水性ホビーカラーを水で薄める!…のは無理なので「うすめ液の水割り」で快適に筆塗りをしよう

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2019年11月にリニューアルされ、使い勝手が良くなった水性ホビーカラー
タミヤ・アクリル塗料とともに、模型用塗料の一つ「水性アクリル系塗料」の代表的な銘柄として多くのモデラーに親しまれています。

そんな水性ホビーカラーですが、扱いにややコツが必要であるのもまた事実。

・ビン生や濃い目の希釈では乾燥が早い。というか早すぎて筆塗りでの伸びが悪い。
・かといって溶剤で薄めに希釈して重ね塗りを繰り返すと、下地に塗った塗料が剥がれることがある。
・水で希釈すると伸びは良くなるが、薄めすぎると塗装面の微妙な油分に反応して容易に弾かれるようになる。
・水希釈で弾かれない濃さの範囲が体感ではかなり分かりづらく、希釈率のコントロールが難しい。

…ええと、これらは完全に管理人の主観ではあるのですが。
塗料を扱う第一歩、希釈からしてまず難しい。

雑誌のHowToを参考にしようにも、水性アクリル系塗料の筆塗りは商業ベースの解説記事では扱われることが少なく、たまに雑誌の特集が組まれても今一つ参考にしきれない…「コレジャナイ感」の強い内容が多かったりします。(スミマセン)

そんなこんなでなかなか正解にたどり着けない水性ホビーカラー希釈方法なのですが、ある日ふと思いつきました。
「うすめ液そのものを水で割って使えば、(有機)溶剤と水との良いとこ取りになるのでは…?」

ということで早速試してみました、「水割りうすめ液」…!!!

今回の記事は、うすめ液水割りすることによって「塗料の溶解力」「希釈して塗装した場合の弾き耐性」といった性能がどう変化し、それによって実際の使い勝手は変わってくるのかを実験・検証してみたものです。

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まずは各種うすめ液の溶解力をチェック

それではまず実験の手始めに、各種のうすめ液が水性アクリル系の塗膜に対してどれくらいの溶解力を発揮するのかを確認しておくことにします。

対象の塗料は水性ホビーカラーと、参考までにタミヤアクリルも用意しました。
用意したうすめ液は「」「水性ホビーカラーうすめ液」「タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A」「消毒用エタノール」の4つです。

各種のうすめ液について一応、管理人なりの説明を。

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普通の水道水。
水性アクリル系塗料は乾燥前なら水で希釈や用具洗いができます
(※もちろん乾燥後は耐水性)
ただし、水性アクリル系塗料、特に水性ホビーカラーは水で薄めると塗装面に弾かれるようになってしまうために扱いが難しく、希釈には基本的に後述の(有機溶剤成分の入った)うすめ液を使った方が良いでしょう。
(※ただしタミヤアクリルについては「水溶きアクリル」という技法が存在し、本も出ています。)

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水性アクリル系塗料の「水で希釈や用具洗いができます」という謳い文句は言葉通りには受け取らず、(水溶きアクリル法の場合を除き)水は用具洗い限定で使った方が良いですね。
またそれも万能ではなく、実際の作業場面では乾きかけの塗料が水では完全に洗い落とせない…ということも多いですから、洗い作業には筆洗液アプトマジックリンも併用すると作業がよりスムーズに進められると思いますよ。

筆洗液アプト(左)とマジックリン(右)。
乾燥して落ちにくくなった塗料を溶かすことができるので、水性アクリル系使いの必須アイテムとして是非用意しておきたい2品。
水性アクリル系塗料なら「アプト」を作業中の筆洗いにも使っていけるので便利です。
完全に乾燥した塗料の塊が溶け出してくる様には感激…!

水性アクリル系塗料の「(乾燥前なら)水に溶ける」という特性はメリットであると同時に、希釈や用具洗いを水だけで済ませようとすると、かえって作業が難しくなる場合もあるという罠でもあるので注意が必要です…!

