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最後に、リベットではないのですが同様に加工できる部分として頭頂部のサブカメラ(?)にも手を入れておこうかと思います。
設定画を見ると、小さなレンズ状パーツが埋め込まれている頭頂部。
キットのパーツではごく浅い丸モールドが彫り込まれているのみなので、リベットをレンズとして埋め込んでみましょう。

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同じパーツの後ろ側にもサブカメラらしき装備があるようです。
こちらは凸モールドがありますが大味な造形なので、一旦削り落としてからリベットを埋め込みます。

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前側の加工から。
リベットをそのまま埋め込んだだけでは違和感があるので、周りをそれらしく加工します。
1.2mmのドリルで穴を開け、穴の入り口は2.0mmの球形ビットで面取りをしました。
設定画とは少し異なる形状ですが、ここは雰囲気重視で。

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1.0mmのリベットをプラ板上に成形し、ノミで剥がして移植します。
ピンセットで位置決めをしてから、流し込み接着剤でサッと固定しました。
中々立体感のある仕上がりになったのではないでしょうか…!

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後ろ側も下処理からしていきます。
キットのモールドは削り落とし、平ノミで削り込み。
さらにそのままリベットを貼ると出目金になってしまうので、やはりこちらも穴を彫りこんでおきます。
こちらの穴は1.0mmのドリルで彫りました。

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こちらは前側よりも少し小さめ、0.85mmのリベットを埋め込んで完成です。
ここも厳密には設定画の通りではないのですが…それらしくはなったでしょうか。

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本体まわりのパーツと合わせてみました。
塗装でレンズ部分を塗り分けてやれば、効果的なワンポイントになってくれそう。

リベット状のモールドは切り取ってレンズとして使えることも考えると、ヒートペンのリベットビットも色々と使い道がありそうな工具です。
改造パーツに頼らなくても小サイズのレンズを自分で作り出せるのは融通が利いて良いですね…!

おしまい

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画像はリベットを打ち直したパーツの一覧です。
厳密にはこれ以外にもリベットが造形されたパーツはあるのですが、明らかに形が歪んでいない部分に関してはキットのものを活かすことにしました。

しかしそれでもこのパーツ数。
曲面主体デザインの光武にとっては、全身のかなりの部分で凸モールドであるリベットは歪んで成型されてしまいます。
かかる手間の分だけ、その効果も大きいといったところでしょうか。

今回はヒートペンを使ったことで任意のサイズのリベットを無限に作り出すことができるようになったので、作業としてはかなり楽ができたと思います。
これでヒートペンを使わないとなると、市販パーツを貼りまくるか、リベットの部位にピンバイスで窪みを彫った上でDIY店などで入手できる1mm径の鉄球を埋め込むか…などといった方法が考えられます。
(更に言えば、古には伸ばしランナーの先端を線香であぶって丸めるというものもありましたね。)
しかし…市販パーツはお金が掛かりすぎ、また鉄球はオーバーサイズな上に余った鉄球の使い道がない(笑)という問題もあるため、ヒートペンを使ったリベット再生はこの種の工作方法としては現状ベストなのではないでしょうか。

作業に多少の慣れが必要なのと、オプションビットも含めた初期投資はそれなりに必要なこと、更に肝心のヒートペン・HP-1000が販売休止中なこと(!)は考慮する必要がありますが、管理人としてもこのヒートペンはもっと普及してもらいたいツールですね。
リベットの造形に限らずとも、例えば今回の内容では扱いませんでしたが、廃ランナーを利用したスチロール樹脂の同素材による肉盛り・充填・裏打ちなど、他の工具では代替できない加工が可能となり、一度使用するともうパテには戻れない魅力があります。
何より、今まで引火の危険を考慮しなければならなかったプラ材の熱加工を比較的安全に行うことができるようになったのは画期的なことですね。
他メーカーの競合製品も幾つか存在しますが、充実したオプションビットや温度を細かく設定可能な点など、この製品でしか実現できない工作内容は多いです。
生産休止のタイミングで使い始めた管理人は完全に乗り遅れ気味なのですが(笑)、これからの工作で多用して少しずつ慣れていこうと思います。

そして、光武の工作はもう少し続きます。
次はある意味このキット最大の鬼門である関節の修正について見ていきます。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編6.「ディテールアップ工作~太刀と持ち手の修正」

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細かなディテールアップとして、太刀とその持ち手を見ていこうと思います。
各部関節は(一応)可動するこのキットですが、流石に手の指は無可動の固定ポーズ…!
(上の画像は改造後のものです。)
太刀を持たせても安定しないので、少し手を入れてあげると良さそうですね。

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三式光武 太刀と持ち手

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画像は以前掲載した『素組みレビュー』から。
このキット、装備武器として太刀とその鞘が付属しています。
鞘は左腰のアーマーに装着、太刀は鞘から抜刀して手に持たせることが可能…!
…可能なのですが、指は無可動かつ持ち手となる右も左手と同じく中途半端に開いた状態で造形されているため、『持たせる』というよりは『引っ掛けている』状態になってしまいます。

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可動範囲の狭さは致し方なしとしても、太刀の握りくらいはもう少ししっかりとしたいところですよね。
持ち手をゼロから作り直すことは大変ですが、幸いにも光武の手は三本の独立した指によって構成されているシンプルなデザイン。
五本指のメカに比べると改造も(多少は)簡単に行えそうな気がします。

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一方、太刀の方に目を向けてみると、刀身・鍔・柄がそれぞれ別パーツとなっていて非常に細かな造形です。
気になる部分としては、やはり刀身の分厚さでしょうか…?

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画像は刀身の切っ先に向かってのもの。
やはり本来は刃になっている部分が分厚く造形されており、刃物というよりは鈍器のようなイメージです。
ここはプラモデルである以上は造形の限界とも言える部分なので、シャープに削り込んであげると良さそうですね。

持ち手の形状変更と刀身の削り込み。
今回はこの部分を重点的に見ていこうと思います。

太刀の刀身を削り込む

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形状も単純だし、削り込むだけなら簡単…!と思って油断していると、思わぬ削り過ぎでパーツ形状を大きく崩してしまうことがあります。
やはりどんな時でも基本を大切に、定石重視でいきましょう…!

画像は刀身の刃にあたる面に水性ペンで印を付けた状態。
このように削る面に色を付けておくようにすると、削っている量やパーツの状態が把握しやすくなりますね。
好みによっては所謂『捨てサフ』的に、軽くサーフェイサーを吹いてから削り作業を行う場合もあるかもしれません。
(筆塗りモデラーの管理人は極力スプレーを使いたくないのでサフは吹きません…!)

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実際の削り作業は刃物系工具によるカンナがけで行います。
アートナイフでも良いのですが、管理人のオススメはGSIクレオスの『Mr.バリ取り棒G』。
ナイフ系の工具に比べると刃先の安定感が段違いに高く、削れ具合のコントロールもしやすいものです。
先にペンで付けておいた印を目安に、左右両側から削れ具合が均等になるように加工していきます。

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太刀の切っ先、先端に向かう部分はヤスリを使って削り込みます。
ここで使っているのはシモムラアレックの『シャインブレード6』。
ヤスリ目の細かい方(#1000相当)で削っています。
『#1000相当』という表記ですが、ペーパーの1000番よりは断然良く削れていますね。
ヤスリ目は単目なので削り痕も比較的キレイですが、あくまでも金ヤスリなので…もちろん仕上げのペーパーがけが必要な程度のヤスリ目は残ります。

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削り込みが終了。
刀身の側面には細かなディテールが入っているので、削り込みで必要な部分を潰してしまわないようにも注意が必要ですね。
とりあえず、太刀の方はこんなところで良いでしょう…!

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太刀持ち手、指の形状変更…ヒートペンを導入してみる

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そして、改めて右手と太刀の組み合わせを。
キットのままでは指が開いてしまっているので、とても『持っている』ようには見えないですよね。
ここを何とか修正していきましょう…!

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手首は画像のように2パーツでの構成。
それぞれが緩く内側に曲がった形状ですが、この曲がりを深くしてしっかりと太刀を握れるような角度にしてやれば良さそうです。

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指の曲げ加工には管理人が最近使い始めた『ヒートペン』を使った熱加工をしてみることにしました。
管理人が入手したのは十和田技研の『HP-1000』。
プラスチックを熱で柔らかくして自由な形状変更を行うという、大変ユニークな工具です。

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最近では数社から発売されるようになったヒートペンですが、この『HP-1000』の良いところは設定温度を細かく調節できることです。
コントローラーに付いているツマミ(カチカチと数字の部分で止まります)を調節することで、160℃から240℃までは10℃刻みで、それに最高出力の270℃へと温度を変えることができます。
これにより、低い温度を用いた各種の細かな加工から、温度を上げての溶接・溶断や肉盛りまでと、様々な用途に使い分けることができるのです。
これは他社のライバル機にはない大きなメリットかと…!

今回は指パーツの関節部分を軟化させて角度を変更するという細かな加工を行うので、設定温度は低めの180℃で作業を進めてみました。

電源を入れて待つこと20分。
温度が安定したところで、まずは試しにビットの先端を適当なランナーに押し当てて使い勝手を確認してみます。
なお、ビットは『ウェルダー1.5』を使いました。

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熱されたビットをランナーに当てると、明らかに通常の工具とは違う感触…!
グニュリとプラが柔らかく沈み込み、熱で軟化していることが工具を持つ指先から伝わってきます。
感覚的には冷蔵庫から出したばかりの堅めのバターをスプーンで押しつぶしているような感じでしょうか…
もちろん、このあたりの使用感は設定温度や使用するビットによっても変わって来るところです。

コテ先のビットを対象のプラから離せば、瞬時にその形状で固定される(柔らかくなっているのは熱されたビットが触れている瞬間だけ)というのも、何かと硬化・乾燥に時間を取られがちな模型工作の中においては画期的と言えるでしょうね。

軟化したランナーをこねくり回してある程度感覚を掴んだら、いよいよ本命であるパーツの加工をしてみましょう。

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パーツの加工では、指関節の内側部分にヒートペンのビット先端を押し付けながら、少しずつ指を曲げていきました。
細かな部分は後で修正するとして、まずは大まかに目的の角度まで指を曲げてしまいます。

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パーツをバラして別角度から。
ビットが当たった指関節は少し抉れたようにもなっていますね。
通常の切り貼り加工ならこんな状態からの整形は少し手間ですが、ヒートペンならある程度までは比較的簡単に修正が可能です。

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ビットの先端で抉れた部分を埋めるように撫で付けて形状を修正します。
加工した部分は熱でただれてしまいますが、それは最後にペーパーがけをしておけば良いでしょう。
切削も接着もせずに、この画像の状態にまで修正ができるのは画期的と言えますね。
また、曲げ加工の際にもパーツの切断をした訳ではないので、加工部分の強度も高いままで保たれています。

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太刀を持たせて形状を確認しておきます。
それなりに『握っている』ように見えるでしょうか…?
大まかな指の角度としてはこれで完成形としておきましょう。

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指の角度が決まったので、あとはペーパーがけ等で表面を整えてやれば作業完了です。
大まかな修正はヒートペンの段階でできてしまうので、通常の切り貼り加工に比べると仕上げも楽にできますね。
それに何より、待ち時間がゼロ(!)というのは熱加工の大きなメリットです。

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未加工(左)と曲げ加工済(右)を比較。
キットのままではどうしても『物を持つ』という感じではないですが(笑)、指を曲げてやることでそれらしく太刀を握れるようになりました。

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手首の形状修正…ナックルガード(?)を別パーツ化する

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指の角度変更が終わった手首ですが、実はもう一つ気になる部分があります。
画像の矢印あたり、キットでは何だか板のように造形されている部分がありますが、ここは設定と形状が異なります。

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画像はインストに掲載されている設定画(塗装参考図)より。
手首の付け根には小型のナックルガードのようなパーツが付いているのが分かります。
指関節の根本を保護する目的の、補助装甲的なものでしょうか?
詳細な設定は不明ですが、ともかくここはキットのように板が埋め込まれている形状ではありません。

細かな部分なので修正が難しいものでもありますが…こだわる場合はここも加工する箇所の候補となります。
管理人としては、加工するとしても極力キットを活かす方向性で工作を行いたいので、余計な部分の削り込みだけで対応できればそれがベストなのですが…

キットの形状を検討すると、ここを加工する場合、下手に削り込むよりは潔く全て作り直した方が簡単でかつ立体的な仕上がりにできそうな感じです。
作業の手順としては、板状に成形されている余計な部分を一旦全て削り落とし、プラ材で新造したナックルガードを取り付けることになりますね。

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今回はガード部分を削り落としてしまうので、その前に大きさをノギスで測っておきます。
ここでメモしておいた大きさを目安にプラ材で作り直しをしていくことになりますが、実際は現物合わせでけっこうアバウトだったりもします。

ちなみにここ(ガードの横幅)の長さは11.35mm。
ノギスは0.05mm単位で大きさを測ることができるので、ディバイダーと定規の組み合わせよりも正確な測定をしていくことができますね。

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計測が済んだら不要部分を削り落としていきます。
まずはニッパーで大まかにバキバキと切り込み。
ここではもちろん刃先がヤワな片刃ニッパーではなく、耐久力のある両刃を使っていますよ。

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アートナイフと金属ヤスリで削り込んでいきます。
パーツの必要な部分を傷つけないよう慎重に…!

