海洋堂 1/35 三式光武 工作編3.「ディテールアップ工作~スジ彫りの彫り直し」

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前回までに『ゲート』『パーティングライン』『合わせ目』という表面処理の各要素を処理していった三式光武。
このまま塗装に進んでももちろん良いのですが、今回は目立つ部分を中心に簡単なディテールアップ工作も行って仕上げます。

このキットは小スケールの割には良くモールドが入っていますが、プラモデル(インジェクションキット)としての限界から、どうしても形状が甘い部分はあります。
そういった部分に手を入れてあげると、細部が締まってシャッキリクッキリ…キットの良さがより引き立ちますね。
小スケールモデルでは相対的に小さなミスが目立つ粗ともなりやすいので、いつもより慎重に、気を引き締めて作業していきましょう…!

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スジ彫りの彫り直し

手を入れやすい引き算の工作として、削り込み・彫り込みから見て行きます。

彫り直したい箇所はスジ彫りと凹モールド。
プラモデルの常として、キットのままでは彫りが浅く印象も怠くなりがちなもの。
スジ彫りは細く・深く、また凹モールドは歪みを修正しつつクッキリと彫り直してあげましょう。

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今回の記事では、まずスジ彫りを見ていきます。
キットの中でスジ彫りを修正したいパーツは大体こんなところ。
数としてはそれほど多くありませんが、顔に当たる胴体正面や腰・肩アーマーなどは完成形を正面から見た時にも目立つ部分なので、ここを修正する工作の効果は大きいでしょう。

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こちらが光武の顔にあたる胴体正面のパーツ。
この写真は、基本工作としてゲートとパーティングラインの処理をしただけの状態です。
成形段階でのスジ彫りモールドが入っているのが分かりますが、深さも浅く、また曲面構成のパーツなのでラインに歪みも出ています。
まずはここを例に加工の手順を見ていくことにしましょう。

既存のスジ彫りモールドを彫り直す基本的手順

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スジ彫りを彫る(彫り直す)場合、いきなり仕上げ用の工具で彫ってはいけません。
初手としては『アタリ付け』が何よりも重要…!

特に今回のような曲面構成のパーツに曲がりやクランクを含んだスジ彫りを彫っていく場合、アタリがしっかりと付いていないと刃先がオーバーランして余計な傷を付ける可能性が非常に高いです。
はやる気持ちを抑えて、まずはじっくりとアタリを取りましょう。

ここで使っているのは模型用のニードル。
管理人はハセガワトライツールのモデリングスクライバーを使っていますが、模型用として売られている物なら何でも良いかと。

キットに元から入っているスジをなぞるようにして、後から切り込む仕上げ用のスジ彫り工具の通り道を作っていきます。

よく言われるスジ彫りのコツとしては『脱力すること』がありますが、これは本当にその通りで、力を入れずに工具を扱うことがキレイなスジ彫りの加工の第一歩。
実際に加工をしていくイメージとしては『脱力』という言葉からから更に一歩進めて『撫でる』と言ってしまっても良いくらい。
針先で既存スジ彫りの溝の中を撫でるようにけがいていきます。

指先には全く力を入れずに針で『撫でる』動作を30~50回程度、溝からはみ出さないようにゆっくりと繰り返してアタリをつけましょう。
力を入れていなければミスも少なくなりますし、もし針先のオーバーランで余計な傷が付いたとしても、その傷は非常に浅いものになるので、仕上げのペーパーがけ(最悪でも瓶サフ1000のチョン付けで充分)で消えてしまう程度のものになりますからね。

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ニードルの『撫で』で充分にアタリが付いたら工具を変えて彫り込んでいきます。
ここではシモムラアレックのホーリー 0.1mmを使いました。
ニードルの痕がガイドになるのでキットのモールドにそのまま切り込む場合よりも格段に刃先は外れにくいですが、それでも最初は慎重に…このホーリーでも力を入れずに撫でるような力加減から始めた方が安全です。

殆ど力を入れなくても10から20回ほど撫でる動作を繰り返す頃には、スジ彫りもかなりハッキリとしてきているはず。
ここまでくれば、もう少しだけ刃先に力を加えても大丈夫。
刃先でカリカリと引っ搔くようにしてスジを深くしていきましょう。
また、クランクになっている形状では曲がり角の頂点部分が浅くなってしまわないよう、曲がり角を始点にして彫り進めたりもしながらスジ彫りの形を整えていきます。