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水性ホビーカラーうすめ液

GSIクレオスから発売されている水性ホビーカラーの純正うすめ液。
成分は「水、有機溶剤」とのことですが、有機溶剤の種類や濃度は非公表。
使用は自己責任ですがタミヤのアクリル塗料とも互換性があり、相互に使用可能です。

ラッカー系のものほどではないですが、有機溶剤である以上、特有の刺激臭も発生します。
安全を売りにしている水性アクリル系塗料でも家族から苦情が入る程度の溶剤臭は発生しますから、必ず換気は必要ですよ。

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タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A

こちらはタミヤ・アクリル塗料の純正うすめ液。
メーカーが違うので当然使用は自己責任ですが、水性ホビーカラーとも互換性あり。
というか、昔は水性ホビーカラーの純正うすめ液が発売されていなかった時代があり、その当時は水性ホビーカラーをこのタミヤアクリルの溶剤で希釈して使うのが公然のテクニックとなっていました。
成分表記が「水、有機溶剤」で有機溶剤の種類や濃度が非公表なのも水性ホビーカラー用のうすめ液と同様。
両者の違いは…フィーリングで判断するしかありません(汗)

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※新旧の水性ホビーカラーについて

完全に余談ですが、管理人の手元に純正うすめ液が発売される前の時代の古い水性ホビーカラーがあったので比較写真を撮ってみました。
右のものが見慣れた現行品で、左のものは当時モノの旧版ですね。
記憶によると、この旧版を購入したのは1996年頃。
昭和を感じるラベルデザインですが、ちゃんと平成時代のものです(笑)。

旧版のラベル裏面。
「使用方法」の欄に希釈に関する内容はなく、「用具の手入れ方法」としても「塗料が乾かないうちに水で洗うこと」という記載しかありません。
この時代には水性ホビーカラーの純正うすめ液は発売されていませんでした。
当時はタミヤアクリルの溶剤や、裏技的に消毒用エタノールを使う方法が一般的だったと思います。
道具の洗浄にマジックリンが使えることを知っていればどれだけ楽ができたことか…笑

こちらは現行品のラベルの裏面です。
使用方法として「塗料の粘度が高く塗りにくいときは、水または水性ホビーカラー専用うすめ液で少し薄めて使用すること。」という記載が追加されています。
「用具の手入れ」の欄は「塗料の乾燥前は水で洗浄できます。乾燥後は水で溶解しないので、Mr.ツールクリーナー改で洗浄して下さい。」とありますね。
現在は水性ホビーカラーの純正うすめ液が発売されているので、現行品ではしっかりと自社製品を使うように案内されています。
うすめ液をはじめ、この20年で模型用品は本当に充実しましたね…

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消毒用エタノール

ドラッグストア等で売っている消毒用のアルコールです。
これで水性アクリル系塗料を希釈するという裏技的テクニックがあると大昔にどこかで見聞きした覚えがあるのですが、管理人は実際に使ったことはありません。
令和の現代では、コロナ対策の消毒用としてどこのご家庭にも常備されているものですよね。
今回は溶解力を試す良い機会なので、他との比較用として用意してみました。

消毒用エタノールにはきちんと成分分量が明記されています。
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溶解力を試す実験

それでは実際に塗装したサンプルを用いて各種うすめ液の溶解力を試してみたいと思います。

サンプルは100円ショップのプラスチック製スプーンに直接筆塗りで塗装をしたものです。
塗料は手持ちにあったものから適当に。(色の違いはご容赦を…)
平筆の穂先をうすめ液で湿らせて、ビン生の塗料をそのまま塗っています。
(ここ最近の模型雑誌などでよく紹介されている塗り方ですね。)
塗料本来の色が発色するように数回重ね塗りしています。

サンプルの乾燥時間は約1時間。
塗膜表面は乾燥していて直接手で触ることができる状態です。

「タミヤアクリルの塗膜」に「水」

実験としては、綿棒を各種うすめ液でひたひたに湿らせてサンプルの塗膜を擦ります。
こちらはタミヤアクリルの塗膜を水で湿らせた綿棒で擦ったもの。(赤矢印の部分)
塗膜の溶解はしていないように見えるものの、極わずかに綿棒に色が付きました。
ただ、タミヤアクリルは塗膜の弱さからか乾いた綿棒で強めに擦っても若干の色ハゲがあったので、水で塗膜が溶解したというよりは、単純に塗膜強度が弱いことによるハゲなのかもしれません。