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そして今回はここでもヒートペンを活用してみました。
ウェルダー1.5のビットを使い、不要部分を撫でつけるようにして少しずつ取り除きます。

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もろくなった不要部分をアートナイフで切除、またヒートペンで撫で付け…を繰り返して整形していきます。

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最後はペーパーがけで仕上げます。
ラフな工作なので320番から始めて400番で仕上げ。
320などの低番手のペーパーはゴリゴリ削れて気持ちが良い!ですね。笑

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左がナックルガードを切除したパーツ。
右のキットのままのもの(指は曲げ加工しています)に比べると随分とスッキリしましたね。
ここまでできたら、あとはプラ材で切除したガード部分を自作していきます。

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こちらは1.0mm厚のプラ板を2.0mm幅で切り出したもの。
今回はこれを加工してガード部分を作ります。

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適当な長さに切断しクランク状に接着。
貼り合わせタイプの溶剤系プラセメントでガッチリと接着します。

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クランクの内径だけはパーツに合わせておきます。
外側はこの時点ではかなり適当なので、後から削って仕上げていきます。

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各面をヤスリで削り出して整形したものがこちら。
基本形はこれで完成として、後は細かなディテールを追加してパーツとして仕上げていきます。
この形状のものが左右分、二つ必要になる訳ですね…

ということで同じ形状のパーツもう一つ作ろうとしていたのですが、二つ目ではヤスリがけの段階で事故発生…
破損に次ぐ破損…!ということで上手く作ることができません。
管理人の技量不足で接着した角の部分がヤスリがけのテンションに負け、折れて破損するという失敗を繰り返してしまいます。
一つ目のパーツが上手く仕上がったのは奇跡でしたね。

このままでは何時になっても完成しない…ということで、ここでは作り方を変えてみることにしました。

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まず、左右の先細テーパー形状になっている部分はプラ板を細長く切り出した段階である程度まで整形してしまいます。

0.5mm厚のプラ板を2.0mm幅で切り出し、目的の形状に合わせて先端部分をナイフで押し切り。
さらに金ヤスリで微調整します。
後からのヤスリがけで整形する方法だと接着部分にテンションがかかって破損しやすいため、ここでほぼ完成形を作ってしまうイメージで。
接着後は、合わせ目消しを兼ねた軽めのペーパーがけ程度で仕上げられるようにしておきます。

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テーパー形状に削り出した先端を切り離したものを二つ作りました。
これを2.0mm幅に切り出した帯状の0.5mm厚プラ板に接着し、目的の形を作ります。

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接着する際には簡単な治具を用意すると破損のリスクも減らせ、また精度を上げることができます。
ここではタミヤの5.0mm角棒を短く切り出したものを使いました。

治具のプラ棒自体は接着されてしまわないよう、表面にマスキングテープを貼っています。
また接着の基部となる帯状プラ板は、弱粘着性の両面テープで治具のプラ棒と固定しておくと作業が行いやすいです。
粘着力が強いと治具を外す際に力がかかって破損の危険があるため、両面テープは必ず弱粘着性のもので。

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貼ってはがせるタイプの両面テープ。
(画像のものは購入時期が古いため、現在店頭にあるものとはパッケージが異なるかもしれません。)
このタイプのテープは耐水ペーパーを当て木に貼る際などでも扱いやすいため、モデラーなら持っていて損はないかと思います…

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そして先程のパーツですが、接着剤が乾燥したら不要部分を切り取り、合わせ目を処理したら基本形は完成。
左右のテーパー形状は先に作っておいたので、ここでのペーパーがけは最小限で済ませ、パーツに負担をかけないように気を付けて作業します。

これで何とか作り直しパーツが二つ揃いました…!

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基本形が出来たら、細かな部分を追加してパーツとして仕上げていきます。

まず、設定画では角の部分にC面の面取りがあるため、削り込みで再現します。
削っている部分が分かりやすいようにマジックで色を付けてから、当て木をした320番のペーパーで削っていけば良いですね。
ここでもパーツは5mm角棒の治具に固定しておくと安全です。
パーツを持つ手とペーパーを持つ手の角度がそれぞれ一定になるように意識し、一動作毎の削れ具合を確認しながら慎重に削ります。

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続いてリベット状の凸ディテールを追加。
設定画で見る限り、丸頭のリベットというよりは表面は平面であるような感じです。

ヒートペンで0.8mm径のリベットをプラ板上に成形してから、表面を当て木ペーパーで軽く慣らして平面形状を再現。
出来上がったリベットを平ノミで剥がしてパーツに移植します。

ヒートペンを使ったリベットモールドの造形については、次回『工作編7.「ディテールアップ工作~ヒートペンを活用したリベット再生法」』で詳しく取り上げます。

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なお、パーツが細かいので固定にはバイス(万力)があると良いですね。
模型用に発売されているバイスは幾つか種類がありますが、こちらの製品はクレオスからの発売。
かなりしっかりとした作りで精度も良く使いやすいです。
他メーカーの製品に比べて公式ホームページが地味なせいか、ネット上ではあまり目立っていませんが(笑)、管理人としてはおススメの一品です。

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そして、追加するディテールはまだあるのですが、ここで手首本体との接続部を作ってしまいます。

色々と考えた結果、今回はプラ棒を使った極小のヒンジを作っていくことにします。
1.0mm以下のプラ棒を使いたいのですが、このサイズはタミヤからのラインナップには存在しないため、ここではエバーグリーン製のものを用意しました。

画像は数種類のプラ棒・プラパイプがセットになったもの。
エバーグリーンのプラ材は輸入物のため高価ですが、少量使うだけならこのようなセット販売のものが手を出しやすいかと思います。
今回のものは『70EG217』という型番で販売されているもので、セットに含まれている0.64mm径のプラ棒を使います。
(ちなみにサイズ表記が半端な数字なのは、インチ表記をメートル法に直しているため)

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適当なプラ板に穴を開けてプラ棒が差し込めるサイズを確認したところ、0.7mm径の穴にピッタリ差し込めるサイズのようですね。
0.6mm径の穴ではキツくて入りません。
プラ棒のサイズが公証0.64mm径なので、表記通りと言ったところでしょうか。

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キットの手首は2パーツに分割されています。
今回はこの分割構造を活かし、挟み込みでナックルガードのヒンジを後から取り付けられるようにしよう…という訳です。

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パーツの中央部分、分割の境目を狙って穴を開けました。
ニードルでのアタリ付けからはじめて0.5mm、0.6mm、0.7mmと段階的に拡張して行き、穴がズレないように気を付けて作業します。

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うまく分割パーツの両側に溝が彫られるような形で穴あけができました。

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念のため0.64mm径のプラ棒が穴に挿せることを確認しておきます。
問題なし!ですね。

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同様に反対側からも穴を開けたら手首側の加工は完了です。
中央には接続用のピンがあるため、ドリルを貫通させないようには気を付けましょう。

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自作したナックルガードの内側に0.64mm径プラ棒を短く切り出して接着します。
プラ棒は少し長めに切り出して後から微調整するイメージで。

細かな部分なので心情的には流し込みタイプの接着剤を使いたくなりますが、多少とはいえ後々力がかかる部分なので、ここは貼り合わせタイプの接着剤でガッチリ接着しておきます。

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少し長めですが、パーツの内側にヒンジの軸となるプラ棒が接着できました。
あとは手首と合わせながら微調整していきます。

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手首に彫った溝に合わせて確認してみたところ、プラ棒が少しだけ長いようですね。
0.3から0.5mm程度、目検討で切り詰めます。

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パーツに負担をかけたくないので、プラ棒の切り詰めには切れ味の良いアルティメットニッパーを使いました。
0.64mm径のプラ棒程度なら、全く手応えなくストンと切り落とすことができます。
今回は接着剤が完全に乾燥する前に作業を進めているので、ナイフでの押し切りなどでパーツに負担をかけるのはなるべく避けたいところです。

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プラ棒を切り詰めたことで、中央の接続軸との干渉も問題なくなったようです。

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手首パーツを合わせて確認。
問題なし。

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できました!
一体成型されていたキットパーツに比べると立体感も増した感じがありますね。

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プラ棒でヒンジを仕込んだことにより、ナックルガード部分は前後へのスイング可動が可能です。
設定画では、この画像のように斜め前方に向けて固定されているようですね。
キットのままでは再現できない部分なので、改造の効果は大きいかと思います。

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ナックルガードはこれで完成…と言いたいところなのですが、あと一つ、後回しにしていたディテールがあるので追加で工作します。

パーツ表面にある帯状の凸ディテールなのですが、これをプラ材で再現するのは難しいため、ここではセロテープを使ってみました。
一般工作用のセロテープを3枚重ねて厚みを調節し、適当な大きさに切り出します。
(切り出す大きさは事前にマスキングテープ等を使って検討をつけています。)

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透明なので画像では状態が非常に分かりづらいですが、帯状の凸ディテールとしてセロテープを貼り込んだもの。
はじめはプラペーパーを使って再現をしようと試みていたのですが、角の部分に追従させることが難しく、パーツが小さすぎるためにペーパーがけ等で後から整形をして形状を整えることも難しい…ということで断念しました。

セロテープなんか使って塗装は大丈夫なのか…?という疑問は残りますが、以前制作したHGUCサザビーの時もテトロンシールの上に水性ホビーカラーの塗装は可能でしたので、多分大丈夫ではないかと…
もし問題があったなら、プライマーやサフの併用など、その時に対応を考えることにします。

ということで、やっとナックルガードが完成です。

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あとは、もう片方の手首も加工しなくてはいけません(汗)。
こちらのパーツは太刀を持つために指を曲げ加工していますね。
先に加工した方と同様に、一体成型のナックルガードを削り落とすところから進めていきます。

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不要部分をニッパーで切除し、ヒートペンで撫で付けながら形状を整えていきます。

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ヤスリを使わずにここまで加工できます。
ヒートペンのビットはウェルダー1.5、温度は最高設定の270℃で行いました。

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手首の根本と合わせて様子を見てみると…少し削り過ぎているようです。
様子を見ながら少しずつ削らなければいけなかったのですが、指先側のパーツ単独で加工を進めてしまったことによる失敗ですね。

ここまで形状差があると根本側のパーツを削り込んでの修正では全体の形状が崩れてしまうため、削りすぎた部分に盛り足しをすることにしました。

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ここでの修正もヒートペンで。
パーツへの肉盛りはヒートペンの得意分野です。
足りない部分に廃ランナーを溶接して盛り上げていきます。

盛り上げたら、不要部分をニッパーやヤスリで削り取り、また具合を確認しては盛り足しを追加し…と繰り返して目的の形にしていきます。
パーツが細かく、また指の部分が作業の邪魔になるため加工が難しいですが、ヒートペンならパテと違って待ち時間ゼロで作業ができるのでまだ効率的な方かとは思います…

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何とか修正完了。

途中で指の曲げた部分が折れてかけてしまったので、黒い流し込み接着剤で修正しています。
パーツが細かすぎて作業の際に持ち手になる部分がなく、ヤスリがけをしようにも力がかけづらいので、ここまで仕上げるのは中々大変でしたね…

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手首の根本と合わせて。
欠損した部分が埋められ、違和感なく仕上がったでしょうか。
ヒートペンでの肉盛りは、しっかりと熱が伝わっていれば接着剤を使わなくても滑らかに溶接されますし、同じプラ素材同士なので仕上げや塗装が楽なのもメリットですね。

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先に作ったパーツと同様、ヒンジの軸が通る0.7mm穴を開けてナックルガードを取り付け。
こちらも何とか完成しました。
この部分の改造も、今度こそこれで終了です…!

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おしまい

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手首の改修は、最初は太刀を持つ右手の指の角度を変更するくらいのつもりだったのですが…ナックルガードの作り直しにも手を出したら、これがまた大変(笑)。
サイズが小さすぎるため強度が確保できず、プラ板工作としても難度が高くなってしまいますし、またパーツ側に一体成型された部分を削り取る作業もパーツが小さく一筋縄ではいきません。

振り返ってみて、管理人もヒートペンがなければ作業を完了できなかったのではないかと思いましたね。
このサイズの切削を通常の刃物系工具だけで行うのはかなりの高難度かと思います。

上手く作業完了できれば立体感が増すので効果は高いですが、見る人にとってはキットのままでも言われなければ分からない部分とも言えますし、正直おすすめはしません…!(笑)
今回は何とか形になって良かった、というところでしょうか。

次回の記事では、今回も活用したヒートペンを使ったリベットの再生を行っていきます。
作業量に対する見た目の変化としては、こちらの方が余程効果が高いかと思います…!

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トップ>模型製作記・完成品展示>このページ

海洋堂 1/35 三式光武 工作編5.「ディテールアップ工作~歪んだ凸ディテールの作り直し」

トップ>模型製作記・完成品展示>このページ

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ディテールアップの一環で凸ディテールの修正もしておきます。
インジェクションキットの限界として、特に光武のような曲面主体のメカは表面ディテールに歪みが出やすいので、特に気になるところを中心に手を加えていこうと思います。

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成型の都合で歪んだディテール

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画像は光武の胴体を組み合わせたところ。
頭の上にあるディテールが歪んでいるのが分かりますね。

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更に別角度から。
射出形成の都合上、型の抜き方向に追従させるため、左右に引っ張られたような形状にされてしまったようですね。

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インストに記載されたイラストでも、この部分はもちろん歪んでいません。
ここは円柱を半分に切ったような形状が貼りついているのが正解のようです。

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このパーツではさらにもう一つ、下部分の装甲の隙間に見えているディテールにも歪みが出ています。
(画像では水性ペンで印を付けています。)
抜きの関係で左右に引っ張られた形状になっているのと同時に、それぞれ凸部分の幅も違ってしまっているため、ここも修正してあげると良さそうです。

まずは既存の凸ディテールを削って整形

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歪んだ凸ディテールを修正するには、キットのモールドを削り落としてから新たに作り直したものを貼り付けることになります。
先程のパーツ、まずは簡単にできそうな装甲下部の隙間から。
既存のモールドは高さの低い凹凸なので、まずはノミで大まかにそぎ落としてしまいます。
画像で使っているのはハセガワトライツールの『モデリングチゼル4 模型用ノミ幅3mm平(TT9)』。

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ノミでの粗削りができたら、ヤスリで更に削り込み。
ここではシャインブレードfinaを使いました。
幅3mmのヤスリですね。

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続いてGSIクレオスのMr.バリ取り棒G。
カンナがけの要領で削り込み、形状を整えます。
バリ取り棒は本当に使いやすいですよ…!

