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海洋堂 1/35 三式光武 工作編9.「工作編まとめ~ディテールアップと改造・改修箇所の振り返り」

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各部の改修を経て、工作の工程が終了した三式光武。
ここまで来ればあとは塗装を残すのみ…!

工作編のまとめとして、ここでは再度の仮組みを通して各部の振り返りをしていきたいと思います。

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素組みとの比較

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キットのまま(素組み)と、工作完了した状態の比較。
小スケールながらもディテールは良く入っているキットですが、リベットやスジ彫りといったモールドの甘い部分を修正したことで各部が引き締まり、メリハリがついた印象ですね。

また、足首に可動軸を追加したことで接地性が向上し、立ちポーズにも安心感が感じられるようになりました。

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右手首の指の角度を変更したことで、抜刀し太刀を構えるポーズもより自然に取れるように。
キービジュアルのような見得を切るポーズは取れませんが、これはこれで様になっているように思えます。

細かな部分

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細かな部分も簡単におさらいをしていきます。

まず、今回工作の初手として念入りに処理したのはパーティングライン。
特に胴体中央、光武の『顔』に相当するパーツには真正面に目立つパーティングラインが入っているので、優先的に処理をしておきたいところ。

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キットのスジ彫りは設定と比べるとかなり省略されているようですが、それでもスケール感を考えると不足を感じないレベルで良く入っています。
曲面主体のデザインである光武の辛いところで、部分的に彫りが浅くなっていたり、またモールド断面が斜めになっていたり…と、インジェクションキットの仕様と言える限界はどうしてもあるので、修正して彫り直しておくだけでも印象が良くなりますね。
また、塗り分けの境目になることが分かっている逆エッジは、あらかじめニードルなどで軽く彫りを入れておくと塗装の段階で少し楽ができますよ。

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凹ディテールはスジ彫りに比べるとピンポイントで配置されていますが、やはり浅く歪んでいるものが多いので、彫り直しておくと良いですね。
彫り直しに必要となる0.3mm等の極小ノミは、持っていなければこの機会に揃えてしまっても良いかと思います。
腰アーマーのダクトは管理人が新規導入したウワサの超性能工具、BMCタガネで彫り込んでみました。
こういう部分をシャープに加工しておくと全体もより引き締まる感じがしますね。



凸ディテールも歪んでいる部分が多いですが、特に目立つのはやはり顔パーツ。
前頭部の突起は作り直しておくと効果が高いと思います。



あとは、全身のリベットをどうするかですが…
今回はヒートペンを使って無限にリベットを作ることができたので(ほぼ)全身のリベット貼り替えが実現しましたが、市販パーツのR・リベット等を使うとなると…数が多すぎて現実的ではないですよね。
管理人としては、サクラ好きのモデラーには是非ともヒートペン(と、オプションビット)の入手を勧めておきます。
過去のサクラ大戦系の雑誌作例を見ていると、リベットの貼り替えはプロでも省略する場合があるようなので、ヒートペンが入手できない場合は無理に手を入れる箇所でもないのかもしれません。

胴体正面パーツの、キットのまま(ゲートカットのみ)とディティールアップ改修後の比較。
やはりキットそのままではパーツの正面中央で段差になっているパーティングラインが一番目立つポイントでしょうか。
その他のディテールアップも一つ一つは地味ですが、細かな作業の積み重ねが確実に完成度を高めてくれます。

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手首と持ち手。
指の角度を変更する改造はポーズ付けに有効ですが、どうしても強度が犠牲になるので良く考えてから行った方が良いかもしれません。
装備武器の太刀はパーツとしても軽いので、例えばガンプラにおける長物の銃火器のように、武器の重さで手首に負担をかけることはありませんが、万が一破損した場合はかなり細かな部分なので修正は面倒です。

そして、手首に付いているナックルガードのようなパーツ。
管理人としては、ここの改造はお勧めしません…!(汗)
細かすぎるのでパーツ自作の難度が高く、その上がんばって改造したとしてもそれほど目立つ部分でもないような気がしますね…
今回は安易に手を出して大変な目に合いました。(笑)
左右ナックルガードの作り直しと、それに付随する手首の修正だけで、実に10時間以上の時間を浪費しています。
(時間がかかるのは管理人の経験や技量の問題もありますが)
挑戦するには覚悟を持って臨む必要がありますね…!

