海洋堂 1/35 三式光武 工作編5.「ディテールアップ工作~歪んだ凸ディテールの作り直し」

海洋堂 1/35 三式光武 制作記
ランナー紹介・素組みレビュー
工作編1.「仮組みまでに気を付けたいポイント」
工作編2.「押さえておきたい基礎工作~極小パーティングラインの削り込みと便利なお助け工具たち」
工作編3.「ディテールアップ工作~スジ彫りの彫り直し」
工作編4.「ディテールアップ工作~凹モールドの彫り込み」
工作編5.「ディテールアップ工作~歪んだ凸ディテールの作り直し」
工作編6.「ディテールアップ工作~太刀と持ち手の修正」
工作編7.「ディテールアップ工作~ヒートペンを活用したリベット再生法」
工作編8.「可動改造工作~関節軸をアルミ線接続に変更する」
工作編9.「工作編まとめ~ディテールアップと改造・改修箇所の振り返り」

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ディテールアップの一環で凸ディテールの修正もしておきます。
インジェクションキットの限界として、特に光武のような曲面主体のメカは表面ディテールに歪みが出やすいので、特に気になるところを中心に手を加えていこうと思います。

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成型の都合で歪んだディテール

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画像は光武の胴体を組み合わせたところ。
頭の上にあるディテールが歪んでいるのが分かりますね。

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更に別角度から。
射出形成の都合上、型の抜き方向に追従させるため、左右に引っ張られたような形状にされてしまったようですね。

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インストに記載されたイラストでも、この部分はもちろん歪んでいません。
ここは円柱を半分に切ったような形状が貼りついているのが正解のようです。

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このパーツではさらにもう一つ、下部分の装甲の隙間に見えているディテールにも歪みが出ています。
(画像では水性ペンで印を付けています。)
抜きの関係で左右に引っ張られた形状になっているのと同時に、それぞれ凸部分の幅も違ってしまっているため、ここも修正してあげると良さそうです。

まずは既存の凸ディテールを削って整形

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歪んだ凸ディテールを修正するには、キットのモールドを削り落としてから新たに作り直したものを貼り付けることになります。
先程のパーツ、まずは簡単にできそうな装甲下部の隙間から。
既存のモールドは高さの低い凹凸なので、まずはノミで大まかにそぎ落としてしまいます。
画像で使っているのはハセガワトライツールの『モデリングチゼル4 模型用ノミ幅3mm平(TT9)』。

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ノミでの粗削りができたら、ヤスリで更に削り込み。
ここではシャインブレードfinaを使いました。
幅3mmのヤスリですね。

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続いてGSIクレオスのMr.バリ取り棒G。
カンナがけの要領で削り込み、形状を整えます。
バリ取り棒は本当に使いやすいですよ…!

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バリ取り棒なら、逆エッジのキワにもかなり攻め込むことができます。
狭所のカンナがけはタガネでも良いのですが、あちらは刃先の破損が心配なので…
使える部分には極力このバリ取り棒を使用するようにしていきます。

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細かく削りたいときはスジボリ堂のテーパーダイヤモンドやすり(2.5mm幅)の240番も。

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仕上げはペーパーがけ(400番)で。
狭い部分にはピンセットでつまんで使うと良いですね。
ここで使っているのはゴッドハンドのパワーピンセット先広…管理人が一軍で使っているピンセットは殆どがこれです。
力をかけてしっかりと掴めるので扱いやすい一品。

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ペーパーがけの処理後。
既存の凸ディテールが削り落とされてキレイになりました。
後は新たに凸部分を貼り足してやれば良いでしょう。

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頭の上側も同様に作業を進めますが、こちらはもう少し慎重に。
削り作業に入る前に、まずは鉛筆でディテール位置の目安をパーツに書き込んでおきます。

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ノギスを使ってディテール部分の大きさも正確に測っておくと良いですね。
今回ここは長さ4.20mmでした。

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準備ができたらここも同様に既存のディテールを削り落とし。
金ヤスリで粗削りし、ペーパーがけで仕上げます。
金ヤスリはシャインブレード6の目が細かい方(単目の#1000相当)で、ペーパーは400番です。
シャインブレードは割と最近使い始めたのですが、切削力が高くて目詰まりもしにくいので使いやすいヤスリですね。
メインの金ヤスリとして起用しても良い性能かもしれません…!
なお、ヤスリがけで消えてしまった目安のガイド線は、その都度書き足しておきます。

(参考リンク)
隙間をヤスリがけできるテーパーダイヤモンドヤスリ。合わせ目消しなど面仕上げ、狭い場所の加工に利用できます。 ガンプラ、フィギュア、プラモデルにおすすめです。