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バリ取り棒なら、逆エッジのキワにもかなり攻め込むことができます。
狭所のカンナがけはタガネでも良いのですが、あちらは刃先の破損が心配なので…
使える部分には極力このバリ取り棒を使用するようにしていきます。

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細かく削りたいときはスジボリ堂のテーパーダイヤモンドやすり(2.5mm幅)の240番も。

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仕上げはペーパーがけ(400番)で。
狭い部分にはピンセットでつまんで使うと良いですね。
ここで使っているのはゴッドハンドのパワーピンセット先広…管理人が一軍で使っているピンセットは殆どがこれです。
力をかけてしっかりと掴めるので扱いやすい一品。

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ペーパーがけの処理後。
既存の凸ディテールが削り落とされてキレイになりました。
後は新たに凸部分を貼り足してやれば良いでしょう。

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頭の上側も同様に作業を進めますが、こちらはもう少し慎重に。
削り作業に入る前に、まずは鉛筆でディテール位置の目安をパーツに書き込んでおきます。

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ノギスを使ってディテール部分の大きさも正確に測っておくと良いですね。
今回ここは長さ4.20mmでした。

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準備ができたらここも同様に既存のディテールを削り落とし。
金ヤスリで粗削りし、ペーパーがけで仕上げます。
金ヤスリはシャインブレード6の目が細かい方(単目の#1000相当)で、ペーパーは400番です。
シャインブレードは割と最近使い始めたのですが、切削力が高くて目詰まりもしにくいので使いやすいヤスリですね。
メインの金ヤスリとして起用しても良い性能かもしれません…!
なお、ヤスリがけで消えてしまった目安のガイド線は、その都度書き足しておきます。

(参考リンク)
隙間をヤスリがけできるテーパーダイヤモンドヤスリ。合わせ目消しなど面仕上げ、狭い場所の加工に利用できます。 ガンプラ、フィギュア、プラモデルにおすすめです。

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凸ディテールの再生

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既存ディテールの削りと整形が完了したら、プラ材でディテールの再生をしていきます。
まずは装甲下部の隙間部分から…
ここは手元にあった0.14mm厚の極薄プラ板(プラシート、またはプラペーパーとも)を使います。
写真のものは、記憶によればイエローサブマリン某店で20年くらい前に購入したもの…(笑)
現在はタミヤからも0.1mm厚のプラ板が販売されているので、これに限らず好きなものを使えば良いかと思います。

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短冊状に切り出したプラ板を流し込み接着剤で貼り付け。
割と現物合わせの作業ですが、貼り付け位置の目安は事前にシャープペンシルで書き込んであります。

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粗方プラ板を貼り終わった状態。
貼り付けた部分がまだ少し浮いているように見えるので、もう少し調節します。

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見やすいように下側から。
接着部の周囲をアートナイフと平ノミで削り込み、また細かくペーパーがけをして新造ディテール部分を馴染ませた状態。
作り直した割にはやや立体感に乏しい感じもしますが、とりあえず新造部分が浮いているように見えないレベルにまでは馴染んでくれたと思います。
この部分はこれで完了…!としましょう。

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今度は頭の上側にあったディテールも作り直していきます。
こちらは少しばかり手間ですね…
用意したのはWAVEから発売されている3mm径の半丸棒。
カマボコのような、断面が半円形をしたプラ棒です。

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プラ棒の端を丸く加工して貼り付け用のディテール形状を作ります。
まずはナイフで粗削り…
この後ヤスリやペーパーで仕上げです。

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出来上がったらパーツに貼り付け。
…なのですが、これはちょっと大きすぎた(太すぎた)ようです。
元の形状と比べると違和感がありすぎますね…
と、いうことで…サイズを小さくしてもう一度作り直しです。

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2mm径のプラ棒(半丸棒)で作り直した同部位の凸ディテール。
パーツとのバランスを考えると、このサイズの方が明らかに違和感がない(笑)。
今回は2mm径を採用しましょう。

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順番が前後しますが、こちらは加工途中の2mm径、半丸棒。
切り離す前に、一端のペーパーがけとスジ彫りの追加までを済ませています。
長いプラ棒の状態で加工を進めていく方が作業性は格段に良いのです。
ちなみに、スジ彫りはフリーハンドのアートナイフでアタリをつけてからコトブキヤのエッチングノコで彫り込みました。
この凸ディテール部分は塗装時に塗り分けが必要になるため、予めスジ彫りを入れておく方が後々で楽ができると思います。

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最後に予め測っておいた長さ(4.20mm)でプラ棒を切り出し、もう一端も丸く加工してあげれば良いですね。
最初にパーツに書き込んでおいた位置決め用のガイドを目安にして、これを貼り付けてやれば完成です…!

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膝アーマーの丸い凸ディテール

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もう一か所、気になる凸ディテールとしては膝アーマーがあります。
画像のパーツ、下側に丸いディテールがありますが、ここも微妙に歪んでいるのです。

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水性ペンで印を付けた上で別角度から。
丸い凸部分が射出形成の都合上、抜きの方向に歪んだ凸ディテールです。

ディテールアップの定石としては、ここも修正するのが正解なのでしょうが…
ここは歪みの程度もかなり微妙な上、パーツのサイズが小さいために工作の難度が高いので、正直無理に作り直さなくても良い気がします。
(事実、管理人は加工に失敗している部分があります。後述。)
丸ディテールの天面が斜めになってしまっているのがここの違和感の原因なので、大掛かりな加工をしない場合でも、金ヤスリで軽く形状を整えてやるだけでも大分雰囲気は良くなるでしょうね。

凸ディテール丸ごと作り直しに挑戦

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今回、管理人は凸ディテールの丸ごと作り直しを選択しました。
上手く加工できれば立体感は段違いになりますけれど、失敗のリスクが伴う諸刃の剣ですね…
とりあえず、2.0mm径のドリルでディテール部分を貫通…!
もう後戻りできません(笑)。

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パーツに2mm径の穴を開けた状態。
ここに新造したディテールを差し込みます。

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パーツに開けた穴に2mm径のプラ丸棒を差し込んでイメージを確認。
差し込むプラ棒の先端にディテールを入れても良さそうですね。

と、いうことで…今回ここにはマイナスモールドを入れることにしました。
ヤスリで平らに成形したプラ棒の先端にスジ彫りを入れるだけのお手軽加工です。
スジ彫りはアートナイフでアタリを付けた後にエッチングノコで彫り込んでいけば良いですね。

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まずはアートナイフでアタリ付け。
このアタリが最後まで影響するので慎重に…!

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ナイフのアタリをエッチングノコでなぞってハッキリとさせます。
これはデザインナイフのホルダーに取り付けるタイプのノコですね。
雲母堂本舗のライナーソー タイプB 0.08mmです。

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仕上げに、ホーリー0.1mmでスジ彫りを深くして完成。
こんな細かな部分でも定石通りに手順を踏んでいくことが大切です…!

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ホーリーでの彫り込みまでができた状態。
このままでも充分そうですが…

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今回は更に面取りビットで周囲のフチを削り込み。
ここまで加工すると、また一段とそれらしくなってきますね。

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更に、受け穴側となるパーツに開けた2mm穴もスチールバー(球形ビット)で軽く面取りをしておきます。

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パーツとプラ棒を合わせてみます。
これは中々良い感じ…!
流し込み接着剤で固定し、強度を稼ぐため裏側はヒートペンで溶接もしておきました。
(※ヒートペンについては後の記事で詳しく扱います。)

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完成…!(画像左側のパーツ)
良く見ると右側の丸ディテールは最初の2mm穴を開ける時点で角度が若干ずれていたのか、作り直したディテールも若干ずれた角度になっているような気がしますが…
ここはこれで終了とします。(深追いするとキリがないので…汗)

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同じようにもう片方のパーツも加工…といきたいところなのですが、ここでトラブル発生です…!
最初の2mm穴を開ける段階でパーツが破損してしまいました。(汗)
パーツのキワ、ギリギリを攻め過ぎたかもしれませんね。

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トラブル対応も経験のうち…ということで、何とか修正を試みます。
画像はヒートペンでプラ材を溶接して破損した部位を補填したところ。
ここからナイフとヤスリで削り込んで元のパーツ形状に近づけます。

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何とか加工が終わった状態。
実は元のパーツよりも輪郭が一回り小さくなっていたりもするのですが…それらしく見えるようになった段階でここは一先ず終了としておきます。
パーツの大きさ的に要求される加工精度が繊細過ぎて、(管理人の技量では)これ以上の修正はかなり難しいです。

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裏側。
形状修正の過程で下腿への接続用のピンを削り取ってしまったので、ここは後で接着必須ですね…

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何とか形状が修正できたので、同じようにマイナスモールドを差し込んで接着します。
それ程、違和感はないでしょうか…?
これならこのまま裏側を切り離せばここも完成として良さそうです。

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加工が終了した膝アーマーを下腿のパーツと合わせてみたところ。
破損からの修正や削り込みでパーツが一回り小さくなっているため、パーツ同士の隙間が若干空いているようにも見えてしまいます。
ここは今回の制作での明らかな失敗ポイントです…!
とはいえ、言わなければ分からない範囲でしょうか…?
塗装をすれば、また違って見えてくるかもしれませんね。

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そしてこちらは膝アーマーと組み合わされる下腿のパーツ。
破損からの修正をした方の膝は接続ピンを切除しているので、受け側の穴も不要です。
完成後は殆ど見えない部分かもしれませんが、一応ここは埋めておくことにしました。
画像で右側に見えている四角い穴がそうですね。

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パーツへの充填は最近使い始めた新工具・ヒートペンで。
不要ランナーを軟化させて盛り付けることができるので簡単です。
パテ類とは異なり、硬化時間ゼロ、有機溶剤の揮発なし、プラモデルとは同素材同士なので加工時に硬さの違いによる切削感や仕上がりの差が出ることもないなど、メリットは多いです。(おまけにランナーを使えば材料費もタダ…笑)
ただし、多少の慣れは必要ですね…!
ヒートペンについては、後のリベット打ち直しで多用しているので、詳しくはその回の記事にて。

ちなみに、ヒートペンは十和田技研のHP-1000です。
他社製のヒートペンは設定の温度が高すぎて、恐らく細かな溶接には向かないのではないでしょうか…?

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ヒートペンによるプラ材の溶接・充填では切削加工も非常にスムーズです。
上手く溶接ができていれば合わせ目も気になりません。
この部分もこれで加工終了…!です。

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おしまい

元からある形状に向かって彫り込むだけの凹ディテールと違って、凸ディテールの修正はプラ材を使ったパーツの再生が必要になってくるので、また更に一手間…といったところですね。
今回は管理人が特に気になった個所を中心に比較的大きな凸ディテールの加工を行いましたが、このキットの凸ディテールで一番問題となるのは、全身に配置されたリベットモールドです。
リベットの数は非常に多く、また歪みも目立ちます。
成型の都合で歪んだ多数のリベットをどうするか…それはこのキットに限らず、サクラ大戦系のプラモデルと向き合う上では非常に重要な問題なのです…

考えた末、今回の制作ではリベットの修正を敢行…!
ただ内容が多くなりすぎてしまうため、そちらはこことは独立した一つの記事としました。
今回の内容でも少し扱った新工具・ヒートペンの扱いと合わせて、改めて別記事で見ていきたいと思います。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編4.「ディテールアップ工作~凹モールドの彫り込み」

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前回のスジ彫りに引き続き、今回も引き算の工作…凹モールドの彫り込みです。
成型の都合で歪んだ部分を中心に、形状を修正しながら深く彫り込んでいきます。

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幅0.5mm以下の極小ノミが必要

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まずは彫り込みの対象となる凹モールドを確認しておきましょう。
写真は胴体正面、光武の顔になる部分のパーツですが、こめかみのあたりに小さなスリットが入っています。
この他、腰回りや脚部の装甲などにも同様のスリットがありますが、溝の幅はどれも同じくらい。
大体0.3mmか、それより少し太いくらいでしょうか。

彫り込み加工をしていくためには、当然この幅に対応したノミ等の工具が必要。
極小サイズのノミとしてはスジ彫り用工具の流用なども考えられますが、意外と使えるものは限られていたりもしますね。
今回使うのは雲母堂本舗の『カッターノミ』です。

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雲母堂本舗『カッターノミ』。
アートナイフ替え刃の後端を研いだような形状の極細ノミです。
刃幅は0.3mm・0.4mm・0.5mm・0.6mmの4種類をラインナップ。
多くのスジ彫り用の工具とは違い、刃先を押す方向にも切り込むことが可能で文字通りノミとしての使用ができること、流行りのタガネ等に代表される超硬合金系の工具よりも破損のリスクが少ないこと、また安価なのもメリットですね。
知名度が今一つで入手経路が限られるのはご愛敬。

販売は替え刃のみの単品で、刃をデザインナイフ規格のホルダーにセットすることで使用します。
(※アートナイフとは替え刃の規格が違うので注意…)

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(参考リンク)
ヨドバシ.com – 雲母堂本舗 プレシジョン・ツール カッターノミ 0.3-0.4セット [カッターナイフ] 通販【全品無料配達】
ヨドバシ.com – 雲母堂本舗 プレシジョン・ツール カッターノミ 0.5-0.6セット [カッターナイフ] 通販【全品無料配達】
【公式通販】雲母堂本舗 極細彫刻刀 カッターノミ 0.3mm~0.4mm セット きらら堂本舗 平ノミ 平刀 彫刻刀 刃 | メーカーで探す,雲母堂本舗(きらら堂),カッターノミ | ゴッドハンド直販サイト本店
【公式通販】雲母堂本舗 極細彫刻刀 カッターノミ0.5mm~0.6mmセット きらら堂本舗 刃 ノミ デザインナイフ | 工具の種類で探す,彫刻刀,平刀 | ゴッドハンド直販サイト本店