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このキットでは関節部の修正や改修はもはや必然との覚悟をしておいた方が良いかもしれません。
よほど気を付けていない限り(気を付けていたとしても)、制作の中でどこかしらの関節は破損することになるでしょう。

管理人は肩アーマーと膝関節だけの被害で済みましたが、肩関節も膝と同様の構造のため危険です。
また肘関節のボールジョイントも受け側に微細なクラックが入っていたので、実は内心ヒヤヒヤしていました。
アルミ線接続による補修は比較的簡単にできるものですが、できることなら破損は避けたいものですよね。

足首にはアルミ線による横ロール可動を仕込みましたが、パーツが無垢だったので切断や加工は少し大変でしたね。
(このキット、腕や足などもプラの無垢で成型されている部分が多いようです。)
また、破損の補修による副次的な効果ですが、肩アーマーもアルミ線接続に改造した影響で、腕を可動させると『下がり肩』になる欠点が解消されてています。

おしまい

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工作が終わり、『やっとここまで来た』という感じです。(笑)
このキットを作るにあたって、改造や改修は最低限にするつもりだったのですが、気が付けば全身に渡ってかなり手を入れてしまいましたね。
基本的なディテールアップばかりではあるのですが…それでも作業量としてはかなりのものになっています。

改めて水性ホビーカラーのビンと比較してみると、この小ささですから。
小スケールキット故の難しさというものも実感しましたね。
管理人の技量的に、現状これが精一杯という感じです。

キットとしては素組みレビューなどでも触れた通り、体型やディテール等を含め、素性の良いモノであることは確か。
大きな形状変更は一切せず、ディテールアップと一部関節の改修だけでここまでカッコ良い光武の立体物が手に入るのは、これはキットそのものの造形の良さがあってのものですからね。

あとは、塗装で色が入ればまた良い雰囲気になりそうです。
エアブラシ環境のない管理人は常に筆塗りですが、この小ささでは例え基本色を吹き付けで済ませたとしても、かなりの部分を筆で塗り分けていかなければならないでしょう。
筆塗りモデラーは細部まで丁寧に塗り分けて仕上げていきたいところですね…!

と、言うことで…次回からは塗装編です。

(引き続き、塗装編は作業が完了し次第の更新となります)m(__)m

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海洋堂 1/35 三式光武 工作編8.「可動改造工作~関節軸をアルミ線接続に変更する」

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前回までの内容で各部のディテールアップも進んできた1/35三式光武…
一方、ディテール以外に見ておきたいのは全身の各関節部です。
関節はこのキット最大の弱点とも言える部分で、もはや可動範囲がどうこうというレベルではなく…差し込みのクリアランス調整がアバウトなため無加工では普通に組み立てることすら不可能。笑

よしんばピンバイスで軸穴の径を調整して組み上げたとしても、関節可動の際にかかる負荷にパーツが耐え切れず、軸がねじ切れてしまう…という事故が多発します。
管理人も仮組みの段階で肩アーマーの接続軸がねじ切れたのを皮切りに、後の工作を進める中では膝関節も破損してしまうなど、想定外の事故が連発する事態となりました。

となれば改造するしかないのですが、小スケールキットでポリキャップを仕込むスペースもないので、改造はアルミ線による接続を考えるのがお手軽かつ現実的。
当然、キットの関節よりも可動範囲は制限されることになりますが…元々グリグリと動くようなキットではないので、改造によってパーツの固定に安心感が出る事の方が大きいです。

工作の難度もそれほど高くないので、このキットに挑戦する場合は優先度の高い工作と言ってしまっても良いのではないでしょうか…!

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肩アーマーの接続をアルミ線接続に改造する

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画像はカカシ…ではありません。笑
制作中の三式光武を仮組みしたもの。

肩アーマーはボールジョイントによる接続なのですが、左肩は関節の軸がねじ切れてしまったためにそのままでは接続ができなくなっています。
今回まずはここを何とかしましょう。

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同じパーツを別角度から。
キットでは肩パーツから生えていたボールジョイントの軸を肩アーマー裏側にあるボール受けにはめ込む方式。
ガンプラ等ではボール受けにポリパーツが使われていたりと関節強度や可動に配慮がなされていることが多いですが、このキットでは全てプラパーツによるはめ込み方式…しかもはめ込みのクリアランスがキツ目と来ています。
当然、軸側には大きな負荷がかかり、仮組みを繰り返しているだけでもポキリと行ってしまう危険性が大…!という訳なのです。