「タミヤアクリルの塗膜」に「タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A」

同様に、こちらはタミヤアクリルの塗膜をタミヤアクリル溶剤の原液で擦ったもの。
一旦乾燥した塗膜も溶剤を付けると簡単に柔らかくなるような感触があり、数回擦るだけで完全に剥がれてしまいました。
筆塗りの際も、コシの強い筆を使うと下地に影響が出そうな感じです。

「タミヤアクリルの塗膜」に「水性ホビーカラーうすめ液」

水性ホビーカラーうすめ液でも塗膜は簡単に剥がれました。
タミヤアクリル溶剤との違いは特に分かりませんでしたが、こちらも強力な溶解力です。

「タミヤアクリルの塗膜」に「消毒用エタノール」

消毒用エタノールも強力な溶解力を発揮し、塗膜は簡単に剥がれました。
しかし、こちらは専用の溶剤とは違って一つ問題が…

実験を行った部分の周囲、消毒用エタノールが付着した部分の塗膜が乾燥後に白く曇ってしまいました。
消毒用エタノールで水性アクリル系塗料を希釈するということは古くから裏技的に語られてきた方法ですが、実際の使用には専用の溶剤とはまた違った注意が必要なのかもしれませんね。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「水」

今度は水性ホビーカラーの塗膜で同様の実験を行っていきます。
まずは水で湿らせた綿棒ですが、これは塗膜には全く影響しません。
(写真の矢印のあたりを擦っています)
タミヤアクリル同様、水性ホビーカラーも乾燥後には完全に耐水性になりますからね。
塗膜の弱いタミヤアクリルとは違い、水性ホビーカラーには綿棒で擦ったくらいでは剥がれない充分な塗膜強度があるのが心強いです。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A」

タミヤアクリルの溶剤で擦ると、水性ホビーカラーの塗膜も簡単に剥がれます。
さしもの水性ホビーカラーも溶剤に対する強さはタミヤアクリルの塗膜と大差がないように感じますね。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「水性ホビーカラーうすめ液」

こちらは水性ホビーカラーの純正うすめ液で擦ってみたところ。
ちょっと写真が分かりづらいですが、溶剤によって塗膜が溶け、擦った部分は剥がれています。

こちらも同じ部分の写真です。
プラの表面が見える程度にまで塗膜が剥がれていますね。
感触としてはタミヤアクリルの溶剤を使った場合と同じです。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「消毒用エタノール」

これも写真が分かりづらいですね…!
矢印の部分あたりを擦っていますが、こちらも塗膜が溶けて下地が見えています。
溶けた塗料で、綿棒にはしっかりと色が付いていますね。

同じ部分の別写真です。
塗料が溶けて、剥がれていることが分かるでしょうか?
また、こちらもエタノールの乾燥後に塗膜が白く曇る現象が起きています。
どうやらタミヤアクリル・水性ホビーカラー共に、消毒用エタノールでの希釈や拭き取りには注意が必要なようですね…
(溶解力は問題ないのですが…)

水で割ったうすめ液の溶解力も試してみる

それではいよいよ今回の本題。
「うすめ液を水で薄めたもの」(ややこしい)では塗膜がどれくらい溶けるのか実験です。
(消毒用エタノールの水割りについては、実際の塗装作業で使うことがなさそうなので省略しました。)

「タミヤアクリルの塗膜」に「タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A」の2倍希釈(溶剤:水=1:1)

まずはタミヤアクリルの溶剤から、水で薄めたものを綿棒につけて擦ります。
こちらは1:1での2倍希釈です。
擦った部分は塗膜が溶けて下地のプラが見えるまで剥がれていますが、水で有機溶剤の成分が薄まったせいか塗膜の溶け方が若干弱い感触がありました。
うすめ液を水割りすることで溶解力を下げる効果は確かにあるようですね。
この調子で他の組み合わせも見ていきましょう。