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スリット状 凹モールドの彫り込み

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実際の彫り込み作業ははスジ彫りの彫り直しとも似ている部分が多いです。
管理人の場合、まず後から彫り込む工具の刃先がブレないように、先にニードルでアタリを付けておきます。

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アタリのニードル傷でモールドをハッキリさせてから、工具を変えて彫り込み。
使っているのはカッターノミの0.3mm幅。
少し細めの幅である程度まで彫り込んでから0.4mm幅に刃先を交換し、彫り幅を元のスリットの幅まで拡張します。

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彫り上がり。
色の付いた部分は、黒い流し込み接着剤を流したものです。
色が入ることで形状が見やすくもなり、また流し込み接着剤の効果で彫り込み時の傷が多少滑らかにもなりますね。

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今度は別のパーツ。
まずニードルでアタリを付けるのは先程と同じですが…

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より慎重に彫りを進めていくなら、本彫り込み用の工具に持ち変える前にもう1ステップ。
ここでは三角刀の刃先でニードルの傷をなぞることでよりアタリをハッキリさせています。
使用しているのはハセガワトライツールの『モデリングチゼル3 三角 細(TT6)』。

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ここでようやくカッターノミに交換して本彫り込み。
この3ステップで彫り進める方法はアタリがしっかりとついている分、刃先もブレにくいので安心感が高いです。

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彫り終わり。
スリット部分に着色をしていないのでこの写真では形状がやや分かりにくいですね…

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ここでは簡単に、水性ペンで簡易的に仮のスミ入れをしてみました。
ラインのブレもごく僅かで、深さもこれなら充分でしょう。
この調子で他のパーツも彫り進めていきます。

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今度は腰の後ろにつくパーツ。
ガンプラで言うところのリア・スカートアーマーですね。
画像はパーツ上に元からあったスリットを彫り終えた状態ですが、よく見るとこのパーツ…左下のスリットが不自然に一つ足りていません。

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キットのインストに背面の設定画がありました。
ここで確認すると、やはりこの部分のスリットも2つ組になっているのが正解のようですね。
このキットでは何故ここだけ省略されているのか…謎です。

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設定の裏付けが取れたので、足りないスリットは彫り足しておくことにしました。
まずは既にモールド付けされている他のスリットの大きさを測りましょう。
ノギスで計測すると、ここは長さ1.5mmです。
…ええと、念のために書いておくとスリットの『幅』ではなく『長辺』が長さ1.5mmです。
これはかなりの細かさですね。

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彫り込みのガイドにするため、マスキングテープを1.5×0.5[mm]の大きさにカットします。
とはいえ、細か過ぎるので大きさは割とアバウトだったりもします…

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マスキングテープの小片を彫り込みのガイドとして狙う位置に貼り付けます。
完成形をイメージして位置を調節しておきましょう。

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位置調整ができたら、やはりここでもアタリ付けから始めます。
まずはテープの両端を狙ってニードルで印を付けます。

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次はアートナイフ。
ニードルで付けた2つの印を目安にナイフの刃先を押し付けて直線のアタリを付けます。
2つの印(傷)を繋ぐようなイメージでナイフの刃先を置くと良いでしょう。

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今度は三角刀。
先程の例と同じ要領ですね。
ナイフ傷のアタリを刃先でなぞる様にしてハッキリとさせていきます。
力加減は、もちろん『撫でる』ような感触で行っていますよ。

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ある程度アタリがハッキリとしてきたら、工具をホーリー0.1mmに変えてラインをスジ彫りにしていきます。
今回はこのスジ彫りもアタリの一種なので、ここではそれ程深く彫らなくても大丈夫です。

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彫り始めた部分が0.1mmのスジ彫りになった状態。
(形状を見やすいように水性ペンでスジをなぞっています。)
ここから更に幅を広げて彫り込み、目的の形にしていきましょう。

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工具を変えながらスジに沿って幅を広げつつ彫り進めます。
ここで使っているのは雲母堂本舗のライナーチズル0.2mm。
今回メインで起用しているカッターノミの姉妹品…のようなもの。
こちらはノミというよりもスジ彫り用の工具というカテゴライズです。
刃幅が0.1から0.2mm程度の工具は大体そんな感じのものが多いですよね。

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更にカッターノミの0.3mmで彫り込んでスリットの幅を広げます。
次も同様に、工具の刃幅を少しずつ広げながら目的の形状まで彫り進めていけば良いですね。
今回はこの後、同じくカッターノミを使用して0.4mm、0.5mmと進めていきました。

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0.5mm幅まで彫り進めた段階では、同じくスピンブレードの0.5mmを使用してスリット内のカンナがけも行いました。
スピンブレードは刃幅が0.4mm以下のものも存在しますが、それらはメーカー試作品扱いの商品で、管理人は未所持なのです。
0.5mmまでスリットの幅が広がってくれば、工具も色々と融通が利くようになりますね。

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仕上げに三角刀の刃先を使って溝のエッジを整え、スリットの形状を微修正。
スリットの幅が0.5mm程度あれば、このような加工も行いやすくなってきます。

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最後に、彫り込んだスリット周りの余計な傷を瓶サフ(Mr.サーフェイサー1000)の爪楊枝チョン付けで修正。
乾燥後に軽くペーパーがけしてやれば完成です。

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ペーパーがけ後。
元からあったスリットと比べても違和感なく仕上がったでしょうか?

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彫り足した部分が見えやすい角度でもう一枚。

…この写真、見れば分かりますが後の工程でリベットの打ち直しまでが終わった後のものです。
この角度の写真を撮り忘れてしまったので…ここはこの画像で代用させて下さい。

こうしてアップで見ると少し線がブレている気もしますが…サイズが小さいので、肉眼でこれ以上の精度を出すのは少々キツイです。
このサイズで更なる精密さを求めるなら、手元をルーペで拡大しながらの作業をする必要があるでしょうね。
今回はこれで完成…!とします。

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丸形状 凹モールドの彫り込み

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他の部分も見ていきます。
こちらは腰の正面装甲(所謂フロント・スカートアーマー)です。
画像中の赤い四角で示した部分に丸い凹モールドがあります…が、写真では殆ど形状が読み取れないかもしれないですね。
(右側のものには水性ペンで目印を付けていますが)
この部分、キットのモールドはそれほど浅いものとなっています。
こういう部分は『如何にもプラモデル』という空気、俗に言う『オモチャっぽさ』を感じさせる原因の一つなので、ここもディテールアップ工作の一環として彫り込みを行うことにしましょう。

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こちらの画像は彫り終わり。
ニードルでアタリを付けてから0.5mm径のドリルで浅く彫り込み、仕上げとして穴の底を同径のスピンブレードで均してあげれば良いですね。
最初のアタリさえズレずに付けることができれば、作業としてはとても簡単です。

ドリルを使う場合の定石として、穴のズレを防ぐために最初は小径のものから彫り始め、少しずつ段階を踏んで目的の径にまで穴を拡張しましょう。
今回は穴の径が小さいですが、0.3mm・0.5mm径の二段階で彫り進めていきました。

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ここで使用したドリルはゴッドハンドのドリルブレード。
画像は0.5mm径のものです。

これは通常の刃が螺旋状となったドリル刃とは異なり、文字通り剣先のような形状の刃を回転させて穴を開ける工具。
使い方は普通のドリル刃と全く同じく、ピンバイスに取り付けて使用します。

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メーカーの謳い文句としては、刃を当てる先が曲面であっても対象を捉えやすく、刃先が滑りにくいことを売りとしていますが、管理人としては極細サイズのドリルの折れにくさが気に入って使っている一品です。
0.5mm径くらいなら割と大丈夫なのですが、それ以下の極細径ドリル刃は、油断すると簡単に折れる…!
作業中に工具が折れると、気持ちも折れてしまい作業もしばらく中断してしまいます…笑

その点、このドリルブレードは使用時にも刃先に過度な負担がかかりにくいのか、いつ折れるのか…と言ったヒヤヒヤとは縁遠い…ような気がします。(管理人の主観ですが)
もちろん刃先に気を遣い、工具を労わって使っていくことは必要ですが、極細ドリルの使い勝手としては通常の螺旋状ドリル刃よりも上だと思います。

一応マイナス点も挙げておくと、深い穴を開けるような用途にはあまり向いていないこと、そしてやはりというか、単品のドリル刃としてはかなり価格が高いこと。
また需要のニッチさを考えれば致し方なしですが、0.3mm・0.5mm径といった細サイズはメーカー直販限定で少々購入の敷居が高い…といったところでしょうか。

管理人はその0.3mm・0.5mm径の二種類だけを所持。
キャラクター系ロボがメインのアニメモデラーが補助的に持つ細径ドリル刃としては中々良いものではないかと思います。

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少しドリルの話で脱線しましたが、続きの作業です。
今度は同じパーツにあった大きい方の凹モールド。

ここは元々のキットのモールドがかなり浅かったので、ペーパーがけで一旦平らに均してしまってからの彫り込みです。
作業手順は先程と同じ、ニードル・ドリル・スピンブレードの順で整形します。
ここでは最終的に0.9mm径のドリルとスピンブレードを使用しました。

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実はこの部分の凹モールド、今回は設定画にあるものよりも小さめのサイズで彫り直しています。
キットに元々入っていたモールドは設定画準拠の大きさだったのですが、パーツ形状の中でディテールのバランスを考えた時に、ここは少し不自然に思えてしまったんですよね。
設定とは少しずれてしまうのですが、ここは好みによるアレンジということで…
設定画のようなサイズで彫り込みたい場合は、ドリルの径を少しずつ大きくしながら目的の大きさに近づけていけば良いですね。
ぜひともドリル刃は0.5mmから3.0mm程度まで、0.1mm刻みで揃えておきましょう…!

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そして丸底凹モールドの彫り込みとしては、あと一か所。
画像は前腕のパーツですが、赤い四角で示した部分(分かりにくいので水性ペンで色を付けています)は、キットでは凸モールドになっていますが、設定画ではここも凹モールドになっているようです。

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ということで、ここも凹モールドとして彫り込み。
ここはスピンブレードの0.5mmで仕上げです。
例によって設定画から読み取れる大きさよりも小サイズで彫っています。
(ここも作業完了時の写真を撮っていなかったため、画像はリベットの打ち直しまでが終わった後のものです)
キットのモールドを完全に削り落としてから新規にモールドを追加する場合、元々のモールドが消えてしまう前に何らかの目印を付けておいた方が良いですね。
今回はキットの凸モールドの中心を狙って、ニードルで目印の穴を開けておき、後の彫り込み加工の目印になるようにしています。

丸底凹モールドの彫り直しとしては、こんなものでしょう…!

(参考リンク)
【公式通販】ドリルブレード 単品 各種 (0.3mm / 0.5mm / 1.0mm / 1.5mm / 2.0mm / 2.5mm) 直販限定 | 工具の種類で探す,ピンバイス,ビット(ドリル・刃) | ゴッドハンド直販サイト本店

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腰ダクトの彫り込み

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他に彫り込んでおきたい箇所としては、腰のダクト状モールドがあります。
このような形状のディテールアップとしては、既存のモールドを全て削り落としてからプラ板で作り直す方がシャープになる場合もありますが、今回はキットの構造を活かして削り込みで加工してみようと思います。

ついにタガネを買ってしまう管理人

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そして今回、ここでまた新しい工具の導入です。
スジボリ堂のBMCタガネ…!

各地の口コミでは絶賛を通り越し、もはや定番工具という立ち位置を獲得しているこのタガネ。
ただSNSなどでは刃先の破損報告もチラホラと聞かれるため、心配性の管理人はこれまでずっと買わずにいたのですが…
たまたま覗いた公式通販で在庫があったタイミングということもあり、好奇心にかられてついに買ってしまいました…

と、いうことで…ここでは使用感の確認も含めてタガネを使って彫っていこうと思います。

タガネはお値段1本2,000円から4,000円程度(刃幅のサイズによる)と、なかなかに高価。
少なくとも、スジ彫り用としては最初に手を出す工具ではないと思います。

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なお、今回『量産型』がラインナップされているサイズはそちらを選びました。
こちらは価格も2,000円から3,000円程度と多少お安くなっています。
まあ、その価格で安いという感覚もどうかと思いますが…

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通常タイプ(BMCタガネ)と量産型タガネの主な違いは、持ち手部分の材質・形状と重さ。
少し使ってみた感覚としては、刃先は形状・切れ味ともにどちらも同等のようです。

通常タイプは持ち手がステンレスなのに比べ、量産型はABS樹脂。
量産型の樹脂グリップは持った時に圧倒的に軽く、通常タイプのズッシリとした重量感とは一線を画しています。


どちらが使いやすいかは好みの問題ですかね…

クレオスの『Mr.バリ取り棒G』やゴッドハンドの『かまぼこヤスリ』などの、敢えて本体を重くすることでコントロール性を高めたような工具が好みの管理人としては、どちらかと言えば通常タイプのタガネの方が使いやすいかもしれません。
ただ、入手性の悪さや価格の高さを考えると、量産型でも充分…というか敢えて通常タイプを選ぶメリットはそこまでないようにも感じます。

他にも、通常タイプ用に用意されている後付けのグリップは量産型には取り付け不可、通常タイプの刃先キャップはただのビニールチューブの切れ端なのに比べ、量産型にはピッタリフィットする専用のキャップが付属するなどの違いもあります。
このあたりも含め、それぞれは一長一短というところでしょうか。

(参考リンク)
BMCタガネ – スジボリ堂
量産型BMCタガネ、スクレーパー。スジボリ(スジ彫り)工具です。ガンプラ、フィギュア、プラモデルにおすすめです。

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ダクトの彫り込みに使う工具

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実際の彫り込み作業にはタガネの他にも工具を使い分けます。
タガネはその刃先の繊細さや、材質である超硬合金が持つ破損のしやすさという弱点から考えても、工作の初手で使用するのではなく、他の工具のサポートが必須と考た方が良さそうです。
今回は広い面の彫り込みを行うノミや彫刻刀的な運用なのでスジ彫り時ほど刃にストレスはかからないと思いますが、刃先は労わるに越したことはありません。

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管理人の実際の作業手順としては、まずニードルでスリットの谷間にアタリを付けてから、1mm幅の平ノミ(ここで使ったのはゴッドハンドのビットブレード)でその谷間に向かって削り込み。

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ここで、いよいよタガネを投入です。
今回使用するのは0.075mm、0.50mm、1.20mmの3サイズ。
0.075mmでスリットの谷間をスジ彫り的に彫り込んで更に深くしてから、あとの2サイズを使って刃先のカンナがけでフィンの形を整えたり、エッジをシャープに削り込んだりして仕上げていきます。

破損が怖いので極力、力はかけずに削っていきますが…刃先形状の繊細さ、そしてその切れ味とも確かにこの性能は模型用ノミとしては極上と言えます。
軽い力でサクサクと加工を進めていくことができますね。
なるほど皆さん夢中になる訳だ…(笑)

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そして仕上げはやっぱりペーパーがけ。
細かな部分なので、細切りペーパーの3つ折りをピンセットで挟んで使用します。
番手は400番で充分でしょう。

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と、いうことで一連の加工が終わったダクトのパーツ。
右が加工後のものですね。
彫り込みによってフィンの形状もシャープになり、またフィンの間にも奥行きが感じられるようになっています。
細かな部分ですが、ここまでやっておくと最終的な見栄えは地味に変わってきますよ…!