ボールジョイントを仕込み直すのはサイズ的にかなり難しいのでアルミ線による接続を考えていく訳なのですが、接続先は元々のキット構造のように肩ではなく、胴体側にする方が良さそうです。
キットでは肩の基部自体にも可動が仕込まれているため、肩の内部にアルミ線を通すと、この部分の可動を殺してしまうことにもなってしまいます。

さらに、キットの構造では腕の可動につられて肩アーマーが下がり肩方向に傾いてしまうという欠点もあり…可動の制約が大きく見た目もよくありません。
胴体側は中空でスペースも広く取れるので、ここではこちらを裏打ちしてアルミ線を仕込みましょう…!

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胴体側の穴開けです。
肩関節の接続軸が入る穴の少し上にアルミ線の受け穴を開けていきます。
ニードルで位置決めのキズを付けてから、細径のドリルで切り込み、徐々に目的のサイズまで穴を拡張していくようにするとブレが少ないですね。
実際のアルミ線と合わせながら具合を見てみたところ、1.0mm径のアルミ線を通すには1.1mmの穴を開ける必要があるようです。
このような改造工作をするなら、ドリル刃は是非とも0.1mm刻みで各サイズを用意しておきたいところ…!
管理人はピンバイスのコレットを交換しなくてもよい(根元のサイズが同じ)ゴッドハンドのドリル刃を使っています。

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肩アーマー側は、ボールジョイントの受け穴部分に真横から穴を開けます。
こちらもドリル刃は1.1mmまでを使用。
受け穴の中には折れたボールジョイント(のボール部分)が埋まっていますが、特に完成後に見える部分でもないのでそのままでも問題なしです。

もし気になる場合にはパテなどで埋めておいても良いかもしれないですね。
ヒートペンがあるなら『ウェルダー』のビットで廃ランナーを溶接して埋めるのがベストでしょう。
やはり裏打ちも同素材で行った方が仕上げは格段にスムーズです。

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新しく開けた軸穴の様子を見るために、取り敢えず1.0mm径の真鍮線を通してみます。
穴への差し込み自体は問題なしですが、肩アーマーの固定位置はもう少し上にずらす必要があるようですね。
真鍮線では曲げ加工が大変なので、今回のように取付位置を現物合わせで微調整したい場合の軸打ちには適しませんが、アルミ線なら差し込んでから手の力でグイッと曲げる加工ができるので位置の微調整も楽々です。

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今回、1.0mm径のアルミ線にはWAVEの『AL-LINE』を使いました。
もしかしたらこの手の工作材料はホームセンター等でも入手ができるのかもしれませんが…

WAVEのものは模型趣味関連の流通で手に入るので、モデラーにも馴染みが深いものですね。
長さも150mm(15cm)に切り揃えられていて扱いやすいものです。

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ということで、1.0mm径のアルミ線を軸穴に通して肩アーマーを接続し、アルミの弾力に任せて固定位置を上側にずらしたものがこちら。
キットのまま(右肩・画像では向かって左)と比べても違和感のない位置に固定ができていますね。

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中のアルミ線はこのような感じ。
微妙なクランク程度の曲がり方ですが、これでも十分、位置調整の役に立っています。

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そして念のために…という感じですが、本体側には裏打ちをして固定の強度を稼いでおきます。
画像は胴体側のパーツを裏から見たところ。
三つの穴が開いているのが分かると思いますが、一番右側のものが今回アルミ線を通すために開けた1.1mm径の穴ですね。
このままではパーツの肉厚分でしかアルミ線を固定することができないので、組み立てに支障がない程度までの裏打ちをしておこうと思います。

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裏打ちはヒートペンによる溶接で。
今回は白い廃ランナー(別のキットのもの)を『ウェルダー1.5』のビットで少しずつ溶かしながら肉盛りを繰り返し、裏打ちとしていきます。
(※温度設定は210℃で行いました。もっと高めでも良いかも。)

キットとは色が異なるので、画像でも盛った箇所が分かりやすいですね。
ヒートペンによる加工ではキットパーツと同じスチロール樹脂による充填となるので、パテを使った場合に比べて加工や仕上げは格段に楽です。
コテ先のビットが余計な箇所に触れるとパーツが熱で溶けて変形してしまうので、そこは注意…!