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彫り終えたパーツ。
加工前と比べてスジ彫りが深く細くなってシャープな印象になっている一方、スジのクランク部分の周囲には若干の余計な傷もついてしまいました。
気を付けて作業をしていても、ミスはつきもの…多少の傷は致し方なしといったところ。

このような傷は彫り作業の比較的初期、まだスジが浅い段階で付いたものです。
彫りを『撫でる』力加減から始めていれば、こんな時の傷もごくごく浅くて済みます。
このパーツの場合でも瓶サフ1000とペーパーがけで処理できる範囲のものでしょう。

もしこれを最初から力をかけてゴリゴリと彫り進めてしまっていたら…ミスした時の傷もより深く・大きくなっていたはず。
場合によってはスジ彫りそのものが曲がってしまうこともありますね。
そのような事態を防ぐためにも、やはりスジ彫りには『脱力』が必須なのです…!

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色々なスジ彫り形状への対応

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直線のスジ彫りにはエッチングノコも使いやすいです。
上の画像で使っているのはデザインナイフのホルダーに取り付けて使うタイプ。
(雲母堂本舗のライナーソー タイプB 0.08mm)
本彫り込みの前にニードルでアタリを付けておくのは先ほどの例と同じですね。

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彫り上がり。
エッチングノコを使うと直線をしっかりと出しやすいので、スジ彫りの形状によって道具も使い分けましょう。
もちろん、ホーリー等他の工具で彫っていっても大丈夫です。
そこはお好みで…

そしてここでもやはりと言うか、このパーツでもアタリ付けの段階でニードルの針先がブレたため、本来のスジ彫りから大きく逸れた傷が付いてしまいました。
(写真では分かりやすいように、黒い流し込み接着剤でキズ部分に色を付けています)

それでも作業時には脱力していたおかげで、傷はごく浅いもので済みました。
この程度なら先程と同様、後で瓶サフとペーパーがけで修正すれば良いですね。
繰り返しですが、やはり『脱力』が大事…!なのです。

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今度は曲線のスジ彫り。
ラインが滑らかに繋がるように気を付けたいところ…
とはいえ、工作の手順自体は同じです。
まずはニードルの針先で既存のスジ彫りモールドを『撫でる』ようにしてアタリを付けましょう。
『脱力』が大事…!

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曲線のスジ彫りにはホーリーが追従しやすく、使いやすいと思います。
最初は撫でるような力加減から始めて徐々に深く彫り込んでいきましょう。

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ホーリーで10から20回程度を目安に何度も軽く溝をなぞって彫り込んだ状態。
最終的にはある程度カリカリと引っ搔くように彫り込んでいますが、力を入れ過ぎるとラインがぶれやすいので最後まで注意が必要です。

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今度は肩アーマー。
これは少し難しいパターンです。

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同じパーツを別角度から。
スジ彫りのラインとしては直線の組み合わせなのですが、途中にクランクもあり、また幅広の凹モールドと交差している部分があるために工具の刃先が逃げやすい形状です。
射出形成の抜きの関係で、そのスジ彫り自体も斜めに歪んだ形状になっていますね。
ラインのブレを防ぐためには、最初のアタリ付けを今まで以上にしっかりと行う必要があるでしょう。

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とはいえ、基本的にやることは同じです。
まずは形状の簡単な部分から、モールドに沿ってニードルの針先でアタリ付け。
撫でるような力加減で30から50回程度繰り返します。

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幅広の凹モールドと交差する部分は、ニードルでは針先が逃げてしまいます。
ここはアートナイフの刃先を押し付けるようにしてアタリを付けましょう。

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今回は更に念を入れて、目立てヤスリを使ってアタリをさらにハッキリさせます。
アートナイフの刃先を押し付けてできた直線の傷(アタリ)に沿って、ごくごく軽く行っています。
このような場面で使える工具としては、目立てヤスリの他にエッチングノコ等も直線のケガキを行いやすくて良いかもしれませんね。

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アタリを付け終えたパーツ。
アートナイフや目立てヤスリを使った部分は本来のスジ彫り部分よりも外に傷がはみ出していますが、ここではしっかりとアタリが付くことの方が大切です。
傷は後で埋めれば良いのですから…!

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ここまでできたら工具を変えて本彫り込みです。
ここでもホーリー0.1mmを使っています。
アタリがしっかりと付いていればこの段階での彫り込み自体は非常に楽。
クランクの頂点が変に浅くなったりしないよう、向きを変えながら彫っていけば良いでしょう。
もちろん、これまで同様に脱力は大切ですよ…!