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おしまい

前回行ったスジ彫りの彫り直しに続き、今回は凹モールドの彫り込みまでができたので、所謂『引き算』の工作…キットを削り込む加工はこれで終了です。
今回のような加工では極小サイズのノミをどう調達するか、何を選ぶかという問題がありますが、スジ彫り用の工具が充実した現在では、ここで使用したもの以外にも色々と選択肢はありそうですね。

ウワサのBMCタガネは、確かにその高価格や人気に見合うだけの超性能…!
…なのですが、その繊細過ぎる刃先を温存するためにもサポート用の工具はぜひ別に用意しておきたいところです。
超硬合金系ではない極小ノミとして、今回使用したカッターノミやライナーチズルは価格も安く、入手がしやすいのではないでしょうか。

そして破損のリスクに怯えながら使うことを考えると、総合的なタガネの使い勝手は正直『微妙』。
心配性の管理人としては、ある程度ラフに扱える工具の方が安心して一軍投入することができますね。
スジ彫り用として考えても、曲線彫りに弱いという弱点があり、汎用性には欠けます。
タガネを積極的に使っていくとしたら、ノミとしても、スジ彫り用としても、他の工具である程度までの下彫りをしておいてからが安心というところでしょう。
仕上げの段、ここぞという場面で投入し、ピンポイントでその脆さを伴った超性能を活かすというイメージでしょうか。
破損のリスクが少なく安心して扱えるスジ彫り工具としては、シモムラアレックの『ホーリー』をおすすめしておきます。

さて、次回は凸ディテールの作り直し…
ディテールアップ工作はまだまだ続きます。

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編3.「ディテールアップ工作~スジ彫りの彫り直し」

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前回までに『ゲート』『パーティングライン』『合わせ目』という表面処理の各要素を処理していった三式光武。
このまま塗装に進んでももちろん良いのですが、今回は目立つ部分を中心に簡単なディテールアップ工作も行って仕上げます。

このキットは小スケールの割には良くモールドが入っていますが、プラモデル(インジェクションキット)としての限界から、どうしても形状が甘い部分はあります。
そういった部分に手を入れてあげると、細部が締まってシャッキリクッキリ…キットの良さがより引き立ちますね。
小スケールモデルでは相対的に小さなミスが目立つ粗ともなりやすいので、いつもより慎重に、気を引き締めて作業していきましょう…!

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スジ彫りの彫り直し

手を入れやすい引き算の工作として、削り込み・彫り込みから見て行きます。

彫り直したい箇所はスジ彫りと凹モールド。
プラモデルの常として、キットのままでは彫りが浅く印象も怠くなりがちなもの。
スジ彫りは細く・深く、また凹モールドは歪みを修正しつつクッキリと彫り直してあげましょう。

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今回の記事では、まずスジ彫りを見ていきます。
キットの中でスジ彫りを修正したいパーツは大体こんなところ。
数としてはそれほど多くありませんが、顔に当たる胴体正面や腰・肩アーマーなどは完成形を正面から見た時にも目立つ部分なので、ここを修正する工作の効果は大きいでしょう。

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こちらが光武の顔にあたる胴体正面のパーツ。
この写真は、基本工作としてゲートとパーティングラインの処理をしただけの状態です。
成形段階でのスジ彫りモールドが入っているのが分かりますが、深さも浅く、また曲面構成のパーツなのでラインに歪みも出ています。
まずはここを例に加工の手順を見ていくことにしましょう。

既存のスジ彫りモールドを彫り直す基本的手順

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スジ彫りを彫る(彫り直す)場合、いきなり仕上げ用の工具で彫ってはいけません。
初手としては『アタリ付け』が何よりも重要…!

特に今回のような曲面構成のパーツに曲がりやクランクを含んだスジ彫りを彫っていく場合、アタリがしっかりと付いていないと刃先がオーバーランして余計な傷を付ける可能性が非常に高いです。
はやる気持ちを抑えて、まずはじっくりとアタリを取りましょう。

ここで使っているのは模型用のニードル。
管理人はハセガワトライツールのモデリングスクライバーを使っていますが、模型用として売られている物なら何でも良いかと。

キットに元から入っているスジをなぞるようにして、後から切り込む仕上げ用のスジ彫り工具の通り道を作っていきます。

よく言われるスジ彫りのコツとしては『脱力すること』がありますが、これは本当にその通りで、力を入れずに工具を扱うことがキレイなスジ彫りの加工の第一歩。
実際に加工をしていくイメージとしては『脱力』という言葉からから更に一歩進めて『撫でる』と言ってしまっても良いくらい。
針先で既存スジ彫りの溝の中を撫でるようにけがいていきます。

指先には全く力を入れずに針で『撫でる』動作を30~50回程度、溝からはみ出さないようにゆっくりと繰り返してアタリをつけましょう。
力を入れていなければミスも少なくなりますし、もし針先のオーバーランで余計な傷が付いたとしても、その傷は非常に浅いものになるので、仕上げのペーパーがけ(最悪でも瓶サフ1000のチョン付けで充分)で消えてしまう程度のものになりますからね。

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ニードルの『撫で』で充分にアタリが付いたら工具を変えて彫り込んでいきます。
ここではシモムラアレックのホーリー 0.1mmを使いました。
ニードルの痕がガイドになるのでキットのモールドにそのまま切り込む場合よりも格段に刃先は外れにくいですが、それでも最初は慎重に…このホーリーでも力を入れずに撫でるような力加減から始めた方が安全です。

殆ど力を入れなくても10から20回ほど撫でる動作を繰り返す頃には、スジ彫りもかなりハッキリとしてきているはず。
ここまでくれば、もう少しだけ刃先に力を加えても大丈夫。
刃先でカリカリと引っ搔くようにしてスジを深くしていきましょう。
また、クランクになっている形状では曲がり角の頂点部分が浅くなってしまわないよう、曲がり角を始点にして彫り進めたりもしながらスジ彫りの形を整えていきます。

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彫り終えたパーツ。
加工前と比べてスジ彫りが深く細くなってシャープな印象になっている一方、スジのクランク部分の周囲には若干の余計な傷もついてしまいました。
気を付けて作業をしていても、ミスはつきもの…多少の傷は致し方なしといったところ。

このような傷は彫り作業の比較的初期、まだスジが浅い段階で付いたものです。
彫りを『撫でる』力加減から始めていれば、こんな時の傷もごくごく浅くて済みます。
このパーツの場合でも瓶サフ1000とペーパーがけで処理できる範囲のものでしょう。

もしこれを最初から力をかけてゴリゴリと彫り進めてしまっていたら…ミスした時の傷もより深く・大きくなっていたはず。
場合によってはスジ彫りそのものが曲がってしまうこともありますね。
そのような事態を防ぐためにも、やはりスジ彫りには『脱力』が必須なのです…!

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色々なスジ彫り形状への対応

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直線のスジ彫りにはエッチングノコも使いやすいです。
上の画像で使っているのはデザインナイフのホルダーに取り付けて使うタイプ。
(雲母堂本舗のライナーソー タイプB 0.08mm)
本彫り込みの前にニードルでアタリを付けておくのは先ほどの例と同じですね。

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彫り上がり。
エッチングノコを使うと直線をしっかりと出しやすいので、スジ彫りの形状によって道具も使い分けましょう。
もちろん、ホーリー等他の工具で彫っていっても大丈夫です。
そこはお好みで…

そしてここでもやはりと言うか、このパーツでもアタリ付けの段階でニードルの針先がブレたため、本来のスジ彫りから大きく逸れた傷が付いてしまいました。
(写真では分かりやすいように、黒い流し込み接着剤でキズ部分に色を付けています)

それでも作業時には脱力していたおかげで、傷はごく浅いもので済みました。
この程度なら先程と同様、後で瓶サフとペーパーがけで修正すれば良いですね。
繰り返しですが、やはり『脱力』が大事…!なのです。

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今度は曲線のスジ彫り。
ラインが滑らかに繋がるように気を付けたいところ…
とはいえ、工作の手順自体は同じです。
まずはニードルの針先で既存のスジ彫りモールドを『撫でる』ようにしてアタリを付けましょう。
『脱力』が大事…!

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曲線のスジ彫りにはホーリーが追従しやすく、使いやすいと思います。
最初は撫でるような力加減から始めて徐々に深く彫り込んでいきましょう。

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ホーリーで10から20回程度を目安に何度も軽く溝をなぞって彫り込んだ状態。
最終的にはある程度カリカリと引っ搔くように彫り込んでいますが、力を入れ過ぎるとラインがぶれやすいので最後まで注意が必要です。

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今度は肩アーマー。
これは少し難しいパターンです。

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同じパーツを別角度から。
スジ彫りのラインとしては直線の組み合わせなのですが、途中にクランクもあり、また幅広の凹モールドと交差している部分があるために工具の刃先が逃げやすい形状です。
射出形成の抜きの関係で、そのスジ彫り自体も斜めに歪んだ形状になっていますね。
ラインのブレを防ぐためには、最初のアタリ付けを今まで以上にしっかりと行う必要があるでしょう。

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とはいえ、基本的にやることは同じです。
まずは形状の簡単な部分から、モールドに沿ってニードルの針先でアタリ付け。
撫でるような力加減で30から50回程度繰り返します。

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幅広の凹モールドと交差する部分は、ニードルでは針先が逃げてしまいます。
ここはアートナイフの刃先を押し付けるようにしてアタリを付けましょう。

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今回は更に念を入れて、目立てヤスリを使ってアタリをさらにハッキリさせます。
アートナイフの刃先を押し付けてできた直線の傷(アタリ)に沿って、ごくごく軽く行っています。
このような場面で使える工具としては、目立てヤスリの他にエッチングノコ等も直線のケガキを行いやすくて良いかもしれませんね。

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アタリを付け終えたパーツ。
アートナイフや目立てヤスリを使った部分は本来のスジ彫り部分よりも外に傷がはみ出していますが、ここではしっかりとアタリが付くことの方が大切です。
傷は後で埋めれば良いのですから…!

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ここまでできたら工具を変えて本彫り込みです。
ここでもホーリー0.1mmを使っています。
アタリがしっかりと付いていればこの段階での彫り込み自体は非常に楽。
クランクの頂点が変に浅くなったりしないよう、向きを変えながら彫っていけば良いでしょう。
もちろん、これまで同様に脱力は大切ですよ…!

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ホーリーでの彫り終わり。
先にアタリを付けていたお陰で刃先が逃げることもなく、スジ彫りのモールドに沿って十分な深さの彫りを入れることができました。

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またこれは好みの問題ですが、スジ彫りがパーツ上面だけで途切れているのは変に感じたので、今回は側面もスジ彫りが繋がるように彫り込んでおきました。
ここではハセガワトライツールのエッチングノコを使用。
ナイフの刃先を押し付けてアタリを付けた上から彫りを入れます。

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彫り終わり。
パーツ側面にもスジ彫りディテールが繋がりました。
彫り直しに使ったのは、トライツールのけがき用ではない方のエッチングノコ(モデリングソーセット TP3)なので、比較的太めに彫りが入っています。
(※公式サイトにサイズ表記がなく正確な刃厚は不明…ですが、感覚的には0.2mm前後でしょうか?)