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上手く馴染ませながら溶接していけば盛った部分の接着強度もそれだけで十分なものにはなるのですが、念のため流し込み接着剤による補強も行いました。
クレオスの速乾・色付きタイプ(Mr.セメントSPB)なので塗った部分が黒くなっています。

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先に開けておいた穴をガイドにして裏打ち部分にもドリルで穴を通したら完了です。
裏打ちをしたことで、胴体側の接着シロを稼ぐことができ、十分な強度を持ってアルミ線を保持できるようになりました。
破損した肩アーマー接続軸の修正としては、ここまでしておけば十分でしょう。

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今度は右側の肩と肩アーマーの接続部。
幸いなことに、こちらは軸がまだ破損していないのでキットの構造をそのまま活かすこともできます…

…なのですが、構造上やはり破損が不安なので…今回は予防的な工作として、こちらもアルミ線接続に改造してしまうことにします。
作業手順としては先ほどと全く同じです。

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肝心の破損しやすいボールジョイントはわざと破壊(!)します。
とはいえ、ねじ切るのは乱暴なので軸をニッパーで切断しました。
裏打ち代わりに、切り取ったボールの先端は受けの穴に差し込んでしまいましょう。
肩側の切り口はヤスリとペーパーで整形しておけば良いですね。

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1.1mm径のドリルで穴を開け、穴の周りは面取りしてそれらしく見えるように加工しています。
(画像がありませんでしたが、先に加工した左側も同様に穴に面取り加工をしています。)

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胴体側も肩軸の上にあるスペースを狙って1.1mmの穴開け。
こちらも穴の周りは少し面取りをしています。

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ヒートペンの溶接による裏打ちも同様に。
この画像では裏打ちが終わった後に表側からドリルでの穴開けまでが終わった状態ですね。
(ここでも黒く見えるのは色付きの流し込み接着剤です。
ヒートペンの温度ではプラ材は軟化するだけなので、決して焦げている訳ではありません。
念のため…)

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アルミ線を通し、現物合わせの手曲げで肩アーマーの位置を調節できたら完了です。
このような加工では最初から両側を加工するつもりでも、まず片方を完全に仕上げてしまい、その後で先に仕上がった部分を位置やサイズの目安にしながらもう片方の加工を進めていくようにすると良いかもしれません。
左右とも、違和感のないようによく微調整しておきましょう。

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膝関節もアルミ線接続に改造

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今度は膝の関節。
可動する関節パーツの軸を大腿・下腿それぞれの受け穴に差し込む方式ですが、案の定ここも差し込みがキツく、また関節の可動部も強度が足りていないため、非常に破損しやすい箇所です。

管理人も工作の途中で仮組みを繰り返すうちに、画像のように軸がねじ切れてしまいました。
このままでは組み立てもできないので、ここも何とか加工してあげる必要がありますね。

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実際の作業としては、先ずはねじ切れた破損部位の整形から。
加工の邪魔になる余計な部分は取り除いてしまいます。
こちらは関節側のパーツですが、球体関節状のデザインなので表面はヤスリとペーパーでなめらかに処理しました。

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下腿(膝から下の部分)側パーツの受け穴には折れた軸が埋まってしまって取り出せません。
こちらはまず、関節の球体部分が収まる程度まで折れた軸を削っていきます。
こんな作業には刃先の丈夫なノミが使いやすいですね。
今回はハセガワトライツールのモデリングチゼルより3mm幅の平ノミを使用。

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それぞれのパーツの整形ができたら、関節の球体部分を上に乗せて様子を見てみました。
これだけ見ると、関節の軸が折れているようには見えないですね。
可動や塗装の便を無視するなら、いっそこのまま接着してしまっても外見上の問題はなさそうです。

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また、関節部の球体をノギスで測定したところ、直径は5.5mmといったところでした。
近いサイズの市販パーツがあれば関節ごと交換してしまうのも一つの選択肢になりそうです。

少し調べてみたところ、イエローサブマリンの関節技シリーズから出ている球体ジョイントの5mmか6mm径あたりのものが使えそうな雰囲気ですね。

(参考リンク)
イエローサブマリンONLINEFLAGSHOP / PPC-Tn34 関節技 球体ジョイントリンク ダークグレイ〔ホビーベース〕

この手の改造パーツを仕込めば修正加工の問題は簡単に解決するのかもしれませんが、2,000円程度のキットのために770円(定価)の改造パーツを用意するのも…
ということで、何かと改造パーツの起用には腰が重い管理人。