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凸ディテールの再生

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既存ディテールの削りと整形が完了したら、プラ材でディテールの再生をしていきます。
まずは装甲下部の隙間部分から…
ここは手元にあった0.14mm厚の極薄プラ板(プラシート、またはプラペーパーとも)を使います。
写真のものは、記憶によればイエローサブマリン某店で20年くらい前に購入したもの…(笑)
現在はタミヤからも0.1mm厚のプラ板が販売されているので、これに限らず好きなものを使えば良いかと思います。

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短冊状に切り出したプラ板を流し込み接着剤で貼り付け。
割と現物合わせの作業ですが、貼り付け位置の目安は事前にシャープペンシルで書き込んであります。

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粗方プラ板を貼り終わった状態。
貼り付けた部分がまだ少し浮いているように見えるので、もう少し調節します。

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見やすいように下側から。
接着部の周囲をアートナイフと平ノミで削り込み、また細かくペーパーがけをして新造ディテール部分を馴染ませた状態。
作り直した割にはやや立体感に乏しい感じもしますが、とりあえず新造部分が浮いているように見えないレベルにまでは馴染んでくれたと思います。
この部分はこれで完了…!としましょう。

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今度は頭の上側にあったディテールも作り直していきます。
こちらは少しばかり手間ですね…
用意したのはWAVEから発売されている3mm径の半丸棒。
カマボコのような、断面が半円形をしたプラ棒です。

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プラ棒の端を丸く加工して貼り付け用のディテール形状を作ります。
まずはナイフで粗削り…
この後ヤスリやペーパーで仕上げです。

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出来上がったらパーツに貼り付け。
…なのですが、これはちょっと大きすぎた(太すぎた)ようです。
元の形状と比べると違和感がありすぎますね…
と、いうことで…サイズを小さくしてもう一度作り直しです。

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2mm径のプラ棒(半丸棒)で作り直した同部位の凸ディテール。
パーツとのバランスを考えると、このサイズの方が明らかに違和感がない(笑)。
今回は2mm径を採用しましょう。

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順番が前後しますが、こちらは加工途中の2mm径、半丸棒。
切り離す前に、一端のペーパーがけとスジ彫りの追加までを済ませています。
長いプラ棒の状態で加工を進めていく方が作業性は格段に良いのです。
ちなみに、スジ彫りはフリーハンドのアートナイフでアタリをつけてからコトブキヤのエッチングノコで彫り込みました。
この凸ディテール部分は塗装時に塗り分けが必要になるため、予めスジ彫りを入れておく方が後々で楽ができると思います。

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最後に予め測っておいた長さ(4.20mm)でプラ棒を切り出し、もう一端も丸く加工してあげれば良いですね。
最初にパーツに書き込んでおいた位置決め用のガイドを目安にして、これを貼り付けてやれば完成です…!

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膝アーマーの丸い凸ディテール

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もう一か所、気になる凸ディテールとしては膝アーマーがあります。
画像のパーツ、下側に丸いディテールがありますが、ここも微妙に歪んでいるのです。

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水性ペンで印を付けた上で別角度から。
丸い凸部分が射出形成の都合上、抜きの方向に歪んだ凸ディテールです。

ディテールアップの定石としては、ここも修正するのが正解なのでしょうが…
ここは歪みの程度もかなり微妙な上、パーツのサイズが小さいために工作の難度が高いので、正直無理に作り直さなくても良い気がします。
(事実、管理人は加工に失敗している部分があります。後述。)
丸ディテールの天面が斜めになってしまっているのがここの違和感の原因なので、大掛かりな加工をしない場合でも、金ヤスリで軽く形状を整えてやるだけでも大分雰囲気は良くなるでしょうね。

凸ディテール丸ごと作り直しに挑戦

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今回、管理人は凸ディテールの丸ごと作り直しを選択しました。
上手く加工できれば立体感は段違いになりますけれど、失敗のリスクが伴う諸刃の剣ですね…
とりあえず、2.0mm径のドリルでディテール部分を貫通…!
もう後戻りできません(笑)。

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パーツに2mm径の穴を開けた状態。
ここに新造したディテールを差し込みます。

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パーツに開けた穴に2mm径のプラ丸棒を差し込んでイメージを確認。
差し込むプラ棒の先端にディテールを入れても良さそうですね。

と、いうことで…今回ここにはマイナスモールドを入れることにしました。
ヤスリで平らに成形したプラ棒の先端にスジ彫りを入れるだけのお手軽加工です。
スジ彫りはアートナイフでアタリを付けた後にエッチングノコで彫り込んでいけば良いですね。

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まずはアートナイフでアタリ付け。
このアタリが最後まで影響するので慎重に…!