パーツの正面に元々入っていた既存のスジ彫りモールドは、射出形成の抜きの関係で歪んでいるために実際よりも太めに見えます。
ここではそちらと違和感なく繋がるように、敢えて幅広のスジ彫りとしてみました。

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黒い流し込み接着剤をスジ彫りに流して形状を見やすく確認してみます。
やはりアートナイフの刃先でアタリを付けた部分、ラインの曲がり角付近に余計なはみ出し傷がありますね。
とはいえ、あくまでもアタリなので傷としてはごく浅いものです。
この程度なら修正も容易でしょう。

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浅い傷とは言ってもペーパーがけだけでは消えないので、ここは瓶サフを使います。
クレオスのMr.サーフェイサー1000を爪楊枝の先でチョン付けして傷を埋めましょう。
なるべく余計な場所、特にスジ彫りの中に流れ込まないように注意してサフを盛っていますが、もしスジの中に入ってしまったとしても、あくまでもサフなので…彫り直し自体は簡単です。

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瓶サフの乾燥後にペーパーがけをして仕上げます。
本彫り込みでミスしてしまうと傷も深くなるので修正が大変ですが、アタリ付け程度の浅い傷なら修正も楽ですね。

(参考リンク)
【公式通販】雲母堂本舗 エッチングスジ彫り工具ライナーソー008B型 (0.08mmライナーソーB型) | 工具の種類で探す | ゴッドハンド直販サイト本店

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キットのモールドについて

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こちらはキットのスジ彫りを彫り直した胴体・腰部分正面のパーツ。
下のカッターマットのマス目が1cm四方なので、このサイズ感を考えればよくモールドが入っていると言えるのですが、実はこのキット…設定にあるスジ彫りは一部省略がされているようです。

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画像はキット付属のインストより。
パッと見でも、矢印で示した部分のスジ彫りがキットには無いことが分かります。
脚部の装甲などでも同様に省略されているスジ彫りモールドがあるようです。

完全に設定通りにするならスジ彫りの新規追加・彫り込みが必要ですが…
今回の制作ではキットのまま、基本的に既存のモールドを修正するのみに留めています。

深追いすると完成しなくなる恐れがあるというのが一番の理由ですが、旧(サクラ大戦)シリーズに馴染んできた管理人の感覚としては、この設定通りのスジ彫りはディテール過剰という印象も受けてしまいます。
先代の光武二式の時はハードがドリームキャストだったので、グラフィック描画能力との兼ね合いで敢えてデザイン段階からディテールが減らされていた可能性もありますが…霊子甲冑は光武から光武二式くらいのディテール密度がイメージに合うような気がしますね。

ま、ここは好みの問題ということで。
もし設定通りにスジ彫りを追加したい場合は、鉛筆で下書きをした上でアートナイフの刃先でアタリを付けてから彫り込んでいけば良いでしょう。
新規のスジ彫り追加工作の詳細については、またの機会にでも。

おしまい

ガンプラ等のキャラクター系ロボットでもディテールアップとしては定番的なスジ彫りの修正・彫り直し。
慣れないと失敗も多かったりしますが、しっかり彫り直しておけばその分効果も大きいです。
それぞれの工具は好みで好きなものを使えば良いと思いますが、実際の作業ではとにかく『脱力』と充分な『アタリ付け』が大切ですね…
たとえガイドテープを併用したとしても、焦って最初からガリガリと彫ってしまうとラインはブレブレです…!
とはいえ、ここは管理人もまだまだ修行中。
記事を通して自分の作業を振り返りながらステップアップしていきたいと思います…

次回もディテールアップ工作の続きです。
彫り込み加工の第2回として、今度は凹形状のモールドに手を入れていきます。

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基本工作で作るHGUCサザビー 工作編9.「やさしめディテールアップ加工・その3(プラ材を使った改修)」

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ディテールアップ加工の続きです。
今回はプラ板、プラ棒といったプラ材を加工してキットに手を加えていきますよ。

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歪んだ凸モールドの作り直し

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画像は前回の記事から。
HGUCサザビーは肩、脚部などの外装各部の凸モールドが成型の都合で形が歪んでいます。
ここを手直しするには元からあるキットのモールドを削り落とし、プラ材などで作ったモールドを貼り付けることになりますね。
順を追って見ていきましょう。

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作業の手順として、まずはキットの凸モールドを削り落とす前に大きさを測っておき、プラ材でモールドを作り直す際の目安にします。
これはディバイダーという、両側が針になったコンパスのような道具。
写真のように、針を当てることで二点間の距離を写し取ることができます。

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こちらはノギス。
ディバイダーよりもより正確に二点間の距離を計測することができます。
今回は各モールドの長さをこのノギスを使って測りました。
計測結果は別途メモしておきます。

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モールドを削り落とすとプラ材で新造したモールドを貼り付ける位置も分からなくなってしまうので、鉛筆で目安を描き込んでおきます。
新しいモールドを貼り付けた時に違和感がなければ良いので、この目安の描き込みにはそこまで精度を求めなくて大丈夫です。

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ここまで準備ができたら、既存の凸モールドを削り落とします。
鉄ヤスリを使って、完全に平らになるまで削り込みましょう。
写真で使っているのはゴッドハンドのかまぼこヤスリ8mm幅、複目タイプ。
削りあとはきれいなのですが、このような大きな削り込みには少し時間がかかるので、もう少し切削力の高いヤスリを使っても良いかもしれません。

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ヤスリでモールドを削り落とし、ペーパーがけで仕上げた状態。
もし鉄ヤスリの傷が残ってしまったら、この段階できれいに処理しておきましょう。
鉛筆のガイドも消えてしまっていますが、これはまた描き直します。

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一か所の凸モールドを削る毎に、ガイドの線もその都度描き直していきます。
この線が再生したモールドを貼り付ける目安になりますね。

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同じ作業を繰り返し、パーツ全体の凸モールドを削り落としました。
パーツ側の準備はこれで終了です。
あとはプラ材で凸モールドを新造して貼り付けます。

(参考リンク)
【公式通販】ゴッドハンド かまぼこヤスリ 8mm 単目 細目 中目 直販限定 平ヤスリ 金属ヤスリ 模型用 | 工具・作業ツール,金属ヤスリ,平 | ゴッドハンド公式 模型ツール専門店

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凸モールドの再生にはウェーブの半丸形状のプラ棒を使います。
かまぼこのような形をしたプラ棒で、1.0mmから各種サイズが発売されています。
特殊形状のプラ材といえば昔からエバーグリーン製が有名ですが、ウェーブのものは国内メーカーの製品なので価格や入手難度的にも手が出しやすいですね。

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プラ棒そのままではかまぼこのような半月型の断面形状なので、端を削って丸くします。
まずはアートナイフで粗削り。
完全フリーハンドでの作業になりますが、完成形をイメージしながら少しずつ削っていきましょう。

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アートナイフで大まかな形が出せたら、鉄ヤスリでさらに形状を整えます。
ナイフで削った部分の角を丸めるように、こちらも完成形をイメージしながら削っていきます。

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先端が丸くなったプラ棒。
写真では分かりにくいですが、まだ少し角が残っているのでここからペーパーがけで仕上げます。
曲面の仕上げなのでスポンジヤスリが便利ですね。
今回はゴッドハンドの神ヤス!400番を使用しました。

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ペーパーがけで仕上げた状態。
これでこの部分は完成です。
あとは反対側も同じ作業を繰り返してパーツとしての形を作っていきます。

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反対側を作るため、ここでプラ棒の切り出しを行います。
いきなり短く切り出してから削り加工をするより、片側は長いプラ棒のままで削ってしまう方が作業がやりやすいです。

あらかじめメモしておいた長さにノギスを合わせ、プラ棒に当てて印を付けます。
ノギスは先端が尖っているので、上の写真の状態で少し強く押し付ければプラ棒に目印のキズを付けることができますよ。

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ノギスで付けたキズを目安に、アートナイフの押し切りでプラ棒を切断します。

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切り出したプラ棒。
あとは同じ手順で切り出した側の断面を丸く加工すればこの部分は完成です。
作り直す凸モールドの数だけ同じ作業を繰り返して、貼り付け用のプラ棒を作っていきます。

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両側が丸く加工出来たら、キットのパーツに貼り付けて凸モールドを再生しましょう。
写真では、マスキングテープの細切りで仮止めしてから流し込み接着剤で固定しています。
プラ用の接着剤を使うことができるのがプラ材加工の良い点ですね。

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左側のパーツがそれぞれの凸モールドをプラ材で作り直した状態です。(右側はキットのまま)
キットのものより形状も整い、また立体的になった感じがしますね。
貼り付けたプラ棒の周囲に少々接着剤のはみ出しがありますが、そこはペーパーがけで仕上げておきます。

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こちらは肩アーマーのパーツ。
同じように凸モールドをプラ棒で作り直しました。
ここでは1.0mmの半丸棒を使っています。
サイズが小さいことでより細かな加工になりますが、作業の手順としては同じです。

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肩アーマーの内側にあるバーニアカバーのようなパーツ。
ここも1.0mmの半丸棒を加工して凸モールドを作りました。
ここはかなり細かいのでナイフやヤスリでの加工が大変ですが、ほかの部分と同様にきちんとペーパーがけまでして仕上げます。

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省略された装甲の裏を埋める

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続いて別の部分も見ていきましょう。

写真は腰回りのパーツを下から見たところ。
写真の下側、フロントのスカートアーマーは裏がスカスカになっているのが分かりますね。
それらしくモールドが入ってはいますが、こういうところはチラリと見えた時に「プラモデルっぽさ」を感じてテンションが下がる部分なので、今回は裏側を埋めてみることにしました。

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フロント・スカートアーマーの裏側です。
スカスカ部分を埋めたいのですが、写真の矢印で示した部分にある出っ張りが邪魔なので、まずはここを削り取ってしまうことにしました。
ニッパーで大まかに切り取り、平ノミで削って仕上げます。

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余計な出っ張りを削り取った状態。
見えなくなる部分なので、表面処理まではしなくても大丈夫です。
左上にあるボールジョイントの軸の強度が若干犠牲になりますが、軽いパーツなので大きな問題にはならないでしょう。
出っ張りを削る前よりもパーツ裏の形状が単純になったので、裏側を埋める加工もより単純に考えていくことができます。

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今回はパーツの内側に沿った形でプラ板を切り出したいので、型紙を使うことにしました。
パーツ裏にマスキングテープを貼り付け、指でよく馴染ませます。
写真でもうっすらとパーツの輪郭が透けて見えているのが分かりますね。

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パーツ裏の内側の形状に沿ってマスキングテープを切り出します。
金属製の定規を当てて直線を出しながら、アートナイフの刃先で切り込んでいきましょう。
先に不要な出っ張りを削っておいたことでパーツの裏側も平らになり、このような作業もやりやすくなります。
アートナイフの刃は新品に交換しておくと良いですね。

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パーツの形状をマスキングテープで写し取ることができました。
このテープを型紙にしてプラ板を切り出していきます。

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大まかに切り出したプラ板に型紙のマスキングテープを貼り付けたところ。
あとはテープに沿ってプラ板を切り出せば、パーツ形状に沿ったプラ板を作ることができます。
今回は0.5mm厚のプラ板を使いました。

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プラ板の切り出しにはPカッターが便利ですね。
金属定規を当てて直線をしっかり出しながらミゾを彫っていきます。

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今回プラ板の切り出しに使用したPカッター、ハセガワトライツールのラインエングレーバー(太彫用)です。
スジ彫り用の工具として発売されているものですが、プラ板の切り出し用としても使いやすいものです。
通常のPカッターよりも刃先が絞り込まれた形状になっていて、細かな作業がしやすいように考えられているものですね。
ただし、刃先の交換はできません…

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型紙に沿ってスジ彫りされたプラ板。
あとはスジに沿って不要な部分を折り取ったり、アートナイフでさらに切り込んでいけば良いですね。

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切り出したプラ板です。
さっそく元のプラパーツに合わせてみると…

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元のパーツの裏側に収めるには少し大きめだったようです。
ここからは現物合わせで削り込んで形や大きさを合わせていくことになります。

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各辺を少しずつ削り込んで、キットパーツの内側に収まる大きさに調整しました。
とりあえず片側はこれで完成としましょう。

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目的のフロント・スカートアーマーは二つあるので、切り出したプラ板も二つ用意しなければいけません。
今度は一つ目のパーツを型紙の代わりにしてプラ板を切り出します。
まずは両面テープを切り出したプラ板に貼りましょう。

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両面テープでガイドになるプラ板を固定し、Pカッターで切り出します。
この作業、昔の模型雑誌では「瞬間接着剤の点付けで…」なんて書かれていた記憶がありますが、管理人としては両面テープを使った方が簡単だと思います。
作業中にガイドがずれるようなこともなく、貼り付け強度も十分なものです。

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プラ板を切り出し両面テープを剥がせば、同じ形状のプラ板をもう一枚作ることができます。

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切り出したプラ板はペーパーがけをして仕上げます。
Pカッターで切断した断面だけでなく、面の部分にもペーパーがけをしておきましょう。
プラ板の面にペーパーがけをするには、机の上にペーパーを固定してプラ板側を動かして削るようにすると良いですね。

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プラ板の準備ができたら早速貼り付け…といきたいところですが、切り出したプラ板を貼り付けるスカートアーマーの裏は少し深さがあるので、まずはそれを測ります。
写真のようにノギスのお尻の部分を使うと凹んだところの深さを測ることができますよ。
測定の結果、スカートアーマーの裏には3.70mmの深さがあったので、今回は3.0mmほどかさ上げをしてから切り出したプラ板を貼り付けることにしました。

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1.0mmのプラ板を3枚重ねて貼り付けてかさ上げします。
見えなくなる部分なので、ここで使うプラ板の形は本当に適当です。

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かさ上げしたプラ板の上から、パーツ形状に沿って切り出したプラ板を貼り付けたところ。
パーツの面と完全に面一ではありませんが、近い高さでプラ板を固定することができました。

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加工前後の比較。
プラ板の貼り付けによって、キットそのままのスカスカ感は解消できたのではないでしょうか。
今回はシンプルにしたかったのでプラ板一枚だけの仕上げとしていますが、ここからディテールを追加したい場合は、同形状のプラ板をもう一枚切り出して加工したものを重ねて貼り合わせたり、スジ彫りを追加したり…といった工作をしてもいいかもしれませんね。

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肉抜きを埋める

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こちらは足の裏になるパーツ。
写真で上側の部分、カカトにあたる部分に穴が開いていますね。
以前掲載した素組みレビューでは「肉抜きなのか、元々そういう形状なのか判断できない」と書きましたが、今回やはりこの部分は肉抜きと判断して埋めておくことにしました。
肉抜きを埋めるにはエポキシパテを使っても良いのですが、ここは形状が単純なので今回はプラ板で埋めてみることにします。
方法としてはフロント・スカートアーマーの裏を埋めたのと一緒で、パーツ形状に沿ったプラ板を切り出して接着します。

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かさ上げをするためにプラ板を下に接着するのも同じ。
ここではプラ板の切りくずを適当に詰め込めば大丈夫です。

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形を合わせて切り出したプラ板を接着した状態。
貼り付けたプラ板と元のキットパーツの間に微妙な隙間があることで、プラ板部分が別パーツのような雰囲気になっていますね。
これはこれで良いのですが、今回は隙間を埋めて仕上げてみることにします。

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写真では変化が分かりづらいですが、プラ板とキットパーツの隙間を瞬間接着剤で埋めてペーパーがけで仕上げた状態。
プラ板で埋めた部分との境目は塗装すれば分からなくなるでしょう。
この部分もこれで終了です。

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おしまい

今回で3回に渡って見てきたディテールアップ加工も終了となります。
今回は古くからのセオリーに則り、キットを活かす方向での加工を加えてみました。
「基本工作」としてどこまでやるか…という問題もありますが、基本的な表面処理と全面塗装だけで作品を仕上げる場合でも簡単なディテールアップを加えてやると完成品の見応えも全然違ってくると思いますよ。

さて、いよいよ次回からは塗装編ですね。
今回は水性ホビーカラーの筆塗り、黒立ち上げでこってり仕上げていこうと思います。

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基本工作で作るHGUCサザビー 工作編8.「やさしめディテールアップ加工・その2(ノミを使った彫り込み)」

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今回の製作もディテールアップ的な改修工作の続きです。
ノミを使って比較的大きく彫り込んでいくので、前回の内容より少し難しい改造加工になりますが、順を追って見ていきましょう。

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「成型の都合で歪んだ部分」とは?