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ホーリーでの彫り終わり。
先にアタリを付けていたお陰で刃先が逃げることもなく、スジ彫りのモールドに沿って十分な深さの彫りを入れることができました。

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またこれは好みの問題ですが、スジ彫りがパーツ上面だけで途切れているのは変に感じたので、今回は側面もスジ彫りが繋がるように彫り込んでおきました。
ここではハセガワトライツールのエッチングノコを使用。
ナイフの刃先を押し付けてアタリを付けた上から彫りを入れます。

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彫り終わり。
パーツ側面にもスジ彫りディテールが繋がりました。
彫り直しに使ったのは、トライツールのけがき用ではない方のエッチングノコ(モデリングソーセット TP3)なので、比較的太めに彫りが入っています。
(※公式サイトにサイズ表記がなく正確な刃厚は不明…ですが、感覚的には0.2mm前後でしょうか?)

パーツの正面に元々入っていた既存のスジ彫りモールドは、射出形成の抜きの関係で歪んでいるために実際よりも太めに見えます。
ここではそちらと違和感なく繋がるように、敢えて幅広のスジ彫りとしてみました。

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黒い流し込み接着剤をスジ彫りに流して形状を見やすく確認してみます。
やはりアートナイフの刃先でアタリを付けた部分、ラインの曲がり角付近に余計なはみ出し傷がありますね。
とはいえ、あくまでもアタリなので傷としてはごく浅いものです。
この程度なら修正も容易でしょう。

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浅い傷とは言ってもペーパーがけだけでは消えないので、ここは瓶サフを使います。
クレオスのMr.サーフェイサー1000を爪楊枝の先でチョン付けして傷を埋めましょう。
なるべく余計な場所、特にスジ彫りの中に流れ込まないように注意してサフを盛っていますが、もしスジの中に入ってしまったとしても、あくまでもサフなので…彫り直し自体は簡単です。

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瓶サフの乾燥後にペーパーがけをして仕上げます。
本彫り込みでミスしてしまうと傷も深くなるので修正が大変ですが、アタリ付け程度の浅い傷なら修正も楽ですね。

(参考リンク)
【公式通販】雲母堂本舗 エッチングスジ彫り工具ライナーソー008B型 (0.08mmライナーソーB型) | 工具の種類で探す | ゴッドハンド直販サイト本店

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キットのモールドについて

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こちらはキットのスジ彫りを彫り直した胴体・腰部分正面のパーツ。
下のカッターマットのマス目が1cm四方なので、このサイズ感を考えればよくモールドが入っていると言えるのですが、実はこのキット…設定にあるスジ彫りは一部省略がされているようです。

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画像はキット付属のインストより。
パッと見でも、矢印で示した部分のスジ彫りがキットには無いことが分かります。
脚部の装甲などでも同様に省略されているスジ彫りモールドがあるようです。

完全に設定通りにするならスジ彫りの新規追加・彫り込みが必要ですが…
今回の制作ではキットのまま、基本的に既存のモールドを修正するのみに留めています。

深追いすると完成しなくなる恐れがあるというのが一番の理由ですが、旧(サクラ大戦)シリーズに馴染んできた管理人の感覚としては、この設定通りのスジ彫りはディテール過剰という印象も受けてしまいます。
先代の光武二式の時はハードがドリームキャストだったので、グラフィック描画能力との兼ね合いで敢えてデザイン段階からディテールが減らされていた可能性もありますが…霊子甲冑は光武から光武二式くらいのディテール密度がイメージに合うような気がしますね。

ま、ここは好みの問題ということで。
もし設定通りにスジ彫りを追加したい場合は、鉛筆で下書きをした上でアートナイフの刃先でアタリを付けてから彫り込んでいけば良いでしょう。
新規のスジ彫り追加工作の詳細については、またの機会にでも。

おしまい

ガンプラ等のキャラクター系ロボットでもディテールアップとしては定番的なスジ彫りの修正・彫り直し。
慣れないと失敗も多かったりしますが、しっかり彫り直しておけばその分効果も大きいです。
それぞれの工具は好みで好きなものを使えば良いと思いますが、実際の作業ではとにかく『脱力』と充分な『アタリ付け』が大切ですね…
たとえガイドテープを併用したとしても、焦って最初からガリガリと彫ってしまうとラインはブレブレです…!
とはいえ、ここは管理人もまだまだ修行中。
記事を通して自分の作業を振り返りながらステップアップしていきたいと思います…

次回もディテールアップ工作の続きです。
彫り込み加工の第2回として、今度は凹形状のモールドに手を入れていきます。

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