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ナイフのアタリをエッチングノコでなぞってハッキリとさせます。
これはデザインナイフのホルダーに取り付けるタイプのノコですね。
雲母堂本舗のライナーソー タイプB 0.08mmです。

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仕上げに、ホーリー0.1mmでスジ彫りを深くして完成。
こんな細かな部分でも定石通りに手順を踏んでいくことが大切です…!

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ホーリーでの彫り込みまでができた状態。
このままでも充分そうですが…

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今回は更に面取りビットで周囲のフチを削り込み。
ここまで加工すると、また一段とそれらしくなってきますね。

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更に、受け穴側となるパーツに開けた2mm穴もスチールバー(球形ビット)で軽く面取りをしておきます。

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パーツとプラ棒を合わせてみます。
これは中々良い感じ…!
流し込み接着剤で固定し、強度を稼ぐため裏側はヒートペンで溶接もしておきました。
(※ヒートペンについては後の記事で詳しく扱います。)

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完成…!(画像左側のパーツ)
良く見ると右側の丸ディテールは最初の2mm穴を開ける時点で角度が若干ずれていたのか、作り直したディテールも若干ずれた角度になっているような気がしますが…
ここはこれで終了とします。(深追いするとキリがないので…汗)

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同じようにもう片方のパーツも加工…といきたいところなのですが、ここでトラブル発生です…!
最初の2mm穴を開ける段階でパーツが破損してしまいました。(汗)
パーツのキワ、ギリギリを攻め過ぎたかもしれませんね。

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トラブル対応も経験のうち…ということで、何とか修正を試みます。
画像はヒートペンでプラ材を溶接して破損した部位を補填したところ。
ここからナイフとヤスリで削り込んで元のパーツ形状に近づけます。

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何とか加工が終わった状態。
実は元のパーツよりも輪郭が一回り小さくなっていたりもするのですが…それらしく見えるようになった段階でここは一先ず終了としておきます。
パーツの大きさ的に要求される加工精度が繊細過ぎて、(管理人の技量では)これ以上の修正はかなり難しいです。

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裏側。
形状修正の過程で下腿への接続用のピンを削り取ってしまったので、ここは後で接着必須ですね…

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何とか形状が修正できたので、同じようにマイナスモールドを差し込んで接着します。
それ程、違和感はないでしょうか…?
これならこのまま裏側を切り離せばここも完成として良さそうです。

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加工が終了した膝アーマーを下腿のパーツと合わせてみたところ。
破損からの修正や削り込みでパーツが一回り小さくなっているため、パーツ同士の隙間が若干空いているようにも見えてしまいます。
ここは今回の制作での明らかな失敗ポイントです…!
とはいえ、言わなければ分からない範囲でしょうか…?
塗装をすれば、また違って見えてくるかもしれませんね。

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そしてこちらは膝アーマーと組み合わされる下腿のパーツ。
破損からの修正をした方の膝は接続ピンを切除しているので、受け側の穴も不要です。
完成後は殆ど見えない部分かもしれませんが、一応ここは埋めておくことにしました。
画像で右側に見えている四角い穴がそうですね。

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パーツへの充填は最近使い始めた新工具・ヒートペンで。
不要ランナーを軟化させて盛り付けることができるので簡単です。
パテ類とは異なり、硬化時間ゼロ、有機溶剤の揮発なし、プラモデルとは同素材同士なので加工時に硬さの違いによる切削感や仕上がりの差が出ることもないなど、メリットは多いです。(おまけにランナーを使えば材料費もタダ…笑)
ただし、多少の慣れは必要ですね…!
ヒートペンについては、後のリベット打ち直しで多用しているので、詳しくはその回の記事にて。

ちなみに、ヒートペンは十和田技研のHP-1000です。
他社製のヒートペンは設定の温度が高すぎて、恐らく細かな溶接には向かないのではないでしょうか…?

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ヒートペンによるプラ材の溶接・充填では切削加工も非常にスムーズです。
上手く溶接ができていれば合わせ目も気になりません。
この部分もこれで加工終了…!です。

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おしまい

元からある形状に向かって彫り込むだけの凹ディテールと違って、凸ディテールの修正はプラ材を使ったパーツの再生が必要になってくるので、また更に一手間…といったところですね。
今回は管理人が特に気になった個所を中心に比較的大きな凸ディテールの加工を行いましたが、このキットの凸ディテールで一番問題となるのは、全身に配置されたリベットモールドです。
リベットの数は非常に多く、また歪みも目立ちます。
成型の都合で歪んだ多数のリベットをどうするか…それはこのキットに限らず、サクラ大戦系のプラモデルと向き合う上では非常に重要な問題なのです…

考えた末、今回の制作ではリベットの修正を敢行…!
ただ内容が多くなりすぎてしまうため、そちらはこことは独立した一つの記事としました。
今回の内容でも少し扱った新工具・ヒートペンの扱いと合わせて、改めて別記事で見ていきたいと思います。

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