まずは概念的な説明から。
今回加工していくのは「成型の都合で歪んだ部分」です。
具体的にはどういうことか…次の図を見てください。

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手書きで恐縮ですが、プラモデルが成型される際のパーツと金型のイメージ図です。
基本的にはタイヤキのように、両側からパーツが成型される空間を挟み込むような形で型が作られます。
パーツの表面に凹凸がある場合でも、この図のように、型に対して垂直の方向なら問題はないのですが…

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型に対して斜め方向に凹凸のある形状はプラモデルとして再現することができません。
そこで、形状を型に合わせて変形させることでパーツの成型を可能にしている場合があります。
出来上がったパーツは本来再現したいデザインとは形状が異なってしまいますが、総合的なパーツ数を抑えられる設計のため、このパターンで歪んだパーツは価格の安いHG系のキットなどでよく見ることができますね。

今回の製作ではセオリー的なディテールアップとして、この「歪み」をなるべく自然に見えるように修正・改修していこうと思います。

形状が歪んだパーツの例

さて、今回製作しているHGUCサザビーでも歪んだ形状のパーツをちらほら見ることができます。
例としていくつか見てみましょう。

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まずは腰部前面の下部、小型バーニアの噴射ノズルです。
上側は問題ありませんが、下側は斜めに引っ張られたような形状になっています。
写真でも、上のノズルとは明らかに形が違うのが分かるでしょうか。

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こちらはフロント・スカートアーマーを下側から見たところ。
四角いノズルが見えますが、上方向に向かって歪んだような形状になっていますね。

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続いてふくらはぎの装甲にある凸ディテール。
曲面に凸が配置された形状となっているため、それぞれの凸部分ごとに歪みがあったり、高さが低くなっていたりします。
特に上の写真の矢印で示した部分は、他のものより凸が潰れたように成型されているので不自然に見えます。

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胸部左右の装甲、下側部分。
凹凸が浅くなっている部分としては、こちらも同様です。
矢印部分にある横長のスリットはかなり浅い造形で、スリットの両端は斜めに歪んでいるのも分かります。

歪んだ凹モールドの彫り込み

ここからは実際の加工の様子を見ていきます。
まずは凹モールドの彫り込み…胸部下面のスリットから。

浅く、歪みもあるスリットの彫り込み


横長のスリットの形を整えながら、もう少し深くなるように彫り込んでみようと思います。

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まずはスリット端の形状を作ってしまいます。
位置がずれないよう、最初にニードルで下穴を開けてガイドにします。

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ニードルで開けた下穴をガイドにして、ピンバイスに取り付けた球形ビットで丸穴を彫ります。
球形ビットは各サイズごとに揃えておくと、こんな工作にも便利に使えますね。

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反対側にも球形ビットで丸穴を彫ったら、あとは二つの丸穴を繋ぐようにノミで彫っていきます。
今回ノミとして使用したのはクレオスのラインチゼルとゴッドハンドのスピンブレード。
ラインチゼルはスジ彫り用工具として発売されているものですが、太めのサイズも持っておくとこのような場面でノミとして使うことができます。
スピンブレードも細部の加工用として、できれば0.5mmから0.9mmまでの各サイズを揃えて持っておくと便利ですね。

残りのスリットについても、この繰り返しで彫り込みをしていきます。
上の写真ではまだ仕上がりが荒いですが、形状が仕上がったら小さく切ったペーパーの角やつまようじヤスリなどで切削箇所を整えておくようにします。
細かな毛羽立ちについては、流し込み接着剤を塗ることで表面を落ち着かせる方法もありますね。

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加工後のパーツ。
加工前よりもスリットが深く、形も整ったのが分かると思います。
このような部分のディテールアップとしては、スリット部分を貫通させた上で裏から薄手のプラ板やメッシュシート等を貼る方法もありますが、彫り込みだけでも一味違った見た目にすることはできますよ。

(参考リンク)
【公式通販】ゴッドハンド スピンブレード 単品 0.5~0.9mm 各種 1mm未満 直販限定 彫刻刀 刃 | すべての商品 | ゴッドハンド公式 模型ツール専門店

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歪んだノズルの形状修正

続いて、歪んだノズルも彫り込みでそれらしく見えるように修正してみます。
腰部前面とフロント・スカートアーマーに付いている四角いノズル部分の加工をそれぞれ見ていきます。

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また手書きですが、腰部前面の下側ノズルの断面図イメージです。
凹んだ部分が本来の形状に対して斜めになっているので、ここを削ります。
図で赤くなっているところがノミで削り取る部分。
中央部のノズル内側部分の凹みは、後でピンバイスのドリルを入れれば簡単に修正できるので、まずはノズルの外側から攻めていくことにします。

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下側のノズル、四角い枠の内側をある程度まで彫り込んだ状態。
中央のノズルは円形なので、外形が歪(いびつ)にならないよう、円をイメージしながら慎重に削ります。
四角い枠の内側、この写真で上側の部分をやや彫り過ぎてしまいましたが、これは後で修正することにしましょう。

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円形ノズルの内側はドリルで穴を深くすると同時に角度も修正。
穴を開けたい方向に対してドリルが垂直になるように当てています。

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円形ノズル、穴の内側を修正できました。
このノズルは円柱部分の上面も斜めになっているので、ここから更に削ります。

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ここではスピンブレードの2.5mmが丁度良い幅だったので、平ノミとして用いて円形ノズル上面の形状を削って整えています。
スピンブレードも数多く揃えると結構な出費になってしまいますが、任意のサイズで平ノミを使い分けられるというのはやはり便利です。
とりあえず最初に買うなら1.0mmから3.0mmまで、0.5mm刻みの5本がセットになった基本セットと、極小サイズとして0.5mmあたりがあると良いでしょうか。
(欲を言えば、極小サイズは0.5mmから0.9mmまでの0.1mm刻みで、5本が揃っているとなお良いです。)

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刃物類での加工が粗方終わったら、ペーパーをかけて仕上げます。
写真は細かく折りたたんだペーパーの角を差し込んで削っているところ。
ここでは横着して手で直接持っていますが、ペーパーはピンセットで保持した方がより確実なコントロールができますね。
ペーパーの番手は、ここでもやっぱり400番です。

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続いて、削り過ぎた部分の修正…ということで、以前の記事でも使用した瞬間接着剤とベーキングパウダーです。
中粘度の瞬間接着剤(ここで使用しているのはタミヤのイージーサンディング)に増粘剤としてベーキングパウダーを添加したものをパテとして使用します。
写真はノズルの凹みの上側に盛り付けたところ。
後で削るのが前提とはいえ、なるべく削る量が少なくなるように…盛り付けはできるだけ少量で済むようにします。

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瞬間接着剤で補填した部分を削り込んで形状を整えたところ。
この手の削り込み加工に失敗は付き物なので、失敗を修正するための方法を知っておくといざという時も安心できますね。
とはいえ、先ずは失敗しないように慎重に彫っていくことが大切ですが…

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彫り込みが終わったら、最後にもう一手間。
前回の記事で紹介した方法と同様に、中央の丸ノズルをシャープに加工しています。
丸ノズルのフチはピンバイスに取り付けた球形ビットで削り込み、中央はドリルで貫通させています。
上側のノズルも同様に加工して、この部分は終了です。

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加工前後の比較です。
加工前のノズルは「いかにもプラモデル」という感じですが、加工後はより自然に周囲の形状に馴染んで見えるようになりました。
手間の割に地味な工作ですが、塗装までして完成させた時にこういう部分の一つ一つが効いてきて、作品はより見応えのあるものになっていきますよ。
ある程度の工具類への投資は必要ですが、順を追ってじっくり作業をしていけば決して難しい加工ではない…と思います。

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同様にフロントのスカートアーマー下部に付いている四角ノズル、こちらは左が加工後のパーツです。
先ほどの例と同様、斜めに成型された部分を修正するように彫り込みました。
切削した部分のキワはノミで切り込んでいますが、このような形状は凹み部分をなぞるように太めのラインチゼルで彫っていくのが簡単です。
四角ノズル内側の横長スリット部分で、幅0.5mmのラインチゼルが丁度良い感じですね。
0.1mm、0.3mmなど、加工する部分によってラインチゼルの刃先を使い分けていきます。
先ほどのノズル以上に細かい作業になるので時間がかかりますが、焦らずに加工していきましょう。

今回使用した工具の紹介

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最後に、今回使用した工具をダイジェスト的に紹介しようと思います。
ノミは彫り込みたい部分の幅に合わせて丁度よい刃幅のものがあると作業がしやすいので、同じ形状の工具でも必然的に複数本を持つことになりますね。
ラインチゼルやスピンブレードなどは各サイズの刃先を思い切って「大人買い」しても、今回のようなディテールアップ工作をする人にとっては充分価値のある買い物になると思いますよ。

[ハセガワトライツール] モデリング スクライバー (模型用けがき針)

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模型用工具の定番、ハセガワトライツールから発売されているニードルです。
金属の無垢で持ち手から針先まで一体成型されていて、非常に安定感のある作業ができます。
模型用のニードルは針先が交換式の工具や、文房具を流用したアイデアなども古くから紹介されてきたりと選択肢も多いですが、管理人としてはやはり定番のコレがおすすめ。
長く販売されているものには売れるだけの理由がある…と思います。
今回は球形ビットでくぼみを彫る前のアタリ付けに使用。

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[ハセガワトライツール] モデリング チゼル1 (模型用 ノミ 平細)

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同じくトライツールから発売の平ノミ、刃幅は1.0mmです。
今回の彫り込みは極小さな部分が対象だったので、後に紹介するスピンブレードと並んで工作のメインはこの工具でした。
これでも刃先が入らない場所には、スピンブレードの0.5mmなど、更に刃先が細かな工具を使っていくことになります。
持ちやすい長めのグリップ、取り回しの良い軽い本体、固定式の刃先ならではの安定感と三拍子そろった優良工具。
同サイズのスピンブレードを持っていたとしても、これはこれで持っていたい工具です。

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[ハセガワトライツール] モデリング チゼル4 (模型用 ノミ 幅3mm平)

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こちらもトライツールの平ノミ、刃幅は3mmのタイプ。
今回は刃先のサイズ的にあまり出番はありませんでしたが、刃先が入る場所ならこれも使いやすい工具です。
適材適所で使い分けましょう。
「モデリングチゼル」シリーズは基本的に同じような作りなので、これも工具としての質は高いです。

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[ハセガワトライツール] モデリング チゼル2 (模型用 ノミ 丸細)

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丸棒を斜めにカットしたような、竹やり的な形状をしたノミ。
ゆるいカーブを描いた底面の溝が彫れます。
今回は胸部下側にある横長スリットの彫り込みで、補助的に使用しました。

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[ハセガワトライツール] モデリング チゼル3 (模型用 ノミ 三角細)

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四角柱の棒を斜めにカットした形状のノミ。
名称の「三角細」は、先端が三角という意味かと思われます。
彫り込んだ凹モールドの内側をシャープに整えるのに使用しました。
逆エッジの削り込みなどで、一本あると痒い所に手が届く工具です。
このシリーズの工具で、平ノミの次に何かを買うならコレがおすすめ。

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[ゴッドハンド] スピンブレード

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上が0.5mm、下が2.5mm幅の刃先をそれぞれ取り付けたところ。
刃幅を0.1mm刻みで選べる模型用の平ノミは現状これだけです。
「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」という、非常にゴッドハンドらしい製品。

刃先が交換式の平ノミ。(兼、丸モールドを彫る工具)
刃幅の選択肢が非常に充実していて、最小は0.5mmから最大は4.5mmと豊富なラインナップから選ぶことができます。
特に0.5mmから0.9mmまでの極小サイズが「平ノミとして」手に入るのは貴重で、他に1.0mm以下の切削工具を探そうと思うと、ほぼスジ彫り用ツールになってしまいます。
ディテールアップ工作に挑戦するなら0.5mm等のサイズは是非とも入手したいところ。
今回の記事で紹介した工作では、刃先が入る箇所にはトライツールの1.0mm幅の平ノミを、さらに狭い箇所にはスピンブレードの0.5mmを使って彫り込みをしていきました。
その他、補助的に0.6mmと0.7mm、それに大き目サイズの2.5mmも使用しています。
なお、刃先を装着するホルダーとしてはウェーブの「HGマルチハンドル細」がおすすめです。
ピンバイスでは重く扱いづらいのですが、このホルダーに装着して使うと一気に取り回しがしやすくなりますよ。
(管理人は2本購入しました。)