この膝関節だけ可動を改善したとしても、全体で取れるポージングはこのキットではたかが知れていますしね。

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ということで、ここもキットパーツを極力活かしつつアルミ線による接続に改造します。
穴を開けて線で繋ぎ、あとは現物合わせで角度の微調整をすれば良いだけなので加工の難度としても簡単なものですね。

上の画像は下腿側の元・軸受け部分に1.1mm径の穴を開けた状態。
軸受け穴に埋まった折れたピンの中心を狙ってピンバイスを当てます。
もちろん、ここでもドリルで彫る前にはニードルでアタリを付けていますよ。

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更に、ピンバイスで彫った穴を中心に4.0mm径の球形ビットで彫り込みを入れました。
アルミ線の角度を微調整する際に『逃げ』となる空間を作っておいた方が、それぞれのパーツをスムーズに動かせると思います。

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彫り込みを大きくし過ぎると不自然な隙間が空いてしまうので、そこは微妙な塩梅が必要ですね。
試しに関節の球体側と合わせてみると少し隙間が空いているようにも見えますが…この程度なら許容範囲内でしょう。

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球体関節側も少し加工します。
もうキットの可動機構は使わないので、強度を確保するために球体部分の分割面はプラセメントで接着。
合わせ目も消しておきます。
今回は黒い流し込み接着剤を使ったので、処理後も分割面が見えていますね。

さらに、底面は完成後に見えなくなる部分で平面に削り、アルミ線で角度調整をするための『逃げ』の空間を(少しでも)作っておきましょう。
上の画像で四角く印を付けた部分を目安に金ヤスリで削り込んでいきます。

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ちょっと写真が分かりにくいですが、球体の底面を平らに面取りしたも。
コンマ数mm単位の空間ですが、少しでもアルミ線の曲げ部分が収まるためのクリアランスが確保できれば…というつもりで加工しています。
場合によっては必要ないかもしれませんが、あっても害になるものではないので…今回はアルミ線を差し込む前の段階で加工をしてしまいました。

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そしてこちらもアルミ線の受け穴を彫り込み。
1.1mmのドリルで穴を開けた後、2.0mmの球形ビットで面取りをしています。
完成後には見えなくなる部分なので、ここでの面取りもアルミ線のためのクリアランス確保の一環といったところですね。

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1.0mm径のアルミ線を通して関節を接続。
下腿の下側は穴を貫通させてしまいましたが、アルミ線の長さは丁度良い長さに切り揃えてはみ出ないようにしておきましょう。
貫通させた穴は足首に繋がるボールジョイントの受けの中央から出ているので、アルミ線のはみ出しがあると足首パーツの差し込みと干渉してしまいます!

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アルミ線の長さを切り揃えたら、パーツを取り付けた状態でアルミの弾力を活かして角度を微調整すれば完了です。
可動は無くなりましたが、外見的にはキットの関節と見た目に変化はないですね。

もう片側の膝関節はまだ破損していなかったのですが、こちらも肩アーマーと同様、予防的にアルミ線接続への改造を行いました。
パーツをわざと破壊して改造するのは少し気持ちが躊躇しますが(笑)、後々のことを考えると強度的な不安がない改造後の方が断然良いです…!

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足首にアルミ線を使った可動軸を追加する

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続いては足首も見ていきます。
ここは肩アーマーや膝関節と違って破損しやすい箇所ではないのですが、アルミ線で可動軸を追加して接地性の向上を図りたいと思います。

画像のように、キットでは1パーツで構成された足首をボールジョイントではめ込む方式。
このボールジョイントの可動範囲はほとんどゼロ(!)なので、足首に角度が付けられず、キットのままでは自然な立ちポーズが取りづらいのです。

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こちらは以前の『素組みレビュー』で掲載した画像。
何となく身体が斜めになっていますが、これは撮影時のポーズ付けを適当にやっているのではなく…実はこれがこのキットの限界なのです。

一般的に、キャラクター系ロボットのプラモデルで自然な『立ち』を表現するには、両足はやや開き気味にした上で足首の可動によってしっかりと大地を踏みしめることが必要。
…なのですが、このキットでは可動範囲が明らかに足りておらず、ポーズを調整してみても足底が浮いてしまったり、全体が斜めになってしまったりと、どうしても不自然な立ち姿になってしまいます。

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どうにかこれを改善できないか…と考えてみたところ、足首パーツをつま先とカカトに分割し、それぞれに横ロール可動を仕込むのが良さそうです。