「タミヤアクリルの塗膜」に「タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A」の3倍希釈(溶剤:水=1:2)

うすめ液をさらに水で薄めた3倍希釈。
2倍希釈と同様に溶け方は若干弱い程度の印象で、塗膜そのものは割と簡単に剥げました。
体感的には2倍希釈とそれほど違いは感じられず。

「タミヤアクリルの塗膜」に「水性ホビーカラーうすめ液」の2倍希釈(うすめ液:水=1:1)

水性ホビーカラー用のうすめ液を水で2倍に希釈したもの。
溶剤を水で薄めたことによって塗膜の溶け方が若干弱くなるのはタミヤアクリルの溶剤と同じですが、こちらは溶けきれない塗料が若干の「ダマ」になって拭き取った部分の周囲に残っています。
擦った部分の塗膜自体は剥がれてはいるものの、タミヤアクリルの溶剤を水で薄めたものよりも更に溶解力が弱くなっている印象ですね。
綿棒に付いた塗料もかなり少なくなっているのが分かるでしょうか?

「タミヤアクリルの塗膜」に「水性ホビーカラーうすめ液」の3倍希釈(うすめ液:水=1:2)

水性ホビーカラーのうすめ液を3倍に希釈したものでは、2倍希釈よりも塗膜の溶け方が更に弱くなり、溶けきれない「ダマ」も多くなっています。
一応、塗膜を溶かすこと自体はできるものの、溶解力はかなり弱くなっているようです。
拭き取りに使った綿棒の塗料汚れも写真ではほとんど分からないくらいに少なくなっていますね。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A」の2倍希釈(溶剤:水=1:1)

水性ホビーカラーの塗膜と2倍に薄めたタミヤアクリル溶剤の組み合わせ。
塗膜に対する溶解力はかなり弱く、綿棒で軽く拭き取ったくらいでは溶け出しがありません。
強めに数回擦っていくと塗膜が柔らかくなってくる感触があって、だんだんと剥がれが生じてきます。
水性ホビーカラーの塗膜には、タミヤアクリルの塗膜に対するものよりも溶剤の効きがかなり弱い感じがしますね。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「タミヤ・アクリル塗料 溶剤 X-20A」の3倍希釈(溶剤:水=1:2)

タミヤアクリル溶剤を3倍まで希釈すると、水性ホビーカラーの塗膜はほとんど溶かすことができませんでした。
強めに擦っても綿棒にはほんの少し色が付くだけで、塗膜自体の剥がれは生じていません。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「水性ホビーカラーうすめ液」の2倍希釈(うすめ液:水=1:1)

水性ホビーカラーうすめ液の2倍希釈と水性ホビーカラー塗膜の組み合わせでも、やはり溶解力はかなり弱くなります。
タミヤアクリル溶剤を水割りした場合と同様、綿棒で何度か擦ることで溶剤成分が浸透して、塗膜が柔らかくなることで剥がれが生じてくるようです。
剥がれ方そのものもタミヤアクリル溶剤の2倍希釈を使った場合と比べてもさらに弱く、擦った部分の中心の地肌が少し見える程度にしか剥がれていません。
綿棒に付着した塗料の量もタミヤアクリルの場合よりも控えめになっていますね。
タミヤアクリルとは違い、塗膜の溶け残りによる「ダマ」は出ていませんが、これは塗料の性質の違いによるものでしょうか。

「水性ホビーカラーの塗膜」に「水性ホビーカラーうすめ液」の3倍希釈(うすめ液:水=1:2)

水性ホビーカラーうすめ液の3倍希釈では、水性ホビーカラーの塗膜にほとんど影響を与えることができません。
綿棒で強めに擦っても、ほんの少し色が付くだけ…写真では全く分からない程度ですね。
タミヤアクリル溶剤の3倍希釈の場合と同様、ここまで薄めてしまうと水性ホビーカラーの塗膜に対しては溶かす力が全くと言って良いほど無くなってしまうようです。
感触としては、水性ホビーカラーうすめ液の方がタミヤアクリルの溶剤以上に溶解力が弱い感じを受けました。