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左が0.5mm、右が2.5mm幅の刃先。

(参考リンク)
【公式通販】ゴッドハンド スピンブレード 単品 0.5~0.9mm 各種 1mm未満 直販限定 彫刻刀 刃 | すべての商品 | ゴッドハンド公式 模型ツール専門店

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[GSIクレオス] Mr.ラインチゼル

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この写真では0.5mm幅の刃先を装着しています。

GSIクレオスからの発売で入手しやすいスジ彫り用工具です。
普通の平ノミが刃先を押して対象を削り取るのに対し、こちらは手前側に引くことで刃幅に合わせた溝を彫ることができます。
原理としては「Pカッター」と同じですね。
今回のようなディテールアップ工作においては、同サイズの平ノミと併用して細かな彫り込みを行っていきます。
0.5mm幅の刃先などはスジ彫り用としてはかなり太めにも思えますが、「引いて使うノミ」として考えると使える場面はかなりありますよ。
これも各サイズを揃えて持っておきたい工具です。

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[ブッシュ] スチールバー ブッシュ No1

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写真は0.7mmサイズのビットを取り付けたところ。
小さくて分かりづらいですが、先端に球形のカッターがついています。

当ブログで再三「球形ビット」と呼んでいる工具がこれです。
回転させることで球形の窪みを彫ることができるというものですね。
本来はモーターツール(電動工具)に取り付けるためのものですが、ピンバイスに取り付けて使うことでより繊細な加工に使うことができます。
管理人は「スジボリ堂」の通信販売で扱っている、ドイツ「ブッシュ」社製のスチールバーを使っています。
先端の形状によっていくつもの製品がありますが、「No1」が先端が球形になっているものですね。
各サイズが揃っていてはじめて効果的に工作を行えるものなので、導入するなら複数本の大人買いで。
使用頻度が高いと思われる0.3mmから4.0mmまでの9本をまとめて買っても1,636円(税込、送料別)です。(※記事執筆時)

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こちらも0.7mmサイズのビット。
先端が球形になっているのが分かるでしょうか?

(参考リンク)
スジボリ堂「ブッシュのスチールバー カーモデル、ガンプラ、フィギュアに使用できます。」のページ

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[ゴッドハンド] ドリルビット

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タミヤのピンバイスに取り付けたところ。
製品としては、もちろん「ドリル部分だけ」ですよ。念のため…

ピンバイスに取り付けるドリルです。
…って、それ自体は普通ですが、この製品はピンバイスのチャックに取り付ける部分の径が各ドリルで共通のものに統一されていて「ドリルを違うサイズに交換する時、ピンバイスのコレットを交換しなくても良い」…というものです。
一見地味ですがこれが非常に便利で、これに慣れるともう普通のドリルは面倒で使えなくなってしまいます。
管理人はこのシリーズで0.5mmから3.0mmまで、0.1mm刻みの全種類を買い揃えました。
ピンバイスのドリルも、使い始めは0.5mm刻みの基本セットで充分に感じるのですが、少し工作に慣れてくると0.1mm刻みで微妙なサイズ違いのドリルが使いたくなってきます。
このドリルで各サイズを揃えるようにすれば、「このコレットは○mmから〇mmまで対応で…」などと覚える必要もなく、作業がスムーズになりますよ。

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ピンバイスに取り付ける部分が太くなっているのが分るでしょうか?
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管理人所有のドリルコレクション(笑)
0.1mm刻みで各サイズを揃えておくと、微妙な加減の工作にも融通が利くようになりますよ。
今回の工作でも1.1mmのドリルを使っています。
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[タミヤ] イージーサンディング

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中粘度の瞬間接着剤ですが、削り過ぎた部分の修正に使う充填剤、パテとして使用します。
となりにあるビン入りの白い粉はベーキングパウダーです。
瞬間接着剤にベーキングパウダー(など粉状のもの)を混ぜて、粘度を高めてから盛り付けるという古典的テクニックですね。
開封後の瞬間接着剤は、チューブの中で固まって使えなくなってしまうことが心配ですが、写真のように乾燥剤と一緒にジップロックの袋に入れて保管すると長持ちさせることができます。
実際の盛り付けや削りでは、瞬間接着剤の種類によって使用感がかなり異なるようですが、管理人はこの「イージーサンディング」が気に入って使っています。
ベーキングパウダーとの混ぜ合わせでも、強度・切削性ともに丁度よく、特に問題なく使うことができますね。

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[GSIクレオス] Mr.グルー・アプリケーター

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「接着剤やパテ等がくっつきづらいヘラ」です。
瞬間接着剤をベーキングパウダーと混ぜ合わせたり、盛り付けたりするのに使用。
便利なのですが、繰り返し使用していると写真のようにヘラの先端がほころんできます。
硬化した接着剤がキレイにペリっと剥がれてくれない時があって、ナイフ等でこそぎ落とそうとするとだんだん先端が痛んでくるんですよね…
完璧な製品ではないですが、便利なことは確かなので管理人が瞬間接着剤を扱うときには、いつもこれを使います。
写真にはないですが、塗料皿のような形状をした同素材の小さなお皿も付属します。
(管理人はガムテープの上で接着剤を混ぜてその都度使い捨てにしているので、お皿は使っていません…)

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耐水ペーパー 400番

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ホームセンターで入手できる、普通の耐水性紙やすり。
ノミ等で彫り込んだ箇所はやはり表面が荒れてしまうので、細かくペーパーを当ててやることで形状が落ち着きます。
ディテールアップの仕上げとしてのペーパーがけは、普通の表面処理と違ってごく細かな箇所にペーパーを当てる必要があるので、切り取ったペーパーのフチを差し込んだり、細かく折りたたんだペーパー片をピンセットでつまんで使ったり…といった工夫も必要になってきます。
ごく細かな個所のペーパーがけでは、表面の状態が確認しづらくなるのと水滴が作業の邪魔になることがあるので、水は付けずに「空研ぎ」で使った方が良いでしょう。
ペーパーの番手は、ここでもやっぱり400番を使います。

(参考リンク)
【公式通販】ゴッドハンド ニッパー型ピンセット 刃がないニッパー 日本製 | ゴッドハンドオリジナル,ピンセット | ゴッドハンド公式 模型ツール専門店

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おしまい

以上、ディテールアップ工作の2回目でした。
前回の記事で紹介した加工に比べてやや難しい内容もあったかもしれませんが、改造加工の基本として、素組みから一歩踏み出して手を入れる箇所としてはセオリー的なものです。
ガンプラを塗装までして仕上げるモデラーなら、ほとんどの人が行うであろう表面処理と違って、ディテールアップ加工は製作者の好みや考え方によって「やる・やらない」、またやるとしても「どこをやるか・どうやるか」といったところが大きく分かれますから、プラモデルを「自分だけの作品」として仕上げる上でやりがいもまた大きな部分ですね。

さて、今回の記事も思いの外長くなってしまったので一旦一区切り…次回もまたディテープアップ加工の続きとなります。

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トップ>模型製作記・完成品展示>このページ

基本工作で作るHGUCサザビー 工作編7.「やさしめディテールアップ加工・その1(簡単な削り込み)」

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表面処理が終わったMS本体を再度、仮組み。
もちろん、このまま塗装しても充分見られる作品になります!

前回までの製作で一通りの表面処理できたので、特に気になるところがなければこのまま塗装に入っても良いのですが、今回は工作編の仕上げとして軽めに改修…ディテールアップをしてみようと思います。
部分的な改造工作となりますが、基本工作の延長でできるセオリー的なポイントに絞って見ていきますよ。

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ツノの”フラッグ”を削る

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まずは簡単な部分から。
写真は頭部パーツですが、頭頂部から後ろに伸びているツノ(?)の先端に安全上の配慮から余剰ブロック(通称「フラッグ」)が付いているので、これを削ります。
この「フラッグ」は、よくガンダムタイプMSの頭部V字アンテナの先端に付いていることが多いですが、細いV字アンテナの加工をする場合にはパーツを折ってしまわないように細心の注意が必要です。
今回のサザビーの場合は元々のツノも太さがあってパーツの強度も充分なので、加工の際に誤って折ってしまう危険も少なそうですね。

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「フラッグ」が付いているパーツを分解したところ。
右上の「フラッグ」、余剰ブロック部分を削りますが、形状も単純なので加工も容易です。
ニッパーとアートナイフで大まかに切り取り、鉄ヤスリで微調整すれば良いでしょう。
最後はもちろんペーパーがけで仕上げますよ。

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加工後の状態…この部分はこれで完了です。
ディテールアップなどでパーツの形状を弄る場合には、加工した部分がキットの元々の部分と違和感なく馴染むようにすることが重要です。
この部分は加工も容易なので自然とそのようになりますが、改造加工の基本として「加工した部分が浮いていないように」を常に心がけながら工作を進めます。

(参考リンク)
【公式通販】ゴッドハンド かまぼこヤスリ 8mm 単目 細目 中目 直販限定 平ヤスリ 金属ヤスリ 模型用 | 工具・作業ツール,金属ヤスリ,平 | ゴッドハンド公式 模型ツール専門店

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バーニアノズル、砲口などの削り込み

バーニアの噴射口や武器の発射口なども簡単な加工で効果が高い部分です。
実物(があれば…)はシャープな形状をしているはずなので、模型でもそのように加工してやりましょう。

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写真は肩アーマーの前側です。
黄色い部分に小型のバーニアノズルがありますが、噴射口の形状がダルいので削り込んでみます。

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このような場所は、ピンバイスにモーターツール用の球形ビットを取り付けて削ります。
元のノズル形状がガイドになってくれるので工具を当てる場所がブレることもなく、加工の難度としては非常に低いです。
道具さえ揃えてしまえば簡単で効果が高いので、この手の加工はディテールアップ入門としてもおすすめですね。

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噴射口の中央は細めのドリルで貫通させてしまいます。
ここは小さいノズルなのでなるべく細いドリルを使いたいところですが、極細ドリル刃は折れる危険も高く取り扱いに気を遣うので、ホドホドでも良いでしょう。
今回は0.5mm径のドリル刃を使っています。

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最後に一回り大きな球形ビットで噴射口のフチを軽くさらって形状を整えます。
大きなビットで削りすぎると形状が大きく崩れて取り返しがつかないので、ここだけは慎重に…

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上側のバーニアノズルの加工が完了した状態。
未加工の下側と比べると、形状がシャープでより立体的になっているのが分かるでしょうか。
残りのノズルも同様に加工していきます。

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場所が変わって、こちらはリアのスカートアーマー。
サイドに小型のノズルが付いていますが、一体成型なのでここもディテールがダルいです。

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先ほどの例と同様に、球形ビットとドリルで加工をした状態。
ノズル部分を丸ごとくり抜いて別パーツに置き換えた場合には敵いませんが、別売りパーツを使いたくない場合には有効な方法だと思います。

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こちらはサイドのスカートアーマー内側、独立したバーニアのパーツ。
左側が加工後の状態、右側はキットそのままです。
やはりフチをシャープに削り込んでいます。
ここは大きめの球形ビットを使いましたが、丁度いいサイズのビットがない場合はアートナイフでバーニアのフチをぐるりと削って加工しても良いでしょう。

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武器類の砲口もバーニアと同様、シャープに加工をすると実感が増します。
写真は胴体中央に内蔵されているメガ粒子砲の発射口。
砲口は黄色の別パーツになっていますが、やはりディテールが甘いのでここも削り込みます。

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加工後の状態です。
中央の円形ノズル状部分は球形ビットで削り込み、中心はピンバイスで貫通…と、基本的に先に紹介したバーニアノズルと同様の方法で加工しています。
ここではさらに、外側のフチ部分も薄く削り込んでみました。
加工前よりも立体感が増したように見えるでしょうか?

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順番が前後しますが、メガ粒子砲パーツの外枠を削っているところ。
アートナイフでもいいのですが、ここではクレオスの「Mr.バリ取り棒G」を使いました。
肉厚の刃先で力がかけやすいので、このような加工にも使いやすい工具です。

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スジ彫りの彫り直し

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スジ彫りを掘り直すのもディテールアップ加工として定番のものですね。
何もないところにスジ彫りを追加するのは難度が高いですが、キットに元からあるスジ彫りをなぞるように彫り直すだけならそれほど難しくはありません。
とはいえ、HGUCシリーズは比較的シンプルなアレンジなのでスジ彫りもそれほど多くはないですね。
今回のサザビーでも、スジ彫りディテールはリアスカートくらいにしかありませんでした。
上の写真は未加工の状態。

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元からあるスジをなぞるようにしてラインチゼルで彫り込んでいきます。
元のスジ彫りがガイドになるので刃先はブレにくいですが、スジ彫り加工のセオリー通りに最初は力を入れず、撫でるような感じで彫り始めてから徐々に深く彫り込んでいくようにしましょう。

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スジ彫りを彫り直した状態。
キットそのままよりも深く、シャープになりました。
製作者の考え方にもよりますが、スジ彫りの一つの理想形は「スミ入れをしなくても影が落ちる状態」です。
可能ならば、スジ彫りは貫通させるくらいの気持ちで深く彫り込んでおくと良いと思います。

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おしまい

「基本工作」としてディテールアップは必要か?…という考え方もあるのでしょうが、今回紹介した内容は道具さえあれば比較的簡単に加工していける工作内容だと思います。
基本的な表面処理だけやって塗装に入ってももちろん良いのですが、”もうひと手間”をかけてあげることで作品の完成度も上がり、より思い入れのある完成品になると思います。

それでは次回も引き続き、ディテールアップ工作の続きを見ていきますよ。

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