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幸い足首パーツの形状自体は比較的単純なため、切断から再接続にかけての工作もそれほど難しくはなさそうですね。
アルミ線工作の一環として、肩アーマーや膝関節と同様に加工をしていきましょう。

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ここでの工作は元々一体だったパーツに関節を追加するため、まずはパーツの切断からです。
なるべく切りシロが少なくなるようにエッチングノコで切り込みを入れていきますが、どうしてもそれなりに欠損は出てしまいます。

ここで使っているエッチングノコはハセガワトライツールのものですね。

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そして切断面を見てみると、何とこのパーツはほぼムク(中身が詰まっている)となっていました。
このキットでは足首パーツの他にも、腕や足などもムクになっているようで…ガンプラのように中空のパーツを組み合わせていくプラモデルとはかなり勝手が異なるようですね。

アルミ線を仕込む場合は裏打ちの手間が少なく済むので都合が良いとも言えますが、今回のような切断には当然手間がかかり、また切断面もブレやすいです。
管理人が切り離したこのパーツも切断面は少し斜めになってしまっているため、ここは修正が必要になってきます。

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カカト側の切断面は更に悲惨。笑
管理人の技量の問題もありますが、ムクのパーツをキレイに切り離すのは中々難しいものです。
ある程度の欠損は覚悟のうえで作業を進め、後から修正をしていく方が現実的だと思います。

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ガタガタの切断面は金ヤスリで整形していくことになりますが、欠損した分は何らかの形で補填をしないと全体の形が変わってしまいます。
とりあえずボールジョイントが付いている中央部側の切断面にはプラ板を貼って整形することにしました。
外形は現物合わせで削り込むので、この時点では適当に切り出したプラ板を貼っています。
貼り合わせタイプの溶剤系プラセメントでガッチリと接着し、丸3日以上の乾燥時間を置いた後に削り出しです。
このあたりは通常の合わせ目消しと同じ感覚ですね。

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つま先とカカトの切断面は、ヒートペンでプラ材を溶接・充填して整形します。
充填に使うプラ材は廃ランナーでも良いのですが、今回は作業効率の面から0.5mm厚のプラ板(の切れ端)を使いました。

0.5mm厚プラ板を使った溶接は、素材に熱が伝わりやすく、またコテ先のビットで溶けたプラを掬いやすいので、ランナーよりも格段に作業がしやすいですね。
無料に拘るなら廃ランナーですが、使う量としても微々たるものなので、プラ板を使って行ってもそれほどコストはかからないかと。

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ヒートペンによる溶接ではプラモデルのパーツと同じスチロール樹脂同士による加工となるので、その後の削りや仕上げが(パテや瞬間接着剤などと比べて)格段に楽に行えるのがメリットです。
溶剤を使っている訳ではないので、待ち時間ゼロで削り作業に進めるのも良い点ですね。

今回は切断時に欠損した部位を埋めたのと、ついでに切断面の中央に開いていた小穴を埋めて面を面一にしたら完了です。

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整形作業が済んだ各パーツ。
削り加工は粗めの金ヤスリから始めて、最終的には400番のペーパーで表面処理をして仕上げています。
ここまでで下準備は完了。
あとは必要な場所に穴を開けてアルミ線を通せば良いですね。

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ちなみに、ここでは主力の金ヤスリとしてシモムラアレックのシャインブレードを使っています。
削り味の良さはもちろんなのですが、ヤスリ目に削りカスが詰まることが全くない(!)というのは想像以上に快適なものですね。
通常タイプでもゴリゴリと削っていくことができますが、今回のようにパーツの形を大きく変えるほど削り込むには、より粗目の面が付いた『ウルトマ』があると使いやすいです。
『ウルトマ』の複目(超粗目#240相当)の面は、体感的には(粗削り用ヤスリとして使いやすい)タミヤの『ハードコートヤスリPRO』以上の強力な切削力。
今回のように盛り付けた部位を大きく削り出すような場合には特に大活躍できます…!