うすめ液を水割りすると確かに溶解力は弱くなる

以上、うすめ液(溶剤)の溶解力を試す実験でした。

塗膜自体の溶剤耐性は水性ホビーカラー>タミヤアクリル
純正うすめ液の溶解力はタミヤアクリル溶剤>水性ホビーカラーうすめ液

といった結果でしたね。

有機溶剤成分を含んだ「うすめ液」を水で薄めると、塗膜に対する溶解力は確かに弱くなるようでした。
うすめ液を水割りした場合は「水性ホビーカラーうすめ液」「タミヤアクリル溶剤」に共通して、特に水性ホビーカラーの塗膜に対する溶解力に大きな変化が見られましたね。

・うすめ液の原液………水性ホビーカラーの塗膜を割と簡単に溶かす。
・うすめ液2倍割り……水性ホビーカラーの塗膜を溶かすことはできるが、その力はかなり弱い。
・うすめ液3倍割り……水性ホビーカラーの塗膜を溶かす力はほぼゼロになる。
・水………………………水性ホビーカラーの塗膜には全く影響しない。


試した中では「うすめ液2倍割り」程度の薄め方でも、塗膜に対する影響はかなり弱くなっていました。
「3倍割り」まで薄めると溶解力という点ではほとんど「水」そのものに近い特性になってしまいましたから、「うすめ液(原液)」「水」中間的な性質の溶剤を作るなら「2倍割り」程度の希釈率が妥当そうです。

水割りのうすめ液では塗装面の「弾き」を防げるか?実験

それでは続いて、実際に塗料を希釈して筆塗りした時の弾き具合を見ていきますが、今回はより厳しい条件にしたいのでちょっと一工夫…
試し塗りに使う100円ショップのプラスチックスプーンにあらかじめ顔の脂を付けた指先(ちょっとキタナイですが…)で塗装面をペタペタと触って表面を脂まみれ(…!)にしておきます。

水性ホビーカラーを水そのもので希釈した場合の弱点である塗料弾きが、今回試す水割りうすめ液ではどの程度生じるのか…この悪条件の下で確かめてみたいと思います。
(まぁ実際の塗装作業では、ここまでパーツを手脂でベタベタにすることはそうそうありませんが…)

水割りのうすめ液としては、先程と同じく2倍割り3倍割りのものを用意。
今回はいずれも水性ホビーカラーの純正うすめ液を薄めたものです。

なお、便宜上ここからは「うすめ液の2倍割り(うすめ液:水=1:1)を”1/2うすめ液”「うすめ液の3倍割り(うすめ液:水=1:2)を”1/3うすめ液”と呼ぶことにします。

水性ホビーカラーを”水”で3倍希釈

水性ホビーカラーのつや消しブラックをで3倍(塗料:水=1:2)程度に薄めて、手脂ペタペタのプラスプーンに塗ってみました。
これは予想通りというか、塗装面で完全に弾かれてしまって話になりません。
3倍にまで希釈した塗料はもうかなりシャバシャバなので、この実験は油の上に水を塗っているようなものですからね…

やはり水性ホビーカラーの水希釈はダメ!ですね。
どうしても水そのもので希釈をしたい場合、もっと希釈率を下げるしか方法はないと思います。
(ちなみに、タミヤアクリルを用いる「水溶きアクリル」法では、塗料に対する水の割合は3割程度と指定されています。)

水性ホビーカラーを”1/2うすめ液”で3倍希釈

同じく水性ホビーカラーのつや消しブラックを用いて、今度は「1/2うすめ液」で塗料を3倍に薄めたものを塗ってみます。
面相筆の穂先で細かく塗ったのでかなり筆ムラは出ていますが…どうやら塗装面での「弾き」は起こらないようですね。
(もちろんプラスプーン表面が手脂ペタペタなのは同じです。)
この悪条件下でもシャバシャバの3倍希釈が普通に塗れてしまうのであれば、通常の塗装場面で弾きが問題になることはまずないでしょう。
これはなかなか良い結果が得られたと思います。

水性ホビーカラーを”1/3うすめ液”で3倍希釈

水性ホビーカラーのつや消しブラック、「1/3うすめ液」で塗料を3倍に薄めたものでも同様に実験。
プラスプーン表面は今までと同じく手脂ペタペタの悪条件ですが、こちらも塗装面での塗料弾きはありませんね。
1/3はさすがにうすめ過ぎかとも思いましたが、塗装面に塗料を馴染ませる有機溶剤としての力は充分に残っているようです。

水割りうすめ液で塗料を薄めても「弾き」は起こらない

手脂ペタペタのプラスプーンに希釈した塗料を塗ってみる実験では、「1/2うすめ液」「1/3うすめ液」ともに、水そのもので希釈した場合のような弾きは起こらないという結果になりました。

少なくとも希釈に使う溶剤の1/3程度には元のうすめ液成分が含まれていれば、3倍程度のシャバシャバ希釈でも水希釈で問題となるような弾きは起こらないと考えて良い…と思います。

水性ホビーカラーの弾き対策として「うすめ液の水割り」を使った希釈「アリ」なのではないでしょうか。

「1/2うすめ液」で筆塗りはもっと快適に…!!!

今回は”うすめ液自体の水割り”という思い付きのキワモノネタを管理人なりに真面目に検証してみましたが、これがなかなかどうして良い結果が得られたと思っています。

これまで水性アクリル系塗料の希釈というと、「うすめ液(原液)」そのものか「水」のどちらかで薄めるという固定観念がありましたが、水性アクリル系塗料「うすめ液」は、そもそもの成分表記が「水、有機溶剤」となっていますから、水の含有率を変えてやることで「うすめ液」の特性を変えることができる訳ですよね。
(当然、使用は自己責任ですが…)

細かな部分は途中の実験結果を見てもらうとして、ざっくりまとめてしまうと…
「1/2うすめ液」は水性ホビーカラーに対して「(有機)溶剤と水との良いとこ取り」といった性質を持つ、と言ってしまって良いかと思います。

・筆塗りの筆圧くらいでは下地に影響しない程度に溶解力が弱くなる。(ただし、全く溶解力がない訳ではない)
・塗料をシャバシャバ(3倍程度)に希釈しても、パーツ表面の油分には影響されず弾かれない筆塗りが可能。


といったところですね…

さらに「1/2うすめ液」で塗料をシャバシャバに希釈して筆塗りの実験を続けてみたところ、この記事の冒頭で挙げたような扱いづらさはほとんどが克服できたように感じられました。
以下、「1/2うすめ液」水性ホビーカラーを希釈し、筆塗りしてみた時の使用感です。

・「うすめ液(原液)」を使って希釈した場合よりも乾燥が遅く塗料の伸びが良い。水希釈に近い使用感。
・溶解力が弱いためか、重ね塗りを繰り返しても下地の剥がれが起きることはなかった。
・3倍以上のシャバシャバ希釈でも塗装面で塗料が弾かれることはない。
・感覚的な問題だが、適切な希釈率を把握しやすい。気がする。
 →管理人的には2.5倍希釈(塗料:1/2うすめ液=1:1.5)くらいがベスト


完全に管理人の主観ではありますが…「1/2うすめ液」を使うことで水性ホビーカラー弱点はかなりの部分で克服できていると思います。

製作中のHGUCサザビーより、塗装中のパーツ。
1/2うすめ液で2.5倍程度に薄めた水性ホビーカラーを薄く薄く、4層ほど重ね塗りした状態。
こんな塗装方法でも下地のズル剥けは一切なし!
ごく薄い塗膜を重ねていくことで筆ムラもかなり抑えられていますね。

この記事を見に来てくれた水性ホビーカラー筆塗り派のモデラーさんも、もし塗料の希釈方法で悩んでいたらうすめ液の水割りを試してみるのも良いのではないでしょうか…!

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※ちなみに、うすめ液を水で割る時は大きめのスペアボトルで作り置きをしておくと便利です。
 タミヤの容量46ccのものが丁度良い大きさで使いやすいですね。
 目盛りも付いているし、ビンの口が大きいのでスポイトを差し込みやすいのもヨシ。

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