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切り離したパーツそれぞれの整形作業が出来たら、穴を開けてアルミ線で繋いでいきます。
穴の位置がずれないよう、パーツ同士をすり合わせた状態で印を付けて目安にすると良いですね。
今回はこの画像のようにシャープペンシルで十字に印を書き込んでおきました。
ガレージキットの軸打ちのような要領、という感じでしょうか?
(管理人はレジンキットなどのガレキを組んだことはありませんが…)

またここでも膝関節の例の時と同様、穴の入り口は球形ビットでさらって面取りをしています。
この少しの空間がアルミ線を曲げる際の『逃げの隙間』となって、パーツ同士の接続がスムーズにいくように…というイメージです。

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パーツはムクなので、ピンバイスのドリルが途中で斜めに進まないよう慎重に作業をする必要があります。
穴を貫通させて前後にパーツを繋ぐ必要がある中央部分は特に注意したいところです。

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1.0mm径のアルミ線を20mmの長さに切り出し、穴を貫通させた中央部に通します。
この前後に飛び出したアルミ線につま先とカカトをそれぞれ差し込んで固定する訳ですね。

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各パーツを差し込んで連結したものがこちら。
直線的に繋いでいるだけなのでまだ違和感がありますが、とりあえず接続に使う穴の位置やアルミ線の長さに問題はなさそうです。
あとはアルミの弾力を活かしてグイッと手曲げで形を整えます。

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つま先とカカトに角度が付き、やっと元の足首パーツの形に戻りましたね。
厳密には切断・整形した断面の平面出しが(管理人の技量の問題で)完璧ではなく、微妙に隙間があったりもするのですが…
パーツの大きさや、完成後にはほぼ見えない個所ということを考えればこの程度でもそこまで違和感はないでしょう。

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上側から見たところです。
取付位置のずれも問題ない範囲ですし、今回はこれで完成とします。

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つま先とカカトと外してみると、中のアルミ線はこんな感じ。
指の力だけで簡単に曲げ加工をしていけるのがアルミ線工作の良いところですね。

なお、ここでのアルミ線の穴への差し込みはかなり緩いので、最終的には適当な角度で接着してしまうか、または『ピットマルチ』などのゴム質の糊で皮膜を作って差し込みをキツくするなどの工夫が必要かもしれません。
そのあたりは塗装までが終わった最終組み立ての段階で…(必要があれば)おいおい対応しましょう。

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ともあれパーツの加工としてはこれで完了なので、あとは下腿側と接続して出来上がりの様子を確認しておこうかと思います。

…なのですが、今回の加工で足首側を細かく分割したことにより、ボールジョイントの付け外しがかなりやりにくくなっている点には注意が必要ですね…
元々この部分のボールジョイントはキツ目での成型となっているので、スムーズに脱着ができるよう、下腿側のボールの受けは少し削ってハメ込みを緩めに調節しておいた方が良いでしょうね。

加工としては、5mmと4mmの球形ビットで軽く穴の中をさらうだけという簡単なものです。
もし緩くなってしまったらまた後で調節すれば良いことなので、あまり神経質にならなくても良い部分ではありますが、なるべく不要な作業が増えないように様子を見ながら慎重に削りましょう。

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そして改めて下腿と足首を合体させてみたものがこちら。
足首中央のボールジョイントに繋がる部分は、この状態では全く見えなくなっていますね。
全体の形状に違和感はなく、上手くそれぞれのパーツを繋げることができたと思います。

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正面から見たところ。
下腿のパーツがかなり斜めでも、足首側のつま先とカカトは仕込んだアルミ線を軸に回転できる(横ロール可動)ため、接地面と平行になり、しっかりと足を踏ん張れるようになります。
これは改造の効果あり!でしたね。

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ここまでの可動ができれば、キットそのままのように足を開くと足底が地面から浮いてしまう…というよう事態はまず起こらないでしょう。
地味な部分ですが、こんな細かな部分が後々、完成時に効いて来るのですよね。
サイズが細かなせいで加工には少々苦労しましたが、ここも余裕があればぜひやっておきたい工作というところでしょうか。

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おしまい

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破損した関節の補修にも色々方法はあるかと思いますが、パーツをアルミ線で繋ぐ方法は改造の難易度的にも挑戦がしやすいものではないでしょうか。
可動を諦めるという意味では、破損部位をそのまま接着するだけなのと同じではありますが、アルミ線なら後から分解もできるので、後々の塗装工程でも少し楽ができるかもしれませんね。

足首の横ロール可動については、ムクのパーツを切断して整形するのが大変なので気軽に挑戦してくださいとは中々言えないのですが、立ちポーズがしっかりと決まるようになるので地味に効果は大きい…といったところです。

さて…次はいよいよ工作編のまとめです…!
塗装前に改めて各パーツを仮組みし直し、素組みとの比較をしておこうかと思います。

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